2040年問題とは?2040年問題が引き起こす労働市場の変化とその対策

2040年問題とは、日本社会が2040年に直面すると予測される、少子高齢化や労働力人口の減少が引き起こす社会的課題の総称です。
企業においても、労働力不足に伴う生産性の低下、採用コストの増大、さらには競争力の低下が懸念されます。
特に2040年は、団塊ジュニア世代が65歳以上になるタイミングであり、従来の経営体制では乗り越えられない新たな課題が生まれるでしょう。このような未来に備え、企業が今から取り組むべき対策について本コラムで解説します。
目次
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2040年問題とは
- 2030年問題とは
- 2040年問題とは
- 2030年問題と2040年問題の違い
- 日本の2040年問題の特異性
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2040年問題が社会に与える影響
- 労働力不足のさらなる深刻化
- IT技術の革新と人材不足
- 社会保障制度の破綻
- インフラ・建築物の老朽化
- 経済の縮小化
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2040年問題に企業が直面する課題
- 慢性的な人材不足
- 経営体制の維持が困難になる
- 採用競争のさらなる激化
- DX化の遅れによる競争力低下
- 地域市場の縮小による収益機会の喪失
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2040年問題に対する企業の対策
- M&Aの検討
- 人材確保を実現する魅力的な企業づくり
- 雇用対象の拡大と環境整備
- DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
- アウトソーシング(BPO)の活用
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2040年問題に対する企業の対策例
- イオンモール株式会社|女性の活躍推進と柔軟な働き方の提供
- EY Japan株式会社|介護と仕事の両立支援による離職防止
- 株式会社NISSYO|DXによる業務効率化と人手不足対策
- まとめ
2040年問題とは

そもそも「20xx年問題」とは、それぞれの年に少子高齢化や労働人口減少などの社会問題が顕在化すると予測されることを指します。
本コラムで紹介する2040年問題以外にも、目前に迫る2030年問題も注目されています。まずはそれぞれの問題がどのようなものなのか、解説していきます。
2030年問題とは
2030年に顕在化すると考えられている問題のキーワードは「少子高齢化」です。内閣府が公表している「令和6年版 高齢社会白書」によると日本の総人口は2023年10月1日時点で1億2,435万人であり、うち65歳以上の人口は3,623万人でした。つまり日本の人口の29.1%が高齢者ということです。今後も高齢者の割合は増加し、2030年には約30.8%になると予測されています。
一方で出生数は減少し続けており、昭和25年には65歳以上の者1人に対して現役世代(15~64歳の者)が12.1人いたのに対し、令和5年には2.0人になっています。実際、2030年の労働需要が7,073万人であるのに対し、供給される労働人口は6,429万人と、約644万人もの人材不足が生じると見込まれています。
このように、日本の生産年齢人口が顕著に減少すると、経済活動が縮小するだけでなく税収も減少し、高齢者や社会を支えるための財源不足にもつながります。
企業にとっても、労働力不足と人材獲得競争の激化が一層懸念されるでしょう。これにより、従来の経営体制を維持できない企業が増加する可能性が高まるでしょう。
2040年問題とは
本題である2040年問題は、前述した少子高齢化による労働力の減少がさらに深刻化する問題です。2040年前後には、1971年~1974年生まれの団塊ジュニア世代(第二次ベビーブーム世代)が65歳以上になるため、日本の高齢者数がピークに達すると予測されています。このため、2040年以降は高齢化による影響が特に顕著になるでしょう。
「令和6年版 高齢社会白書」によれば、2030年には65歳以上人口の割合が30.8%ですが、2040年には34.8%に達するとされています。また、65歳以上人口に対する現役世代の割合も、2030年の1.9人から2040年には1.6人に減少し、現役世代の不足がさらに深刻化すると見込まれています。
この傾向が続くと、労働力不足の影響が特に顕著なのが医療・運輸・建設・教育分野です。これらの分野で人材が不足すれば、一企業にとどまらず、国全体の体制維持すら危ぶまれることになります。2040年問題は、日本の未来を左右する重要な問題として、真剣に向き合う必要があります。
2030年問題と2040年問題の違い
