令和8年4月から徴収が始まる「子ども・子育て支援金」とは?
2025年12月16日
令和8年4月から「子ども・子育て支援金」の徴収・納付がスタートします。
SNSでは「独身税」などと呼ばれることもあるこの制度ですが、制度が始まるときに気になるのは、”自分にとって何が変わるのか”という点です。負担が増えるのか、それとも何か恩恵があるのかこのあたりを整理しておくことが大切です。
本コラムでは、制度の概要から私たちの暮らしと会社の実務にどんな影響があるのかまで解説します。「名前は聞いたことあるけれど、詳しくは知らない」という方も、ぜひ参考にしてください。
子ども・子育て支援金とは
子どもや子育て世帯を社会全体で支えるために作られた仕組みです。
令和5年12月に決まった「こども未来戦略」を土台に、総額3.6兆円規模で児童手当や育休の支援、保育の柔軟化などを広げていくとされています。支援金は段階的に導入され、医療保険料・介護保険料と一緒に徴収されるのが仕組みのポイントです。
こうした大きな取り組みを進めるためには、若い世代が「将来に希望を持てる社会」をつくるための安定した財源が欠かせません。そこで、既存の予算を最大限活用しながら令和8年度から10年度にかけて段階的に制度を整えていく計画です。
この支援金は、導入後も国全体で見た社会保険料の負担割合(=社会保障負担率※)が上がらないように調整されるため、「負担がどんどん増えるのでは?」という心配は避けられる仕組みになっています。
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※
社会保障負担率:国民所得に対する社会保険料の割合のこと
徴収方法と負担額
徴収方法
支援金は、全国健康保険協会(協会けんぽ)や健康保険組合などの医療保険者が、医療保険料や介護保険料と一緒に徴収します。つまり、普段の保険料に上乗せされる形です。

負担額
負担額は、加入している医療保険や所得によって異なります。
こども家庭庁の試算によると、令和10年度の年収別の支援金の目安(月額)は次の通りです。
| 年収 | 負担額 |
|---|---|
| 200万円 | 350円 |
| 400万円 | 650円 |
| 600万円 | 1,000円 |
| 800万円 | 1,350円 |
| 1,000万円 | 1,650円 |
なぜ今、この制度が必要なのか
結婚や出産を考える若い世代の人口は、2030年代に入ると一気に減っていくと予測されています。このままでは働く人が減り、社会の仕組みそのものが揺らぎかねません。
「今こそ、子育てを応援する仕組みを強化しなければならない!」それがこの制度の背景です。政府はこうした危機感から、令和5年12月に「こども未来戦略」を打ち出しました。その柱となるのが、総額3.6兆円規模の『こども・子育て支援加速化プラン』です。
約7割は既存予算の見直しで賄い、残りの約3割を新たに支援金として集める設計です。
子ども・子育て支援金は何に使われるか?
この制度で集めたお金は、子育て世代を経済的に支えるために使われます。
総額3.6兆円を、6つの制度の拡充に充てる予定です。(下図の赤枠部分)
| 目的 | 内容 |
|---|---|
| 児童手当の拡充 |
|
| 妊婦のための支援給付 |
|
| こども誰でも通園制度 |
|
| 出生後休業支援給付 |
|
| 育児時短就業給付 |
|
| 国民年金第1号被保険者の育児期間に係る保険料の免除措置 |
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私たちの生活はどう変わるのか?
では負担することで何が変わるのでしょうか?この制度で集めたお金は、保育サービスの充実や教育費の軽減など、子育て世代を支えるための施策に使われます。結果として子どもを育てやすい社会をつくることが将来の私たち自身の安心にもつながるため、今の負担が未来の安心をつくる投資になるのです。少子化が進む中で社会全体で子育てを支える仕組みを整えることは、私たちの生活を守るための大切な一歩といえるでしょう。
こども家庭庁のnote記事では、「私たちの生活はどう変わるのか?」という問いに対して、以下のように説明しています。
子ども・子育て支援金を財源に、例えば、次のような支援を行います。
- 児童手当を所得の制限無く高校生年代までのこどもに支給し、さらにこどもが3人以上いる場合は3人目から3万円に増やします。
- 妊娠届け出時に5万円、妊娠後期以降に妊娠しているこどもの数×5万円の給付を行います。
- ご両親がともに育児休業を取った場合に手取り10割の給付を受けることができます。
- 働いていなくても、時間単位などで、保育所などを柔軟に利用できるようにします。(こども誰でも通園制度)
使い道は「子ども・子育て支援法」という法律で定められており、これら以外の目的で使用されることはありません。
企業への影響と注意点
数百円程度の負担ですが、会社にも同様の負担が生じることとなります。実務担当者は制度内容を理解し、最新情報を見落とさないように注意しましょう。
特に、従業員の社会保険料に上乗せされる形で徴収されるため、給与計算や人事制度の運用に注意が必要です。企業が押さえておきたいポイントは次のとおりです。
給与計算への反映
支援金は医療保険料と一緒に徴収されるため、給与計算システムの設定変更が必要になる可能性があります。
従業員への周知
「なぜ負担が増えるのか」「どんな制度なのか」を丁寧に説明し、誤解や不安を防ぐことが重要です。
福利厚生とのバランス
子育て支援制度の拡充に合わせて、企業独自の育児支援や柔軟な働き方の検討も求められます。
人事・労務担当者の準備
制度開始前に、徴収方法や負担額の試算を確認し、従業員からの質問に対応できる体制を整えておきましょう。
この制度は、企業にとっても「子育てしやすい社会づくり」に参加する大切な機会です。
単なる負担増ではなく、従業員の安心と企業の信頼を高める取り組みとして捉えることがポイントです。
まとめ
「子ども・子育て支援金」は、単なる新しい負担ではありません。また、「数百円の負担で何が変わるの?」と思うかもしれませんが、その積み重ねが子どもを育てやすい社会をつくり、将来の安心を守る力になります。
企業にとっても、実務対応をしながら企業としての信頼を高めるチャンスと捉えることができます。
「次の世代に何を残すか」名前だけ知っている状態から、一歩踏み込んで理解することで、未来を支える選択に参加してみませんか?
参考文献
アクタス社会保険労務士法人 メルマガVol.680
「2026年4月から徴収が始まる「子ども・子育て支援金」とは?」
アクタス社会保険労務士法人
スタッフ約200名、東京と大阪に計4拠点をもつアクタスグループの一員。
アクタス税理士法人、アクタスHRコンサルティング(株)、アクタスITコンサルティング(株)と連携し、中小ベンチャー企業から上場企業まで、顧客のニーズに合わせて、人事労務、税務会計、システム構築支援の各サービスを提供しています。
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