経営課題を乗り越えるために企業が知っておくべき2つの視点とは?
経営課題とは、企業が掲げるミッション・ビジョンと現実にギャップが生じている際にその差を埋めるために設定されるものです。変化が激しい現代において、経営課題を適切に設定し解決していく力が企業には欠かせません。本コラムでは、特に近年の社会の変化に伴い浮上してきた経営課題に焦点を当て、解決に導く視点を解説します。
企業が抱える経営課題とは
世界はこれまでも経済的な危機を幾度となく迎えてきました。その度に企業経営には大きな課題が発生してきましたが、今回の新型コロナウイルス感染症は、「価値観の変化」をもたらしたという点で、もっとも特徴的といえるのではないでしょうか。「生き方」「働き方」に対する考え方を大きく変えたといえるでしょう。
ここでは、一般社団法人日本能率協会が行った「新型コロナウイルス感染拡大の事業への影響」に関するアンケート調査の結果をもとに、企業がどのような課題を感じているのか、近年の社会の変化と照らし合わせながら、いま企業が直面している経営課題について考察していきます。
当面する企業経営課題に関する調査として、3年後、5年後の課題について調査した結果は以下の通りです。
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出展:一般社団法人日本能率協会『日本企業の経営課題2020』調査結果【第1弾】新型コロナウイルス感染拡大の事業への影響
「人材の強化」が毎年高いポイントを獲得している一方で、「デジタル技術の活用・戦略的投資」「事業基盤の強化・再編、事業ポートフォリオの再構築」「新製品・新サービス・新事業の開発」などの項目が大きく上昇しており、大きな変化が必要性と感じている企業が多いことが浮かび上がってきました。
では、これらの経営課題について考察していきましょう。
事業基盤の強化と事業ポートフォリオの再構築
前述の通り、価値観の変化によって市場の競争環境が大きく変化しました。各企業において、どの事業を成長させ、どの事業を縮小するのか、経営リソースの配分をどうするのかといった、重要な判断を迫られている状況です。
ニーズの変化に対応して、新しいサービスを検討することも重要ですが、新規分野への投資はリスクをともなうため、既存の事業ポートフォリオを見直し、経営基盤を盤石なものにしておくことが、さらに重要になってきます。ポートフォリオ再編については、経済産業省よりガイドラインも出ているので参考にしてください。
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出展:事業再編実務指針~事業ポートフォリオと組織の変革に向けて~(事業再編ガイドライン)(2020年7月31日 経済産業省)
デジタル技術の活用・積極的投資
コロナ禍により対面でのコミュニケーションがリスクとなった結果、あらゆる社会的活動においてオンラインへの切り替えが加速しました。特に、テレワークへの対応は一気に進んだといえるでしょう。ハンコの廃止をはじめとした承認フローの見直しや、電子契約の導入、Web会議システムなどの整備を進めた企業も多いのではないでしょうか。
単なる業務のデジタル化だけに留まらず、より積極的にデジタル技術やデータを活用し、人々の生活や仕事をよりよいものにしていこうとする動きが強まっています。それが、近年注目を集めているDX(デジタルトランスフォーメーション)です。オンラインでの娯楽や学習、オンライン住宅見学会、ボタン1つでのタクシー手配など、デジタルを活かした新しいサービスを耳にしたり、実際に体験したりした方も多いのではないでしょうか。
企業活動においても、より正確かつスピード感をもって業務を進めるため、RPAやAIを活用しようとする動きが盛んです。従来は現場でなければできないと考えられていた作業も、ドローンやネットワークカメラなどを用いた、遠隔での対応を行う企業も増えつつあります。
人材の強化(採用・育成・多様化への対応)
人材確保
「2025年問題」として以前より注目されている、労働人口の減少。人材確保が困難になっていくということは、以前より明らかでした。しかし、労働人口の減少による人材確保が困難になるという問題は、新型コロナ禍を機に、より深刻化する見込みです。上述したような新しい運営体制の構築は、いわゆる「持たざる経営」と呼ばれるものに近く、そういった体制が主流となり物理的な制限が少なくなれば、労働者の帰属意識は薄まると考えられます。多くの人がより自分の働くスタイル、価値観にあった企業を求め、労働力は流動的になるでしょう。法整備も労働者の権利を後押ししており、企業にとって人材の確保はより難しい課題となっていく見込みです。
新しい働き方
急速なデジタル化を推し進めた要因の1つである「テレワークへの対応」にみられるように、近年は場所や時間にとらわれない働き方が求められています。これは、少子高齢化にともない、仕事と育児や介護の両立を必要とする労働者からの要望として、以前より必要性は認識されていました。
柔軟な働き方は、コロナを機に当たり前のワークスタイルとして労働者に受け入れられることでしょう。企業は、この柔軟な働き方に対応するために、テレワークやサテライトオフィス(場所)、フレックス制や時差勤務制(時間)、そういった新しいスタイルを取り入れても滞りなく業務を遂行できる業務の流れ(業務プロセス)の整備が必要です。
