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2050年問題に向けた持続可能な経営とは?未来を見据えたアプローチ

  • 生産性向上
  • 働き方改革

2050年問題は、少子高齢化と労働力不足の深刻化から引き起こされる社会的課題の総称です。
企業においても、採用難や人手不足による業務の停滞など、厳しい現実に直面することになるでしょう。2050年問題は単なる未来の問題ではなく、今すぐにでも準備を始めるべき課題です。
本コラムでは、2050年問題が企業に与える影響や、これからの時代に企業がどのような対策をとるべきかについて解説します。

目次

2050年問題とは

本コラムで紹介する2050年問題とは、2050年で初めて表面化する問題だけではなく、2030年、2040年問題が深刻化した状態でもあります。
そのため、「2050年問題の解決に向けては、目前の2030年問題や2040年問題への対策も欠かせません。まずはそれぞれの問題がどのようなものなのか、解説していきます。

2030年問題とは

2030年に顕在化するとされる主な課題は『少子高齢化に伴う労働力不足』です。内閣府が公表している「令和6年版 高齢社会白書」によると日本の総人口は2023年10月1日時点で1億2,435万人であり、うち65歳以上の人口は3,623万人でした。つまり日本の人口の約3割が高齢者ということです。今後も高齢者の割合は増加し、2030年には約30.8%になると予測されています。

一方で出生数は減少し続けており、昭和25年には65歳以上の者1人に対して現役世代(15~64歳の者)が12.1人いたのに対し、令和5年には2.0人になっています。実際、2030年の労働需要が7,073万人であるのに対し、供給される労働人口は6,429万人と、約644万人もの人材不足が生じると見込まれています。

2040年問題とは

2040年では、前述した少子高齢化による労働力の減少がより深刻になることが予測されます。2040年前後には1971年~1974年に生まれた団塊ジュニア世代(第二次ベビーブーム世代)が65歳以上に達することで、日本の高齢者人口はピークを迎えるとされています。このため、2040年以降は高齢化による影響が特に顕著になるでしょう。

「令和6年版 高齢社会白書」によれば、2030年の65歳以上人口割合が30.8%ですが、2040年には34.8%に達するとされています。また、65歳以上人口に対する現役世代の割合も2030年は1.9人から、2040年は1.6人に減少し、現役世代の比率低下がさらに深刻化すると予測されています。この傾向が続くと、一企業にとどまらず国全体の体制の維持すら危ぶまれることになります。

2050年問題とは

最後に、本題である2050年問題について解説します。
「日本の将来推計人口」によると、日本では、75歳以上の人口が2054年まで増加し、最終的に約2,449万人に達すると推測されています。つまり全人口の25%が75歳以上の高齢者となるのです。これは史上例を見ない「超高齢社会」であり、現在一般的に認知されている「高齢者=65歳以上」という基準が見直される可能性も示唆されています。

そんな「超高齢社会」が現実となった場合、労働力人口自体の不足はもちろん、高齢者が増えることにより現役世代の介護の負担が増えます。結果、労働に割ける時間が減少するため、実際は労働力人口と労働力が比例しないでしょう。また、企業における「定年」の年齢が引き上げられる可能性が高いです。採用基準や労働環境の大幅な見直しが必要になります。

2030年問題・2040年問題・2050年問題の違い

2030年問題・2040年問題・2050年問題をそれぞれ説明しました。

2030年は、労働力人口の減少により高齢者や社会を支えるための財源不足が懸念点です。
そして、2040年は団塊ジュニア世代が65歳以上になるタイミングであり、財源の不足のみならず、現代の社会制度の存続を懸念しなくてはいけなくなります。
2050年には超高齢社会が現実化し、一般的な高齢者を表す年齢の概念が変わる可能性があります。労働人口の維持がさらに困難になり、企業は労働人口減少に対応するため労働環境の整備や採用基準の見直しに一層尽力しなくてはなりません。

2050年問題が社会に与える影響

2050年問題が社会に与える具体的な影響とは何なのでしょうか。ここでは、特に重要視される項目について解説します。

介護・医療分野の負担増加

高齢化が進むため、医療や介護といったサービスの需要はますます高まりますが、2040年時点ですでに人材不足が懸念されています。
厚生労働省職業安定局「雇用政策研究会報告書」(2019年7月)によれば、2040年時点で医療・福祉分野の就業者数は1,070万人必要です。しかし、実際の就業数は推計974万人であり、約97万人不足することが予想されています。

