BPOとは?メリット・デメリット、対象業務を経営課題の視点から解説
ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)をご存じですか?社会の変化、テクノロジーの進化により、高度化する経営課題。スピード感を持って対処していくために、いまBPOの活用が改めて注目されています。
BPOは経営戦略にどんな効果やメリットをもたらし、一方でどんなデメリットがあるのか、また対象となる業務にはどのようなものがあるのか、本コラムで具体的に解説します。
経営課題を解決するBPO
新型コロナウイルス感染症は、企業にもさまざまな影響をもたらしています。そんな新型コロナ禍の企業において、関心が高まっているのが以下のような中長期的な経営課題です。
- 事業ポートフォリオ再構築
- 急速なデジタル化への対応
- 多様な働き方への適応
それぞれの課題に対しては、以下のような対策が考えられます。
- 事業の見極めと経営リソースの最適化
- 最新テクノロジーへの追従と投資領域の選択
- 社員がやるべき仕事の再定義と仕組みや制度の導入
このように、新型コロナ禍で明らかになった経営課題を解決するには大きな変化が求められる一方で、それは容易なことではありません。
業務内容を大きく変えることなく、最新テクノロジーに追従したスピード感のある経営や、社員が本来やるべき業務の見極めなど経営リソースの最適化を実現するのは、企業単体の力だけでは困難です。実現には、外部リソースの活用が有効な選択肢の1つといえるでしょう。
新型コロナ禍に求められる、新たな企業の在り方を実現するために役立つのがBPOです。
BPOとは?
BPOは、Business Process Outsourcingの略であり、自社で行っている業務を外部へまるごと委託することを意味しています。業務の実行や管理だけでなく、その業務を実行するために必要な人材の確保や教育、ITやファシリティといった設備の調達や運営までBPO事業者に任せることとなります。
従来、BPOはコスト削減をおもな目的として行われていました。業務のプロセスはそのままで、非正規雇用を中心とした安価な労働力に代替したり、さらに賃金の安いオフショアを利用したりすることで、人件費を削減しようという考え方です。
しかし、近年ではコスト削減以外にもBPOに利点があることが明らかになってきました。
BPO導入のメリット
コスト削減以外の、BPO導入によって生じる効果やメリットとしては、次のような項目が挙げられます。
1)リソースをコア業務へ集中
BPOを導入して、ノンコア業務を外部へ委託することによって、社内の限られた経営リソースを、付加価値や競争力の源泉となるコア業務に集中させることが可能になります。
2)事業成長の加速(不足リソースの補填)
新規事業や成長領域において、自社だけでは賄えないリソース、人材、設備、IT、業務実行に必要な経験やノウハウなどを、BPOによって外部から補うことで、ビジネスチャンスを逃すことなく、事業成長のさらなる加速が可能です。
3)固定費の変動費化(オフバランス化)
人件費や設備費といった自社リソースは、固定費となりますが、BPO(アウトソーシング)費用は変動費となります。つまり、自社リソースをBPOに置き換えることで固定費率を削減することができ、財務指標の改善を実現することができます。また、需要減退期には圧縮、縮小するなど、経営リソースに柔軟性を持たせることが可能となります。
4)業務の標準化・効率化
BPOへの業務委託によって、BPOベンダーによる業務プロセスの整理・統合を通じた標準化や、業務を効率化するためのノウハウを取り入れることができます。これにより、従来の業務プロセスの効率化やコストの削減が期待できます。
業務の標準化は、BPOを委託する側の企業だけでなく、BPOベンダーにとっても自動化やリソース共有、業務量の増減に対する柔軟性の獲得といったメリットがあるため、積極的に推進されます。
5)品質向上・継続改善
BPOベンダーに対する評価は、業務パフォーマンスの評価指標であるKPI(重要業績評価指標)に基づいて行われます。BPOベンダーは、自社への評価を高めるべく委託先企業のKPIをより高めようと努めるため、結果として業務品質の向上が期待できるでしょう。
