2025年の崖を乗り越える!
その傾向と対策
2024年5月14日
概要
企業のIT化は1990年台以降急速に普及してきました。当時導入されたコンピューターシステムは企業の基幹を担い、その後拡張を続けて今に至っています。
しかしその過程で、多くのケースで自社の業務に合わせるためにシステムがカスタマイズされ、複雑化されてしまった結果、老朽化のため入れ替えをしたくても多額の投資が必要となり、古いシステムを使い続けるという事態になっています。(これをレガシーシステムと呼びます)
それと同時にこれまでシステムの運用を担っていた技術者が定年を迎え現業を離れていく一方で、若手技術者ではブラックボックス化されたレガシーシステムに手を付けることがでず、ITシステム存続の課題になってきています。その若手技術者ですら人材確保が難しくなってきており、システム運営の不安に拍車をかけているのが現状です。(IT人材不足)
2025年の崖とは、経済産業省が2018年に出した「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」で課題として象徴的にあげられた言葉です。
2025年とした背景は、この年に21年以上使い続けられている基幹システムが6割を超え、特にSAP社のERPの保守サービスがこの年に終わる※ことに由来しているようです。
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2027年末に延長されました。
ブラックボックス化されたレガシーシステムは維持管理費が高額化し、経産省のレポートではIT予算の9割以上がレガシーシステムのメンテナンスに使われているとされています。そのため資金が本来の業務改善につながるポジティブなIT投資に回っていません。
同省の試算では2025年以降に毎年最大12兆円もの経済損失が発生するとなっています。
こういったシステムの入れ替えは、ユーザー部門の反対に合いやすい面もありますが、放置すればするほど事態は深刻化していきます。
経営者のトップダウンでITインフラの整備が必要になってきています。
以下、2025年の崖の詳細な解説をしていきます。
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「2025年の崖」とは?
経済産業省の「DXレポート」による警鐘
2025年の崖とは、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を実現できなかった時に生じる経済損失を表している用語です。経済産業省が出したDXレポート「~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」では、実際のビジネス変革につながっていなければ、DXが実現できないのみでなく2025年以降最大12兆円/年(現在の3倍)の経済損失が生じる可能性があるとされています。
言い換えれば、日本企業はDXを進めることで「2025年の崖」からの転落のリスクを避け、経済的損失を防ぐことができるということです。
多くの経営者は将来の成長・競争力強化のためにDXが必要であることを理解していますが、DXとデジタルの違いを本質的に理解している方はまだまだ少なく、「DX推進のための専門部署が置かれたものの何をすれば良いのか分からない」「実際のビジネスにつながらない」といった声が聞こえてくるのが現状です。
デジタル競争の敗者となる前に、何をどうするべきかを見極め、ビジネスモデルを柔軟・迅速に変化させることが必要といえます。
なぜ2025年なのか?
2025年という年は、多くの日本の企業で使用されている基幹システムが老朽化し、更新が必要となる時期と重なります。技術の進歩が早いITの世界において、古い言語や技術で構築されたシステムは、時代遅れの古い仕組みという意味で「レガシーシステム」と呼ばれますが、既存のシステムがレガシーシステム化していることもあり、これらの更新を怠ると企業活動が大きく阻害される可能性があります。
また、グローバルなデジタル競争が一段と激化する中、2025年までにDXを適切に推進できなければ、日本企業が国際競争力を大幅に失うタイミングであると指摘されています。このように、2025年は日本企業にとって重要な節目であり、DXを推進し、既存のITシステムを更新することが急務とされているのです。
「2025年の崖」が示す問題点
日本企業において「2025年の崖」が示す問題点は下記の3点です。
既存ITシステムの老朽化と「レガシーシステム化」
多くの日本企業が直面している大きな問題として、既存ITシステムの老朽化が挙げられます。
DXレポートによると、2025年には、企業のビジネスの中核を支える基幹系システムのうち、導入から21年以上たつものが6割を超えるとされています。このレガシーシステムを日本企業の8割が抱えており、約7割が自社のデジタル化の足かせになっていると回答している状態となっています。
人材不足
日本企業は、デジタル技術に精通した人材を確保することに苦労しており、特にDXを推進するための専門知識を持った人材の不足が深刻です。この人材不足は、DX推進のペースを遅らせる大きな要因となっており、企業の競争力低下に直結します。
また、これまで企業のシステム管理を担ってきたベテラン担当者が定年を迎えてIT人材が不足する中、レガシーシステムの保守・運用に人材を割かれており、貴重な「IT人材資源」の“浪費”にもつながっています。
経済的損失の可能性
経済産業省の指摘するとおり、「2025年の崖」によって日本企業がDXを進めない場合、毎年最大12兆円の経済損失が発生する可能性があります。これは、技術の進歩やグローバルな競争の激化に対応できずに市場の変化に遅れを取ることで生じる損失です。経済全体に対する影響も非常に大きく、日本の産業競争力の低下につながる恐れがあります。DX推進は単なる技術革新ではなく、国の経済政策としても重要な位置を占めているのです。
対策としてのDX(デジタルトランスフォーメーション)
「2025年の崖」に直面している日本企業にとって、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進は避けて通れない課題です。DX推進の意義は、ただ技術を導入することだけではなく、ビジネスモデルや企業文化そのものを変革し、新たな価値を創出することにあります。