労働力不足のさらなる深刻化

2050年推計の生産年齢人口は5,540万人です。2040年推計の生産年齢人口が6,213万人なので、約673万人の減少が予測されています。
2030年推計の生産年齢人口は7,076万人でした。そのため、2030年から2040年の間で約863万人が減少した時期と比べると、200万人ほど減少数は抑えられますが、生産年齢人口の減少傾向は改善される見通しがないことが読み取れます。

IT技術の革新

人口減少や高齢化による労働力不足が深刻な課題となる中、IT技術の革新を活用した業務の省力化は必要不可欠となります。特に、AIを用いたデータ分析やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による反復作業の自動化は、多くの企業で導入が進んでおり、業務の効率化や省力化に寄与しています。

しかし、IT技術が進化しても、依然としてデータの確認や意思決定などには人間の判断が求められる場面も少なくありません。AIや自動化技術は業務の多くを効率化できますが、特に最終的な品質管理や複雑な意思決定、例外対応では『人間の判断』が引き続き必要であることを、企業は認識しておく必要があります。

社会保障制度の破綻

厚生労働省が2019年に公開した資料によると、社会保障給付金総額は2025年度が140.2~140.6兆円(計画ベース)であるのに対し、2040年度は188.2~190.0兆円となる見通しです。この流れを受けて、2050年度以降も社会保障給付金額はますます増加することが予測されます。
しかし、前述の通り労働人口が減少すれば、給付金のために必要な財源が確保できなくなる可能性も高まり、社会保障制度そのものが持続できなくなる可能性もあります。

経済の縮小化

労働人口が減少すると、それに伴い購買力を持つ消費者も減少するため、国内市場の活性化が難しくなります。特に、生産年齢人口に対する高齢化した従属人口の比率が一層高まることで、消費や生産が低迷し、経済の成長が著しく阻害される恐れがあります。

また、経済活動の低迷によって、国内外からの投資を引き寄せる力が弱まる可能性もあり、これが更なる経済規模の縮小を招く「縮小スパイラル」に陥るリスクがあります。このような悪循環が続くと、企業の競争力低下を引き起こし、国内外での影響が広がることが懸念されます。

2050年問題に企業が直面する課題

ここまで2050年問題が社会全体に与える影響について説明してきましたが、各企業はどのような課題に直面するのでしょうか。大きく分けると下記2つの課題に直面すると予想できます。

慢性的な人材不足

労働力の不足が深刻化することで、企業は慢性的な人材不足に直面することになります。特に生産年齢人口がさらに減少すると、既存の従業員の負担が増え、心身に支障をきたす恐れがあります。
さらに、高齢化に伴い、定年退職などで経験豊富な社員が次々に離職することで、これまで培ってきた専門知識や技術が失われ、社内の教育体制が維持できなくなります。このような状況では業務の運営が困難となり、重要な業務が滞るリスクも懸念されるでしょう。
その結果、サービス品質の低下や顧客満足度の悪化が避けられなくなり、収益減少など企業の業績が悪化し、競争力を維持することがますます難しくなるでしょう。

採用競争のさらなる激化

少子化と高齢化がますます進む中で、企業は限られた人材を巡って熾烈な争いを繰り広げることになります。この状況は特に中小企業にとって厳しく、給与や待遇面で大手企業に対して不利な立場にあるため、応募者の獲得がさらに難しくなると考えられます。
加えて、人材不足であるという実績が出てしまうと、自身の業務への負担や残業時間が多くなるのではないかというイメージから、求人を出しても人が集まらないといった状況が懸念されます。人材獲得競争の激化は、企業の成長を阻む大きな要因となるでしょう。

2050年問題に対する企業の対策

2050年問題に向けて、各企業には大きな課題があることが分かりました。では、その課題に対して企業ではどのような対策ができるのでしょうか。ここでは5つの具体例をご紹介します。

M&Aの検討

人材不足や後継者問題に悩む中小企業にとって、M&Aを検討することは、重要な選択肢のひとつとなります。代表的なM&Aとは、企業間での買収や合併を指しますが、広義な意味では業務提携や資本提携もM&Aにあたります。

M&Aには抵抗感を抱く企業も多いかもしれませんが、近年その実施数は増加傾向にあります。実際、中小企業庁の発表によると、半数近くの中小企業が後継者不在という状況に悩んでいます。

