インボイス制度の負担軽減措置について
アクタス税理士法人
2023年5月23日
令和5年度税制改正では、円滑な制度の実施に向け、インボイス発行事業者となる免税事業者の税負担の軽減と少額取引に係る事業者の事務負担の軽減という大きく2つの観点から措置が講じられています。今回はこれらの負担軽減措置についてご紹介いたします。
インボイス制度に係る負担軽減措置
インボイス発行事業者となる免税事業者の税負担の軽減(2割特例)
免税事業者が、インボイス制度導入に伴い課税事業者となることを選択した場合の負担軽減を図るため、消費税の納付税額を売上に係る消費税の2割に軽減する激変緩和措置です。なお、事前の届け出は必要なく、申告時に選択適用することができ、申告書への付記のみで適用が受けられます。
適用対象者 |
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対象期間 | 令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間 |
メリット | 業種にかかわらず売上税額のみから消費税額を計算できるため、簡易課税制度と比べても事務負担が減り、また免税事業者が課税事業者となった場合であっても、上記期間は、新たに仕入れに係る帳簿やインボイスの保存・管理手続きを行う必要がありません。 |
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少額取引にかかる事業者の事務負担軽減
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1.一定規模以下の事業者の少額特例
次の事業者が行う税込1万円未満の少額な課税仕入れについて、インボイスの保存がなくとも帳簿のみで仕入税額控除を可能とするものです。なお、この措置は令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて、適用されます。
- 基準期間(前々事業年度)における課税売上高が1億円以下である事業者
- 特定期間(前事業年度開始の日以後6カ月の期間)における課税売上高が5,000万円以下である事業者
なお、令和11年10月1日以後に行う課税仕入れについては、事業年度(課税期間)の途中であっても、この少額特例の適用はありませんのでご注意ください。
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2.少額な返還インボイスの交付義務免除
税込1万円未満の値引きや返品等については、返還インボイスの交付を不要とするものです。なお、売り手が負担する振込手数料相当額について売上値引きとして処理している場合には、返還インボイスの交付義務免除の対象となります。
Q&A
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以下は財務省資料「インボイス制度の負担軽減措置(案)のよくある質問とその回答」より引用し一部改変。
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Q1一度「2割特例」を選択した場合、その後の適用対象期間は継続適用となりますか。
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A1
消費税の申告を行うたびに2割特例の適用を受けるかどうかの選択が可能です。ただし、申告する課税期間が2割特例の適用対象となるか否かの確認が必要となります。基準期間における課税売上高が1,000万円を超える場合には、2割特例は適用できないこととなります。
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Q2インボイス制度の「2割特例」について、免税事業者が登録申請書とともに簡易課税制度選択届出書も提出した場合、適用できますか。
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A2
2割特例は、本則課税と簡易課税のいずれを選択している場合でも適用が可能です。そのため、簡易課税制度の適用を受けるための届出書を提出していたとしても、申告の際に2割特例を選択することは可能です(簡易課税制度選択届出書を取り下げる必要はありません)。
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Q3免税事業者である個人事業者です。令和4年12月に課税事業者選択届出書と登録申請書を提出し令和5年1月から課税事業者、10月から登録を受けることとなりましたが2割特例は適用できますか。
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A3
課税事業者選択届出書を提出していることにより、インボイス制度の施行前から課税事業者となる令和5年10月1日の属する課税期間については、2割特例の適用を受けられないこととなります。
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Q4「少額特例」について、1万円を判定する取引単位を教えてください。例えば、9,000円の商品と8,000円の商品を同時に購入した場合(合計17,000円)は対象になりますか。
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A4
少額特例の判定単位は、課税仕入れに係る1商品ごとの金額により判定するのではなく、一回の取引の合計額が1万円未満であるかどうかにより判定することとなります。ご質問は合計17,000円の取引となりますので、少額特例の対象とはなりません。
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Q5「少額特例」について、月額200,000円(稼働日21日)で個人事業者に外注を行っている場合、稼働日で案分すると1万円未満となりますが、対象になりますか。
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A5
少額特例の判定単位は、一回の取引の合計額が1万円未満であるかどうかにより判定することとなるため、役務の提供である場合には、通常、約した役務の取引金額によることとなります。月単位での取引(200,000円の取引)と考えられますので、少額特例の対象とはなりません。
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Q6売り手が負担する振込手数料を支払手数料として処理する場合はどうなりますか。
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A6
売り手が負担する振込手数料を支払手数料として処理、すなわち課税仕入れとしている場合には、そもそも返還インボイスの交付は必要ありません。
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Q7返還インボイスの交付義務免除について、売り手負担の振込手数料を会計上は支払手数料として処理した場合でも、消費税法上は対価の返還等とできますか。
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A7
対価の返還等として取り扱うことができます。なお、消費税法上、売上値引きとする場合、対価の返還等の元となった適用税率(判然としない場合には合理的に区分)による必要があるほか、帳簿に対価の返還等に係る事項(※)を記載し、保存することが必要となります。
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帳簿上、支払手数料として処理した場合、その支払手数料を対価の返還等として取り扱うことが要件設定やコード表、消費税申告の際に作成する帳票等により明らかであれば問題ありません。
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令和5年10月1日からついに消費税の仕入税額控除の方式としてインボイス制度が開始されます。本コラムが、円滑な制度実施の一助となれば幸いです。
著者プロフィール
アクタス税理士法人
税理士、公認会計士、社会保険労務士など100名を超えるプロフェッショナルが中心となり、クライアントのライフステージに応じたあらゆるニーズに対応したサービスを提供しています。
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