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バックアップの落とし穴

電子データは企業の資産です。
しかし壊れても買い替えや代替ができるハードウエアとは異なり、失われたデータはお金を積んでも取り戻すことはできません。

そのリスク対策がバックアップですが、バックアップにもいくつかの落とし穴があります。確実にデータを保全するために、IT管理者がポイントを把握して企業として取り組むようにしてください。

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そもそもバックアップとはなんなのか

IT管理者であればバックアップの重要性は理解しているはずです。一方で、バックアップそのものについて考えたことはあるでしょうか。

「backup」という単語の本来の意味は「支援・支援者・代替の人[もの]・代役・代替の・予備の」となっています。(出典:研究社「新英和辞典」)
そこから、特にコンピューターの世界では(狭義の意味で)「データ保全のために予備を作っておくこと」をバックアップと呼んでいます。簡単に言えば、何らかの原因でデータが利用できなくなった場合に、その代わりに使えるデータを残しておくということです。
ではデータが利用できなくる原因にはどのようなものがあるでしょうか。

データが利用できなくなる原因

データが利用できなくなる主な原因は、以下のことが考えられます。

  1. データの破壊・破損(物理的・論理的)
  2. データの消滅(物理的・論理的)
  3. データの改変・改ざん
  4. ウイルス感染

ここで言う「物理的」とはハードディスクの故障などハード的故障を、「論理的」はデータの破損などソフト的なトラブルを指します。
「データの改変・改ざん」には悪意を持った第三者によるケースもありますが、実際に多いのはうっかりミスで上書きしてしまったり、正しいデータとして保存したものの元に戻したいという運用上のものです。

これらすべてに対応でき、時間的な問題もクリアできる仕組みが理想的なバックアップと言えるでしょう。
(リアルタイムでバックアップを取るのは難しいため、最低でも前日までの状態に戻せる仕組みが現実的です)

バックアップを妨げる心理的要素

仕事や私用にかかわらず、多くの人が一度や二度はデータの破損や消失などの経験があると思います。
「しまった!あのときバックアップをとっておけば・・・」と思うものの、いつしかまたやらくなる。
その原因は、

  • たぶん大丈夫
  • 少しくらいなら大丈夫
  • 今まで大丈夫だったから大丈夫
  • この前バックアップしたから大丈夫 ※実はかなり前
  • 時間や手間ががかかるので面倒

といった心理的な部分にあるようです。
バックアップにとっては、ここが最大の落とし穴です。
残念ながらこういった心理的要素をなくすことはできません。IT管理者が個人に対して口を酸っぱくして諭し、頭では理解してもらえても長続きしないのが実情です。

そこでIT管理者は別の対策を講じる必要があります。

PCバックアップの手法は2種類~一極集中と自動化

各個人が利用しているPCのバックアップで一番確実な方法はファイルサーバーによるデータ管理です。
サーバーは物理的にも堅牢な上、データ保全のための各種機能を装備しています。
また高いセキュリティやデータ共有による作業の効率化などデータ保全以外でもさまざまなメリットがあります。
IT管理者も最低限サーバーのみを管理すればよいので負荷を少なくすることができます。
重要なデータはサーバーでの管理・運用がおすすめです。

データをサーバーに集中してバックアップ

PCのみの環境下でのバックアップは、ユーザーが意識する必要がない自動バックアップのシステムが有効です。ネットワーク上の共有ディスクに保存するシステムやクラウドを利用して外部サーバーに保存するものなど、環境や用途に合わせてお選びください。

クラウドを利用したPCバックアップシステム

Windows 10(またはwindows 8.1)の場合は「ファイル履歴」という機能を使うことができます。これはOSの機能で、一定時間ごとに外付けのドライブにデータをバックアップすることが可能です。

サーバーバックアップの落とし穴

テープメディアの劣化

テープ

サーバーのデータをテープメディアにバックアップしている場合は、テープの劣化に注意してください。
同じテープを繰り返し使用していると、劣化が進み、肝心な時にデータが復旧できないということにもなりかねません。
1年に1回は新品のテープに交換しましょう。

データ容量と時間との関係

ディスク

サーバーを運用していくと、自然とデータの容量が増えていきます。データ量が増えればその分バックアップにかかる時間も増えていきます。
当初は夜間処理で対応できていても、いつのまにか始業時間が過ぎてもバックアップが終わらなくなっているということも起こってきます。
時々チェックを行い、データ量が増えていれば対策を検討してください。

RAIDの過信

サーバーではフォールトトレランスやRAIDと呼ばれる機能が良く使われます。これらは物理的にディスクが破損したようなケースには有効ですが、他の場合は対応することができません。
例えばRAID1(ミラーリング)は鏡に映すように全く同じディスクを2つ作る仕組みですので、片方のデータが改変されるともう片方も改変されます。つまり復旧させることができません。
RAIDの目的はシステムを継続的に利用する(冗長化)ということであって、データのバックアップを取ることではありませんのでご注意ください。

サーバーデータ復旧の管理者負荷を低減する方法

バックアップがあればデータを元に戻すことができますが、実作業としてバックアップからデータを戻すのはIT管理者の手間がかかります。
例えば共有フォルダーのデータを削除するとゴミ箱に入らず、いきなり消えてしまいますが、その都度バックアップから戻していては煩雑です。

こういった場合は「共有フォルダーのシャドウコピー」を使うと便利です。(Windowsサーバー時)
「共有フォルダーのシャドウ コピー」は、一定時間ごとにサーバーのスナップショットを自動的に保存する機能です。データの復旧はクライアントPCから簡単な操作でできる上、時系列で過去のデータを戻すことも可能です。

この機能は本質的にはバックアップではない(ディスクが破損するとデータは失われる)ため、バックアップの代わりにはなりませんが、簡易的なデータ復旧ツールとしては重宝する機能です。
Windowsサーバーの標準機能ですので、ソフトを購入する必要がないのもメリットです。
導入につきましては別途ご相談ください。

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