6)最新テクノロジーの活用
多くのBPOベンダーが、企業価値の向上や効率化・省力化のために、AIやRPA、チャットボットといった最新テクノロジーへの取り組みを強化しています。これらの最新テクノロジー導入にあたっては、時間やコストはもちろん人材やスキルが必要なため、自社で行うのは困難です。最新テクノロジーの恩恵を受けられることも、BPO導入メリットの1つといえます。
BPO導入のデメリット
さまざまなメリットが期待できるBPOですが、必ずしもよいことばかりではありません。BPOを導入するということは、外部の企業に業務を任せるということであり、次のようなデメリットが生じる可能性も考えられます。
1)ノウハウが蓄積されない
業務運営を外部に任せてしまうため、自社にノウハウが蓄積されません。
2)情報漏洩のへの対策が必要
外部企業が自社の業務に関わることで、情報漏えいのリスクが発生します。
3)自社運用に戻すことが難しい
いったんBPOに委託した業務を、状況の変化などによって自社の運用に戻すには、かなりの労力が必要です。
4)人材処遇の難しさ
BPOの導入にともない、異動や配置転換となる社員も出てくるでしょう。そういった社員のモチベーション低下が懸念されます。
BPOの業務領域
では、どのような業務がBPOに適しているのでしょうか。
一般的な業務を表にまとめました。
間接部門
人事・給与 | 給与計算(給与、賞与、年末調整)、届出・照会業務、社保関連業務 |
---|---|
財務・経理 | トランザクション処理(売上請求支払)、債券債務管理、固定資産管理、税務処理 |
調達・購買 | 調達購買の代行、調達先管理 |
情報・IT | ヘルプデスク、ITインフラ管理、システム運用・保守、メンテナンス、システム開発 |
総務(福利厚生) | 受付、ファシリティ管理、メール室、各種施設管理、福利厚生関連業務 |
直接部門
カスタマサポート | コンタクトセンター、ヘルプデスク、テクニカルサポート、受注センター |
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マーケティング・セールス | キャンペーン運営、Webサイト運営、デジタルマーケティング、テレセールス、DM・プロモーション |
物流・デリバリー | 物流センター、配送代行、在庫管理、流通加工、受発注管理、 |
事務処理・ドキュメント管理 | 契約管理、営業事務、データエントリー、スキャン電子化、文書事務処理 |
データ分析 | 顧客データ分析、マーケティング分析、販売分析・需要予測、財務分析 |
研究開発 | 設計開発支援、実験、試作代行 |
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これまでのコスト削減を目的としたBPOでは、人事給与、財務経理、調達購買、総務、情報・ITといった間接部門の定型反復業務が対象とされてきました。
しかし、BPO導入の目的は変化しています。前述したような、経営効率の向上を目的としたBPO導入をはじめ、新規事業や成長領域を加速するために、BPOで不足する人手やノウハウ、専門性の高い人材や設備を補うケースや、需要の減退期に自社リソースをムダにしないようBPOを導入するケースなど、多様化しているのが現状です。
企業の付加価値に直接影響する業務(戦略的意思決定、競争力の源泉、高度な知識やスキルが必要)は、コア業務として社員が実施し、それらを支える周辺業務、とりわけ定型反復かつ集約可能な業務が、BPOの対象領域とされます。
まとめ
ここまで述べてきたように、近年はBPOがコスト削減の手段ではなく、経営リソースの再配分や業務改革、スピードのある経営を実現する手段である、という認識が広がっています。少子高齢化に起因する人材不足や、新型コロナ禍を経た企業を取り巻く環境の急激な変化への対応など、これからの経営戦略にBPOが貢献できることは少なくありません。
自社の業務におけるBPO活用の余地や、BPOが自社にもたらす効果について、改めて検討していただければと思います。
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