また、マネジメントについても、新しい働き方に沿って見直していく必要があります。働き方が変わることで、コミュニケーションの取り方、仕事に対する評価軸も変わってくるでしょう。対面でのコミュニケーションが難しくなる中で、上司は部下をどのようにマネジメントするべきか、他部門とどのように協働していくべきか、制度や仕組みを構築し、新しい働き方のスタイルを再設計していく必要があります。
経営課題を解決に導く2つの視点
これらの課題を解決していくには、より具体的に課題を設定する必要があります。私たちは「社内での働き方や業務フロー」「業務へのリソースの配分」という2つの視点に着目しています。
社内での働き方や業務フロー
私たちはワークプロセス・ワークスタイルの再デザインと呼んでいますが、業務オペレーションやコミュニケーションのあり方を再定義し見直していくといくことで経営課題に対応していくことを指しています。
業務オペレーションの見直し
ITの活用による業務効率の改善は一般的ですが、業務を効率化できる一方で、システムの管理や運用といった新しい業務が発生することもあります。導入によるメリット・デメリットのバランスを考慮しつつ、検討することが必要です。
ほかにも、専門業者に委託するという選択肢が考えられます。専門業者は、それぞれの業務領域について培ってきたノウハウや経験、さらには必要設備を有しているケースがあり、より効率的に高品質に業務を進めてくれることが期待できます。
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詳しくは別コラム「業務改革とは?進め方、注意すべきポイントなど一挙に解説」にて解説しています。
コミュニケーションの見直し
テレワーク環境下でのコミュニケーションやマネジメントなどに注目が集まっています。社内では、勤務実態がわからない、気軽に話しかけられない、全体が把握できないなど、対面のときは意識しなくとも自然とできていたことが、テレワークでは新たな課題として浮上してきました。
コミュニケーションの質の低下は、認識のズレや誤解が生じたり、一体感や士気を低下させたりする原因となるため、勤務実態に合った新しいコミュニケーションスタイルの検討が必要です。また、顧客とのコミュニケーションについても、Web面談では場の空気感が掴みにくく、軽妙なやり取りや気の利いたフォローなどが難しくなっていると感じている人が多いのではないでしょうか。Webによるコミュニケーションでは、面談の前後に目的やレベル感にズレはないかといった、認識合わせをする機会を設けるなどの工夫が必要です。
業務へのリソース配分
リソースの配分は、事業ポートフォリオの再構築と深く連動します。どの事業に注力していくかによって、自社が持つ経営リソースの分配について、再検討が必要です。
リソースは、ITやファシリティといった「インフラ」と、自社雇用や外部活用を含む「人材」に大別されます。以下にそれぞれについてみていきます。
インフラリソースの見直し
前述のように、インフラリソースの在り方は、働き方の変化で大きく見直されています。しかし、新型コロナによって、否応なしに進めざる得なかった範囲にとどまっているのが現状ではないでしょうか。
事業ポートフォリオの再構築から派生するインフラの見直しは、「主力に据えたサービス事業が成長していくにふさわしいインフラ環境とは?」を再定義することがスタートです。たとえば、まったく同じ小売業者でも、店舗展開を辞めEC事業へシフトする(サービス形態の変更)のか、強みの対面サービスをオンラインサービスで置換する(サービス形態の進化)のかで、整備すべきインフラは大きく変わってきます。
近年ではクラウドサービスが充実し、負担が少なく便利な機能を利用できるようになりました。また、IoTやITを活用したBPOなど、ITと人材両方を提供するサービスもニーズの高まりとともに充実しつつあります。それらのサービスの活用も有効でしょう。
人材リソースの見直し
今後、新しい働き方やテレワークが定着すると、労働者のワークスタイルへの考え方も大きく変わると考えられます。副業やフリーランスといった働き方に注目が集まっているのも、その表れといえるでしょう。
また、労働関連の法整備が進み、人件費の増加が見込まれています。それぞれの人材リソースの活用についても、戦略的に検討していかなければなりません。以下に、人材活用に着目してリソース課題・環境を整理した表を示しているので、参考にしてください。
新しい働き方にともない、従業員マネジメントの難しさから、アウトソーシングを検討したいという相談を受けることがあります。そのような観点で外部リソースの活用を検討することも有効な選択肢です。
まとめ
ここまで、社会の変化に伴う新しい課題に対応するための取り組みついて述べててきました。この社会の変化は、不可逆的なものと考えられます。スピード感を持って対応していくには、外部リソースにも目を向けつつ、効率的な経営リソースの分配を検討することが必要です。
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