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AIカメラとは?機能やできること、工場・製造業での活用事例

搭載された人工知能によって録画した映像・画像を自動処理できるAIカメラ。映像を記録するだけではなく、映像内の人物や対象物を認識・識別することが可能です。近年ではこのAIカメラを活用してより高度な分析や業務効率化を図る企業が増えています。
この記事では、AIカメラの概要から種類による違い、さらに具体的な機能まで導入事例も併せて解説します。

公開日:2025年9月2日

目次

AIカメラとは?

AIカメラとは、搭載された人工知能によって録画した映像・画像を自動処理できるカメラです。撮影した映像を「ただ記録する」だけでなく、内蔵された人工知能(AI)がリアルタイムで映像の中身を解析・認識し、さまざまな付加価値をもたします。

従来のネットワークカメラは、映像を記録・確認できても、記録された情報の分析や解析は人の手で行われるのがスタンダードでした。対してAIカメラは、そうした人力の作業を自動化できることで業務効率化を実現します。さらに、対象物の行動パターンを学習し、通常とは異なるパターンを検知した際に異常を知らせるなど、“AIだからこそできる分析”もAIカメラならではでしょう。

AIカメラシステムとは?

AIカメラシステムとは、AIカメラを含めたプラットフォーム全体のことです。簡単に説明すると、AIカメラは「撮影と解析を行う単体機器」であり、AIカメラシステムは「ネットワーク機器などを組み合わせた統合的なソリューション」を指します。

AIカメラシステムは、解析結果を集約するサーバーやクラウド環境、それらを管理するためのシステムなどで構成され、監視・分析・管理を一元化します。それによって、たとえば侵入者や放置物を自動検出して即時でアラートを出したり、従業員の危険行動を検知したりと、現場で発生する“違和感”をリアルタイムで検知できます。

また、労働災害防止や防犯以外では、製造工程における検査の自動記録などにも活用されています。作業効率を高めるだけではなく、サービス品質の安定化にもつながるため、人手作業によるエラーが起きやすい環境ほどその恩恵は大きいでしょう。

AIカメラの種類

AIカメラには、大きく分けて以下の2種類があります。

エッジ型AIカメラ クラウド型AIカメラ
カメラ内部にAIチップを搭載し、映像を外部に送信せず現地で解析するタイプ。 撮影した映像をクラウドサーバーに送り、サーバー上で解析するタイプ。

エッジ型AIカメラは、映像をカメラ内で解析するため通信遅延の心配が無く、データを外部に送らない分プライバシー保護にも優れている一方で、クラウド型AIカメラは解析機能を最新の状態に保つことができますが、通信依存による遅延やセキュリティ管理が重要となります。

エッジ型AIカメラ

エッジ型AIカメラは、撮影した映像をカメラ内部のAIチップで直接解析する方式です。解析結果は外部への通信を介さずその場で生成されるため、通信遅延がほとんどなく即時にアラートを出せるのが大きな特徴です。

また、映像データを外部サーバーに送らないことから、情報漏洩のリスクを抑えられます。一方で、搭載できるAIモデルのサイズには限界があるため、複雑な解析や頻繁なアルゴリズム更新には向きません。
後述のクラウド型よりもネットワーク通信量が少ないことでランニングコストが比較的抑えやすいといったメリットもあります。

クラウド型AIカメラ

これに対しクラウド型AIカメラは、撮影した映像をインターネット経由でクラウドサーバーに送信し、そこで高性能なAIエンジンによって解析を行います。サーバー側でデータを処理できるため、AI機能のアップデートも容易です。

ただし、映像の送受信が必要になることから、ネットワーク障害が発生してしまうと解析が止まるリスクがあります。また、データを外部に送るという性質上、セキュリティ対策や通信コストの管理がより重要になるでしょう。

エッジ型とクラウド型にはどちらもメリット・デメリットがあるため、用途や環境、求める解析精度に応じて、選択するor使い分けることがポイントです。

AIカメラの活用メリット

AIカメラの主なメリットは次の5つです。

  • 映像から特定のオブジェクトを自動で検出できる
  • 映像内の人物を識別・特定できる
  • オブジェクトや人の動きを学習して、異常を検知できる
  • 製品の欠陥や異常を早期に発見できる
  • 蓄積されたデータから最適化案を得られる

