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【社労士が解説】2025年育児・介護休業法改正対応ガイド~改正のポイントと規定例~

  • 働き方改革

公開日:2025年3月12日

目次

  • 1.2025年4月と10月に施行、企業は規程の見直しが必須!
  • 2.法改正の全体像と規定への影響
    • (1)育児・介護休業法改正にいたる背景とは?
    • (2)法改正で企業の義務はどう変わるのか?~規程への影響~
      • 2025年4月1日施行の改正内容と変更のポイント
      • 2025年10月1日施行の改正内容と変更のポイント
  • 3.法改正への具体的な対応
    • 2025年4月1日施行の法改正対応
      • (1)子の介護休暇の見直し
      • (2)所定外労働の制限の対象拡大
      • (3)短時間勤務制度の代替措置にテレワーク等を追加
      • (4)介護離職防止のための雇用環境整備
      • (5)介護離職防止のための個別の周知・意向確認等
    • 2025年10月1日施行の法改正対応
      • (1)柔軟な働き方を実現するための措置等
      • (2)仕事と育児の両立に関する個別の意向聴収・配慮
  • 4.規程改定のための5STEP
    • (1)改定手続きの流れ
    • (2)注意点
  • 最後に

1. 2025年4月と10月に施行、企業は規程の見直しが必須!

育児・介護休業法と次世代育成支援対策推進法が改正され、2025年4月1日から段階的に施行されます。今回の改正により、企業は従業員の仕事と育児・介護の両立を支援するための環境整備を強化することが求められます。

この記事では、法改正のポイントを整理し、企業がどのように自社の規程を改定すべきかを具体的な規定例とともに解説します。
「何をどう変えればいいのか?」を一緒に確認していきましょう。

2. 法改正の全体像と規程への影響

(1)育児・介護休業法改正にいたる背景とは?

育児・介護休業法は以前から改正が続いており、直近では2022年4月と10月に施行された改正が記憶に新しいところです。「また法改正への対応か・・・」と大変に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、この頻繁な改正の背景には、日本社会が直面している少子高齢化と労働力不足という大きな課題があります。

少子高齢化と労働力不足への対応

育児や介護の負担が理由で仕事を辞めてしまう人が少なくない現在、経験を積んだ従業員が離職してしまうのは企業にとっても大きな痛手です。

こうした状況を受け、政府は「仕事と家庭の両立支援を強化し、貴重な人材が働き続けられる環境を整える」ことを目指しています。
そのための施策の一つが、今回の育児・介護休業法改正です。

前回の改正からさらに一歩

2022年に施行された改正では、育休の分割取得や男性の育休取得促進などの制度改正が行われました。

しかし、育休が取りやすくなっただけでは、仕事と育児・介護の両立を実現するには不十分です。

そこで、今回の改正では「休暇を取る制度」だけでなく、「柔軟な働き方そのものを提供すること」に重点が置かれています。例えば、残業免除の対象拡大やテレワークの活用など、より「働き続けられる環境づくり」を企業に求める内容となっています。

