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RA-532H|測定事例集表面反射アナライザー

測定事例① 印刷物をグロス、拡散度で評価する

印刷の見え(質感)の定量化

  • UVインクによる光沢印刷や、2.5Dプリンティングへの質感付与など、印刷物においても質感を定量化する必要が高まっています。
  • RA-532Hは、測定箇所をリアルタイムで見ながら、測定動作を開始できるカメラモードを備えています。
  • 高光沢のUVニス印刷から、普通紙などのマット面までの質感を指標化した拡散度(C20、C60)を備えているので、印刷物の評価に最適です。
使用する指標
拡散度C60、グロス60°
使用する機能
カメラモード

カメラモードを使用した測定

絵柄によってインクを使い分けたり、光沢を制御するパッケージ印刷やカタログ印刷などでは、カメラモードを使用して測定箇所と測定光を確認しながら測定することで、目標の場所の光沢や質感を的確に測定することができます。

測定のポイント 必要な指標に応じた角度の照明光を照明で確認します。データ保存時には画像も同時に保存されます。

カタログ印刷の測定事例

  • グロス20°の情報だけでは、表紙マット部は、中間項白地部の値は低く「よりマットな質感」であると勘違いしやすい。
  • 拡散度C20やBRDFをみると、中間項白地部の方が「反射率は低いがマット感が強い」と、より正しく質感を理解できる。

  表紙マット部 表紙光沢部 中間頁写真部 中間頁白地部
グロス60° 9.9 G.U. 74.9 G.U. 28.4 G.U. 11.4 G.U.
C60 188 38 168 231
BRDF
見た目の光沢、
マット感
3位 1位 2位 4位

解説

  • 一般に印刷物の評価にはグロスが使用されますが、低グロスの紙では、紙や印刷の色による拡散反射と、質感の情報を含む表面反射の量が近いため、グロスでは正しく評価できない場合が出てきます。より正しく評価をするにはグロスに加え、拡散度やBRDFを使用するのがお勧めです。
  • 絵柄や模様を含む印刷物の評価では、上記色による影響を含め正しく捉えることが重要です。
    所望の箇所をカメラモードで的確に測定することで、よい結果が得られます。

測定事例② モニターの照明光の映り込みや質感を拡散度、グロス、ヘーズで評価する

映り込みの数値化

  • 液晶テレビやパソコンのモニタなどのFPD(=フラットパネルディスプレイ)において、蛍光灯など照明光の映り込みを制御することは、高級感の演出や画像の見易さにつながり、製品を特徴づける重要な要素です。
  • RA-532Hの指標で、これらを数値としてとらえることができます。
使用する指標
拡散度C20、グロス、ヘーズ

モニターの映り込みとRA-532Hの指標の対応

映り込みの振る舞いは映り込み像の明るさと、ボケ具合と、映り込み像まわりの曇りで構成され、それぞれRA-532Hの指標と以下のように対応しています。

モニターの映り込みの測定事例

映り込みの異なる4種類のモニターの測定結果には、映り込み像の特徴を示す多くの情報が含まれています。

  モニター① モニター② モニター③ モニター④
 
映り込みの
特徴
薄ぼんやりした中に
暗いがハッキリした
映り込み
綺麗なガラスに
明るいハッキリした
映り込み
マット面で
映り込みは無い
マット面だが
映り込みが
多少見える
グロス20° 45.2 G.U. 151.5 G.U. 6.3 G.U. 9.1 G.U.
ヘーズ 36.1 H.U. 5.9 G.U. 14.2 G.U. 15.9 G.U
C20 1.3 1.7 233 145
BRDF

解説

  • モニターの映り込みの鮮明さの印象は映り込みの像の明るさや、コントラストの影響を受けます。
  • モニターの表面は、液晶の上にカバーガラスやカバーフィルムが重なり、多重反射することで、複雑な反射の振る舞いを示します。
  • 拡散度(ボケ)に加え、グロスやヘーズ値で、映り込み像の明るさや映り込み周りの曇りを評価することで、目的の外観品質がえられます。

