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人事労務アウトソーシングの失敗を防ぐ!選び方のポイントと注意点
(チェックリスト付き)

  • 働き方改革

給与計算や勤怠管理、社会保険手続きなど、人事労務の業務は多岐にわたります。労務管理に追われて本来の業務に集中できなかったり、頻繁な法改正への対応が難しかったりと、組織の時間や労力も圧迫されがちです。こうした課題を解決する手段のひとつが「人事労務のアウトソーシング」です。
本コラムでは、人事労務をアウトソーシングするメリットや、具体的にどのような業務を任せられるのかを詳しく解説します。

公開日:2025年3月12日

目次

人事労務アウトソーシングとは

人事労務アウトソーシングとは、企業の人事・労務業務を外部の専門業者に委託するサービスです。人事や労務に関する業務は、給与計算や社会保険手続き、勤怠管理、労務リスク対応など多岐にわたり、正確性や専門知識が求められます。

特に、法改正や制度変更に迅速に対応する必要があるため、専門的な知識がなければミスやトラブルの原因になりかねません。しかし、自社で専任の担当者を置くにはコストがかかるため、多くの企業がアウトソーシングを活用しています。アウトソーシングを導入することで、企業は煩雑な業務の負担を軽減でき、より戦略的な業務にリソースを割くことが可能になります。

人事労務アウトソーシングで依頼できる業務

企業の成長に伴い、人事労務業務の負担は増大しがちです。特に法改正への対応や、従業員の増減に伴う手続きなど、専門知識を要する業務が多く発生します。以下では、主に人事労務アウトソーシングで依頼できる業務の一例となります。

煩雑な手続きをまとめて依頼できる「人事労務手続」

従業員の入退社や身上変更、休職・復職など、人事労務に関する手続きは多岐にわたります。これらの業務はミスが許されず、正確な処理が求められるため、社内での負担が大きい部分です。

アウトソーシングできる主な業務

  • 入退社手続、身上変更手続
  • 休職・復職・発令手続
  • 組織図・役職のメンテナンス
  • 昇給・昇格手続き

これらを専門家に委託することで、手続きの正確性が向上し、社内のリソースを戦略的な人事業務に集中させることができます。

高い専門性が求められる「給与計算・勤怠管理」

給与計算や勤怠管理は、企業の信頼にも直結する重要な業務です。しかし、計算ミスや法改正への対応遅れがあると、従業員満足度の低下やコンプライアンスリスクを招く可能性があります。

アウトソーシングできる主な業務

  • 勤怠データの確定・締め作業
  • 変動給データ収集・更新
  • 給与計算および結果確認
  • 給与明細発行・仕訳データ作成

これらをアウトソーシングすることで、正確かつ迅速な給与処理が可能になり、企業の信頼性を高めることができます。

繁忙期に発生する「年次スポット業務・年末調整」

賞与計算や年末調整、住民税更新など、特定の時期に集中して発生する業務は、社内リソースに大きな負担をかけます。

アウトソーシングできる主な業務

  • 賞与計算、有給休暇管理、退職金計算
  • 年末調整の申告書印刷・発送・回収
  • 住民税の更新手続き、決定通知書の封入・配布

これらの業務は、スポットで発生するため、社内での対応が難しいことが多く、アウトソーシングによる負担軽減が非常に有効です。

従業員サポートの強化「社員対応業務」

企業の規模が大きくなると、従業員からの問い合わせ対応や証明書発行など、人事部門の負担が増大します。

アウトソーシングできる主な業務

  • 社員問い合わせ窓口対応
  • 各種証明書発行、自治体対応窓口
  • メール対応

これらの業務を専門の窓口に任せることで、スピーディーな対応が可能になり、従業員の満足度向上につながります。

人事労務をアウトソーシングする5つのメリット

人事労務をアウトソーシングした場合の代表的なメリットをご紹介します。自社の課題にとって効果的であると感じた場合は、ぜひ導入を検討してみてください。

業務効率化やリモートワークの促進につながる

人事労務アウトソーシングを活用することで、給与計算・社会保険手続き・年末調整などのルーチン業務を外部に任せられ、業務効率が大幅に向上します。これまで手作業で処理していた業務をクラウドシステムと連携させることで、申請・承認フローのデジタル化が可能になり、担当者の負担を軽減できます。

