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新入社員と育成する側のよくある「ズレ」
株式会社キャリアチアーズ

  • 会社の処方箋
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2023年7月7日

入社して既に3カ月ほど経ちましたが、新入社員本人たちも指導する管理職やOJTトレーナー、先輩たちも慣れてきた頃ですね。一方で、「何か思っていたのと違うぞ」とお互いに感じ始めている時期ではないでしょうか。
今回のコラムでは、新入社員と育成する側のよくある「ズレ」とその心構えをご紹介します。

あるあるズレ その1朝の挨拶に元気がなくなってきた

「入社してきた時には…とってもやる気があるように見えて、挨拶も元気にハキハキしていたのに、最近元気がないように見えるなぁ。」そんなことはありませんか?

指導する側としては
「体調が悪いのかな?」
「職場になじめていないのかな?」
「仕事が分からないのだろうか?」
「自分の接し方が悪いのか?」
と悩むこともあるかと思います。

通勤による疲れ!?

理由の1つとして、通勤による疲れが考えられます。
毎日同じ時間に通勤することにまだ慣れていません。
これは体力的にきつい、ということだけではなく、毎日同じ時間に通勤するということが精神的負担になるのです。そして、社会人になると「この状態が永遠に続くのだ…」という憂鬱感が一気にやってくる、という心理状態になります。

まずは相手の気持ちを聞き受け止める

この状態を解決してあげるために、なにか指導するということはなかなか難しいです。まずは、コミュニケーションをとって会話を増やすことから始めましょう。今の気持ちをよく聞き、自分の体験などを話して、励ますことが大切です。
「3~6か月くらいでだんだん慣れてくるよ。」「うんうん。通勤って結構ハードだよね。」と共感し、「慣れてくるから」と励ましてあげてください。

あるあるズレ その2ビジネスマナーに苦戦する

「敬語」「顧客へのメール」「お客さま対応」等、指導者側からすると「何から何まで言わないと出来ないのかな…」と悩むこともあるかと思います。時代の変化に伴い、経験してきたことにも違いが生じるため、様々な業務を一から教える必要があります。

新入社員は敬語に慣れていない!?

指導者側からすれば「敬語や立ち居振る舞いは学生生活でもあるだろう」「クラブ活動やアルバイトの職場でも、上下関係があっただろう」と思いがちです。しかし、今の時代、強豪クラブでも、アルバイトの職場でも上下関係を意識しないことが多いです。クラブの先輩にも「タメ口」で会話することもありますし、アルバイトの職場においても、仲良く和気あいあい、といった雰囲気の方が長く続けてくれますので、多くの職場では上下関係を推奨していないこともあります。そのため、社会人になって上下関係やそれに伴う敬語、上座下座、立ち居振る舞いなどに初めて触れることが多いのです。
また、メールや文章についても初めて、と言うケースが多くあります。LINEやチャットで会話する機会が多く、単語や絵文字で伝わる会話をしてきています。文章を書くこと自体の機会が少ないのです。特に目上の人への文章を書くことについては、経験がある人の方が少ないでしょう。

新入社員とのギャップを知る

他にもこんな例があります。

  1. 電話を“取り次ぐ”がわからない

    新入社員研修でよく見受けられますが、固定電話が家になく携帯電話が当たり前になっているので、「繋いでもらう」と言うこと自体を初めて経験します。相手先に電話して繋いでもらうことも、掛かってきた電話に応対して繋げることも、どうしたらいいのか分からない、何を言っていいのか分からない、ということも多いのです。また、電話の切り方も理解していません。特にビジネスフォンは、ボタンも多いため「難しそう」と感じているかもしれません。
    固定電話を使い電話をかける、電話に出る、取り次ぐ、電話を切るという一連の流れを教え、その際にメモを取るなどといった基本的なことも丁寧に伝えていきましょう。

  2. 遅刻欠席の連絡をチャットでする

    遅刻や欠勤の連絡については電話ではなくLINEやチャットで、という会社も多くなってきていますが、「電話で連絡くれないのか??」と戸惑う方も多いです。ただ、今の時代では、LINEやチャットが効率的というケースもあるので、会社の方針に従って指導する必要があります。

  3. 何でもメールで済ませる

    例えば、何かクレームが発生した時の対応は、第一にすぐに電話を掛ける、第二にお客さま先へ訪問してお詫びするという流れが当たり前だと思う方も多いと思います。ただ新入社員は、これまでの生活の中で、ほぼ全てをLINEやチャットで完結してきているため、「お客さまにお詫びして」と指示を出すと、メールを打ち始める場合があるかもしれません。直接お詫びをすることの重要性を伝えていきましょう。

  4. 立って挨拶をしない

    上司が話をしているのに、座ったまま。お客さまが入室されてきたのに座ったまま。また、座ったまま軽く会釈をする程度の挨拶で済ませてしまう。「お客さまが来た時は立ちあがって挨拶しようね」ということまで指示しないと出来ないのかなと思っている方も多いのではないでしょうか。前述したように、「立って挨拶をする」経験も少ないのです。最近では学校でも授業の前後に「起立、礼」といった挨拶をしない学校も増えてきました。知らないことはぜひ教えてあげてください。

あるあるズレ その3時間の感覚にズレがある

例えば待ち合わせをした場合、携帯電話のない時代には連絡手段がないため、5~10分前には待ち合わせ場所に行くことが当たり前でした。しかし、携帯電話を誰もが持っている今、たとえ時間に遅れても連絡手段があるため、さほど双方に支障はありません。しかし、ビジネスの場ではそうはいかない場合があります。

数分の遅れは誤差!?

