建設業の時間外労働の上限規制と働き方改革の内容について
汐留社会保険労務士法人
2023年6月12日
建設業もいよいよ来年2024年4月1日から時間外労働の上限規制の適用がスタートします。
ここでは、建設業の時間外労働の上限規制と働き方改革の内容について解説します。
「建設業界における2024年問題~労働環境の現状と課題~」もあわせてご確認ください。
労働基準法の時間外労働上限規制の適用(2024年4月~)
建設業については、36協定で定める時間外労働の上限基準(大臣告示)は、適用除外とされていますが、2024年4月1日以降は、労働基準法の時間外労働の上限規制が全て適用されることになっています。(災害時の復旧・復興の事業を除きます)。
労働基準法の上限
時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできません。
なお、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、次のことを守らなければなりません。
- 時間外労働が年720時間以内
- 時間外労働と休⽇労働の合計が月100時間未満
- 時間外労働と休⽇労働の合計について、「2カ月平均」「3カ月平均」「4カ月平均」「5カ月平均」「6カ月平均」が全て1カ月当たり80時間以内
- 時間外労働が⽉45時間を超えることができるのは、年6カ月が限度
上記に違反した場合には、罰則(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。
災害時の復旧・復興の事業について
建設業においては例外もありますので、注意が必要です。
災害時の復旧・復興の事業について以下2つの規制は、2023年4月1日以降も適用されません。
- 時間外労働と休⽇労働の合計が月100時間未満
- 時間外労働と休⽇労働の合計について、「2カ月平均」「3カ月平均」「4カ月平均」「5カ月平均」「6カ月平均」が全て1カ月当たり80時間以内
下請指導ガイドラインの改訂(2022年4月~)
建設企業は、社員(労働者)か一人親方(個人事業主)かどうかを適切に判断する必要があることから、下請指導ガイドラインが改訂され、2022年4月1日から適用されています。
社員(労働者)であると思われるのに、一人親方(個人事業主)として仕事をさせていることが疑われる例として、次のような場合が考えられます。
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年齢が10代の技能者
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経験年数が3年未満の技能者
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「働き方チェックリスト」で確認した結果、雇用労働者に当てはまる働き方をしている方
一人親方(個人事業主)との契約が「雇用契約」ではなくても、働き方が社員(労働者)と同様であると判断された場合には、その方は労働者として取り扱われることになります。
建設業働き方改革加速化プログラム【2018年3月~】
国土交通省は、建設業における働き方改革を加速させるため、長時間労働の是正、給与・社会保険、生産性向上の3つの分野における建設業働き方改革加速化プログラムを策定し、取り組んでいます。
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長時間労働の是正に関する取り組み
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(1)週休2日制の導入の後押し
公共工事における週休2日工事を大幅に拡大するとともに、週休2日の実施に伴う必要経費を的確に計上します。
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(2)適正な工期設定の推進
長時間労働とならない適正な工期設定を推進するため、各発注工事の実情を踏まえて、2018年7月に適正な工期設定等のためのガイドラインが改訂されました。
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給与・社会保険に関する取り組み
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(1)技能や経験にふさわしい処遇(給与)の実現
技能者の資格や現場の就業履歴等を業界横断的に登録・蓄積する建設キャリアアップシステムの導入を推進します。
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(2)社会保険への加入をミニマム・スタンダードに
社会保険に未加入の建設企業には、建設業の許可・更新を認めない仕組みを構築します。
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生産性向上に関する取り組み
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(1)生産性の向上に取り組む建設企業の後押し
中小の建設企業による積極的なICT活用を促すため、公共工事の積算基準等の改善に取り組みます。
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(2)仕事の効率化
建設業許可等の手続き負担を軽減するため、申請手続きを電子化します。
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建設業では建設業界に入る若い人が減少しているという大きな問題があります。将来の担い手を確保し、建設業界のさらなる発展のためにも、建設業の働き方改革を一段と強化していく必要があります。建設業ならではの取り組みもあるため、しっかりと内容を理解したうえで、対応することが求められています。
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