また、労務管理業務をアウトソーシングすることで、リモートワークの推進にもつながります。たとえば、給与計算や年末調整の処理をクラウド上で完結できる仕組みを導入すれば、担当者がオフィスに出勤せずとも業務をスムーズに進めることが可能です。
さらに、アウトソーシングを活用することで、本来の人事業務により多くの時間を割くことができるため、企業全体の生産性向上にも寄与します。

法令改正に対応できる

労働関連の法改正は頻繁に行われ、企業の人事労務担当者は常に最新情報をキャッチアップし、適切に対応する必要があります。しかし、社内での対応が追いつかず法令違反のリスクを抱えるケースも少なくありません。
アウトソーシングを活用すれば、下記のような業務も任せられます。

  • 電子帳簿保存法への対応(紙ベースからデジタル保存への移行)
  • 残業時間の上限規制に関する対応
  • 育児・介護休業法の改正による制度整備

また、法改正があるたびに社内のルールを適切に変更するためのサポートを受けられるため、労務担当者の負担軽減にもつながります。

属人化を防止できる

人事労務業務は専門性が高く、長年担当者が固定されているケースが多いため、特定の担当者に業務が依存しがちです。
たとえば、給与計算や社会保険手続きを一部の担当者のみが理解している状態になると、担当者が突然退職した場合や長期休暇を取る際に、業務が回らなくなる可能性があります。また、手作業が多い環境では業務マニュアルが整備されておらず、引き継ぎがスムーズに進まないことも珍しくありません。
アウトソーシングを導入すれば、専門業者が業務を標準化し、一貫したフローで運用できるため、特定の担当者に依存するリスクを低減できます。その結果、組織の安定性が向上し、急な人事異動や退職が発生しても業務が滞ることなく継続できるようになります。

人材不足への対策ができる

昨今、多くの企業で人手不足が深刻化しており、人事労務部門も例外ではありません。特に、給与計算や労務管理の専門知識を持つ人材の確保は難しく、採用しても即戦力になるまでに時間がかかります。アウトソーシングを活用すれば、経験豊富な専門チームに業務を委託できるため、自社で新たな人材を確保する必要がなくなります。

また、繁忙期のみスポットで業務を依頼することも可能なため、必要なタイミングで柔軟に対応できる点も大きなメリットです。たとえば、年末調整の時期には業務が急増しますが、アウトソーシングを活用すれば、短期間だけ外部の専門業者に業務を委託することで、社内の負担を軽減できるでしょう。

採用や教育のコストを削減できる

自社で人事労務業務を担当するためには、専門知識を持つ人材の採用と教育が必要です。しかし、労務管理の専門家を社内に抱えるには採用コストや研修費用がかかるだけでなく、育成にも時間がかかるという課題があります。また、法改正や制度変更があると、その度に研修が必要になる場合もあります。

アウトソーシングを活用すれば、人事労務の専門家に業務を任せられるため、新たな人材を採用・育成する必要がなくなり、コスト削減につながります。また、常に最新の知識を持つ専門家が対応するため、社内での研修・教育コストを削減できます。

人事労務をアウトソーシングする際の注意点

人事労務のアウトソーシングは、業務の効率化や負担軽減につながる一方で注意点もあります。せっかく導入したサービスを最大限に活用するためにも、アウトソーシングを利用する際は下記を留意しておきましょう。

社内にノウハウが蓄積されづらい

長期間アウトソーシングすると、社内にノウハウが蓄積されにくくなるというリスクがあります。
給与計算や社会保険手続きの詳細を把握できる担当者が社内に少なくなり、業務の全体像や細かな手順を理解しにくくなったり、法改正に対する対応方法を社内で学ぶ機会が減ったりすることで適切な判断が難しくなる可能性があります。
こうしたリスクを回避するためには、アウトソーシングを活用しつつも、社内での情報共有や知識の維持・更新を意識的に行うことが重要です。

