中小企業のクラウドサービス活用が加速中!
今こそ見直したい導入のポイントとは?

2025年5月27日
最近、中小企業の経営者から「クラウドサービスを導入したいが、何から始めればいいのか分からない。」といったご相談をよくいただきます。特に、コストや人手の制約がある中で、どのようにITを味方にできるかが重要なテーマになっています。そこで今回は、中小企業のクラウド活用の最新状況や、導入する際に気をつけたいポイントなどをわかりやすく解説していきます。
中小企業でもクラウド化が当たり前の時代に
かつて、クラウドサービスの利用は大企業が使うものという考えが主流でした。
しかし近年、テレワークの普及や業務の多様化、DX(デジタルトランスフォーメーション)の流れを受け、中小企業への導入が急速に進んでいます。
経済産業省の「2024年版中小企業白書」によると、デジタル化による業務効率化やデータ分析に取り組んでいる中小企業(図-1「段階3」)の割合は、2019年の9.5%から2023年には26.9%へと約3倍に増加しています。中でも、段階3の取組企業の内、45.6%がクラウドサービスを活用しており、クラウドサービスの導入が中小企業の業務効率化に寄与していることが伺えます。
つまり、中小企業の4社に1社以上が、すでにデジタル化による業務効率化やデータ分析に取り組んでおり、そのうち約半数はクラウドサービスを業務に取り入れているということです。
この流れは今後もさらに加速すると考えられています。
図-1 デジタル化の取り組み段階

中小企業が取り入れやすいクラウドサービスとは?
ビジネスの現場では「クラウドサービス」という言葉を耳にする機会が増えています。しかし、クラウドサービスと一口に言っても、「SaaS」「IaaS」「PaaS」など、いくつか種類があり、用途や導入のしやすさがそれぞれ異なります。
その中でも特に中小企業にとって導入のハードルが低く、かつ効果を実感しやすいのが「SaaS」と呼ばれるクラウドサービスです。
SaaSは「Software as a Service(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)」の略で、ソフトウエアを自社のパソコンにインストールすることなく、インターネット経由で利用できるサービス形態のことを指します。
例えば以下のようなものがあります。
- メール・スケジュール管理:Microsoft 365、Google Workspaceなど
- ファイル共有:Dropbox、DirectCloud、Boxなど
- 顧客管理(CRM):Sales Force Assistant、Salesforce、HubSpotなど
- 会議・チャット:Zoom、Microsoft Teams、Chatwork、LINE WORKSなど
- 基幹業務:奉行クラウド、PCAクラウド、楽楽精算・楽楽明細など
これらはすべて 「SaaS型クラウドサービス」 です。
図-2 SaaS型クラウドサービス例