2040年問題と2030年問題は、いずれも日本の将来に深刻な影響を及ぼす可能性のある重要な課題ですが、その焦点や背景には明確な違いがあります。
2030年問題は、主に少子高齢化に伴う労働力不足や年金制度の持続可能性といった制度面の課題に焦点が当てられていました。この課題に対しては、女性や高齢者の労働参加促進、外国人労働者の受け入れといった労働力確保の施策が講じられてきました。
一方で2040年問題は、人口減少がさらに深刻化し、加えて地域間の人口格差、医療・介護の需要急増、社会インフラの維持困難など、より複雑で多層的な問題を含んでいます。たとえば、地方では人口減少によってコミュニティの機能が失われ、行政サービスや交通、医療の持続が難しくなると予測されています。
2030年問題で得られた教訓を踏まえ、2040年問題に対しては、地方創生や地域コミュニティの再活性化など、持続可能な地域社会の構築がより重要になります。地域の特性を活かした多様で柔軟な施策の推進が不可欠です。
日本の2040年問題の特異性
日本の2040年問題は、著しく進行する少子高齢化を背景に、経済・社会・地域にわたる多岐にわたる課題を引き起こすと予測されています。他国と比較しても、その進行速度と影響の規模は顕著であり、特に労働力人口の急減が深刻な懸念材料となっています。その結果、経済成長の鈍化や社会保障制度への負担増加が避けられない状況にあります。
このような課題に対応するためには、高齢者の労働参加の促進や、外国人労働者の受け入れ拡大といった施策が求められます。また、地方の活性化によって都市圏への人口流出を抑制し、子育て支援を強化することで出生率の回復を図ることも不可欠です。こうした包括的な取り組みを進めるためには、政府と民間企業が連携し、短期的な対処ではなく、長期的かつ持続可能な社会の構築を見据えた戦略的対応が求められます。
海外の事例と比較
2040年問題への対応を考える際、海外の先進的な取り組みから学ぶべき点は多くあります。特に、スウェーデンやデンマークなどの北欧諸国は、少子高齢化社会においても持続可能な制度設計に成功している好例です。
たとえばスウェーデンでは、高い税率を前提に充実した社会福祉制度を整備し、育児休暇制度や保育サービスが手厚く提供されています。これにより、働く親を支援し、女性の社会参加が促進されています。
一方、デンマークでは柔軟な雇用制度(フレクシキュリティ)を導入し、生涯学習を推進することで、高齢者の継続的な就労を後押ししています。これらの制度は、単なる高齢化対応にとどまらず、労働市場の活性化や社会の包摂にも貢献しています。
これらの成功事例は、日本にとっても大いに参考になります。重要なのは、海外の制度をそのまま導入するのではなく、地域ごとの特性や社会構造に応じて柔軟に応用・実装していくことです。グローバルな視点を持ちつつ、ローカルな実態に即した政策を展開することが、2040年問題への効果的な対応につながります。
2040年問題が社会に与える影響

では、2040年問題が社会に与える具体的な影響とは何なのでしょうか。ここでは、特に重要視される5つの項目について解説します。
労働力不足のさらなる深刻化
2040年にかけて、労働人口の減少はさらに深刻化し、企業に人材不足という直接的なダメージをもたらします。
2040年推計の生産年齢人口は6,213万人です。2030年推計の生産年齢人口である7,076万人と比較すると、10年間で863万人もの減少が予測されます。
また、2020年時点の生産年齢人口推計は7,509万人なので、2030年の生産年齢人口と比較すると433万人減少しています。この2020年~2030年の10年間と比べると、2030年~2040年の減少数は約2倍になり、加速度的に労働力が減少していくのがわかります。
IT技術の革新と人材不足
2040年問題に対応するうえで、IT技術の革新は不可欠な要素です。AIやビッグデータ、IoTなどの先端技術は、企業の業務効率化や新たな価値創出を可能にします。しかし、それらを活用できる高度なスキルを持った人材の不足が、今後ますます深刻化すると予想されています。
こうした状況に対応するためには、企業による従業員のスキルアップ支援が重要です。たとえば、オンライン学習プラットフォームや社内研修制度を活用し、社員が最新技術を継続的に学べる環境を整備することが有効です。これは若手社員だけでなく、中高年層の従業員に対しても同様に提供する必要があります。
企業が人材育成への投資を継続的に行うことで、IT人材の裾野が広がり、結果として技術革新のスピードを支える土台が整います。このような取り組みは、単に企業の競争力強化にとどまらず、社会全体の持続可能性を高めるためにも極めて重要です。
社会保障制度の破綻
労働人口が減少することで、国の税収も減少し、社会保障制度の破綻が懸念されます。
厚生労働省が2019年に公開した資料によると、社会保障給付金総額は2025年度が140.2~140.6兆円(計画ベース)であるのに対し、2040年度は188.2~190.0兆円となる見通しです。このように社会保障給付金額は2040年にかけて増加することが予測されています。
