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令和5年度税制改正
アクタス税理士法人

  • 会社の処方箋

2023年1月25日

12月16日に「令和5年度税制改正大綱」が公表されました。今回の改正では、若年層の資産形成・資産移転を図るためのNISA拡充、生前贈与制度の見直し、「1億円の壁」と言われる超富裕層への課税強化といった、格差等への対応をする改正項目が目立ちます。防衛費の財源確保は、法人税、所得税、たばこ税の増税で対応となりますが、施行時期の明記は避けられました。
また、インボイス制度や電子帳簿保存法に関しても見直しがあります。

目次

  • 1.
    消費課税
    • 1-1.
      適格請求書等保存方式(インボイス制度)に関する見直し
  • 2.
    納税環境整備その他
    • 2-1.
      電子帳簿等保存制度の見直し
    • 2-2.
      その他
  • 3.
    法人課税
    • 3-1.
      研究開発税制
    • 3-2.
      オープンイノベーション税制
    • 3-3.
      暗号資産の期末時価評価の見直し
    • 3-4.
      主要規定の延長措置
  • 4.
    個人所得課税
  • 5.
    資産課税

消費課税

適格請求書等保存方式(インボイス制度)に関する見直し

  • 適格請求書発行事業者となる小規模事業者の仕入税額控除の特例

    適用期日等:令和5年10月1日から令和8年9月30日まで(3年間)

    免税事業者が適格請求書発行事業者となったこと又は課税事業者選択届出書を提出したことで課税事業者になる場合には、その課税期間における課税標準額に対する消費税額から控除する金額を、当該課税標準額に対する消費税額に8割を乗じた額とすることにより、納付税額を当該課税標準額に対する消費税額の2割(2割特例)とすることができる。

    • 2割特例の選択は、申告書への付記のみで適用が受けられる。
  • 少額取引に係る事務負担の軽減

    適用期日等:令和5年10月1日から令和11年9月30日まで

    基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5,000万円以下である事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存による仕入税額控除を認める経過措置を講ずる。

  • 適格返還請求書の交付に係る事務負担の軽減

    適用期日等:令和5年10月1日から

    売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合には、その適格返還請求書の交付義務を免除する。

  • 適格請求書発行事業者への登録の手続きの柔軟化

    適用期日等:令和5年4月1日から

    • 1.
      令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けようとする事業者が、本来の期限である3月31日後に提出する登録申請書に記載する「困難な事情」については、記載が不要とされる
    • 2.
      免税事業者が適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し、課税期間の初日から登録を受けようとする場合には、当該課税期間の初日から起算して15日前の日(現行:当該課税期間の初日の前日から起算して1月前の日)までに登録申請書を提出しなければならないこととされる

インボイス制度の詳細については、下記をご参照ください。

キヤノンS&S「会社の処方箋」

納税環境整備その他

電子帳簿等保存制度の見直し

適用期日等:令和6年1月1日から施行

  • 優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置の対象となる電子帳簿の範囲が明確化される
  • スキャナー保存制度について、スキャナー読込された資料の解像度、階調及び大きさに関する情報の保存要件と、記録事項の入力者等に関する情報の確認要件を廃止し、相互関連性要件を重要書類に限定
  • 電子取引データ保存の見直し
  • 1.
    現行の宥恕(ゆうじょ)措置は、令和5年12月31日の期限をもって廃止し、令和6年1月1日からは新しい猶予措置に改組される

    次の場合には保存要件にかかわらず電子データでの保存が可能となる

    • 納税地等の所轄税務署長が、保存要件による保存ができなかったことについて、「相当の理由」があると認める
    • 質問検査権に基づく電子データのダウンロードの求め及び出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る)の提示又は提出の求めに応じる
  • 2.
    質問検査権に基づく電子データのダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には検索要件のすべてを不要とする措置の対象者の拡大
    • 判定期間の売上高が5,000万円以下(現行:1,000万円以下)である保存義務者
    • 出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力され、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものに限る)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている保存義務者

その他

適用期日等:令和6年以降の適切な時期

  • 無申告加算税の割合の引き上げ
  • ダイレクト納付の利便性の向上
  • スマートフォン用電子証明書を利用したe-Taxの利便性の向上
  • 防衛費の財源確保のための措置

