補助金と助成金の違いとは?

2025年6月3日
補助金や助成金は、国や自治体が提供する資金援助制度です。
ただし、それぞれの目的や支援範囲には大きな違いがあり、事業計画や雇用形態に合わせた正しい選択が求められます。
本コラムでは、補助金と助成金の定義や役割、具体的な申請フローまでをわかりやすくまとめました。ぜひ最後までご覧ください。
補助金とは?
補助金とは、国や地方自治体が新規事業の創出や地域の産業・経済の活性化など、特定の政策目標を達成するために交付する資金を指します。多くの場合、事業計画や研究開発計画などを提出し、審査を通過した事業者が支援を受けられます。
基本的に返済の必要がないという点は助成金と同じですが、補助金は公募期間が短く、募集期間も年に数回しか設けられないことが多いです。採択後は、事業を実施したうえで対象経費を報告し、国・自治体側にその正当性を認められれば交付が確定します。
新規プロジェクトに対して大きな資金を投入できるのがメリットです。ただし、申請内容によっては、審査のハードルが高くなることがあります。しっかりとした事業計画の策定や実施管理が求められますので、申請から受給まで時間がかかることもあり、注意が必要になります。
補助金の目的と管轄
補助金の目的は、企業の成長や新規事業創出、地域経済の振興など幅広い分野に及びます。
国レベルでは経済産業省や中小企業庁が主な管轄となります。また、地方自治体も独自の地域振興策として補助金を用意することがあります。補助金による支援は、中小企業が新しい技術を開発したり、地域密着型の事業を展開したりする場合に有効です。国や自治体が示す政策の方向性に合致する事業内容であれば、採択の可能性が高まるでしょう。ただし、政策の優先度や国・自治体の予算状況の影響も受けやすいため、対象や要件、応募時期などはこまめにチェックしておく必要があります。
補助金の支給額と公募期間
補助金の支給規模は数十万から数億円、場合によっては数十億円に上ることもあり、大規模な事業実施に向いた制度です。募集は年に数回で、公募期間は1か月程度など短期かつ集中して行われることが多いです。
そのため、公募開始前から事業計画を準備し、提出書類を整えたうえで期限内に申請手続きを行う必要があります。急いで準備を始めると不備が出やすいため、計画的に進めることが肝心です。
また、採択後には事業計画通りに実施しているかどうかの報告や書類管理が重要になります。不備があると支給の減額や取り消しにもつながるため、経理面や管理面での体制づくりも求められます。
主な補助金の種類
補助金 | 制度内容 | 特長 |
---|---|---|
IT導入補助金 | 中小企業のデジタル化・業務効率化のためのITツール導入を支援 | 支援事業者とパートナーシップを組んで申請。幅広い業種が対象。導入用途に応じて、さまざまな申請枠が設けられている。制度改正への対応支援という意味合いも強く、採択率も高め。 |
中小企業省力化投資補助金 | 人手不足解消のための省力化設備・製品の導入費用を支援 | 生産性向上に効果的な汎用製品をカタログから選択・導入する「カタログ注文型」と、個別の現場や事業内容に合わせた設備導入・システム構築等の多様な省力化投資を支援する「一般型」がある。 |
小規模事業者持続化補助金 | 小規模事業者の販路開拓やIT導入などの取り組みを支援 | 比較的小規模な事業者でも申請しやすい。商工会・商工会議所の支援が受けられる。 |
中小企業新事業進出補助金 | 新規事業に取り組む中小企業の設備投資を支援 | 既存の事業とは異なる、新規事業への進出を目的とした設備投資が対象。事業再構築補助金に代わる新規事業への取組支援補助金。 |
大規模成長投資補助金 | 中堅・中小企業の大規模な成長投資を支援 | 大規模な設備投資が対象。人手不足対応や成長戦略に基づく投資を支援。持続的な賃上げにより従業員へ還元、優秀な人材の確保も可能に。 |
こうした補助金は、いずれも政策目標を達成するための制度であるため、募集背景や対象範囲を十分に理解してから申請を検討しましょう。
助成金とは?
