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令和5年3月期以降の決算の税務申告のポイント
アクタス税理士法人

  • 会社の処方箋

2023年3月23日

令和5年3月期以降の年度決算を迎えるにあたって、法人が確認しておくべき税務項目のうち、重要となる「賃上げ促進税制」を中心に、企業規模別のポイント、中小企業の設備投資について解説します。4月以降に決算を迎える法人についても、同様に適用される内容です。

賃上げ促進税制

青色申告する全企業対象の賃上げ促進税制(大企業向け)

令和4年4月1日以後開始事業年度では、積極的な賃上げを促す観点から、継続雇用者の給与総額を一定割合以上増加させた企業に対して、雇用者全体の給与総額の対前年度増加額の15%(最大30%)の税額控除が認められる制度となります。

令和3年4月1日~(前期) 令和4年4月1日~(今期)
適用要件 給与総額の増加率 新規雇用者給与等支給額の対前年度増加率2%以上 継続雇用者給与等支給額の対前年度増加率3%以上
設備投資
マルチステークホルダーへの配慮
従業員への還元や取引先への配慮を行うことを宣言していること※1
税額控除 控除率を乗ずる対象 新規雇用者給与等支給額
(雇用者給与等支給額の対前年度増加額が上限)
雇用者給与等支給額の対前年度増加額
控除率 基本 15% 15%
上乗せ
(賃上げ)
継続雇用者給与総額の対前年度増加率
4%以上10%を加算
上乗せ
(教育訓練費)
教育訓練費の対前年度増加率20%以上…5%を加算 教育訓練費の対前年度増加率
20%以上5%を加算
控除上限額 当期の法人税額×20% 当期の法人税額×20%
  • ※1
    方針公表が必要になるのは、資本金の額等10億円以上かつ常時使用従業員1,000人以上の大企業

中小企業者等のみ対象の賃上げ促進税制(中小企業向け)

中小企業者等については、令和4年4月1日以後開始事業年度において、雇用者給与等支給額(企業全体の給与)の増加要件を満たすことで、雇用者給与等支給額の対前年度増加額の15%(最大40%)の税額控除が認められる制度となります。

令和3年4月1日~(前期) 令和4年4月1日~(今期)
適用要件 給与総額の増加率 雇用者給与等支給額の対前年度増加率1.5%以上 雇用者給与等支給額の対前年度増加率1.5%以上
税額控除 控除率を乗ずる対象 雇用者給与等支給額の対前年度増加額
雇用者給与等支給額の対前年度増加額
控除率 基本 15% 15%
上乗せ
(賃上げ)
雇用者給与等支払額の対前年度増加率2.5%以上、かつ、次のいずれかを満たすこと…10%を加算

①教育訓練費が対前年度比10%以上
②認定経営力向上計画における経営力向上の証明
雇用者給与等支給額の対前年度増加率2.5%以上15%を加算
上乗せ
(教育訓練費)
教育訓練費の対前年度増加率
10%以上10%を加算
控除上限額 当期の法人税額×20% 当期の法人税額×20%

制度上のポイント

  • 大企業向けの制度では、適用要件は継続雇用者給与等の増減率で判定ですが、税額控除は雇用者給与等支給額で計算することになります
  • 中小企業向けは、適用要件、税額控除ともに雇用者給与等支給額で計算することになります
  • 上乗せ措置の教育訓練費については、確定申告書への添付は廃止され、保存要件となりましたが、適用年度だけでなく、前年度の対象費用の保存も必要になります

大企業向けの税制優遇措置

適用が検討される税制優遇措置

対象税制 優遇措置内容
試験研究費の税額控除試験研究費に一定割合を乗じた金額の税額控除
DX投資促進税制 デジタル関連投資に対して税額控除・特別償却
カーボンニュートラル投資促進税制 脱炭素化設備等への投資に対して税額控除・特別償却
地域未来投資促進税制 地域経済をけん引する事業投資に対して税額控除・特別償却
5G投資促進税制 高度情報通信設備への投資に対して税額控除・特別償却
オープンイノベーション促進税制 スタートアップ企業の投資に際し、投資額を所得控除

税制上の変更点・ポイント

  • 大企業の税額控除の適用要件見直しにおいて賃上げ要件が強化されています
  • 地方税である法人事業税の所得割について年800万円以下の所得の軽減税率が廃止されています
  • 外形標準課税において、賃上げ促進税制が適用される場合は、付加価値額からの控除が行えます

中小企業向けの税制優遇措置

適用が検討される税制優遇措置

対象税制 優遇措置内容
中小企業技術基盤強化税制 試験研究費の税額控除の中小企業版で控除率が有利になる
中小企業経営強化税制 経営力向上計画に基づく投資に対して税額控除・即時償却
中小企業投資促進税制 一定の機械装置等の投資に対して税額控除・特別償却
中小企業防災・減災投資促進税制 自然災害に備える防災・減災設備投資に対して特別償却
固定資産税の特例 先端設備等導入計画に基づく投資に対して固定資産税の軽減

税制上の変更点・ポイント

  • 30万円未満の少額減価償却資産の特例において貸付けの用に供した資産は対象外となっています
  • 業績等の悪化により欠損金が生じた場合、欠損金の繰戻し還付の適用を行うことを検討します
  • 業績等停滞の場合、資産の価値が落ちやすいため、貸倒損失の計上、資産の評価損を検討します

中小企業者等の設備投資に関する税額控除等の優遇税制

中小企業者等が行った設備投資について、適用対象となる設備の金額要件は、それほどハードルが高くないものが多いです。特に中小企業投資促進税制は、事前の計画等なくても適用できるものになっています。

中小企業投資促進税制 中小企業経営強化税制
適用対象法人 青色申告書を提出する中小企業者等 青色申告書を提出する経営力向上計画の認定を受けた一定の中小企業者等
適用期間 令和7年3月31日まで※1に対象設備を取得等して指定事業(電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、娯楽業(映画業を除く)等を除く)の用に供すること
適用対象設備
(中古資産を除く)
次のもので指定事業の用に供するもの
  • 機械設置:160万円以上
  • 測定工具及び検査工具:120万円以上
  • ソフトウエア:70万円以上
  • 貨物自動車:3.5t以上
  • 内航船舶:全て
経営力向上計画に基づき取得する経営力向上に著しく資する設備等で一定の設備
  • 機械設置:160万円以上
  • 工具器具備品:30万円以上
  • 建物附属設備:60万円以上
  • ソフトウエア:70万円以上
選択
適用
特別償却 取得価額の30% 取得価額の100%(即時償却)
税額控除 7%
(資本金3千万円以下の法人に限る)
10%
(資本金3千万円超1億円以下の法人は7%
限度額 税額控除額は合計で法人税額の20%を上限(超える金額については1年間繰越可能)
  • ※1
    令和5年税制改正により延長される予定の期日

3月に決算を迎える法人が多いかと思いますが、3月期以降に決算を迎える法人も同様に適用されます。本コラムが、税務申告担当者の方にとって本年度申告にあたり制度確認の一助となれば幸いです。

著者プロフィール

アクタス税理士法人
税理士、公認会計士、社会保険労務士など100名を超えるプロフェッショナルが中心となり、クライアントのライフステージに応じたあらゆるニーズに対応したサービスを提供しています。

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