AIカメラは、人の目では見落としがちな細かな対象物も瞬時に抽出できます。また、映像内の人物を識別・特定できることで、入退室管理や来訪者の行動履歴の把握が容易になり、セキュリティや顧客サービスの向上に直結します。

さらには、日常的に観測されるオブジェクトや人の動きを継続的に学習し、「いつもと違う動き」を異常として検知できるため、事故やトラブルを未然に防止することも可能です。

工場や製造ラインにおいては、こうした異常検知能力を活かして製品の欠陥や異常を人よりも早い段階で発見できる点が特に大きな強みです。微細なキズや不揃いといった品質問題も、高精度な画像解析で速やかにアラートを出し、ライン停止や補修作業をスムーズに行えるでしょう。

らに、これらの運用を通じて蓄積された映像データや検知ログの分析をすれば、稼働状況や動線のボトルネックまで可視化でき、作業の効率化やレイアウト改善などの最適化案を得ることができます。

結果として、安全性の向上だけでなく、コスト削減や生産性アップにまでつながる点がAIカメラの大きなメリットです。

何ができるのか?AIカメラの機能・できること

AIカメラには、従来のカメラでは難しかった高度な映像解析機能が搭載されています。それによって、以下のことが可能となります。

  • エッジ検出
  • 人物認識
  • 動体認識

これらの機能を組み合わせることで、防犯・セキュリティ強化だけでなく、マーケティング分析や製品の品質向上、業務効率化など幅広い用途に対応できるでしょう。

それぞれについて、詳しく解説していきます。

エッジ検出

エッジ検出とは、画像の中で「明るさや色(輝度)が急激に変化している場所」を抽出する処理のことです。物体の輪郭や形状をはっきり捉えるための前処理としてよく使われます。

AIカメラではこのエッジ検出を活用し、次のように高度な映像解析を実現しています。

  • 外観検査による欠陥の検出
  • 製品や部品の組み立て状態の確認
  • 部品の長さや穴の位置などの計測・寸法

とくに外観検査においては、人の目で判定する必要があるため、疲労や担当者の主観による見逃しといった問題が発生しがちです。

そこでAIカメラを活用すれば、製品や部品の表面をリアルタイムで撮影、キズや異物混入など微細な欠陥を自動で判別でき、検査を安定しやすくなるのです。

たとえば、電子部品のハンダ付け不良や自動車部品の塗装ムラなどをその場で検出すれば、不良品の発生をかなり抑えられるでしょう。

人物認識

人物認識とは、カメラが映像内の「人」を自動で見つけ出し、それが誰であるかを特定したり、属性や行動を解析したりする機能です。

それによって、たとえば監視エリアに人が侵入した際、不審者かどうかを判別して検出された場合にアラートを鳴らすことも可能です。さらに、顔認証システムと併用すれば、人物ごとに個別のアクションやアラートを出すこともできます。

入退場の管理・認証をはじめ、安全装備を着用しているかどうかのチェック、従業員の動線や滞在しやすい場所なども記録・管理できるなど、製造業の現場で活用すれば安全性の向上だけでなくさまざまなコストの削減にもつながるでしょう。

動体認識

動体認識とは、映像内で「動いているもの(人やモノ)」を検出する技術です。従来の監視カメラでも、背景とフレームの差分を見ており「動きがある領域」を捉えることは可能ですが、AIカメラは人物や車両など「意味のある動き」と「風で揺れる木の葉」などのノイズを区別して検出できます。

AIカメラにおける動体認識は、一定の変化量を超えた領域を「動いている部分」として抽出する他、ディープラーニングによって人やモノなどを推定することも可能です。単なる領域の差分ではなく「通常とは異なる動き」も検知できることで、たとえば、普段であれば通過するだけのエリアで長く止まっている動体を「不審な挙動」として発見できるのです。

