年収の壁が160万円まで引き上がることにより、どのような影響がありますか?
ニュースで年収の壁が103万円から160万円まで引き上がると聞きました。
企業や従業員にどのような影響があるのでしょうか?
令和7年の税制改正は特にパートや学生アルバイトとして働く従業員にとって影響が大きい内容です。企業は従業員の働き控えを解消する機会になりますので、ポイントを絞ってお答えいたします。
年収の壁を160万円へ引き上げ
「年収の壁」とは所得税の支払いが生じるボーダーラインのことです。
これまでは給与所得控除55万円+基礎控除48万円=103万円でしたが、改正後は給与所得控除65万円+基礎控除95万円=160万円となります。
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ポイント
非課税の範囲内で働くために働き控えをしていた方は、160万円まで非課税で働くことが可能となります。企業にとっても人手不足の解消につながりますので、従業員への情報提供の準備を進めましょう。
扶養控除を受けるための収入要件を123万円に引き上げ
年収103万円を超えないよう働き方を調整していた方は、今回の改正により年収123万円まで働くことが可能となります。
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ポイント
これまでは所得税の支払いが生じるボーダーライン(いわゆる年収の壁)と扶養控除を受けるための収入要件が同じ「103万円」でしたが、改正後は年収の壁は「160万円」、扶養控除を受けるための収入要件は「123万円」となります。この収入要件の違いを混同する恐れがありますので、従業員の働き方の希望を把握し、適切な情報を提供しましょう。
特定親族特別控除の創設
これまでは19歳から22歳までの子の年収が103万円を超えてしまうと63万円の特定扶養控除を受けることができませんでしたが、今回の改正により、年収150万円までは63万円の控除を受けられる「特定親族特別控除」が創設されます。
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ポイント
該当する子の年収が150万円を超えた場合でも188万円までは、控除額は逓減しますが適用を受けることが可能となります。該当する年代(大学生等)の子を持つ従業員に対し、改正内容を説明しましょう。
今回の税制改正により会社はパートや学生アルバイトとして働く従業員の労働時間増加を促進し、人手不足の緩和につなげることが可能となりますが、社会保険の被扶養者となる収入基準額は年間130万円未満のまま変更がありません。この基準額を超えて働く場合は被扶養者から外れ、自身で社会保険(健康保険、国民・厚生年金等)に加入する必要があるため注意が必要です。人事担当者は改正内容を理解し、従業員と今後の働き方についてコミュニケーションを図るようにしましょう。
参考:
著者プロフィール
アクタス社会保険労務士法人
スタッフ約200名、東京と大阪に計4拠点をもつアクタスグループの一員。
アクタス税理士法人、アクタスHRコンサルティング(株)、アクタスITコンサルティング(株)と連携し、中小ベンチャー企業から上場企業まで、顧客のニーズに合わせて、人事労務、税務会計、システム構築支援の各サービスを提供しています。