測定事例③ 2種類のシボ塗装の見た目の質感を、グロス、拡散度で評価する。

シボ塗装の見え(質感)の定量化

  • 量産品の塗装では、複数の業者で製造する場合、他業者への転注、塗料の変更など、微妙な見えを管理する場面が多々あります。
  • RA-532Hの複数指標を使用することで、塗装の見え(質感)を管理することができます。
使用する指標
拡散度C20、C60、グロス各角度

塗料の見た目の合わせ込み

20°、60°のBRDF拡散度、20°、60°、85°のグロスを併用することで、覗き込み角度による質感の変化を捉えることができます。

測定のポイント 拡散体測定でのグロス値は、覗き込み角度毎の光沢の変化に対応していない。

評価事例

  溶剤系塗料 水系塗料
グロス 20° 0.4 G.U. 0.3 G.U.
60° 5.3 G.U. 3.8 G.U.
85° 2.7 G.U. 3.8 G.U.
20° BRDF
ピーク値 0.140 0.109
C20 664 908
60° BRDF
ピーク値 0.244 0.171
C60 406 530
  • グロスでは20°と60°の光沢が10倍あるように見えるが、実際はBRDFピーク値から分かるように、1.5~2倍程度の差。
  • BRDFピーク値と拡散度(C20、C60)で、覗き込む角度による質感の変化や光沢の変化が理解できる。

解説

  • 鏡面光沢度測定方法は、20°、60°、85°のそれぞれの照射角で受光側の透過スリットの面積が異なるため、その数値は覗き込む角度による光沢具合の変化と対応していません。
  • 拡散度C20、C60とBRDF波形のピーク値を測定することで、塗装の違いによる光沢の微妙な差や、覗き込む角度による光沢や質感の変化を同時に定量化することができます。
  • RA-532HのBRDFは屈折率ne=1.513のガラスを測定した場合にピーク値が100になるよう値付けされ、20°、60°においても、ガラスに対する質感としてBRDFの値が捉えられます。

測定事例④ メタリック塗装の像鮮明性を評価する。

メタリック塗装の像鮮明性の測定

  • 車の外装には近年高品質なメタリック塗装が使用されています。2層、3層の塗面で構成される塗装面はベース塗装、光輝材や最外層のクリア層のオレンジピールの反射が混ざり、見た目の美しさである像鮮明性を正しく評価することが難しい対象です。
  • 表面反射アナライザーRA-532Hの拡散度やグロス、ヘーズを使用することで、像鮮明性を正しく評価することができます。
使用する主な指標
グロス20°、ヘーズ、拡散度C20
測定のポイント ゆず肌は平らな平面上の複数個所の測定値を平均して評価しよう。

メタリック塗装の測定事例

  メタリック① メタリック② メタリック③ メタリック④
グロス20° 110.5 G.U. 95.8 G.U. 87.4 G.U. 86.5 G.U.
ヘーズ 76.7 H.U. 38.3 H.U. 17.3 H.U. 13.9 H.U.
拡散度C20 4.0 2.6 2.1 2.5
BRDF
塗装面画像
(観察カメラ画像)

グロス、ヘーズを使用した像鮮明性の算出

  • メタリック塗装の光輝材は、ヘーズ成分として測定されます。ヘーズを考慮して像鮮明性評価値を算出すると、ゆず肌に加え、メタリックによるコントラストの影響も考慮した指標になります。

コントラスト値の算出

コントラストCtはグロス値Gsとヘーズ値Hから以下のように算出する。
Ct=(Gs/6.48-H/19.8)/(Gs/6.48+H/19.8)

像明るさ値の算出

像明るさはGはグロス値Gsを反射率100%の鏡面が1になるようスケーリングして使用する。
G=Gs/2000

像鮮明性指標の計算

コントラストと像明るさを考慮した像鮮明性θは以下の式で表せる。
θ=log2((C20-0.999)/(Ct2)/G)+10.966

コントラストを考慮するとサンプル②とサンプル④に優劣が発生してくる。

解説

  • メタリックによる指向性のある反射は、最上層のクリア層の反射と重なり、映り込み像のコントラスト悪化の要因になります。
  • 最上層のクリア層のゆず肌の評価には、拡散度C20が最適ですが、主観評価の像鮮明性との相関をとる場合は、上記映り込み像のコントラストを考慮に入れる必要があります。
  • 目的に合わせてこれらを使い分けることで、良い結果が得られます。