助成金は、厚生労働省などが主体となって実施する制度で、特に雇用関連の施策に力を入れています。
例えば、新たに従業員を雇用する場合など、条件を満たせば基本的に申請者は支給を受けることが可能です。
助成金は、補助金ほど大規模ではありませんが、数十万円から数百万円程の資金を確保できる点が魅力です。こちらも、基本的には返済の必要がなく、要件さえ満たせば原則審査なしで支給対象となる場合が多いことから、多くの事業者が活用しています。ただし、労働保険の適用事業であることや雇用保険料の納付状況など、一定の要件をクリアしなければならないケースがほとんどです。
詳細は制度ごとに異なるため、自社の取り組みが助成金対象になるかを確認することが重要です。
助成金の目的と管轄
助成金の最も大きな目的の一つは、雇用の安定と促進にあります。
厚生労働省が主導する制度が多く、主に従業員の教育・研修や新規雇用、職場環境の改善などに対して支給されます。雇用保険適用事業主であることが申請の前提条件となることが多く、事業者が従業員にとって働きやすい環境を整える取り組みを進める際、助成金の活用は大いに役立ちます。
助成金の支給額と特長
助成金の支給額は一般的に数十万円から数百万円程度が多いですが、支給対象となる取り組み内容や規模によってはもう少し高額になる場合もあります。中小規模の事業者にとっては、人材確保や研修制度の充実に大きく貢献します。補助金よりも要件が明確で、対象条件を満たし必要な手続きをしっかり行えば支給されやすい点が特徴です。審査らしい審査がないため、比較的ハードルが低い制度と言えます。
ただし、後払い方式が採用されている場合が多く、事前に費用を立て替えなければならないケースも少なくありません。資金繰りやキャッシュフローを考えた上で、タイミングを計って申請しましょう。
主な助成金の種類
助成金 | 制度内容 | 特長 |
---|---|---|
業務改善助成金 | 事業場内最低賃金を一定額(各コースに定める金額)以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成 | 事業場内最低賃金が地域別最低賃金よりプラス50円以内であるなどの要件あり。給与が上がることでモチベーションが高まり、離職率の低減につながることも期待される。 |
働き方改革推進支援助成金 | 時間外労働の削減や年次有給休暇の促進に向けた環境整備等に取り組む中小企業事業主に対して、その実施に要した費用の一部を助成 | 「労働時間短縮・年休促進支援コース」や「勤務間インターバル導入コース」等のコースがある。労働コストの削減だけでなく、従業員の健康とモチベーションの維持にも寄与し、企業全体のパフォーマンス向上も期待される。 |
人材開発支援助成金 | 労働者に対して、職務に関連した専門的な知識および技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成 | 「人への投資促進コース」や「事業展開等リスキリング支援コース」等のコースがある。サブスクリプション型の研修サービスを利用した場合に助成され、新入社員研修等にも活用可能。 |
キャリアアップ助成金 | 有期契約社員を正社員雇用に転換するなど、従業員の処遇改善を行う事業主を支援 | 「正社員化支援」と「処遇改善支援」があり、いくつかのコースに分かれている。人材の定着率も高まるため、企業活動全体にプラスの効果が期待される。 |
両立支援等助成金 | 仕事と家庭を両立できる職場環境づくりに取り組む事業主を支援 | 男性の育児休業取得促進、仕事と介護の両立支援等、いくつかのコースがある。「不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース」も新たに追加された。 |
自社の課題を洗い出し、最適な助成金を選択することが大切となります。
補助金と助成金の違い
補助金と助成金は、それぞれがカバーする政策目的や申請条件に大きな差があります。