しかし、前述の通り労働人口がますます減少すれば、給付金のために必要な財源が確保できなくなる可能性も高まり、社会保障制度そのものが持続できなくなる可能性もあります。
インフラ・建築物の老朽化
労働人口の減少に伴い財源が減少すると、社会保障制度のみならずインフラや建築物の維持にも影響が出てきます。
2040年頃には、高度成長期に整備された道路や橋梁、水道、公共施設などのインフラの老朽化がピークを迎えると予測されています。補修や更新のための予算が不足したり、整備のための労働力が不足したりした場合、これまでのように恒久的な安全性が維持できません。社会生活や経済活動に影響が及び、現在享受している快適な生活が損なわれる恐れがあります。
経済の縮小化
労働人口は購買力のある消費者でもあるため、労働力不足は日本経済の縮小化にもつながります。生産年齢人口に対する従属人口の比率が上昇する傾向が続けば、日本の経済成長も阻害されてしまうのです。
さらに、経済活動の不活発化により、投資先としての魅力が減少してしまうことによってさらに経済規模の縮小を生み出す「縮小スパイラル」に陥ってしまう可能性も指摘されています。
2040年問題に企業が直面する課題

ここまで2040年問題が社会全体に与える影響について説明してきましたが、各企業はどのような課題に直面するのでしょうか。ここでは、特に影響が大きい3つの課題について紹介します。
慢性的な人材不足
生産年齢人口の減少により、企業の人材不足はさらに加速することが予測されます。人材不足による影響は多岐に渡ります。
たとえば、既存の従業員の負担が増え、心身に支障をきたす恐れがあります。また、高齢化により社員が退職すると、経験を積んだ社員がいなくなることで教育体制が維持できなくなる、専門技術を持った人材がいなくなり業務が回らなくなる、といったことも懸念されるでしょう。そうなればサービスの品質維持も難しくなります。その結果、顧客満足度の悪化や収益減少により業績悪化につながるリスクが発生してしまいます。
ここからは、特に人材不足の影響が大きいとされる業界をご紹介します。
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介護・医療業界
高齢化が進むため、医療や介護といったサービスの需要はますます高まります。今後の日本では高齢者の単身世帯が増加傾向にあり、2040年には17.7%が単身世帯となるという調査結果があります。その状況への対策として、高齢者が自宅でも医療・福祉サービスを受けられるような体制づくりが課題となってきます。
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建設業界
建築業界は建築士、施工管理者、職人など専門知識やスキルが必要になる業界のため、人材不足がより深刻とされています。今後、インフラや建築物の老朽化も進む中で、インフラの整備や建設ができる人材が減少してしまっては、現在と同水準の生活レベルを維持できなくなる可能性があります。
加えて建設業界は長時間かつ肉体労働であることから労働条件が厳しいというイメージが強く、人材の確保が難しい点も課題です。
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IT業界
少子高齢化により人材の確保が難しくなる状況では、IT技術による業務効率化が積極的に取り込まれる傾向が強くなっていくでしょう。AIを活用した技術も近年注目を集め、多くの企業が導入を進めています。
しかし、拡大する需要の一方で、IT人材の不足が懸念されています。ITは専門性の高いスキルかつ、新しい技術がますます開発されていく業界です。スキルを深めることにも時間を要するため、IT業界内でも1つの技術に精通する技術者を増やすことは容易ではないのです。
また、新しい技術に対する有識者をすぐに増やすことも難しいため、慢性的に人材不足や教育体制が課題となっている業界です。
経営体制の維持が困難になる
生産年齢人口の減少によって従業員数が減少すると、現在の経営体制を維持することが難しくなります。人材の減少により、1人あたりの生産性向上やアウトソーシングの検討など、早期の対策が求められます。
また、中小企業においては特に後継者問題が懸念されます。経営者が高齢化して退職を検討する一方、役員も同世代で退職予定のため、経営を引き継ぐ人材が育たず、事業撤退を余儀なくされる企業が増えると予測されています。
採用競争のさらなる激化
すでに各業界で人材不足は叫ばれていますが、今後ますます人材獲得が困難になるでしょう。
特に、中小企業は大手企業と比較して給与の支払額など待遇の差から、応募時点で不利になる傾向があります。加えて、人材不足であるという実績が出てしまうと、自身の業務への負担や残業時間が多くなるのではないかというイメージから、求人を出しても人が集まらないといった状況が懸念されます。
人材の確保のみならず、企業のイメージ向上のため福利厚生や働き方の多様化等、内部体制を整備するという対応も重要です。
