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インボイス開始直前!第1回売り手側のポイント
アクタス税理士法人

  • 会社の処方箋
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2023年9月15日

インボイス制度(適格請求書等保存方式)の開始が10月1日からと目前に迫り、準備も大詰めに入っているところかと思います。そこで、インボイス制度開始直前に再確認するポイントについて、「売り手」側と「買い手」側に分け、全2回にわたってそれぞれ解説いたします。第1回の今回は、売り手側のポイントについて解説します。

インボイス制度の概要

インボイス制度が開始されると、買い手が仕入税額控除を受けるにはインボイス発行事業者から交付を受けたインボイス及び帳簿の保存が必要となり、その他からの仕入は段階的に仕入税額控除ができなくなります。売り手としては、取引先が仕入税額控除を受けるためにインボイス発行事業者となり、記載事項の要件を満たすインボイス発行事業者に課される以下4つの義務に対応する必要があります。

  1. インボイスの交付義務
  2. 返還インボイスの交付義務
  3. 修正したインボイスの交付義務
  4. 交付したインボイス等の保存義務

インボイスの記載事項

インボイスには、下記6つの項目を記載する必要があります。

  1. 請求書発行者の氏名又は名称
  2. 登録番号
  3. 取引年月日
  4. 取引内容(軽減税率の適用対象である旨)、税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜又は税込)及び適用税率
  5. 税率ごとに区分した消費税額等
  6. 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

    現行の区分記載請求書等保存方式による請求書に、登録番号適用税率税率ごとに区分した消費税額等を加える必要があります。記載事項をひとつの書類のみで満たす必要はなく、相互の関連を明確にし、取引内容を正確に認識できれば、複数の書類をもって記載事項を満たすことができます。

インボイスの端数処理

※出典 国税庁「適格請求書等保存方式の概要」

インボイスは、記載する「消費税額等」の計算方法が定められており、取引に係る税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額10%又は8%(税込の場合は10/110または8/108)を乗じて1円未満の端数処理を行い算出します。そのため、端数処理は1つの適格請求書につき、税率ごとに1回行うことになり、例えば1つの請求書に記載される個々の商品ごとに消費税額等を計算、端数処理することは認められないことに注意が必要です。端数処理の方法は任意の方法とすることができ、切り上げ、切り捨て、四捨五入などのいずれの方法も認められます。

交付義務の発生時期

インボイス発行事業者は、商品の引き渡しや役務提供の完了がインボイス発行事業者登録日(インボイス制度開始から登録する場合は令和5年10月1日)以後である取引について、相手方の求めに応じてインボイスを交付する義務が生じます。売り手の売上計上時期と買い手の仕入計上時期が異なる場合、売り手の収益認識基準に基づき登録日以後売上が認識される取引から交付義務が発生します。

交付したインボイスの控えの保存義務

インボイス発行事業者は交付したインボイスの写しの保存義務があり、書面又は電子データでの保存が認められます。電子データで保存する場合は電子帳簿保存法に準じた保存が必要となり、「電子帳簿等保存制度」による保存、もしくは、印刷した書面を「スキャナ保存制度」による保存を行うことが可能です。また、電子インボイスを交付して電子データのまま保存する場合は、電子帳簿保存法の「電子取引に係るデータ保存制度」の要件にもとづく保存が求められます。
なお、電子帳簿保存法では、申告所得税及び法人税の保存義務者は、令和6年からは電子取引は電子データのまま保存することが原則義務化されますが、消費税法ではその保存が仕入税額控除の要件になっていることから、電子データを書面出力して保存することも認められています。

紙発行の請求書 電子インボイス
交付方法 書面による交付 1.EDI取引を通じた提供
2.電子メールによる提供
3.電子メールに添付したPDF
4.インターネット上のサイトを通じた提供
5.光ディスク等の記録用の媒体による提供 など
保存方法 原則:書面出力して保存
可能:電子帳簿等保存制度に準じた保存or出力した書面をスキャナ保存
原則:電子取引に係るデータ保存制度に準じた保存
可能:書面による保存(消費税法の場合)