認識のずれが生じる場合がある

人事労務業務は企業ごとの就業規則や運用ルールに基づいて実施されるため、アウトソーシング業者との認識のずれが発生する可能性があります。たとえば、給与計算における手当の支給基準や勤怠管理のルールが業者に正しく伝わっていないと、誤った処理が行われるリスクがあるため、十分なコミュニケーションが必要です。

また、従業員からの問い合わせ対応にも注意が必要です。アウトソーシング業者が直接対応する場合、会社の方針や社内の文化に即した回答が得られず、従業員の不満につながることもあるため、対応方針を共有しておきましょう。

認識のずれを防ぐためにも、下記のような対策が有効です。

  • 定期的なミーティングを実施し、情報共有を徹底する
  • 業務フローを文書化し、細かい運用ルールを明確にする
  • 特に給与計算や勤怠管理に関しては、細かい部分まで業者と擦り合わせる

情報漏えいの恐れがある

人事労務業務では、従業員の個人情報や給与データ、マイナンバーなど機密性の高い情報を取り扱います。アウトソーシングを導入することで、これらのデータが社外の業者に管理されるため情報漏洩のリスクが伴います。

特に、委託先が適切なセキュリティ対策を講じていない場合、サイバー攻撃や内部不正による情報流出の危険性が高まるため、業者選定の段階でセキュリティ基準を厳しくチェックすることが重要です。
業者選定の段階では、下記の2点を必ず確認しましょう。

  • データの暗号化やアクセス制限など、適切な管理体制があるかを確認する
  • 個人情報保護方針が明確で、社内規定と合致しているかを確認する

また、万が一の情報漏れ時の対応策(契約上の免責事項や責任範囲)を事前に確認しておくと良いでしょう。定期的なセキュリティ監査を実施し、業者の情報管理体制をチェックすることで、より安全な運用を確保できます。

人事労務のアウトソーシングを失敗させないために業者を選ぶ際のポイント

ここまでご紹介した注意点を踏まえ、人事労務のアウトソーシングの業者の選び方を3つ解説します。

実績や専門性の確認

アウトソーシング業者を選ぶ際、最も重要なのが「実績」と「専門性」です。人事労務は法令遵守が求められる業務であり、対応ミスが発生すると企業の信頼を損なうリスクがあります。そのため、委託先がどのような企業の実績を持っているのか、どの分野に強みを持っているのかを事前に確認することが重要です。

たとえば、業界特有の労務管理ルールや法令改正への対応経験があるかどうか、また、他の企業での導入実績や成功事例があるかなどをチェックしましょう。特に、同じ業界・企業規模のクライアントが多い業者であれば、自社の課題にもスムーズに対応できる可能性が高いです。

自社のシステムがそのまま使用できるか

アウトソーシングを導入する際に見落とされがちなのが、現在自社で使用しているシステムをそのまま活用できるかどうかです。たとえば、クラウド型の勤怠管理システムを利用している場合、アウトソーシング業者がそのシステムを活用して業務を行えるかを事前に確認しましょう。もし新しいシステムを導入しなければならない場合、移行作業の負担や追加コストが発生する可能性があるため注意が必要です。

サポート体制と柔軟性のチェック

アウトソーシングを導入する際、契約後のサポート体制や業務範囲の柔軟性も重要なポイントです。人事労務業務では、突発的な対応が求められることもあるため、事前に業者側のサポート内容や対応範囲を把握しておくことが大切です。
たとえば、年末調整や労働法改正の時期には、問い合わせが増加することが予想されます。その際、どのようなサポートを受けられるのかを確認しておくと、スムーズに業務を進めることができます。

具体的な確認内容は以下のようなものが考えられます。

  • 問い合わせ対応の窓口やフローは明確になっているか
  • 契約範囲内で対応可能な業務と、追加費用が発生する業務は何か
  • 相談や依頼に対する対応方針やサポート体制

また、業務範囲の柔軟性も重要です。企業ごとに労務管理のニーズは異なるため、下記ポイントも事前に確認しておくと安心です。

  • 基本の給与計算や社会保険手続きだけでなく、必要に応じて他の業務も委託できるのか
  • フルアウトソーシングだけでなく、一部業務のみを委託することも可能なのか
  • スポットでの依頼ができるのか、それとも長期契約が必須なのか