2024年9月には、2025年から「M&A仲介協会」が団体名を「M&A支援機関協会」に変更し、より多くの専門家から意見を募れるように体制を変更するという発表もありました。自主規制ルールの改訂や特定事業者リストの運用などを実施することで、さらに業界健全化に向けての動きが加速するのではないかという見方もあります。
価値ある事業を継承していくためにも、未来に向けた戦略的な選択肢としてM&Aを活用していくことが重要です。

人材確保を実現する魅力的な企業づくり

採用競争が激化する社会で人材を確保するためには、企業の価値を高め、他社との差別化を行う必要があります。企業としての魅力をアピールするために最も効果が期待できるのは、福利厚生を充実させることです。具体的には、下記のような福利厚生が考えられます。

  • 心身の健康サポート
    企業が提供する健康関連の福利厚生は、社員の生産性向上に直結します。取り組み例としては、定期的な健康診断の費用負担や、フィットネスジムの利用補助、産業カウンセラーによるメンタルケアの導入などです。
    超高齢化社会に向けて、健康経営への取り組みは今後ますます重要になるでしょう。健康を維持するための企業支援は、社員の長期的な勤務を促進し、結果的に企業の安定にも寄与します。
  • 自己啓発支援
    資格取得の費用負担や、研修・カリキュラムの無料提供、キャリアアップ面談など、自己啓発を促進する取り組みは、企業が求める人材の成長に繋がります。社員のスキルが向上すれば、企業の競争力が高まり、業績向上にも繋がるため、長期的な企業価値を向上させます。
  • 食事・家賃補助
    生活支援のために、社員食堂の設置や家賃補助の提供も効果的です。社員が経済的負担を軽減できる環境を整えることは、特に労働力不足が深刻化する中で、求職者にとって魅力的な要素となります。生活費の負担を軽減する福利厚生は、社員の満足度を高め、定着率を向上させるため、企業にとって大きなメリットとなります。

採用基準の見直しと雇用対象の拡大

2050年問題に伴う労働力不足を乗り越えるためには、従来の雇用基準を見直し、柔軟な雇用政策を取り入れることが不可欠です。限られた労働力を有効活用するために、より多様な人材を受け入れることが効果的な対策となります。

  • 女性
    出産や育児を機に、築いてきたキャリアから一線を引いた形態で働いている女性が数多く存在します。時短勤務やリモートワークを積極的に取り入れることで、女性のスキルや経験を活かし続ける環境を整えることができます。これにより、企業は即戦力となる人材を確保し、急速な労働力不足に対応することも可能になるでしょう。
  • シニア人材
    高齢化が進む中で、長いキャリアや専門的な知識を持つシニア層は重要な労働力となりますが、年齢を理由に排除されることが少なくありません。採用基準に年齢制限を設けず、シニア人材の採用や長期雇用制度を整備することは、企業の成長に貢献します。積極的なシニア人材採用は、優秀な人材の確保だけでなく、社内の教育体制を維持できるメリットもあります。

  • 外国人
    日本と異なる文化・環境で過ごしてきた人物だからこそ、自国には無い観点でサービスに対して意見がもらえることもあるでしょう。また、言語や文化などが異なる社員と交流することで、コミュニケーション能力の向上が図れます。その結果、現在進行しているグローバル化に対応できる人材を自社で育成することも可能です。

働き方の多様化促進

働き方や時間帯に選択肢があり、通勤時間の短縮や休息時間の増加によって、従業員の生活の質の向上につながります。具体的には、リモートワーク・時短勤務・フレックス制度の導入です。
コロナ禍以降は特にリモートワークが拡大し、ライフワークバランスを重視する傾向も増えてきました。
また、働き方に加えて副業に寛容な企業であることも注目されるポイントとなってきています。収入の柱を増やすことで社員の心の安定につながり、副業で身に着けたスキルを本業に活かすことで結果的に企業への利益につながる可能性もあります。

DX(デジタルトランスフォーメーション)促進

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して企業の業務プロセス、ビジネスモデル、企業文化の変革を図る取り組みです。2050年問題で予想される社会課題への対策としても有効であり、企業の持続可能な成長を支える手段となります。主に下記ポイントに沿って進められます。以下のポイントに沿ってDXを推進し、労働力不足や市場の変化に柔軟に対応できる体制を整えましょう。