DX化の遅れによる競争力低下
2040年問題によって労働力人口の減少が進む中、企業にとっては「限られた人材でいかに業務を効率化するか」が喫緊の課題となります。そのカギを握るのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進です。
しかし、実際にはDXが思うように進んでいない企業も少なくありません。IT人材の不足や現場との認識のギャップ、既存業務への依存などが障壁となり、ペーパーレス化やクラウドの活用、AI・RPAの導入が部分的にとどまっているケースも多く見られます。
DX化が遅れることで、業務の非効率さが慢性化し、結果として生産性の低下や業務コストの増加を招きます。加えて、デジタル技術を活用する競合他社との差が広がれば、市場シェアの喪失や企業競争力の低下にもつながりかねません。
今後は人材不足が慢性化することを前提に、省力化・自動化を前提とした業務設計や、デジタルツールの本格導入が企業の生き残りに不可欠です。DXは一部の企業だけの取り組みではなく、全業種・全規模で必要とされる構造改革といえるでしょう。
地域市場の縮小による収益機会の喪失
人口減少が進行する中で、国内市場の縮小は避けられない現実です。特に地方部では若年層の流出や高齢化の加速により、2040年までに多くの自治体が消滅可能性都市になると予測されています。
これにより、地域に根ざしたビジネスモデルを持つ企業は、顧客基盤そのものが縮小するリスクに直面しています。小売・サービス・不動産など、地域密着型産業では特に深刻で、売上の減少や事業継続の難化が現実的な課題となります。
今後は、都市部との二極化に備えた事業の再構築や、新たな販路・取引先の開拓、さらには海外市場やBtoB分野への展開など、多角的な対応が必要です。企業は単なる「人口減少への対応」ではなく、縮小市場でどう成長を描くかという視点が求められています。
2040年問題に対する企業の対策

2040年問題に向けて、各企業には大きな課題があることが分かりました。では、その課題に対して企業ではどのような対策ができるのでしょうか。ここでは5つの具体例をご紹介します。
M&Aの検討
人材不足、特に後継者問題に悩む中小企業はM&Aを検討することも有効です。代表的なM&Aとは、企業間での買収や合併を指しますが、広義な意味では業務提携や資本提携もM&Aにあたります。
マイナスイメージが湧く方もいるかもしれませんが、近年、M&Aを実施している企業数は右肩上がりです。実際、中小企業庁の発表によると、半数近くの中小企業が後継者不在という状況に悩んでいます。
2024年9月には、2025年から「M&A仲介協会」が団体名を「M&A支援機関協会」に変更し、より多くの専門家から意見を募れるように体制を変更するという発表もありました。自主規制ルールの改訂や特定事業者リストの運用などを実施することで、さらに業界健全化に向けての動きが加速するのではないかという見方もあります。
価値ある事業を継承していくためにも、マイナスイメージに囚われ過ぎず積極的にM&Aも検討してみましょう。
人材確保を実現する魅力的な企業づくり
採用競争が激化する社会で人材を確保するためには、企業の価値を高め、他社との差別化を行う必要があります。では、どのような施策が他社との優位性につながるのでしょうか。
福利厚生の充実
企業としての魅力をアピールするために最も効果が期待できるのは、福利厚生を充実させることです。具体的には、下記のような福利厚生が考えられます。
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心身の健康サポート
代表的な内容は健康診断の費用負担や軽減です。企業によってはフィットネスジムの利用補助や、産業カウンセラーによるケア等も実施しています。
社員の心身を健康に保つことは、結果的に生産性の向上につながるため、企業にもメリットがあるのです。
また、「健康経営」という言葉も近年注目され始めています。高齢化が進む社会で、健康に目を向けたサポートは今後ますます期待されるでしょう。
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自己啓発支援
代表的な内容は資格取得費用の負担や軽減、スキルアップのための研修やカリキュラムの無料提供です。また、社内におけるキャリアアップ面談の実施も効果的です。これらの福利厚生は、自己成長を求める社員の育成にもつながります。社員の学習をサポートすることにより個人のスキルが向上すれば、結果的に企業にも利益がもたらされます。
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食事・家賃補助
近辺の飲食店より安価で利用できる社員食堂の設置や、家賃の費用を一部負担する福利厚生です。社員の生活費の負担を減らす福利厚生は時代や年代を問わず求められる内容です。実施できれば非常に求職者にとって魅力的な福利厚生でしょう。
働き方の多様化促進
