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育児・介護休業法が2025年に大幅改正。改正内容と今から備えておくべきこととは?アクタス社会保険労務士法人

  • 会社の処方箋

2024年10月28日

育児・介護休業法が改正され、2025年4月および10月に施行されます。
この改正により、これまでよりも労働者本人の個別の事情や希望に応じて、会社は配慮を求められるようになります。本コラムでは大きく分かれる「育児に関する改正」と、「介護に関する改正」についてご紹介します。

育児・介護休業法の改正のうち、育児に関するものは下記表1、介護に関するものは表2の通りです。
「育児に関する改正」から見ていきましょう。

育児・介護休業法のうち、「育児」に関わる改正

表1 育児・介護休業法の「育児」に関する改正

項目 No 概要 施行日
制度変更 所定外労働(残業免除)の対象となる労働者の範囲を、小学校就学前の子を養育する労働者に拡大(※現行は3歳になるまでの子)する。 2025年4月
子の看護休暇を子の行事参加等の場合も取得可能とし、対象となる子の範囲を小学校3年生まで拡大(※現行は小学校就学前)するとともに、勤続6か月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みを廃止する。
3歳になるまでの子を養育する労働者に関し事業主が講ずる措置(努力義務)の内容に、テレワークを追加する。
育児休業の取得状況の公表義務の対象を、常時雇用する労働者数が300人超の事業主に拡大する。(※現行1000人超)
両親ともに育児休業を取得した場合に支給する出生後休業支援給付および育児期に時短勤務を行った場合に支給する育児時短就業給付を創設する。
3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に関し、事業主が職場のニーズを把握した上で「柔軟な働き方を実現するための措置」を講じ、労働者が選択して利用できるようにすることを義務付ける。 2025年10月
面談等強化 上記の「柔軟な働き方を実現するための措置」の個別の周知・意向確認を義務付ける
妊娠・出産の申し出時や、子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向の聴取・配慮を事業主に義務付ける。

表中、①から⑤については、今時点においては「そういうもの」として、行政から詳細のリーフレット等の公表を待ちつつ必要な準備を進めていきましょう。他方、⑥から⑧については、「対応に時間を要する」という意味で、実務上注意が必要です。これらは施行日も2025年4月からではなく、半年遅れの2025年10月から施行となっています。

⑥の概要から順に解説します。

⑥3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に関し、事業主が職場のニーズを把握した上で「柔軟な働き方を実現するための措置」を講じ、労働者が選択して利用できるようにすることを義務付ける。

「柔軟な働き方を実現するための措置」ですが、具体的には、3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者を対象に、

  • 始業時刻等の変更
  • テレワーク等(月10日以上)
  • 保育施設の設置運営等
  • 短時間勤務制度
  • 新たな休暇の付与(年10日以上)

の5つの中から、事業主は過半数組合や労働者代表の意見を聴いたうえで、少なくとも2つを選択して実施する必要があります。労働者は、事業主が選択した措置の中から1つを選択して利用することができます。ただし、日々雇用される者は対象から除外でき、労使協定を締結すれば継続雇用期間が1年に満たない者、または週所定労働日が2日以下の者も対象外とすることができます。

⑦上記の「柔軟な働き方を実現するための措置」の個別の周知・意向確認を義務付ける。

上記⑥の「柔軟な働き方を実現するための措置」を講じるにあたり、「個別の周知・意向確認」を義務づけています。
具体的には、子の3歳の誕生日の1カ月前から起算して1年間の間に、事業主が選択した2つ以上の措置の内容等を周知すること、およびこれらの制度の申し出の意向を確認することが義務づけられます。

⑧妊娠・出産の申し出時や、子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向の聴取・配慮を事業主に義務付ける。

妊娠・出産の申し出のとき、および⑦の「個別の周知・意向確認」をするときに、仕事と育児の両立に関する労働者ごとの個別の意向(つまり、いま困っていることはないか?)を聴取すること、および聴取した意向に配慮すること(意向通りの措置を講じる義務はない)も義務付けられます。

⑦および⑧で求められることを図にしますと以下の通りになります。

図:妊娠・出産の申し出時や、子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向の聴取・配慮を事業主に義務付ける。
  • 個別の意向の聴取とは、具体的には、始業および終業の時刻に係ることと、就業の場所に係ること、子の養育に関する制度や利用期間に係ることなどについての困り事をヒアリングすることをいいます。