防衛力の抜本的な強化を行うに当たり、税制部分については、令和9年度に向けて複数年かけて段階的に実施する。令和9年度において、1兆円強を確保する。
具体的には法人税、所得税、たばこ税について、以下の措置を講ずる。

  • 1.
    法人税

    法人税額に対し税率4〜4.5%の新たな付加税を課す。中小法人に配慮する観点から、課税標準となる法人税額から500万円を控除する

  • 2.
    所得税

    所得税額に対し、当分の間、税率1%の新たな付加税を課す。現行の復興特別所得税の税率を1%引き下げるとともに、課税期間を延長する

  • 3.
    たばこ税

    3円/1本相当の引き上げを、段階的に実施する

法人課税

法人課税は、オープンイノベーション税制、研究開発税制の見直しを中心に、基本的には既存措置の延長・見直しが多い内容となっています。

研究開発税制(延長・拡充):減税・増税

適用期日等:令和5年4月1日~令和8年3月31日までの間に開始する事業年度

  • 研究開発税制の改組
    • 1.
      一般型と中小企業技術基盤強化税制において、試験研究費の増加割合に応じた税額控除率の見直し
    • 2.
      一般型と中小企業技術基盤強化税制における控除上限について、コロナ特例5%上乗せを廃止
    • 3.
      一般型の控除上限について、試験研究費割合の増減の変動に応じて、控除上限も変動させる仕組みを導入
    • 4.
      中小企業技術基盤強化税制における控除上限について、10%上乗せ要件の強化
    • 5.
      オープンイノベーション型について対象範囲の追加等
    • 6.
      試験研究費の範囲の見直し

      (性能向上を目的としない「設計・試作」は、対象外)
      (サービス開発の「データ収集」において既存データ活用も対象に)

オープンイノベーション税制(拡充):減税

適用期日等:大綱では適用期日等の具体的な明記なし

  • 制度概要

    スタートアップ企業とのオープンイノベーションに向け、国内の事業会社等が、スタートアップ企業の新規発行株式を一定額以上取得する場合、株式の取得価額の25%を所得控除する。

  • 範囲拡大と要件見直し
    • 1.
      既存の発行株式の購入による取得も対象とする
      (議決権の50%超、投資金額5億円以上、上限200億円)
    • 2.
      取得から5年以内に一定の成長要件を満たした場合は減税メリットが継続する
    • 3.
      現金による出資をした特定株式の取得価額の上限を50億円
      (改正前:100億円)に引き下げる

暗号資産の期末時価評価の見直し

適用期日等:大綱では適用期日等の具体的な明記なし

  • 期末における時価評価の対象外

    自己が発行した暗号資産でその発行の時から継続して保有している場合等は、期末時価評価は行わない。

主要規定の延長措置

適用期日等:令和7年3月31日まで2年延長

  • 中小企業者等の法人税の軽減税率(所得金額年800万円まで15%)の特例制度
  • 中小企業投資促進税制

    (一定の設備投資に対し30%特別償却又は7%税額控除)

    • 設備除外:コインランドリー業(主要な事業であるものを除く)の用に供する機械装置でその管理のおおむね全部をほかの者に委託するもの。
  • 中小企業経営強化税制

    (経営力向上計画による設備投資に対し即時償却又は10%税額控除)

    • 設備除外:コインランドリー業又は暗号資産マイニング業(主要な事業であるものを除く)の用に供する資産でその管理のおおむね全部をほかの者に委託するもの。
  • DX投資促進税制(要件の見直し)
  • 特定資産の買換え(内容の見直し)※令和8年3月31日まで3年延長

個人所得課税

個人所得課税の改正ではNISAの拡充・恒久化が主要な見直しの内容になっています。

資産課税

資産課税においては、令和3年度税制改正大綱から検討課題に掲げられていた相続税と贈与税を一体に捉えて課税する制度について、相続時精算課税制度と暦年課税制度の両方で改正がついに行われることになりました。

著者プロフィール

アクタス税理士法人
税理士、公認会計士、社会保険労務士など100名を超えるプロフェッショナルが中心となり、クライアントのライフステージに応じたあらゆるニーズに対応したサービスを提供しています。

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