働き方や時間帯に選択肢があり、通勤時間の短縮や休息時間の増加によって、従業員の生活の質の向上につながります。具体的には、リモートワーク・時短勤務・フレックス制度の導入です。
コロナ禍以降は特にリモートワークが拡大し、ワークライフバランスを重視する傾向も増えてきました。
また、働き方に加えて副業に寛容な企業であることも注目されるポイントとなってきています。収入の柱を増やすことで社員の心の安定につながり、副業で身に着けたスキルを本業に活かすことで結果的に企業への利益につながる可能性もあります。
雇用対象の拡大と環境整備
人材不足が懸念される社会背景で、今まで通りの雇用を継続しているだけでは労働力人口不足の影響を受けやすくなってしまいます。そのため、雇用対象を拡大することも効果的な対策です。
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女性
出産や育児を機に、築いてきたキャリアから一線を引いた形態で働いている女性が数多く存在します。時短勤務やリモート勤務を積極的に取り入れ、女性の経験値や知識を引き続き仕事に活かせる環境づくりを実施してみましょう。企業にとっても即戦力社員の減少を防ぐというメリットになります。
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シニア人材
長いキャリアや専門知識を持っているにも関わらず、年齢で足切りをされてしまう労働者が多く存在しています。採用基準から年齢を取り払ったり、長期雇用制度を設けたりする等の取り組みを検討してみましょう。積極的なシニア人材採用は、優秀な人材の確保だけでなく、社内の教育体制を維持できるメリットもあります。
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外国人労働者
日本人の人材確保だけでなく、外国人の労働者を積極的に雇用することも選択肢のひとつになります。
しかし、外国人労働者を採用するためには、言語や文化の違いを受容できる受け入れ態勢の構築、ビザや雇用条件などの法制度の理解と遵守など様々な課題があります。
また、グローバルな人材は世界の企業との人材確保競争になるため、給与や福利厚生など待遇面の魅力を充実させることも重要です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して企業の業務プロセス、ビジネスモデル、企業文化や価値観を変革する取り組みです。労働人口の不足が進む中、DXの推進によって業務の効率化や新しい働き方を実現し、限られた人材でも生産性を高めることが求められます。以下の対策に沿って、DXの導入を進めていきます。
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業務効率化と自動化の推進
業務プロセスをデジタル化し、特に定型業務を自動化することで、人手に頼らずに効率的な業務運営が可能になります。たとえば、クラウド技術を活用して書類のデジタル保存を進め、データ共有や検索を容易にするほか、経理や勤怠管理の計算作業を自動化することで、作業時間を削減し、人員負担を軽減します。こうした効率化によって少人数での運営が実現でき、人件費の削減にもつながります。
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顧客対応の迅速化
デジタル技術を活用して顧客データを迅速に分析することで、少ない人員でも顧客ニーズを把握し、より効率的に対応することが可能です。これにより、手作業に頼ることなく、サービス品質を維持しながら顧客満足度を向上させることができます。
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新しいビジネスモデルの構築
DXを通じて、オンラインプラットフォームの活用やリモート対応のサービス提供を進めることで、対面の接触を減らしながら販売やサービスの幅を広げることが可能です。たとえば、オンラインでの製品販売やリモートサポートを取り入れることで、少人数でも広範囲な顧客対応ができ、遠方の顧客層を取り込むことができます。これにより、従来以上に効果的なサービス提供が実現できます。
アウトソーシング(BPO)の活用
企業が直面する課題として、少子高齢化による人材不足や業務効率化の必要性が挙げられます。その中で注目されているのが、業務の一部を外部に委託するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)です。BPOを戦略的に活用することで、企業は内部リソースを最適化し、競争力を高めることが可能になります。
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コスト削減と業務効率化
BPOの最大のメリットのひとつは、コスト削減と業務効率化の両立です。非中核業務や専門性が求められる業務を外部に委託することで、必要な人員や設備投資を最小限に抑えられます。