育児・介護休業法のうち、「介護」に関わる改正

表2 育児・介護休業法の「介護」に関する改正

項目 No 概要 施行日
制度変更 介護休暇について、勤続6か月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みを廃止する。 2025年4月
家族を介護する労働者に関し事業主が講ずる措置(努力義務)の内容に、テレワークを追加する。
面談等強化 労働者が家族の介護に直面した旨を申し出た時に、両立支援制度等について個別の周知・意向確認を行うことを事業主に義務付ける。
介護に直面する前の早い段階(40歳等)の従業員に介護両立支援制度等の情報提供を企業が行う。
介護休業等の申し出が円滑に行われるよう、雇用環境の整備(労働者への研修や、相談体制の整備等の中からいずれかを選択)を事業主に義務付ける。

表中、①および②については、今時点においては「そういうもの」として、行政のリーフレット等の公表を待ち準備を進めていきましょう。他方、③から⑤については、「対応に時間を要する」という意味で、実務上注意が必要です。

③の概要から順に解説します。

③労働者が家族の介護に直面した旨を申し出た時に、両立支援制度等について個別の周知・意向確認を行うことを事業主に義務付ける。

労働者が家族に介護が必要な状況となったことを申し出たら、会社はその労働者に対し、個別に介護休業制度等を周知すること、併せて、取得意向を確認しなければなりません。放置はNGです。

具体的な周知内容は、

  • 介護休業・介護休暇に関する制度
  • 所定外労働の制限・時間外労働の制限・深夜業の制限の制度
  • 介護のための所定労働時間の短縮等の措置
  • 休業、制度等利用の申し出先
  • 介護休業給付金に関すること

の5つとされています。また、個別周知・意向確認方法ですが、

  • 面談(オンライン可)
  • 書面交付
  • 電子メール
  • FAX(ただし、メール・FAXは労働者が希望した場合のみ)

のいずれかで行うこととされています。

④介護に直面する前の早い段階(40歳等)の従業員に介護両立支援制度等の情報提供を企業が行う。

労働者が40歳に達したときに、各労働者に対して、介護休業や介護両立支援制度に関する情報提供をすることが義務付けられます。

なお、「40歳に達したとき」とは、

  • 労働者が40歳に達した日の属する年度の初日から末日まで
  • 労働者が40歳に達した日の翌日から起算して1年間

上記のいずれかの期間をいいます。情報提供の内容と提供方法については、上記③と基本的に同じです。

⑤介護休業等の申し出が円滑に行われるよう、雇用環境の整備(労働者への研修や、相談体制の整備等の中からいずれかを選択)を事業主に義務付ける。

上記③や④のほか、会社全体として介護休業等の申し出が円滑に行われるように雇用環境の整備することが義務付けられます。

具体的には、

  • 介護に関する両立支援制度に関する研修の実施
  • 介護に関する両立支援制度に関する相談体制の整備(相談窓口の設置)
  • 介護に関する両立支援制度の利用事例の収集・提供
  • 介護に関する両立支援制度および両立支援制度の利用促進に関する方針の周知

これらの中から一つを実施しなければならないとされています。

表2の①から⑤は全て、2025年4月から施行になりますが、中でも③から⑤は、介護休業等の制度についても、初めて周知ならびに意向確認、および会社全体への制度利用に関する啓蒙活動が義務付けられることになるため、注意が必要です。

実務上のポイント

実務対応としては、全体として施行日前までに規定や協定書の改定が必要になりますが、特に、表1(育児に関する改正)の⑥から⑧、および表2(介護に関する改正)の③から⑤にあっては、「新たな制度の創設」および「面談等の強化」が求められていることから、社内の業務手順や書式などの整備など、実務対応に一定の時間を要すると思います。よって、今から改正内容に関する理解を深めておくことが重要であるといえます。
本コラム作成(2024年10月)時点では、下記リンクの通り厚生労働省から詳細のリーフレットや書式例等は公表されていませんが、まずは改正の全体像を理解しておき、公表され次第、速やかに公表内容に沿った実務的な作業をすすめられるようにしておきましょう。

著者プロフィール

アクタス社会保険労務士法人
スタッフ約200名、東京と大阪に計4拠点をもつアクタスグループの一員。
アクタス税理士法人、アクタスHRコンサルティング(株)、アクタスITコンサルティング(株)と連携し、中小ベンチャー企業から上場企業まで、顧客のニーズに合わせて、人事労務、税務会計、システム構築支援の各サービスを提供しています。

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