では、具体的に企業の義務はどう変わるのか、詳しく見ていきましょう。

(2)法改正で企業の義務はどう変わるのか?~規程への影響~

今回の育児・介護休業法改正では、企業に求められる義務が大きく変わります。
しかし、すべてが規程の改定につながるわけではありません。

そこで、本章では規程への影響に着目して、改正内容を整理しました。この表をもとに自社の対応が必要な項目を明確にし、スムーズな準備を進めていきましょう。

2025年4月1日施行の改正内容と変更のポイント

改正内容 変更のポイント 義務の区分 規程への影響
子の看護休暇の見直し
  • 名称を「子の看護等休暇」に変更
  • 対象範囲を小学校3年生修了まで拡大
  • 取得理由に「学級閉鎖等」「入園(入学)式・卒園式」を追加
  • 労使協定による継続雇用期間6か月未満除外規定を廃止
義務
所定外労働の制限の対象拡大
  • 「3歳未満の子を養育する労働者」→「小学校就学前の子を養育する労働者」に拡大
義務
短時間勤務制度の代替措置にテレワーク等を追加
  • 短時間勤務が難しい業務に従事する労働者向けに「テレワーク等」を代替措置として追加(※)
義務(※) (※)
育児のためのテレワーク導入
  • 3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずる
努力義務 △(制度を導入する場合、規定化が望ましい)
育児休業取得状況の公表義務適用拡大
  • 育児休業取得率の公表義務の対象企業が「従業員数1,000人超」から「300人超」に拡大
義務 ー(企業の実務対応のみ)
介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
  • 労使協定による継続雇用期間6か月未満除外規定を廃止
義務 ◎(労使協定を締結している場合)
介護離職防止のための雇用環境整備
  • 「研修の実施」「相談窓口の設置」「事例の収集・提供」「利用促進に関する方針の周知」のいずれかの措置を講ずる
義務 ◎(実施する措置を明確にする)
介護離職防止のための個別の周知・意向確認等
  • 介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認
  • 介護に直面する前の早い段階(40歳等)での情報提供
義務 △(企業の実務対応)
介護のためのテレワーク導入
  • 要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずる
努力義務 △(制度を導入する場合、規定化が望ましい)
  • 短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる具体的な業務があり、その業務に従事する労働者がいる場合のみ

2025年10月1日施行の改正内容と変更のポイント

改正内容 変更のポイント 義務の区分 規程への影響
柔軟な働き方を実現するための措置等
  • 3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に対し、柔軟な働き方を実現するための措置を2つ以上講ずる
  • 柔軟な働き方を実現するための措置の個別の周知・意向確認
義務 ◎(実施する措置を明確にする)
仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮
  • 妊娠・出産等の申出時と子が3歳になる前の個別の意向聴取
  • 聴取した労働者の意向についての配慮
義務 △(企業の実務対応)

次の章では、これらの改正にどう対応すればよいのか、具体的な方法を詳しく解説していきます。

3. 法改正への具体的な対応

2025年4月1日施行の法改正対応

(1)子の看護休暇の見直し

改正の概要
  • 名称変更:「子の看護休暇」→「子の看護休暇」
  • 対象範囲の拡大:「小学校就学の始期に達するまで」→「小学校3年生修了まで」
  • 取得事由の追加
    • 感染症に伴う学級閉鎖等
    • 入園(入学)式・卒園式
  • 労使協定による除外対象の見直し
    • 除外できる労働者のうち「継続雇用期間6か月未満」を撤廃
新旧比較表
項目 現行(改正前) 2025年4月1日以降(改正後)
名称 子の看護休暇 子の看護休暇
対象年齢 小学校就学の始期に達するまで 小学校3年生修了まで
取得事由 ①病気・けが
②予防接種・健康診断
①病気・けが
②予防接種・健康診断
③感染症に伴う学級閉鎖等
④入園(入学)式・卒園式
適用除外 《労使協定で適用除外できる労働者》
①週の所定労働日数が2日以下
②継続雇用期間6か月未満
《労使協定で適用除外できる労働者》
①週の所定労働日数が2日以下
(②を撤廃)
規程の改定例

(改正前)
第⚪︎条(子の看護休暇)

小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員(日雇従業員を除く)は、次に定める当該子の世話等のために、就業規則第⚪︎条に規定する年次有給休暇とは別に、当該子が1人の場合は1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき10日を限度として、子の看護等休暇を取得することができる。この場合の1年間とは、4月1日から翌年3月31日までの期間とする。
一 負傷し、又は疾病にかかった当該子の世話
二 当該子に予防接種や健康診断を受けさせること

(改正後)
第⚪︎条(子の看護休暇)

小学校第3学年修了までの子を養育する従業員(日雇従業員を除く)は、次に定める当該子の世話等のために、就業規則第⚪︎条に規定する年次有給休暇とは別に、当該子が1人の場合は1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき10日を限度として、子の看護等休暇を取得することができる。この場合の1年間とは、4月1日から翌年3月31日までの期間とする。
一 負傷し、又は疾病にかかった当該子の世話
二 当該子に予防接種や健康診断を受けさせること
三 感染症に伴う学級閉鎖等になった当該子の世話
四 当該子の入園(入学)式、卒園式への参加

(2)所定外労働の制限の対象拡大

改正の概要
  • 「3歳未満の子を養育する労働者」のみ対象だった所定外労働の制限(残業免除)が「小学校就学前の子を養育する労働者」まで拡大
  • 労働者が申請すれば、企業は原則として所定外労働を課すことができない
新旧比較表
項目 現行(改正前) 2025年4月1日以降(改正後)
対象者 3歳に満たない子を養育する労働者 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者
規程の改定例

(改正前)
第⚪︎条(育児・介護のための所定外労働の制限)