中小企業におけるクラウドサービス導入のメリット
中小企業にとってクラウドサービスの導入には、次のようなメリットがあります。
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導入の容易さと拡張の柔軟性
インターネット接続環境があればすぐに利用を開始できるため、導入のハードルが低くなっています。また、事業の成長に合わせて必要なサービスやデータ容量の拡張が柔軟に行えるため、社員数の増加や拠点の追加、業務の拡大に応じてライセンスや機能を追加することが可能です。
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初期導入コストの削減
自社内にサーバーや専用端末、ネットワーク機器などのハードウェアやソフトウエアを導入する必要がないため、初期投資費用を大幅に削減できます。
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働き方の多様化への対応
オフィス以外の場所からも必要なデータにアクセスし、業務を実施できるため、テレワークや在宅勤務など柔軟な働き方を実現します。また、災害時やパンデミックなどで出社が難しい状況でも業務を継続できる体制を構築することが可能です。
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セキュリティとBCP対策
高度なセキュリティ対策やデータのバックアップ機能を備えているため、自社内でサーバー管理を行うよりも安全にシステムを運用できます。また、災害やマルウェア感染によるデータ消失時にも、クラウド上に保存されたデータから復旧できる可能性が高いため、BCP対策としても有効です。
クラウドサービスは、必要なときに即座に活用でき、月額または年額で利用料を支払うサブスクリプション型サービスが主流です。このため、初期投資が少なく、予算管理が容易であるため、リソースが限られる中小企業にとって導入しやすいという大きなメリットがあります。
クラウドサービス利用時の注意点
クラウドサービスの導入には多くのメリットがありますが、安全に利用するためには以下の点に注意が必要です。
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利用サービスの把握と一元管理
部門単位でバラバラにサービスを契約・利用していると、全体での費用管理やセキュリティ対応が困難になります。社内で使うツールはIT担当者が一括管理するなど、社内ルールを作り、運用していくことが大切です。複数のクラウドサービスへのログインに使用するIDやパスワードを統合管理するクラウドサービスもあります。
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ログイン時のセキュリティ強化
パスワードだけに依存した運用は、情報漏えいのリスクを高めます。
「2段階認証」や「ワンタイムパスワード」、「IPアドレス制限」など、多要素認証を導入し、セキュリティ強化をすることが重要です。 -
通信・データの暗号化
顧客情報や取引履歴など、社内の重要データを取り扱うサービスでは、「通信の暗号化」や「データ保存の安全性」が確保されているかを事前に確認することが必要です。
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契約内容の確認とデータ移行性の確保
クラウドサービスのなかには、サービスを途中で解約したい場合、データの移行が困難なケースもあります。
契約時には、データの取り出し方法やサービスが自動更新されるかなど、終了時の対応についても確認しておきましょう。
注目のクラウドサービス
電話もクラウドで?話題の「クラウドPBX」とは
最近注目されているクラウドサービスのひとつに「クラウドPBX」があります。これは、会社の電話システムをクラウド上で管理できる仕組みです。従来、企業の電話システムは物理的なPBX(構内交換機)を用いて構築されていましたが、近年では「クラウドPBX」と呼ばれる、インターネット経由で電話機能を提供するサービスが登場しています。
具体的には、以下のようなことができます。
- スマートフォンから会社の代表番号で電話の発信や受信ができる
- テレワークや外出先でも内線が使える
- 通話内容の録音や履歴の確認が可能
「オフィスに電話機がなくてもOK」「機器を増やさず拠点を増やせる」など、これからの働き方にぴったりの仕組みです。リモートワークを導入されている企業や、複数拠点を展開されている企業、また日常的に電話対応の多い業種の方には、ぜひ一度ご検討いただきたいサービスです。
セキュリティもクラウドで!ネットワークを一体化する「SASE」とは?
クラウド活用が増えてきているなか、ITインフラの世界でも「境界線」が曖昧になってきています。かつてはオフィスの中にサーバーやファイアウォールがあり、そこに守られた「安全な社内ネットワーク」が存在していました。しかし、リモートワークやSaaSの普及によって、社員もデータも社外に「分散」し、システムを利用する人の場所・システムが設置されている場所に依存しない環境へと変化しています。
こうした変化の中で注目されているのが SASE(サシー・「Secure Access Service Edge」) というネットワークとセキュリティをクラウド上で一元的に管理する新しいセキュリティの考え方です。
従来は、社内のネットワークやVPN、ファイアウォールなどを別々に管理していましたが、SASEではそれらを統合できるため、以下のようなメリットがあります。
- 社外からでも安全に業務システムにアクセス可能(テレワークにも対応)
- ユーザーやデバイス単位で柔軟なアクセス制御ができる
- セキュリティポリシーを全拠点に統一できる
「拠点が複数ある」「社外からの接続が増えている」という企業にとって、SASEはセキュリティ対策とネットワーク最適化の両面で非常に有効な選択肢です。
まとめ
中小企業におけるクラウドサービスの導入は、業務効率化や柔軟な働き方の実現に寄与する一方で、セキュリティやデータ管理の観点から慎重な対応が求められます。公的機関の統計データからも、クラウドサービスの活用が着実に進んでいることが示されています。今後も、信頼性の高いサービスの選定と適切な運用を通じて、クラウドサービスの利点を最大限に活用していきましょう。
著者プロフィール
キヤノンシステムアンドサポート株式会社
インフラソリューション推進部 インフラソリューション推進課
柴嵜 祥子
インフラソリューション推進課の業務内容
パソコン、サーバー、ネットワーク機器、セキュリティ製品、クラウドサービスなどのインフラソリューションを通じて、お客さまの快適な業務環境の構築を支援しています。
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