また、経済産業省が指摘するように、DXを進めることで、2025年以降予測される経済損失を回避し、日本経済全体の持続可能な成長に寄与することも期待されています。
企業各自における対策
企業がDXを推進するにあたり、まず重要なのは経営層の明確な意思決定とコミットメントです。経営戦略としてDXを位置づけ、全社的な取り組みにすることが成功の鍵を握ります。
先ほども述べた通り、既存のITシステムの見直しや刷新も不可欠であり、早急にレガシーシステムの課題に対処する必要があります。さらに、専門の人材が必要不可欠です。そのため、社内での人材育成はもちろん、外部からの積極的な人材確保も重要となります。こうした取り組みを通じ、企業は「2025年の崖」を克服し、持続可能な成長を目指すべきです。
国策としての対策
日本政府も「2025年の崖」を非常に深刻に捉えており、DX推進を国策として位置づけています。経済産業省は、DXを推進する企業を「攻めのIT経営銘柄」として認定し、企業の積極的なIT利活用を促しています。また、政府はDX推進のためのガイドラインを策定し、企業のDX推進を支援しています。このほか、DX人材の育成や確保のための教育プログラムの提供なども行われており、企業の取り組みを多方面から支援しています。日本全体でDXを加速させ、「2025年の崖」を乗り越えるための施策が積極的に進められています。
「2025年の崖」を乗り越えるために
「2025年の崖」を乗り越え、日本企業が持続可能な成長を遂げるためには、具体的かつ実行可能な対策を講じることが不可欠です。企業、政府、そして社会全体が共同で取り組む必要があります。DXの推進に向けた対応策についてDXレポートを元に5つご紹介します。
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「見える化」」指標、中立的な診断スキームの構築
経営者自らが、ITシステムの現状と問題点を把握し、適切にガバナンスできるよう、
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「見える化」指標の策定
- 技術的負債の度合い、データ活用のしやすさ等の情報資産の現状
- 既存システム刷新のための体制や実行プロセスの現状
- 中立的で簡易な診断スキームの構築
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「見える化」指標の策定
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「DX推進システムガイドライン」の策定
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既存システムの刷新や新たなデジタル技術を活用するに当たっての「体制のあり方」、「実行プロセス」等を提示
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経営者、取締役会、株主等のチェック・リストとして活用
→ コーポレートガバナンス(企業統治)のガイダンスや「攻めのIT経営銘柄」とも連動
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既存システムの刷新や新たなデジタル技術を活用するに当たっての「体制のあり方」、「実行プロセス」等を提示
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DX実現に向けたITシステム構築におけるコスト・リスク低減のための対応策
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刷新後のシステムが実現すべきゴールイメージ(変化に迅速に追従できるシステムに)の共有(ガイドラインでチェック)
- 不要なシステムは廃棄し、刷新前に軽量化(ガイドラインでチェック)
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刷新におけるマイクロサービス等の活用を実証(細分化により大規模・長期に伴うリスクを回避)
- 協調領域における共通プラットフォームの構築(割り勘効果)(実証)
- コネクテッド・インダストリーズ税制(2020年度まで)
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刷新後のシステムが実現すべきゴールイメージ(変化に迅速に追従できるシステムに)の共有(ガイドラインでチェック)
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ユーザー企業・ベンダー企業間の新たな関係
- システム再構築やアジャイル開発に適した契約ガイドラインの見直し
- 技術研究組合の活用検討(アプリケーション提供型への活用など)
- モデル契約にトラブル後の対応として米国預託証券(ADR)の活用を促進
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DX人材の育成・確保
- 既存システムの維持・保守業務から解放し、DX分野に人材シフト
- アジャイル開発の実践による事業部門人材のIT人材化
- スキル標準、講座認定制度による人材育成
まとめ
これまで見て来たように、DXは業種・業界問わず全ての企業が取り組むべき課題です。
しかしシステムの刷新には利用者側からからの反対も多く、IT担当者レベルではスムーズに進めていくことが難しいのが現状です。
これを回避するには経営者が2025年の崖を経営課題として認識しで自ら先頭に立ってシステム刷新を進めていく必要があります。
IT保守にかかっている大きな経費を戦略的なIT投資に変えることで、より効率的な経営を行うことが可能になります。そのためには自社のIT人材育成を行うと同時に、外部のリソースを活用することにより、変化に追従できるITシステムの構築が可能になります。
必要性に対する認識は徐々に高まっておりますが、取り組みは緒に就いたばかりで依然として具体的な方向性を模索している段階かと思います。
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