また、エリア内において移動する方向や速度を推定し、「逆走している」「急に走り出した」といった動きを抽出すれば、従業員の不安全行動も抑止できるでしょう。

AIカメラの使い方や用途例を実際の活用事例・導入事例からご紹介

AIカメラは、工場など製造業のあらゆる分野で導入が進んでいます。これまでの「監視カメラによる防犯」という役割からさらに高度化し、さまざまなシーンで大きな効果を発揮しているAIカメラの活用事例を、キヤノンの「映像DXシリーズ」からいくつか紹介します。

工場の労災防止で活用

AIカメラは、工場の労働災害防止にも活用されています。カメラとAI画像解析を組み合わせ、「疲労によるふらつき」や「作業中の不安全行動」をリアルタイムで検知し、警告音を発することで重大な事故を未然に防止します。

たとえば、長時間労働での体勢・姿勢の崩れを異常行動として判断し、即座に管理者に通知すれば、事故が起こる前に対処できる可能性が格段に高まるでしょう。

さらに、蓄積したデータを分析することで、危険行動の傾向や発生要因も把握が可能です。それにより、作業手順や配置の見直しなど、具体的な改善策を実施できます。

製造業の外観検査で活用

製造業や設備保全の現場で行われる人手による外観検査(目視検査)に代わって、AIカメラが自動検査を行います。

大型の製品や複数部位の外観検査では、検査箇所ごとに確認・撮影が必要なため、人手が逼迫しやすいなどの問題が発生しがちです。さらに、作業者の疲労や慣れによって、わずかなキズや異常を見逃す可能性もあります。

そこでAIカメラを活用することによって、人の目では困難な微細の欠陥も検出し、検査精度を安定的に維持できるようになります。また、PTZ機能搭載のネットワークカメラを用いることで、複数箇所の自動巡回撮影を1台で撮影できます。検査箇所ごとにカメラを増設せずに済み、省スペースかつコスト削減が実現できるのです。

判定結果とともに検査時の画像を自動で保存し、不具合発生時の振り返りも容易になります。検査履歴を可視化し、現場改善のデータとして活用できます。

施設の防犯(侵入検知)で活用

カメラとAI技術を組み合わせ、危険エリアへの不正侵入をリアルタイムで検出・通知することで、施設の防犯強化を図ることができます。

工場や倉庫など24時間稼働しない施設では、夜間や休日の人手不足時に無断侵入リスクが高まります。また、化学薬品の倉庫や高圧設備、機械稼働中エリアなど立入りが厳禁とされる区域では労働災害が発生しやすいです。そのため、万が一の侵入時に事故を防ぐ仕組みが必要になります。

キヤノンの「侵入検知サービス」は、事前に設定した立入り禁止区域や危険設備まわりの映像を常時モニタリングし、人物の侵入をAIが自動検出します。検知と同時にアラートを発信し、管理者への即時通知を行うことで、不審者や無許可立入りによる事故・犯罪を未然に防ぎます。

キヤノンのおすすめのAIカメラ

AIカメラの導入を検討している企業にとって、実績のある製品選びは非常に重要です。「映像DXシリーズ」は、クラウドとAI技術を融合させた次世代の映像ソリューションとして、多くの現場で導入が進んでいます。

「映像DXシリーズ」は、工場や製造業、施設の防犯といった幅広い用途に対応しており、以下のような機能を備えています。

  • 労災防止支援:作業員の転倒や危険行動をAIが検知し、即時にアラートを発信。安全管理を強化
  • 外観検査の自動化:製品の外観を自動で撮影・記録し、検査結果と紐づけて管理。品質管理の効率化に貢献

さらに、クラウド型のシステム構成により、遠隔地からの映像確認やデータ管理が可能で、複数拠点の一元管理にも対応しています。導入後の運用支援やカスタマイズ性も高く、企業ごとの課題に合わせた柔軟な対応が可能です。

AIカメラの導入を通じて、安全性・生産性・防犯性を同時に高めたいとお考えの方は、ぜひキヤノンのAIカメラをご検討ください。

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