アウトソーシング業者選定時の失敗を防ぐためのチェックリスト

自社にとって適切な人事労務のアウトソーシングを選定するために、ぜひご活用ください。

アウトソーシング業者選定のポイント

  • 業務内容に精通した専門知識があるか
  • 自社が求めるカスタマイズ対応が可能か
  • 実績やクライアント数などの信頼性があるか

セキュリティ・法令遵守

  • 個人情報の管理体制が整備されているか
  • 最新の法令改正に対応可能か

費用面の確認

  • 月額料金や業務単位料金が明確に提示されているか
  • 追加費用の対象範囲について説明があるか

運用後のサポート

  • 従業員からの問い合わせにも対応可能か
  • 導入後のトラブル対応窓口が設置されているか

人事労務をアウトソーシングする際の料金

人事労務のアウトソーシングサービスは、企業の規模や依頼する業務の範囲に応じて料金が変動します。一般的に、料金体系は「月額固定型」と「業務単位型」に分かれており、企業のニーズに応じたプランを選択できます。月額固定型(定額制)は、毎月決まった料金を支払うプランで、継続的に発生する業務を包括的に委託できるのが特徴です。料金は従業員数や業務範囲によって異なり、企業の成長に合わせたプランの見直しが可能です。
業務単位型(従量制)は、特定の業務のみを依頼する方法で、必要な分だけコストを抑えながら利用できます。たとえば、給与計算や社会保険手続き、年末調整などスポット的に発生する業務にも対応可能です。
料金の詳細は、依頼する業務内容やサポート範囲によって異なりますので、自社の課題や業務負担を踏まえ、最適なプランを選ぶことが重要です。アウトソーシングを検討する際は、対応範囲とコストのバランスを確認しながら、最適なパートナーを選びましょう。

人事労務をアウトソーシングした企業の成功事例

給与計算からフルBPO化で残業時間を削減、コア業務に集中

背景・課題

ある企業では、人事労務業務の負担が大きく、従業員の残業が慢性化していました。さらに、給与計算システムのトラブルにより、一部の業務を手作業で対応せざるを得なくなる事態が発生。このような状況を受け、根本的な業務改善のためにアウトソーシングの導入を決定しました。

導入施策

  • 給与計算業務の一部のアウトソーシングからフルBPOへ移行
  • 業務フロー全体を見直し、分業体制を確立
  • アウトソーシング先と定期的に連携し、スムーズな業務運営を実現

成果

当初は給与計算業務からアウトソーシングを開始しましたが、最終的にはフルBPOへ移行。給与計算だけでなく、人事労務業務全体を見直すことで、業務の分業体制を確立し、担当者の業務負担を大幅に軽減しました。業務体制が安定できたことでコア業務への時間が大幅に割けるようになり、複数のプロジェクトを同時進行できるまでに改善されました。

人事労務業務の最適化と戦略人事の推進に成功

背景・課題

ある企業では、人事部だけで給与計算からシステム管理まですべて行っていたため、定型のオペレーション業務をこなしていくだけで手一杯でした。戦略的な施策を実施できないことに焦りを感じる中、働き方改革が掲げられ、業務量のさらなる増加が懸念されたためにアウトソーシングの導入を決定しました。

導入施策

  • 給与計算やシステム管理などの定型業務をアウトソーシング
  • 一部の業務を整理し、業務フローを標準化
  • 人事部のリソースを戦略業務に振り分ける体制を確立

成果

定型業務を切り離すことで、人事部の業務を最適化。当初懸念していた「戦略人事」に時間を割けるようになり「働き方改革関連法案」に沿った施策や、福利厚生の充実、制度変更やペーパーレス化の加速など、これまで着手できなかった企画業務の推進もできるようになりました。

まとめ

人事労務のアウトソーシングを利用すると、業務の負担を削減し、よりコア業務に集中できるというメリットがあります。しかし、人事労務は対応範囲が広範囲であるために、アウトソーシング業者であっても一部の業務のみに特化していたり、利用するシステムが固定されていたりする場合もあります。自社への導入で成功するためには、自社の実態や現状に即したサービスを導入することが大切です。

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