この感覚のまま社会人になっているので、1~2分の誤差は気にしていない場合があり、普通に遅れてきて、遅れてきたことにすら気付いていないことが多くあります。さすがに顧客先には時間を守って少し早めに行きますが、社内の会議などではルーズになることがあり、「新人待ち」が結構見受けられます。

時間を守ることが「当たり前」だと認識してもらう

よく新入社員研修でも言いますが、時間にルーズな人は当然誰からも信頼されません。当たり前のことが出来ないのに、重要な仕事を任せられるはずがないのです。この「当たり前」をまず認識してもらうことが大切です。一番恐ろしいのは、本人たちが遅れていることも気付かず、誰も指摘しないまま過ぎていくことです。10分前行動を新入社員の間にしっかりと教えてあげてください。

あるあるズレ その4メモの内容を整理できない

新入社員には、「まず教えてもらったことをしっかりとメモにとりましょう」と教えますよね。しかし、何度も同じことを聞いてくる人がいたり、同じミスを繰り返したりする人もいます。「何回同じことを言えばいいのか」と思う指導者も多いのではないでしょうか。
しっかりとメモは取っているのですが、ただ書いているだけで、あとで見返しても理解ができないことが多いのです。

聞きながら書く、には慣れていない

これも授業の仕方が変化したことが大きく影響しているように思います。ひと昔前の授業では、先生が一方的に話したことを、ポイントや内容を分かりやすく解釈してノートに書き記すことが多く見られました。しかし今は、きちんと整理されたプリントを配る先生が多く、自分でノートを書く必要がない場合が多いです。また、黒板を使ってノートを書く際にも、「先生の話を聴く時間」と「ノートに書く時間」は別に設けられます。聞きながら書く、ということはあまり授業ではしないことが多いようです。このスタイルに慣れていたのに、社会人になると「自分で考えて」「聞きながらメモを取る」を同時にしなければいけません。

何度も同じことを聞き、同じミスをしてしまうことがないように、是非一度新入社員のメモを確認してください。分かりやすいメモの取り方を教えてあげるか、もしくは、そのような書籍もたくさん出ていますので、お勧め図書として推薦してみてください。

あるあるズレ その5毎日の業務量の違いに戸惑う

毎日のやることの量が異なることに新入社員は戸惑いがあるようです。
例えば、初めての業務をするときは、当然時間もいつも以上に掛かり、1日があっという間に過ぎてしまいます。その一方で、今日は何も仕事が見つからず、気が付けば雑用ばかりをやっていたという日もあるようです。
そして忙しくて充実している日と、時間を持て余す日のギャップに心が疲れてしまう人も多く見られます。業務内容が一定の量であればいいのですが、毎日一定の量ということはほとんどありません。多くの企業の場合、月末月初や週末週明けは忙しいことが多いですが、新入社員は日単位での繁忙期に翻弄されてしまっているのです。
自分でスケジュール管理が出来るようになると優先順位を付けながら業務量をコントロール出来るようになります。新入社員の場合は、OJTトレーナーに「今日のやること」を指示されることが多く、業務の全体像が見えにくいために、翻弄されてしまいます。週単位、月単位と少しずつスパンを長くして、スケジュール管理ができるように教えてあげましょう。


今回は新入社員のあるあるケースとその心構えついてご紹介してきました。ここで覚えていただきたいポイントは、指導する側(管理職やOJTトレーナー)にとってみれば、「そんなこと」「たったこれだけのこと」であっても、新入社員にとってはそうではない、ということを心にとどめながら指導しなければいけないということです。
時代も育ってきた環境も指導者側とは大きく異なります。能力やスキルの問題ではなく、「知らないだけ」ということが多くあります。感覚の違いを理解して「教えてあげよう」という広い心でコミュニケーションをとり、指導していきましょう。

著者プロフィール

株式会社キャリアチアーズ 代表取締役 山口しのぶ

2014年5月、「働く人と企業の比翼連理を応援し、双方を輝かせる」「情熱を持って共に走る、強力で最大の応援団である」を経営理念とし、株式会社キャリアチアーズを設立。定着化・戦力化をメインコンセプトに中心にコンサルティング、制度構築支援業務、各種研修(主に管理職向けマネジメント研修や女性活躍活用推進研修)などを手掛ける。

著書
「繁盛店のしかけ48」2012年2月発行 同文舘出版
「組織・制度・風土の10の秘策」2018年12月 セルバ出版
「絶対成果の出る オドロキの社員研修」2023年5月 幻冬舎

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