3歳に満たない子を養育する従業員(日雇従業員を除く)が当該子を養育するため、又は要介護状態にある家族を介護する従業員(日雇従業員を除く)が当該家族を介護するために請求した場合には、事業の正常な運営に支障がある場合を除き、所定労働時間を超えて労働をさせることはない。

(改正後)
第⚪︎条(育児・介護のための所定外労働の制限)

小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員(日雇従業員を除く)が当該子を養育するため、又は要介護状態にある家族を介護する従業員(日雇従業員を除く)が当該家族を介護するために請求した場合には、事業の正常な運営に支障がある場合を除き、所定労働時間を超えて労働をさせることはない。

(3)短時間勤務制度の代替措置にテレワーク等を追加

改正の概要
  • 3歳に満たない子を養育する労働者に関し、育児短時間勤務制度を講ずることが困難な場合の代替措置の選択肢の1つに「テレワーク等」を追加
新旧比較表
項目 現行(改正前) 2025年4月1日以降(改正後)
短時間勤務制度の代替措置 ①育児休業に関する制度に準ずる措置
②フレックスタイム制
③始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ(時差出勤の制度)
④保育施設の設置・運営等
①育児休業に関する制度に準ずる措置
②フレックスタイム制
③始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ(時差出勤の制度)
④保育施設の設置・運営等
⑤テレワーク等

(4)介護離職防止のための雇用環境整備

改正の概要
  • 雇用環境整備の義務化

    介護休業や介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるようにするため、以下①~④のいずれかの措置を義務化。

措置の種類 内容 具体例
① 研修の実施 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施 介護休業制度の説明会や、管理職向けの介護支援研修など。
全労働者を対象にすることが望ましいですが、少なくとも管理職は研修を受けたことがある状態にしましょう。
② 相談窓口の設置 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備 介護休業や介護両立支援制度等に関する相談を受ける窓口を設置し、相談担当者を置いて労働者に周知します。
窓口を形式的に設けるだけでなく、実質的な対応が可能な窓口を設けましょう。メールアドレスやURLを定めて相談窓口として周知する方法でも可能です。
③ 事例の収集・提供 自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の取得事例の収集・提供 社内ポータルサイトでの情報共有や、ガイドブックの作成など。
自社の介護休業・介護両立支援制度等の取得事例を収集し、その事例を掲載した文書等の配布やイントラネットへの掲載等を行い、労働者が閲覧できるようにしましょう。
事例の収集・提供に当たっては、提供する事例を特定の性別や職種、雇用形態等に偏らせず、可能な限り様々な労働者の事例を収集・提供することにより、申出しやすい雇用環境の整備につながるよう配慮することが重要です。
④ 利用促進に関する方針の周知 自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の取得促進に関する方針の周知 介護休業等に関する制度及び介護休業等の取得の促進に関する方針を記載したものの配付や、事業所内掲示板・イントラネット等に掲示するなど。

(5)介護離職防止のための個別の周知・意向確認等

改正の概要
  • 介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認

    介護に直面した旨の申出をした労働者に対して、事業主は介護休業制度等に関する以下の事項の周知と介護休業の取得・介護両立支援制度等の利用の意向の確認を、個別に行わなければなりません。

項目 内容
対象者 対象家族の介護に直面した旨の申出をした労働者
周知事項 以下①~③のすべての事項
① 介護休業に関する制度、介護両立支援制度等(制度の内容)
② 介護休業・介護両立支援制度等の申出先(例:人事部など)
③ 介護休業給付に関すること(例:制度の内容など)
方法 以下①~④のいずれか
①面談(オンライン面談可)
②書面交付
③FAX
④電子メール等
(※③,④は労働者が希望した場合に限る)
  • 介護に直面する前の早い段階(40歳等)での情報提供

    仕事と介護の両立支援制度を十分活用できないまま介護離職に至ることを防止するため、介護に直面する前の早い段階(40歳等)に介護休業及び介護両立支援制度等に関する情報提供を行わなければなりません。

項目 内容
対象者(情報提供期間) 以下のいずれか
①労働者が40歳に達する日(誕生日の前日)の属する年度(1年間)
②労働者が40歳に達する日の翌日(誕生日)から1年間
情報提供事項 以下①~③のすべての事項
① 介護休業に関する制度、介護両立支援制度等(制度の内容)
② 介護休業・介護両立支援制度等の申出先(例:人事部など)
③ 介護休業給付に関すること(例:制度の内容など)
(※併せて、介護保険制度についても知らせることが望ましい)
方法 以下①~④のいずれか
①面談(オンライン面談可)
②書面交付
③FAX
④電子メール等

