改正建築物省エネ法:2025年の概要と対策
2024年9月12日
2022年6月17日に公布された改正建築物省エネ法(脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律)は、2025年4月1日に全面施行を迎え、建築業界に大きなインパクトを与えることが予想されます。その改正内容は、全ての新築で省エネ基準適合を義務化や、木造戸建住宅の建築確認手続き・壁量計算などの見直しが行われますが、今回は省エネ基準適合義務化についてご紹介します。
省エネ基準適合義務化の背景
近年、地球温暖化対策やエネルギー資源の枯渇が懸念される中、建築物のエネルギー効率向上は国際的な課題として重要視されています。日本は2020年10月に2050年カーボンニュートラルを目指すことを宣言し、建築物においても省エネ基準の強化が急務となりました。このような背景から、2025年4月1日に施行される省エネ基準適合義務においては、全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準への適合が義務付けられます。
これまでの省エネ基準との違い
従来、省エネ基準は一定の規模以上の建築物にのみ適用されていましたが、今回の改正では、小規模建築物を含む全ての新築建築物が対象となります(図表1参照)。また、基準の内容もより厳格化され、断熱性能や設備効率の向上が求められます。これにより、建築物全体のエネルギー消費を大幅に削減することが期待されています。
(図表1)
省エネ対策のロードマップ
2022年6月17日に公布された改正建築物省エネ法は、日本の建築物におけるエネルギー効率向上を目的として、段階的に改正が進められています(図表2参照)。この法改正は、今後の日本における持続可能な社会の実現に向けた重要な施策の一つであり、特に建築業界に大きな影響を与えることが期待されています。
2025年4月1日に予定されている全面義務化は、改正法施行からちょうど3年目に当たるタイミングであり、この時点から全ての新築建築物において省エネ基準の適合が義務付けられることとなります。この義務化は、単なる一時的な措置ではなく、2030年までにZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)およびZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)水準の省エネ性能の確保を目指した長期的な計画の一環です。
さらに、2050年には、既存の建物ストック全体でZEH・ZEB水準の省エネ性能を達成することが目標とされており、これにより日本全体でのエネルギー消費の大幅な削減と、温室効果ガスの排出量削減に寄与することが期待されています。このように、改正建築物省エネ法の全面義務化は、持続可能な未来を築くための重要なステップとなります。
(図表2)
省エネ基準適合義務化による影響
省エネ基準の適合義務化は、建築業界に大きな影響を与えることが予想されます。特に、中小規模の建築事業者にとっては、新たな基準を満たすための技術力やコスト負担が大きな課題となるでしょう。
建築コストの増加
新たな省エネ基準を満たすためには、高性能な断熱材やエネルギー効率の高い設備の導入が必要となります。これにより、建築コストの増加が避けられない状況です。特に、低価格を重視する住宅市場においては、消費者にとって負担となる可能性があるため、コスト面での工夫が求められます。
技術革新の促進
一方で、省エネ基準の厳格化は、建築技術の革新を促進する契機ともなり得ます。断熱性能を高めるための新素材の開発や、省エネ設備の進化が期待されます。さらに、これらの技術革新により、長期的には運用コストの削減や住宅の資産価値向上につながる可能性もあります。
持続可能な建築物の普及に向けた政策支援
省エネ基準の適合義務化に伴い、政府や自治体は建築事業者や消費者を支援するためのさまざまな政策を打ち出しています。これらの政策は、持続可能な建築物の普及を促進し、国全体のエネルギー消費削減に寄与することを目的としています。
補助金制度の拡充
政府は、省エネ基準に適合する建築物の建設を奨励するため、補助金制度を拡充しています。これにより、建築事業者は高性能な断熱材や省エネ設備の導入にかかるコストを一部補助金でカバーできるため、消費者への価格転嫁を抑えることが可能です。
税制優遇措置
さらに、エネルギー効率の高い住宅を購入する消費者に対しては、住宅ローン減税や固定資産税の軽減措置が適用されることがあります。これにより、省エネ住宅の普及が進み、長期的にはエネルギーコストの削減にもつながると期待されています。
事業者が取るべき対策
省エネ基準適合義務化に対応するため、建築事業者は早期の準備が必要です。さまざまな対策が考えられますが、特に以下の対策が重要となるでしょう。
技術力の向上
新たな基準に適合するためには、技術力の向上が不可欠です。省エネ建材や設備に関する知識を深め、設計段階から基準をクリアできるような工夫が求められます。また、エネルギー効率を重視した設計手法の導入も重要です。
コスト管理の徹底
建築コストの増加に対しては、コスト管理を徹底することが求められます。省エネ基準を満たしつつも、コストを抑えるための材料選定や施工手法の見直しが必要です。また、補助金制度の活用や、住宅ローン減税の適用など、経済的な支援を最大限に活用することも検討すべきです。
まとめ
2025年省エネ基準適合義務化は、建築業界にとって大きな挑戦であると同時に、新たな成長の機会でもあります。建築事業者に求められるのは、技術力とコスト管理を徹底し、持続可能な社会に貢献する建築物を提供することです。今後の取り組み次第では、よりエネルギー効率の高い建築物が普及し、環境負荷の低減に寄与する未来が期待されます。2025年のために対策するのではなく、2030年、2050年を見据えて中長期的に取り組んでいきましょう。
参考
著者プロフィール
株式会社シーピーユー
日本初のパソコン用建築CADを開発し、建築・土木系業種向けを中心にソフトウエアの開発から販売促進、顧客サポートまで自社で一貫して行っています。顧客ニーズや業界動向を迅速にキャッチし、幅広いITソリューションを提供しています。
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