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EDIの2024年問題と電子帳簿保存法
~前編~

  • 会社の処方箋
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2022年10月14日

「2025年の崖」という言葉が経済産業省のDXレポートで初めて使われてから、IT業界では大きな危機感をもって捉えられています。しかし、その1年前である2024年にISDN回線を使ったサービスが利用できなくなるという、特にEDI利用企業にとって大きな転換期を迎えることをご存じでしょうか?

ISDNサービス提供終了に伴う課題と、EDIと昨今の法改正の関連について2回にわたって解説いたします。
前編である今回は、EDIの2024年問題とEDIの仕組みの違いについて確認していきましょう。

EDIの2024年問題とは

2018年11月に掲載したコラム「2024年のISDNサービス提供終了に備え、インターネットEDIに移行しましょう!」でもご紹介しました通り、NTTより2024年1月にISDN(INSネットディジタル通信モード)のサービスを終了し、IP網へ移行することが発表されています。これにより、今後のEDI取引への影響が懸念されています。これを、EDIの2024年問題といいます。

IP網への移行後のサービスとスケジュール

上の図の通り、2024年1月には固定電話サービス契約の一斉引き継ぎが行われることになっています。基本的な音声通話サービスはそのまま維持されますが、EDI取引は多大な影響を受けることになります。検証の結果、データ伝送に遅延が生じることが確認されているため、現在は従来のEDIシステムからインターネットを介して利用できるインターネットEDIに変わりつつあります。

EDIとは

まずは、EDIがどういったものかを簡単に確認しておきましょう。
EDI(Electronic Data Interchange)は、企業や行政機関などがコンピューターをネットワークでつなぎ、伝票や文書を電子データで、自動的に交換することを指します。(JIPDEC一般財団法人日本情報経済社会推進協会より引用)

かつて郵送やファクスを使ってやり取りしていた情報を、パソコンの普及と共にパソコン同士を通信回線(専用線や公衆回線)につないでデータでやり取りを行うようになりました。あらかじめやり取りをする企業同士でデータの形式や通信方法などのルールを決めておくことで、各企業が持つシステム固有のデータ形式や取引情報を受け手側のシステムがそのまま取り込めるよう自動変換されるため、郵送費や用紙代はもちろん、郵送やファクスにより届いた紙を見ながら再入力するといった手間が大幅に削減されました。
一方で、大企業を中心に独自のルールを定め固有のオンラインネットワークやオンライン端末が用意され始めたため、それらを取引相手とする受注側は取引先ごとに端末を用意しなければならず(多端末問題)非常にコストがかかっていました。

インターネットの普及に伴って登場したインターネットEDIは、その名の通り通信回線にインターネットを利用します。インターネットEDIが普及し始め、これまで通信回線に専用線あるいは公衆回線を使っていたEDIは“従来型”と呼ばれるようになりました。

インターネットEDIは通信回線にインターネットを使うため、専用通信機器は不要です。また「インターネットを使うとなると、セキュリティは大丈夫?」と不安に思われるかもしれませんが、データはすべて暗号化された状態で交換されるため、通信途中で第三者に盗み見られたり改ざんされたりすることはありません。
また従来型と同様に、企業間でお互いの取引情報を持った状態でやり取りをするため、受け取ったデータを自社システムに合った形式に変換する、といった手間も発生しません。業界や業種ごとに存在する多くのデータ形式にも対応しています。
まとめると、インターネットEDIを導入するメリットは以下のようになります。

  1. セキュアで、高速・高品質のデータ交換
  2. 多様なデータ形式
  3. 安価な導入コストと通信コスト

Web-EDIとは

インターネットEDIの中には、Webブラウザを利用して手軽に通信相手先とデータのアップロードやダウンロードができるWeb-EDIもあります。
従来型のEDIのように専用システムや通信機器などを準備する必要がありません。Web-EDIであれば、発注側は短期間での導入が可能です。また、受注側はインターネット環境を準備すれば専用ソフトを準備することもなく、すぐにEDIを始めることができます。

Web-EDIのメリット

  • 導入が簡単
  • 低コスト
  •  安全(インターネット通信の暗号化技術が発達している)

Web-EDIは、上述の通り導入が簡単なため、低コストでEDIを始める場合に最適な仕組みです。インターネットEDIと同じく通信手段としてインターネット技術を使用していますが、Web-EDIとインターネットEDIは分けて考えられるのが一般的です。その理由には、Web-EDIはインターネットEDIとは異なり標準化された業界や業種ごとの規格がないため、発注側と受注側双方が独自の規格のデータをアップロード/ダウンロードしてやり取りすることによる手作業が必要となることが挙げられます。取引先が複数社ある場合には、取引先ごとにEDIも異なるのでそれぞれのシステムにログインし直してデータのアップデート/ダウンロードをする必要があります。(これは、多画面現象とも呼ばれています)

Web-EDIの懸念点

  • インターネットがつながっていないと使用できない
  • 取引先の同意が必要
  • 標準化されたルールがない(発注企業側ごとに表示項目やレイアウトが異なり独自仕様が乱立。受注企業側は、取引企業ごとに異なる取引画面に都度切り替えなければならず手間が増える)

現在EDI取引を従来型のシステムで行っている場合はもちろん、これからEDI取引を採用する場合も、Web-EDIの特性をしっかり理解して導入を進めましょう。

まとめ

EDIの2024年問題などEDIを取り巻く環境変化への対応として、今後従来型EDIからインターネットEDIへ主流が移っていくことは時間の問題です。移行を検討する場合には、現状の従来型EDIで実現されている運用がどこまでカバーできるか、仕様変更となる点はどこか、など事前に取引先企業と調整しインターネットEDI運用時の負担増加とならないように留意する必要があります。

次回は、EDI取引と電子帳簿保存法との関連についてご紹介いたします。

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