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インボイス制度開始!第2回買い手側のポイント
アクタス税理士法人

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2023年10月18日

インボイス制度(適格請求書等保存方式)が10月1日から開始されました。インボイス制度の再確認するポイントについて「売り手」側と「買い手」側に分け、全2回にわたって解説しています。今回の第2回目では、買い手側におけるポイントについて解説します。

インボイス及び帳簿の保存が仕入税額控除の要件

消費税の納税額は、売上に係る消費税から仕入に係る消費税を控除すること(仕入税額控除)で計算されます。インボイス制度が開始されると、買い手が仕入税額控除を受けるには、原則インボイス発行事業者から交付を受けたインボイス(適格請求書)及び帳簿の保存が必要となります。
インボイス制度開始前においては、「3万円未満の課税仕入れ」及び「請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由があるとき」は、法定事項が記載された帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められていました。しかし、インボイス制度が開始されると、これらの規定は廃止されることになります。

帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合

仕入税額控除を受けるためにはインボイスの保存が必要になりますが、インボイスの交付を受けることが困難な一定の取引については、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。具体的に以下の9つです。

  • インボイスの交付義務が免除される3万円未満公共交通機関による旅客の運送(公共交通機関特例)
  • 簡易インボイスの記載事項(取引年月日を除く)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引
  • 古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物の購入
  • 質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物の取得
  • 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物の購入
  • 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源又は再生部品の購入
  • 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等
  • 適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストにより差し出されたものに限る)
  • 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費特例)

帳簿には通常必要な記載事項である次の4項目に加えて、以下のイ、ロの2つの記載が必要となります。

【通常の記載事項】

  • 課税仕入れの相手方の氏名または名称
  • 課税仕入れを行った年月日
  • 課税仕入れに係る取引内容(軽減税率の対象品目である場合には、その旨)
  • 課税仕入れに係る支払対価の額

イ)帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるいずれかの仕入れに該当する旨
例:公共交通機関特例に該当する場合、「3万円未満の鉄道料金」「公共交通機関特例」など

ロ)仕入れの相手方の住所又は所在地
例:3万円未満の自販機特例に該当する場合、「〇〇市 自販機」、「××銀行□□支店ATM」など

受領したインボイスの適正性の確認

事業者は受領したインボイスの登録番号が有効かどうか、適正性を確認する必要があります。ただし全ての取引の都度、確認が必要となるものではありません。例えば、継続的に取引のある場合は都度の確認はしないが、新規取引やスポット取引の相手先はその都度確認を行うなど、取引先の規模や関係性、取引の継続性などを踏まえ、事業者において確認の頻度等を判断していくことになります。

免税事業者等からの課税仕入れの経過措置

インボイス制度の導入後、免税事業者や消費者などインボイス発行事業者以外の者から行った課税仕入れについては、原則仕入税額控除ができなくなります。ただし、制度導入後6年間は、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額として控除できる経過措置が設けられています。経過措置の適用にあたっては、区分記載請求書等保存方式の記載事項に加え、例えば「80%控除対象」など、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載が必要となります。

経過措置期間 控除割合
令和5年10月1日~令和8年9月30日
仕入税額相当額の80%
令和8年10月1日~令和11年9月30日
仕入税額相当額の50%

Q&A

Q1
受領したインボイスの記載事項に不備があった場合は、手書きで追記してもいいですか。
A1

インボイス制度が始まる前の区分記載請求書等保存方式の下では、仕入先から交付された請求書等に「軽減税率の対象品目である旨」や「税率ごとに区分して合計した税込対価の額」の記載がないときは、事業者はこれらの項目に限って追記することができました。しかし、インボイス制度の下では、不備な事項があったとしても、追記はできなくなります。

Q2
帳簿の記載のみが認められる出張旅費特例について具体的に教えてください。
A2

出張旅費や宿泊費・日当等の支給においては、その旅行に「通常必要と認められる金額」が、帳簿のみ記載で認められる出張旅費特例の対象となります。「通常必要と認められる金額」とは、所得税において規定される非課税旅費の範囲に基づくことになります。出張旅費については、主に「実費精算」と「一定額の支給」の支払方法がありますが、いずれの方法でも出張旅費特例の対象となります。
通勤手当に関しても、通勤に「通常必要と認められる金額」が特例の対象となります。「通常必要と認められる金額」については、所得税における非課税金額(電車バスの交通機関を使う場合、1か月当たり15万が限度)を超えていても問題ないとされています。

Q3
少額特例という帳簿のみの保存が可能となる制度もあると聞きましたが、具体的に教えてください。
A3

基準期間(法人の場合は前々事業年度)の課税売上高が1億円以下又は特定期間(法人の場合は前事業年度の開始の日以後6月の期間)の課税売上高が5,000万円以下である事業者は、少額(税込1万円未満)の課税仕入れについて、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められます。
適用対象期間は令和5年10月1日から令和11年9月30日までの期間となります。1万円未満かどうかの判定は、一回の取引の課税仕入れに係る金額(税込み)で行い、課税仕入れの一商品ごとの金額により判定するものではありません。

Q4
売り手から登録番号のお知らせが届かないけど、仕入税額控除をしてよいのでしょうか。
A4

事前にインボイス発行事業者の登録を受ける旨が確認できたときは、受領した登録番号のない請求書等に記載された金額を基礎として仕入税額控除を行うことができます。この場合、事後的に交付されたインボイスや登録番号のお知らせを保存することが必要になります。なおその課税期間に保存できなかった場合でも、翌課税期間において保存できる場合は、仕入税額控除を調整することも認められています。
事後的に交付されない場合には、免税事業者等からの課税仕入れの経過措置により当初3年間は、80%控除、その後の3年間は50%控除の適用となります。

Q5
免税事業者からの課税仕入れの経過措置を使うと、経理処理はどのようになるのでしょうか?
A5

インボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れの経過措置では、当初3年間は、課税仕入れに係る消費税相当額の80%について仕入税額控除の適用を受けることができます。
税抜経理方式の場合の経理処理ですが、一般的には、課税仕入れに係る支払対価の額のうち消費税相当額の80%を仮払消費税等とし、残額の20%は本来の該当科目に上乗せして経理処理を行うことになります。
例えば、交際費に該当する取引で経過措置の適用を受ける場合は、消費税相当額の80%を控除対象として「仮払消費税等」として計上し、残額の20%部分は、「交際費」として計上することになります。また、固定資産の取得の取引については、控除対象とならない20%部分の金額は、「固定資産の取得価額」として計上することになります。


令和5年10月1日からインボイス制度が開始されました。買い手側は、仕入や経費など経理処理の頻度が高く、受領する請求書が電子データの場合は電子帳簿保存法へ対応も必要となります。前回の売り手側のポイントと合わせて、ぜひこの機会に再確認ください。

インボイス制度の概要と対応方法をまとめた以下資料も参考にしてください。

著者プロフィール

アクタス税理士法人
税理士、公認会計士、社会保険労務士など100名を超えるプロフェッショナルが中心となり、クライアントのライフステージに応じたあらゆるニーズに対応したサービスを提供しています。

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