測定事例⑤ スマホフィルムの特長を数値でみる。

スマホ用保護フィルム

  • スマホ用保護フィルムは割れ防止の機能も重要ですが、映りこみ具合が綺麗な製品や、反射の具合が目に優しい製品など、照明や太陽光の反射の仕方に特徴をもたせた製品がラインナップされ、ユーザーは好みにより、いろいろな製品を選択することができます。
  • 表面反射アナライザーの指標は、これらの製品の特長を数値化が可能です。
フィルムは光を透過するのでサンプルの下に反射の強いものを置かないようにしましょう。また、測定の際フィルムは平坦にする必要があります。黒い板やガラスにフィルムを張り付けるか、ピンと張った状態にしましょう。

①高光沢フィルム

特徴

  • 透明感があり、高い光沢感が印象的なフィルムです。
  • 周囲の景色がハッキリ映り込みます。

  高光沢フィルム 対応する特長
写像性 0.25 86.8 ハッキリした映り込み
0.5 94.4
1.0 100
2.0 100
拡散度C20 1.4 ハッキリした映り込み
グロス20° 168.4 G.U. 高い光沢感
ヘーズ 4.0 H.U. 透明感がある
BRDF 20°

②中光沢アンチグレアフィルム

特徴

  • 適度に光沢があり、照明は映りこんで見えますが、周りの景色までは映りこみません。
  • 表面は若干白っぽく見え、透明感はありません。

  中光沢フィルム 対応する特長
写像性 0.25 72.2 照明が映り込む
0.5 87.3
1.0 92.7
2.0 95.3
拡散度C20 1.8 照明が映り込む
グロス20° 57.4 G.U. 適度な光沢感
ヘーズ 16.1 H.U. 表面が若干白っぽい
BRDF 20°

③低光沢アンチグレアフィルム(指紋防止)

特徴

  • 表面に適度な粗さがあり、指紋が付きにくいフィルムです。
  • 光沢感はなく、表面は白っぽく見えるので透明感はありません。
  • 反面、景色が映りこまず、屋外では見やすいです。

  低光沢フィルム 対応する特長
写像性 0.25 0 景色が映りこまない
0.5 0
1.0 0
2.0 1.9
拡散度C20 135.4 景色が映りこまない
グロス20° 17.0 G.U. 光沢感はない
ヘーズ 30.5 H.U. 表面が白っぽい
BRDF 20°

映り込みの評価は、拡散度や写像性に加え、グロスやヘーズを併用することで良い結果が得られます。

解説

  • 拡散度、グロス、ヘーズで、それぞれ映りこみのボケ具合、映りこみの明るさ、見た目の透明感など見た目の特長を数値表現できます。
  • 映り込みの鮮明さは、映り込み像のボケに加え、コントラスト(明暗の比)の影響を受けます。
    よって、高光沢フィルムと中光沢フィルムでは、拡散度は近い値ですが、グロスが低く、ヘーズが大きい中光沢フィルムのほうが映り込みが不鮮明になります。

測定事例⑥ 薄厚フィルムをアタッチメントを使用して測定する

薄厚フィルムの測定

  • 厚みの薄いフィルムは平面性を保つのが難しく、光沢や像鮮明性などの表面性状を正確に測定することが困難です。
  • このような薄いフィルムを測定する際には、平面性を確保するためのアタッチメントを使用します。
測定のポイント 測定値のばらつきが大きい場合、あるいは、測定毎のBRDFの形状が異なる場合は、アタッチメントを使用しよう。
表面が歪んでいると反射光が広がり、BRDFも崩れる 表面を平らに整えると、BRDFには、フィルムの反射性状の情報だけが含まれる。

測定値の安定性(3か所の測定値)

測定値の安定性の面でも、平面性を保つことは重要になります。以下の測定結果のように、アタッチメントを使用することで、測定値が安定し、データの信頼性が増します。

グロス(20°)

ヘーズ

拡散度(C20)

写像性(0.25)

解説

  • 表面性状の測定では、対象物の平面性を保つことが重要になります。
  • ゆず肌に代表される表面のうねりや、表面の細かい構造により光が拡散しているのか、あるいは単に測定サンプルが平らでない為光が広がっているのかは、装置は区別ができないのです。

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