女性活躍推進にむけた組織作り
株式会社キャリアチアーズ
2023年11月8日
2015年に成立した「女性活躍推進法」は皆さまご存じだと思います。女性活躍推進法とは、正式名称を「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」といいます。仕事で活躍したいと希望する女性が、個性や能力を存分に発揮できる社会の実現を目指して、国や自治体、企業などの事業主に対して、女性の活躍状況の把握や課題分析、数値目標の設定、行動計画の策定・公表などが求められます。当初、300人以下の事業主では努力義務とされましたが、2022年法改正によって義務化が101人以上の事業主に拡大されました。
こういった背景もあり、様々な企業が試行錯誤しながら、女性活躍推進施策を行ってきました。ワークライフバランスが当たり前の時代となり、共働き世帯が過半数を超える今、「女性社員も含め、みんなが長く働き続けたいと思う組織作り」には何が必要か?を考えていきたいと思います。
女性が働きやすい職場は、男性も働きやすい
働き方改革やコロナ禍の影響もあり、10年前と比べると大きく変わってきました。個人に合わせた臨機応変な時短勤務、テレワーク導入、オンライン商談やオンライン会議、男性の育児休暇取得促進など10年前では実現が難しかった「働きやすさ」を支える制度や設備が整ってきたように感じます。
働く側の捉え方、その男女差は?
では、これらの環境変化を働く側はどう捉えているのか?そこに男女差はあるのか?を見ていきたいと思います。以下、株式会社ライボが2022年3月7日、“女性の働きやすさ”について調べるべく実施した、「2022年 働く女性実態調査」の結果からご紹介します。(2022年2月21日~28日、20~69歳の社会人614名(男性316名、女性298名))
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職場での働き方への満足度=6割が満足している
全体の6割近くがおおむね満足しているものの、男性に比べると女性は「とても満足」が14%低く、「とても不満」「やや不満」が合わせて6%程度多い結果となっています。
おおむね満足しているけれども女性の不満率は男性よりも高いことが分かります。
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女性が働きやすい職場環境=7割が整っている
全体では76%が「女性が働きやすい職場が整っている」と答えているものの、「整っている」の回答を男女別に見ると、男性が42.4%だったのに対し、女性はその約半数の21.1%であり、男性と女性の“職場環境への認識の差”があります。
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女性の不利を実感=女性社員の4割
「現在の職場において、“女性が不利”だと感じた経験の有無」では、全体では「ある」が29.5%、「ない」が50%ですが、回答を男女別に見ると、「女性が不利だと感じたことがある」と回答した男性は19.3%で、女性は40.3%と、認識に約2倍の差があることが分かります。
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働きやすい職場=職場の人間関係や雰囲気が良いこと
Biz Hitsの女性が働きやすい職場アンケートでは、働きやすい職場の特徴として、2位以下に大差をつけて「人間関係のよさ」が1位という結果となりました。つまり、給与や福利厚生、待遇や制度以上に人間関係の良さが「働きやすい職場」の根底にあることを忘れてはいけません。
ただし、留意すべき点は、「人間関係の良さ」の定義は人それぞれであり、「みんな仲良くて社外でも付き合いができるような職場」を求める人がいる一方で、「人間関係はある意味ドライなほうが働きやすい」という正反対の意見もあります。つまり、「心地よい人間関係」の定義は、人それぞれ。だからこそ、コミュニケーションの取り方においても個別対応が必要です。
女性が働きやすい職場は、男性も働きやすい
これらのアンケート結果から、働きやすく、職場環境も整ってきているが、その認識には男女間で多少の差があることが分かります。また、女性が働きやすい職場改善をした結果、男性も働きやすく感じていることも分かります。現状の課題としては、働きやすい職場環境は整っているが、仕事における女性の不利については、まだまだ大きな差があると言えるでしょう。
バリキャリ1割、ゆるキャリ7割、NOキャリ2割の現実
女性活躍推進法では、202030※1に挙げられるように、管理職の女性比率を増やすための目標値を設定しましたが、現在(2023年8月)の管理職における女性割合※2は、規模により大きく差はあるものの、平均値は過去最高ながらも9.8%となりました。
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※1
「2020年までに各分野の指導的地位に占める女性の割合を少なくとも30%にする」という政策
- ※2
そして、働く女性へのアンケート結果では、『あなたが今後、結婚・出産・育児等で休業したとして、現在の職場に復帰したいと思いますか』(単一回答)との問いには、57.2%が「そう思う」と回答。つまり、今働いている女性社員の半数以上が、結婚・出産・育児により退職や転職をせず、現在の職場に戻りたいと考えていることが分かります。(「そう思わない」は23.2%、「結婚・育児・出産をする予定はない」が19.6%)
しかし、その一方で、女性社員かつ、非管理職の140名に対して、『あなたは将来管理職になりたいと思いますか。』に対しては、「そう思う」が14.3%、「そう思わない」54.3%、「状況や環境によると思う」31.4%という結果になりました。
つまり、約8割の女性社員は(今の職場かどうかは分からないが)働き続けたいと思っているものの、管理職を目指してバリバリとキャリアを築いていきたい女性社員(バリキャリ)はたったの1割強であり、多くが、「無理のない範囲で自由に働いていきたい」「給与は上げていきたい」(ゆるキャリ)と思っていることが分かります。
女性の管理職比率を増やすには??