  • 業務効率化と自動化の推進
    データのデジタル化や業務の自動化を通じて、効率的な業務環境を実現します。例えば、クラウド技術を活用して紙ベースの書類管理からデジタル形式への保存へ移行することで、データの共有が容易になり、書類の紛失リスクも低減できます。また、経理や勤怠管理における演算処理の自動化を進めることで、人手を必要とせずに精度の高い管理が可能となり、勤務時間や人件費の削減にも寄与します。
  • 顧客対応の迅速化
    顧客データの分析をデジタル技術で効率化し、顧客のニーズや傾向をスピーディーに把握することで、迅速な対応が可能となります。DXによるデータ活用を通じて顧客満足度の向上に取り組むことで、信頼関係を強化し、顧客基盤を長期的に支えることができるでしょう。
  • 新しいビジネスモデルの構築
    デジタル技術を活用することで、従来の事業形態にとらわれない新たなビジネスモデルを構築することができます。たとえば、オンライン販売プラットフォームを導入することで、対面販売のみを行っていた企業でも、遠方の顧客にアプローチでき、売上の増加につなげることが可能です。このように、DXの取り組みを通じて新しい収益源を創出することは、人口減少社会においても企業の競争力を保つ鍵となります。

アウトソーシング(BPO)の活用

BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)とは、企業が自社の業務プロセスの一部または全てを外部の専門企業に委託することです。BPOには主に下記のメリットがあり、2050年問題による人材不足や業務効率化の課題解決のみならず、企業の持続的な成長もサポートできます。

  • コスト削減と効率化
    BPOの活用の大きなメリットのひとつは、人件費や設備投資などの固定費削減と業務の効率化です。特に、専門性が必要な業務や非中核業務を効率的に遂行できる外部の専門業者に委託することで、リソースの最適化が可能になります。
    たとえば、バックオフィス業務やカスタマーサポート業務をアウトソーシングすることで、必要な人数や時間を最小限に抑え、運営コストを大幅に削減することができます。また、業務が効率化されることで、企業内でのリソースをより戦略的な業務に振り向けることができ、全体の生産性向上に貢献します。
  • 専門知識と技術の活用
    特定分野での専門的なスキルや技術が必要な場合、社内でその知識を育成するには時間とコストがかかります。
    BPOによって専門知識や高度な技術を持つ外部のサービスプロバイダーのリソースを活用すれば、短期間で高度なサービスが実現可能です。特に、AIやデータ分析、サイバーセキュリティ、ITインフラ管理などの高度な専門知識が必要な分野では、専門的なスキルを持つ外部業者に業務を委託することが、企業の競争力向上に繋がります。
  • 柔軟性の向上
    市場や技術の変化に迅速に対応するためには、企業の業務フローに柔軟性が必要です。
    たとえば、企業の需要が急増した際に、社内リソースだけでは対応が難しい場合でも、アウトソーシングを活用することで、必要な人数やスキルセットを迅速に追加することが可能です。これにより、リソースの過不足を防ぎ、業務がスムーズに進行します。これにより、変動するビジネス環境に適応しやすくなります。
  • リスク分散
    企業が全ての業務を内製化している場合、特定の業務や業務の失敗によるリスクが大きくなります。しかし、アウトソーシングを活用することで、労働力不足や技術的な課題といったリスクを分散することができます。特に、サイバー攻撃やシステム障害、データ漏洩などのリスクが高まる中、専門のIT業者にセキュリティ対策やインフラ管理を委託することで、最新の技術と高度な知識を駆使したリスク管理が可能になります。

このように、BPOの活用はIT技術と補完し合いながら、2050年問題に備える企業の重要な戦略のひとつとなるでしょう。

まとめ|2050年問題対策に活用したいITとBPO

内閣府が公表しているデータからも、今後2030年~2050年にかけて少子高齢化による人材不足が深刻化することが予測されます。雇用の確保も有効な対策ではありますが、母数となる労働人口が減少している以上、人材不足を前提とした対策も必要です。

具体的には、DX化による業務効率化による人的リソースの最適化を進めつつ、BPOを活用して専門知識を外部から取り入れるような仕組み作りが有効です。しかし、自社の知識だけではDX化やBPOの導入手順が分からないというお悩みもあるかと思います。そんな時は、ぜひ専門機関へ問い合わせてみてください。

私たちキヤノンマーケティングジャパングループは、お客さまの未来のビジネスを、ITとBPOでご支援します。ぜひご相談やお問い合わせをお待ちしております。

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