2025年10月1日施行の法改正対応

(1)柔軟な働き方を実現するための措置等

改正の概要
  • 育児期の柔軟な働き方を実現するための措置

    3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に対して、職場のニーズを把握した上で、次の5つの中から2つ以上の措置を選択して講じなければなりません。

措置の種類 内容
① 始業時刻等の変更
  • フレックスタイム制
  • 1日の所定労働時間を変更することなく始業又は終業の時刻を繰り上げ又は繰り下げる制度(時差出勤の制度)
② テレワーク等(10日以上/月)
  • 実施場所は自宅を基本としつつ、自宅に準ずるものとして就業規則などで定める場所(サテライトオフィス等)を含みます。
  • 1日の所定労働時間を変更することなく利用することができ、始業の時刻から又は終業の時刻まで連続して時間単位で利用することができる内容とする必要があります。
  • 利用日数は、1週間の所定労働日数が5日の労働者については1ヶ月につき10労働日以上、1週間の所定労働日数が5日以外の労働者については「1週間の所定労働日数が5日の場合は10労働日」を基準として、1ヶ月につき1週間の所定労働日数又は1週間当たりの平均所定労働日数に応じた日数以上の日数となります。
③ 保育施設の設置運営等 保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与(ベビーシッターの手配及び費用負担)
④ 就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与(10日以上/年) 1日の所定労働時間を変更することなく利用でき、かつ1年間に10労働日以上の日数について時間単位での利用をすることができるものとしなければなりません。
⑤短時間勤務制度 1日の所定労働時間を原則6時間とする措置も含みます。
  • 柔軟な働き方を実現するための措置の個別の周知・意向確認

    3歳に満たない子を養育する労働者に対して、子が3歳になるまでの適切な時期に、上記で選択した制度に関する以下の周知事項の周知と制度利用の意向の確認を個別に行わなければなりません。

項目 内容
周知時期 労働者の子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間
(1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日まで)
周知事項 ①上記で選択した対象措置(2つ以上)の内容
②対象措置の申出先(例:人事部など)
③所定外労働の制限(残業免除)に関する制度、時間外労働・深夜業の制限に関する制度
方法 以下①~④のいずれか
①面談(オンライン面談可)
②書面交付
③FAX
④電子メール等
(※③,④は労働者が希望した場合に限る)

(2)仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮

改正の概要
  • 妊娠・出産等の申出時と子が3歳になる前の個別の意向聴取

    労働者から本人又は配偶者の妊娠・出産等の申出があったときや、子が3歳になるまでの適切な時期に、仕事と育児の両立に関する以下の事項について、労働者の意向を個別に聴取しなければなりません。

項目 内容
聴取時期 ①労働者が本人又は配偶者の妊娠・出産等を申し出たとき ②労働者の子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間 (1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日まで)
聴取事項 ①勤務時間帯(始業及び終業の時刻)
②勤務地(就業の場所)
③両立支援制度等の利用期間
④仕事と育児の両立に資する就業の条件(業務量、労働条件の見直し等)
方法 以下①~④のいずれか
①面談(オンライン面談可)
②書面交付
③FAX
④電子メール等
(※③,④は労働者が希望した場合に限る)
  • 聴取した労働者の意向についての配慮
    • 聴取した労働者の仕事と育児の両立に関する意向について、自社の状況に応じて配慮しなければなりません。(取組例:勤務時間帯・勤務地に係る調整、業務量の調整、両立支援制度等の利用期間等の見直し、労働条件の見直しなど)
    • 配慮について検討した結果、何らかの措置を行うか否かは事業主が自社の状況に応じて決定します。必ずしも労働者の意向どおりとしなければならないということではありません。

以上、今回の法改正について押さえておくべきポイントをまとめました。これらの対応は、単に規定を変更するだけでなく、従業員がその内容を理解し、実際に利用できるよう環境を整えることが重要です。
育児・介護休業法の改正は、企業にとって負担が増えるように感じられるかもしれません。しかし一方で、従業員の定着率を高め、より働きやすい環境を作るチャンスでもあります。
次の章では、具体的な手順と注意点について解説いたします。

