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IT導入補助金:2025年の採択率の動向と審査の条件

  • 会社の処方箋

2025年8月19日

IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者がITツール導入による生産性向上を目指すために設けられた国の支援制度です。
採択数の割合は年によって変動しており、申請の準備不足や内容の詰めが甘い場合は、不採択になる可能性もあります。
本記事では、過去の採択率の傾向や不採択になりがちなポイント、採択率を上げるための具体的な対策を解説します。
またIT導入補助金の代わりになりうる助成金についてもご紹介します。

IT導入補助金の採択率の推移

2021年から2024年までの動向

2021年頃からIT導入補助金への注目度は高まり、年を追うごとに全体の交付決定件数は増加傾向にあります。2024年に関しては、通常枠で約25,000件以上もの申請が行われ、16,000件を超える採択につながっています。
一方で申請要件が随時変更され、年度や申請枠ごとに審査基準が細分化されることも増えました。そのため、申請内容が要件を満たしていないケースや、審査の際に計画の緻密さが評価されず不採択となるケースも一定数見られます。

2024年通常枠申請数および交付決定数

締切 申請数 交付決定数
1次 1,576 1,189
2次 2,335 1,760
3次 2,912 2,206
4次 3,286 2,521
5次 3,577 2,762
6次 5,881 4,648
7次 5,573 1,454
合計 25,140 16,540

出典:IT導入補助金2025資料を基に筆者が作成

2025年の採択率

2025年は、インボイス対応や電子取引対応など、新たに求められるIT整備のニーズが高まり、支援事業者の仕組みが整っている「IT導入補助金」は申請件数が増加し続ける可能性が高いと予想されます。
申請者数の増加に伴い、相対的に競争率も上昇することが予想され、採択されるためには、より精度の高い申請内容や戦略的な準備が求められるようになるでしょう。
また、国としても限られた予算の中で効率的な支援を提供するために、審査基準の一層の厳格化が考えられる時期でもあります。
実際に、2025年上半期の採択状況を見ても、前年と比較して審査が厳しくなっていると考えられます。このような状況下では、申請者側も単なるITツールの導入にとどまらず、自社の業務課題や成長戦略と紐づけた導入目的を明確にし、補助金の趣旨に沿った申請書の作成がますます重要になります。

図:IT導入補助金(通常枠)採択率の推移2022年~2025年2次

IT導入補助金の審査で落とされやすいポイント

事業計画の内容が具体的ではない

不採択の理由として多いのが、「補助金を使ってどのような成果を出したいのか」が十分に具体化されていない計画で申請してしまうパターンです。

必要な要素 落とされやすいポイント
IT導入による効果や将来の展望 記載する内容が曖昧であったり、なぜそのITツールが必要なのか論理的に説明できていないと審査員からの評価が下がるとされています。
導入後の効果測定方法や実行スケジュール 国は企業の将来性を期待しており、審査員は「このIT投資が本当に事業成長につながるのか」を厳しくチェックします。
経営者の思いが伝わる申請内容にすると共に、定量的な市場調査や数値目標によって裏付けを取ることが欠かせません。

対象外経費で申請を行ってしまっている

IT導入補助金には明確に対象外とされる経費が定められています。例えば、ハードウエア単体の購入費が対象外になるケースや、業務と直接関係のないソフトウエア開発費などは補助を受けられません。

書類に不備があり、減点対象となる

対象経費や書類が要件を満たしていなかったり、誤字脱字があると減点される場合があります。書類の押印や提出期限の遅れなど、基本的な要件を疎かにしているだけで不採択リスクは一気に高まります。

採択を受けづらい事業者さま

以下の条件に当てはまる事業者さまは採択率が低い傾向にあります。

  • 財団法人さま
  • 社団法人さま、社会福祉法人さま

    賃上げ・利益での生産性向上が一般法人より難しいことが影響する可能性があります。

  • 減点ありの事業者さま

    過年度採択実績あり等減点要素があると、採択が難しくなる傾向にあります。IT導入補助金2023・2024で交付決定を受けたソフトウエアのプロセスと、今回導入するソフトウエアが有するプロセスが重複する事業者は減点対象となり、プロセスが完全一致する場合は不採択となる要件が盛り込まれました。