たとえば、バックオフィス業務やカスタマーサポートの分野では、専門業者の効率的な運用により、コストを大幅に削減することが可能です。同時に、社内リソースを重要な戦略的業務に集中させることで、全体の生産性が向上します。限られたリソースを最大限活用するための手段として、BPOは極めて有効です。
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専門的スキルと技術の活用
急速に進化する技術や高度な専門性が求められる分野では、社内で知識を育成するには時間とコストがかかります。
BPOを利用すれば、AIやデータ分析、ITインフラ管理など、高度な技術を持つ専門業者のリソースを短期間で導入可能です。特に、サイバーセキュリティや高度な分析技術が求められる場合、最新の知見を活用することで競争力を強化できます。
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業務フローの柔軟性向上
ビジネス環境が急激に変化する中、業務フローの柔軟性を確保することは重要です。BPOの活用によって、需要の急増や予期せぬ業務量の変動にも柔軟に対応できます。
たとえば、繁忙期に必要な人員やスキルを迅速に確保することが可能です。これにより、過剰なコストを抑えつつ、安定した運用を実現します。外部リソースを活用することで、ビジネスの変化に適応しやすい仕組みを構築できるのです。
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リスクの分散
業務をすべて自社で抱え込む場合、特定業務の障害や人的リソース不足が発生した際のリスクが大きくなります。一方で、業務を外部に委託することでリスクを分散することが可能です。
たとえば、セキュリティ管理やデータ保護といった領域では、専門業者に委託することで、最新の技術や知識を駆使した万全なリスク対策が実現します。こうした外部リソースの活用は、企業の安定運営に大きく寄与します。
2040年問題に対する企業の対策例
2030年問題に向けた対策に今から取り組むにあたり、まず何から手をつけるべきか、どのように取り組めばよいかを検討する際には、他社の取り組みを参考にするとよいでしょう。
ここでは、企業が実施している取り組みの中から、2030年問題への対策として参考になる事例をいくつかピックアップし、成功事例としてご紹介します。
イオンモール株式会社|女性の活躍推進と柔軟な働き方の提供
2040年問題の要因の一つである「働き手の減少」への対策として、イオンモール株式会社では女性の活躍推進を強化しています。
同社は、管理職研修や事業所内保育施設の整備、週休3日制度の導入など、多様な働き方を支援。これにより、女性管理職比率は2016年度の13.7%から2023年度には22.6%にまで上昇しました。
長期的なキャリア形成を支援する制度設計により、慢性的な人材不足への対応と経営体制の安定維持が期待されています。
EY Japan株式会社|介護と仕事の両立支援による離職防止
今後さらに増加する高齢化社会において、介護離職の増加は企業にとって深刻な問題となります。EY Japanでは、従業員が安心して仕事と介護を両立できるよう、フレックスタイム制や在宅勤務制度を積極的に導入。
さらに、オンライン介護セミナーの開催や、社内向けの介護ガイドブックの配布など、情報支援にも力を入れています。
これにより、介護が理由で退職せざるを得ないケースを減らし、企業の生産性や人材維持に貢献しています。
株式会社NISSYO|DXによる業務効率化と人手不足対策
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、2040年問題に対する有効な解決策のひとつです。株式会社NISSYOでは、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入し、手作業による定型業務を大幅に削減。
また、社内システムの統合と情報のリアルタイム共有により、意思決定の迅速化と業務の効率化を実現しています。
人手不足を補完するテクノロジー活用は、労働環境の改革と持続可能な経営に直結する重要施策といえるでしょう。
まとめ|2040年問題を見据えて検討したいBPO

少子高齢化による人材不足が今後さらに深刻化することは、内閣府のデータでも示されています。2040年問題を背景に、企業はDX推進による業務効率化や外部リソースの活用など、多面的な取り組みが求められています。
自社リソースだけで全てを賄うことが難しい場合には、BPOを活用することも有力な選択肢となります。BPOは、業務負担を軽減するだけでなく、外部の専門知識やスキルを取り入れることで、より戦略的な業務改革を実現します。
私たちキヤノンマーケティングジャパングループは、ITとBPOを組み合わせ、お客さまのビジネス変革を全力でサポートします。ぜひご相談やお問い合わせをお待ちしております。
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