特に審査の有無や支給規模、受給ハードルなどは大きく異なるため、どちらを活用するかは事業の性質や時期、資金用途によって判断する必要があります。両者とも申請手続きに一定の時間と労力を要する点は共通していますが、要件を満たしていれば比較的スムーズに申請できるのが助成金です。一方で、より大規模なプロジェクトの実現を目指す場合には、補助金の活用が有力な選択肢となります。
項目 | 補助金 | 助成金 |
---|---|---|
目的 | 新規事業の促進、研究開発支援、設備投資の促進など | 雇用の安定、労働環境の改善、人材育成など |
管轄 | 経済産業省、中小企業庁、地方自治体など | 厚生労働省、地方自治体など |
審査・採択 | 競争採択。審査を通過したもののみが受給可能 | 要件確認。要件を満たせば原則受給可能 |
財源 | 主に法人税 | 主に雇用保険料 |
公募期間 | 特定の公募期間が設けられていることが多い | 通年で募集していることが多い |
支給額 | 大規模事業を想定しており、比較的高い。 | 限定的だが、その分迅速な支給を得られることが多い。 |
事業実施期間 | 数か月から数年。提出書類や管理も複雑化しがち。 | 比較的短期。日常の労務管理業務と連動しやすい。 |
申請から受給までの一般的な流れ
補助金・助成金ともに、基本的な流れは同じとなり、複数のステップを踏む必要があります。実際の流れを押さえておきましょう。
-
STEP1:事業計画と事業目的の確認
-
STEP2:必要書類の準備と申請
-
STEP3:審査・確認作業→受給決定
-
STEP4:事業実施確認後、資金の振り込み
-
STEP5:事業実施効果報告
補助金と助成金の申請は、どちらも公募要領や募集案内を確認し、書類の作成から始まります。書類には事業計画書や経費見積もりなど、実施する事業について詳細に記載する必要があります。
提出後は審査や確認作業が行われ、補助金は審査を通過すれば採択通知、助成金は書類不備などがなければ受給決定が行われます。実際の資金が振り込まれるのは事業実施や労働条件改善などが実際に行われた後となるのが一般的です。後払いである点から、あらかじめ資金計画をしっかり立てておくことが大切です。スケジュールに余裕を持ち、必要書類や報告書の作成に時間を割けるようにしておくと、申請作業や精算業務でのトラブルを避けやすくなります。
助成金の場合は特に、雇用管理の改善などの要件を満たしているかの報告が求められます。書類不備や要件を満たしていない場合は不支給や返還命令のリスクもあるため、手続き面の管理は入念に行いましょう。
最近は、電子申請に対応している制度も増えてきています。電子申請する際は、事前にアカウントの取得や操作方法の確認をしておくとよいでしょう。
まとめ
補助金と助成金は、目的や受給条件が大きく異なるため、事業内容や資金計画に合わせて最適な制度を選びましょう。大規模な設備投資や新事業の展開を目指すのであれば、審査を伴うものの高額な支援が期待できる補助金を検討すると効果的です。一方、雇用環境の整備や人材育成にフォーカスしたいのであれば、助成金を活用することでスムーズに補助を得られるでしょう。
どちらの制度を利用するにしても、要件の確認や書類作成、後払いリスクへの対処など、事前準備を徹底することが欠かせません。常に最新の公募情報や条件変更にアンテナを張り、計画的に申請を進めましょう。
自社の目標や現状に合った制度を複数比較し、有効な資金調達と経営改善に役立ててください。
キヤノンシステムアンドサポートの取り組み
補助金・助成金は、現在多くの事業が進んでおります。
多くの企業さまより、自社の課題に利用できる補助金、事業計画に利用できる助成金を探すのに非常に苦慮されているとお聞きしております。
キヤノンS&Sではヘルプデスクを用意し、お客さまの課題や規模、目的に沿った補助金・助成金を探す取り組みを無償でお手伝いさせていただいております。さらにはご要望の補助金・助成金に関して、リモートによるご説明会なども実施可能です!ぜひともご活用いただければ幸いです。
今すぐ読みたいおすすめ情報
会社の処方箋についてのご相談・見積・お問い合わせ
キヤノンシステムアンドサポート株式会社