チェックポイント

売り手側のチェックポイントを一覧にまとめました。ぜひダウンロードして対応フローをご確認ください。

Q&A

Q1
インボイス制度開始から登録を受けたいのですが、今から登録番号を取得することはできますか。
A1

令和5年10月1日からインボイス発行事業者の登録を受けようとする場合の「インボイス発行事業者の登録申請書」の提出期限は、令和5年度改正で実質的に令和5年9月30日まで延長されました。申請書に令和5年10月1日から登録希望する旨を記載し、令和5年9月30日までに提出すれば、令和5年10月1日までに登録通知が届かなかった場合でも、同日から登録とみなされます。なお、現在登録から通知受領までは、e-Tax利用の場合約1カ月、書面提出の場合は約2カ月半かかる見込みです。

Q2
返還インボイスの交付義務の詳細について教えてください。
A2

インボイス発行事業者が売上の返品、値引き等を行う場合は、記載事項を満たした返還インボイスの交付義務が発生します。返還インボイスは、返品、値引き等の単位ごとの金額が税込1万円未満である場合は交付義務が免除されています。

Q3
振込手数料を売り手が負担した場合、返還インボイスを交付する必要はありますか。
A3

取引先との契約関係などにより、次のようにその対応が分かれます。

  1. 振込手数料を売上値引きとした場合、売上値引きは原則的に返還インボイスの交付が必要ですが、銀行の振込手数料は一般的に税込1万円未満であるため交付は免除されます。
  2. 売上値引きではなく支払手数料として経理処理し課税仕入とする場合、返還インボイスの交付義務はありません。(少額特例に該当する場合がありますが、原則的に取引先からのインボイスが必要です。)
  3. 会計上は支払手数料、消費税法上は売上値引きとする場合は、支払手数料の消費税コードを課税仕入ではなく売上に係る対価の返還等とする必要があるため、通常の支払手数料とは別に科目登録をするなど、判別できるような方法をとる必要があります。
Q4
交付義務が発生するインボイス発行事業者登録日をまたぐ期間に係る請求書の対応を教えてください。
A4

登録日以後の取引についてインボイスを発行することとなるため、対価の額や消費税額等の記載を登録日前の取引に係るものと登録日以後に係るものに分けて表示するなどの対応が必要です。ただし、令和5年10月1日(インボイス制度開始日)から登録し登録日をまたぐインボイスを発行する場合は、買い手において登録日前後の課税仕入がいずれも仕入税額控除の対象となるため、登録日前後の取引に区分せずインボイスを交付することも認められます。

Q5
インボイス制度開始後の取引に係る対価を制度開始前に前受した場合の対応を教えてください。
A5

令和5年10月以降の課税資産の譲渡等に対する対価について、令和5年9月30日以前に請求書を交付し受領した(前受した)場合、インボイスの交付義務への対応は次の場合によりその方法が分かれます。

  1. 登録番号の通知を令和5年9月30日以前に受けている場合
    前受金の請求書の発行時点でインボイスの記載事項を満たすことが可能であるため、交付した請求書
    をそのままインボイスとする方法。
  2. 登録番号の通知を令和5年9月30日以前に受けていない場合
    前受金の請求書の発行時点でインボイスの記載事項を満たせないため、記載事項を満たせることとなった時点で改めてインボイスを交付する方法、もしくは、交付した請求書で不足していた記載事項について
    のみ別途書類で通知する方法のいずれかの方法。

令和5年10月1日から開始されるインボイス制度は、売り手側と買い手側の対応が異なり、受領する請求書が電子データの場合は電子帳簿保存法へ対応も必要となります。今回は売り手側のポイントの解説でしたが、次回は買い手側のポイントを解説いたします。ぜひこの機会に再確認ください。

インボイス制度の概要と対応方法をまとめた以下資料も参考にしてください。

著者プロフィール

アクタス税理士法人
税理士、公認会計士、社会保険労務士など100名を超えるプロフェッショナルが中心となり、クライアントのライフステージに応じたあらゆるニーズに対応したサービスを提供しています。

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