IT導入補助金の採択率を上げるコツ

採択率を上げるためには、補助金の利用目的を明確にし、適切なITツールの導入計画を説得力ある形で示すことです。また、申請のタイミングや加点項目の取得でも採択率が上がる可能性があります。
以下で、採択率を上げるためのポイントをご紹介します。

労働環境改善への意思表示を行う

ITシステム導入による生産性向上の結果、従業員の待遇をどのように改善していくのか、その見込みと計画を説明することがポイントです。数字を示すと説得力が上がります。
例えば賃上げを行う際に、人件費の負担をどう支えるかは経営の大きな課題ですが、国としては労働環境改善に積極的な企業を支援したい意図があります。こうした流れを的確に読み取り、審査員にアピールできるように準備しておくと採択率が上がります。

事業課題とITツールの関係を明確化する

「何が課題で、導入するITツールでどう改善されるか」を具体的に記載する必要があります。
定量的な目標(例:生産性20%向上、コスト15%削減)を盛り込むと説得力が増します。反面、実現が難しいと思われる計画値は印象が悪くなり不採択のリスクが高まりますので、具体的且つ現実味のある計画性も問われます。

課題にマッチしたツールの選定をする

お持ちの課題にマッチしたツールの選定も採択を受ける上で非常に重要です。同業他社との比較の中で、自社の課題を明確にし、課題克服へ最適なツールの選択をすることで採択率が上がります。

採択されやすいプロジェクトの特徴を意識する

業務改善に直結し、費用対効果が高く、社会的意義のある取り組みが評価されやすい傾向にあります。特に近年は、人材確保労働力不足対策につながるような導入が高い評価を受けやすいといわれています。

加点項目を積極的に活用する

IT導入補助金の公募要領には、特定の取り組みに対して加点項目が設けられています。例えば、特定の業種支援や地域活性化への寄与、環境対策の推進などは評価されやすいポイントです。
こうした加点項目を可能な限り満たすことで、審査時に僅差で合否が分かれる場面でも有利になることがあります。実際の加点項目は毎年更新される可能性があるため、常に最新情報をチェックしましょう。

事前準備を徹底し、早期申請を心がける

公募開始直後は予算に余裕があり、採択率が高い傾向があります。特に第1回・第2回の公募は狙い目です。また早期申請を行うためには、 gBizIDプライムの取得など、事前準備を徹底することが必要です。

専門家やIT導入支援事業者と連携する

経験豊富な支援事業者に相談することで、申請書の精度や加点項目の活用が可能になります。
キヤノンS&Sでは、経験豊富な支援者がお客さまと密に連携して、アドバイスや申請・報告作業に関して分かりやすくご説明します。

まとめ

IT導入補助金の採択を勝ち取るには、制度や最新の公募要領に沿った戦略的な申請が不可欠です。
さらに補助金だけではなく、他の制度を利用するという選択肢もあります。助成制度をうまく活用することで、導入コストの削減だけでなく、長期的な事業成長にもつなげることが可能です。

キヤノンS&Sの取り組み

キヤノンS&SではIT導入補助金をメインに補助金・助成金全体の活用をお手伝いさせて頂いております。当社が支援したIT導入補助金の採択率は98.6%と非常に高く、多くのお客さまから信頼をいただいております。ご要望の補助金・助成金に関して、リモートによるご説明会や申請自体のお手伝い可能な専門家をご紹介することも可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。
是非ともご活用頂ければ幸いです。

  • 2024年度IT導入補助金インボイス枠(インボイス対応類型)11次締切までの実績

その他助成金の紹介

ここまでIT導入補助金の採択のポイントを解説してきましたが、申請数の増加や審査の厳格化に伴い、採択率が下がっていることも事実です。
そこでIT導入補助金の活用が難しい場合には、各種助成金の活用もおすすめです。同じ事業でなければ、制度を併用することも可能です。
以下、選択肢となりうる助成金についてご紹介します。

業務改善助成金

事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を引き上げ、設備投資等を行った中小企業・小規模事業者等に、その費用の一部を助成する制度です。

働き方改革推進支援助成金

労働時間の縮減や年次有給休暇の促進に向けた環境整備等に取り組む中小企業事業主に対して、
その実施に要した費用の一部を助成する制度です。

参考:

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