4. 規程改定のための5STEP

改定の手続きについて、5つのSTEPにまとめました。
法改正を適切に反映し、運用しやすい制度を整備しましょう。

(1)改定手続きの流れ

STEP1改正内容の整理・影響範囲の確認

まずは、法改正の内容を正しく把握し、自社の規程のどの部分に影響があるのかを整理しましょう。

▼ 具体的な作業
  • 2025年4月・10月の改正内容を確認し、企業が行うべき対応を整理する。
  • 自社の規程類を確認し、改正が必要な条文をピックアップする。
  • 変更が労働条件や運用ルールにどのような影響を与えるのかを分析する。

STEP2改正規程の原案作成

影響範囲が整理できたら、次に改正すべき条文を具体的に作成します。

▼ 具体的な作業
  • 現行の規定と照らし合わせ、変更が必要な条文を修正する。
  • 厚生労働省が公表している規定例などを参考に、自社の運用に即した形で文章を整える。
  • 適用範囲や申請手続きなど、従業員が理解しやすいように具体的な内容を記載する。

STEP3過半数組合/過半数代表者からの意見聴取・労使協定の締結

規定の内容について、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合(過半数組合)・過半数組合がない場合は労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)からの意見を聴取します。労使協定の締結が必要な場合はそれらも行いましょう。

▼ 具体的な作業
  • 改正案を過半数組合または過半数代表者に提示し、意見を聴取する。
    • 就業規則の作成や変更における意見聴取の義務(労基法90条1項)にあたっては、意見を聴取することで足り、必ずしも同意を得たり意見を実際に採用したりすることまでは求められていません。
  • 労使協定が必要な場合は締結する。

STEP4労働基準監督署への届出

▼ 具体的な作業
  • 作成した規程や意見書などを管轄の労働基準監督署へ届け出る。

STEP5従業員への周知

改定した規程は従業員に周知しなければなりません(労基法106条1項による周知義務)。周知を徹底することで、従業員が新制度を活用しやすくなり、制度の定着につながります。

▼ 具体的な作業
  • 社内イントラネットへの掲載、メール送付、事業所内掲示板への掲示など、従業員がいつでも確認できる形で周知する。
  • 社内説明会や研修を実施し、改正内容を従業員に説明する。
  • パンフレットやFAQを作成し、分かりやすく案内する。
  • 特に管理職向けの研修を実施し、現場での対応力を高めることが望ましい。

(2)注意点

【!】現場の業務負担や運用のしやすさを考慮する

  • 法改正の内容をそのまま反映するだけでは、実際の運用で支障が出ることがあります。
  • 現場で無理なく運用できるように、具体的なルールやフローを整備しましょう。

【!】「制度はあるが、従業員が知らない・利用しにくい」状況を防ぐ

  • 規程を改定しても、それが従業員に浸透しなければ意味がありません。
  • 周知を徹底し、制度が適切に活用される環境を整えることが大切です。

最後に

本記事では、2025年の育児・介護休業法改正に伴う規程の改定ポイントを詳しく解説しました。企業にとって、適切な対応を怠ることは、労務トラブルの発生や企業イメージの低下につながるリスクがあります。スムーズな対応を実現するためにも、早めの準備が不可欠です。

しかし、法改正対応には、規程の見直しだけでなく、実務運用や業務フローの変更も求められます。こうした対応へお悩みの方は、キヤノンマーケティングジャパングループの「人事労務アウトソーシング」にご相談ください。
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  • 本稿は2025年2月時点の情報に基づき、厚生労働省が公表する「育児・介護休業等に関する規則の規定例」及び「育児・介護休業法 令和6年(2024年)改正内容の解説」 を一部引用しています。今後省令や指針の改定により詳細が変更される可能性がありますので、最新の情報については厚生労働省の資料やウェブサイトを適宜ご確認ください。

執筆者プロフィール

大杉宏美(社会保険労務士)

専門家集団 BAMBOO INCUBATOR 所属•運営
クレド社会保険労務士事務所 代表

大阪大学法学部卒業後、サントリー(現サントリーホールディングス)株式会社を経て、医業経営コンサルティング会社に参画。クライアントの抱える多様な問題に応えるため、社会保険労務士の資格を取得し、独立開業。現在は、医療法人・スタートアップを中心に労務コンサルティングを提供している。株式会社BAMBOO INCUBATOR 取締役、ほか2社代表。

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