働く女性と企業側のギャップ
上述のアンケート結果から見えてきたのは、「女性社員はライフイベント後復帰して働き続けてくれるようになった」が、「管理職は目指さず、緩やかにキャリアアップすることを望んでいる」ということです。一方で企業側からすると、「女性の管理職比率を増やしていきたい」という目標もあるわけで、そこに双方のギャップが生じてしまいます。これだけ実施したら良いという正解策はありませんが、いくつか効果的な取り組みをご紹介していきます。
効果的な取り組み例
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ロールモデルに頼らないキャリア形成
女性活躍推進がスタートした頃から、盛んにロールモデル化が進みました。しかしこのロールモデルですが、企業側としてはあくまでもモデルケースの紹介の位置づけで設定しているにも関わらず、受け手側の女性社員の方が、ロールモデルの中からキャリアを選ぼうとしてしまっています。そのため、ロールモデル以外の選択肢については「この会社では無理なんだ…」と諦めてしまうことが多いようです。あくまでもロールモデルはロールモデルであって、各自に合わせたキャリア形成を一緒に作りあげていくことが大切です。
具体的には、定期的なキャリア面談を通じて、会社も本人も納得できる働き方を模索しながら作り上げていくのが好ましいでしょう。
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ワークもライフも同時に考える
ワークライフバランスという言葉が一般化して随分たちますが、今や両立した生き方というのが当たり前になっています。つまりワークもライフも切り離せないものですが、会社の中のキャリア形成になると、ライフを考えずにワークに重点を置いたものが一般的です。例えば、数年後の目標(ゴール)、そのための目標設定、そして戦略や施策。しかし、ワークライフですから、ワークのみでは不十分で、ライフも同様にどうしたいのか?どうありたいのか?そのためには具体的に何が必要か?(お金・スキルなど)を考える必要があります。
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臨機応変に変えられること
例えば子育て中の働くママにとっても、その家庭環境、住んでいる場所、本人の志向性などによって、働き方は異なります。お子さまの体調や性格によっても、随分違います。またその働き方はかなり速いスピードで変わっていきます。(もちろん変わらない人もいます)。期の途中であっても、変えられるくらいの臨機応変さがあれば、女性社員にとってうれしいですね。最近では、コロナ禍の副産物でオンラインが当たり前となり、テレワーク勤務もある意味スタンダードになりました。すると、時短勤務の方でもテレワークだと時短勤務にしなくてもいける!と「テレワーク時はフル出勤で、出勤時は時短勤務で」といった働き方も増えてきました。時間的に余裕が出てくることで、より働きやすく感じたり、他者への貢献意欲が増したり、と余裕があること自体が大きな恵になっているケースも見受けられます。
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期待値を明確に伝える&刺激を与えること
これも多数女性キャリア研修をさせていただいて、リアルに感じることですが、研修を受講する女性社員の方々はとにかく「飢えている」し「必死」なのです。まず多くの方が新入社員研修以降、研修のようなものを受けていないので、「知識供給」に飢えています。そして特に時短勤務の女性社員によく見られることですが、時間がない中で仕事をしているため、時間通りにタスクを終えることに必死で、そこから広い視野で考えることが少なく、とにかく目の前の仕事にずっと追われている毎日なのです。普段の仕事から離れて、少し先の未来を考えたり、自分のWANTを増やしたりする時間を設け、刺激を与えることが、なりたい自分像を広げていくことにつながります。
制度を支えるのも、「寄り添う」気持ちから
女性活躍推進のみならず、どれだけ素晴らしい制度や取り組みがあっても、それをより良く運用し続け風土にしていくのは「人」です。今後日本の社会状況を考えると、超少子化高齢化社会ですから、女性活躍推進のみならず、男女ともに「介護との両立」「シニア活用」も大きな課題になってきます。今は「ライフイベント=出産育児」と捉えがちですが、そうではありません。男女問わずそれぞれ色々な制約がある中で、お互いに少しずつ助け合い、働き続けられる社会の実現を目指していくことが今後さらに求められます。
女性活躍推進施策の1つとして、「働く女性の気持ちを理解し寄り添う」を実施されている企業も多いと思います。働く女性の気持ちや体調について学んだり、共感を中心としたコミュニケーションを取り入れたり。これも正しいと思います。
しかしもっと本質的で、大切なことは、女性も男性もそれぞれが「こうありたい」「こうなりたい」をもっと増やし、組織もそれを最大限応援サポートすることで、組織の成長を促進・調和させることです。つまりそれを一言で言うと「寄り添う」ということだと思います。深く「寄り添う」ために、それぞれが相手の立場・状況を理解し、お互いの心境を思いやり、「もし自分だったら?」と自分事に置き換えて考えていくことや、考える機会を提供することが、真の女性活躍推進への近道です。
著者プロフィール
株式会社キャリアチアーズ 代表取締役 山口しのぶ
2014年5月、「働く人と企業の比翼連理を応援し、双方を輝かせる」「情熱を持って
共に走る、強力で最大の応援団である」を経営理念とし、株式会社キャリアチアーズを設立。定着化・戦力化をメインコンセプトに中心にコンサルティング、制度構築支援
業務、各種研修(主に管理職向けマネジメント研修や女性活躍活用推進研修)などを手掛ける。
著書
「繁盛店のしかけ48」2012年2月発行 同文舘出版
「組織・制度・風土の10の秘策」2018年12月 セルバ出版
「絶対成果の出る オドロキの社員研修」2023年5月 幻冬舎
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