FAQの作り方の手順とは?解決に導くコツをわかりやすく解説
ヘルプデスクやコールセンターの負担を軽減する手段として、FAQの作成や見直しを行いたいと考える企業は少なくありません。しかし、FAQの作り方によってはユーザーが求める情報にたどり着けず、結局オペレーターに問い合わせが発生してしまうなど業務効率向上につながらないこともあります。
そこで本コラムでは、FAQの作成の基本的な手順や、成功させるために考慮すべきポイントについて詳しく解説します。
目次
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FAQとは
- FAQとQ&Aの違い
- FAQコンテンツの構成要素
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FAQ作成の4つのメリット
- 窓口への問い合わせ量の削減
- ナレッジに基づいた回答品質の標準化
- 自社サイト全体のSEO強化
- ユーザー満足度の向上
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効果的なFAQの作り方 “5つの手順”
- STEP1:FAQの材料を収集する
- STEP2:「質問」情報の整理
- STEP3:「回答」作成、質問への紐づけ
- STEP4:「回答」の検証、承認、公開
- STEP5:継続した見直し、改善
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FAQ作成時に意識すべき3つのポイント
- FAQのレギュレーション整備
- 情報の正確性と信頼性の向上
- ユーザーフレンドリーな導線と検索性の工夫
- チャットボットの活用
- FAQの活用を高めるKCS
- まとめ:FAQを活用し、問い合わせ業務を改善
FAQとは
FAQとは、「Frequently Asked Questions」の頭文字を取った用語で、日本語では「よくある質問」という意味になります。
企業の問い合わせ対応という文脈では、一般的にユーザーから頻繁に問い合わせがある質問や、問い合わせが来ることが予想される質問を一覧形式でウェブページ上に表示したり、検索したりできるようにしておくことを指します。
適切にFAQページを設置することでユーザーが自分自身で回答にたどり着くことができ、次のような効果が期待できます。
- 早期の問題解決実現でユーザーの満足度が高まる
- ヘルプデスクやコールセンターへの問い合わせを削減する
また、近年では対話形式でFAQを行うチャットボットの導入も増加しています。
Q&Aとの違い
Q&Aは、「Question and Answer」の頭文字を取った用語で、日本語に訳すと「質問と回答」という意味になります。Q&AとFAQはそれほど厳密に区別されてはいませんが、FAQが「よくある質問」を中心に掲載しているのに対して、Q&Aは頻度を限定せず想定される質問と回答を掲載するため、情報量が多くなる傾向があります。
FAQの構成要素
FAQページは検索しやすく、分かりやすい情報を過不足なく提供することが求められます。ユーザーに利用される効果的なFAQコンテンツを作成するためには、下記の構成要素を意識するとよいでしょう。
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質問文
ユーザーが回答にたどり着くための最初の手がかりとなる要素です。ユーザーの目線に立って、知りたいことが一目で分かるように的確かつ簡潔に表現することが重要です。
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回答文
ユーザーが問題を解決できるように、質問本文に対して適切な情報を提供します。結論から先に述べ、簡潔かつ直接的で理解しやすい表現を心掛けます。
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参考ページのURL
回答本文の根拠となる一次情報が掲載されたウェブページのURLを設置します。これにより、回答の信頼性が高まり、ユーザー自身がソースやエビデンスを検索する必要がなくなるため、満足度が高まります。
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関連するFAQ
質問本文に関連するトピックのリンクを掲載します。回答本文によって1つの問題が解決したとしても、ユーザーによっては併せて確認したいトピックがあるかもしれません。適切な関連FAQのリンクを設置できれば、ユーザーがFAQを活用するモチベーションが高められます。
また、FAQを提供する対象ユーザーによって次の3つに分類することができます。
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社内向け
社内システムの使用方法や手続きなど、社員から情報システム部門や経理・総務などのバックオフィス部門に届くよくある問い合わせ内容を掲載することで、負担を軽減する目的で社内ポータルサイトなどに設置するFAQページです。
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社外向け
自社の製品やサービスに関するよくある質問を掲載することで、顧客自身で疑問や問題を解決できる可能性が高まり、カスタマーサポートの負担軽減や顧客満足度の向上が期待できます。
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コールセンター向け
社内向けのヘルプデスクや、社外向けのコールセンターでオペレーター業務を行うスタッフがマニュアルとして利用するために設置するFAQページです。よくある問い合わせに対する回答を標準化でき、問い合わせ対応や新人教育の効率化や属人化解消が期待できます。また、継続的にオペレーターの対応事例をFAQに追加することで全体の回答品質を持続的に高めることも可能です。
FAQ作成の4つのメリット
FAQを作成するメリットは主に次の4つが挙げられます。
- 窓口への問い合わせ削減
- ナレッジに基づいた回答品質の標準化
- 自社サイト全体のSEO強化
- ユーザー満足度の向上
ここでは、FAQを作成するメリットについて詳しく解説します。
窓口への問い合わせ量の削減
最も直接的なメリットは、ユーザーからヘルプデスクやコールセンターへの問い合わせ量を削減できることです。
有人の問い合わせ対応のために用意できるオペレーターや回線には限りがあります。FAQを設置することでユーザー自身が問題を自己解決できるようになれば、自ずと窓口への問い合わせ量が削減されます。これにより、オペレーターはFAQでは解決できない問い合わせ対応に集中できるようになり、業務効率向上や負担の軽減につながります。
ナレッジに基づいた回答品質の標準化
FAQに掲載する回答は、ユーザーからの同様の質問に対してこれまでに蓄積された対応事例に基づいた「最も適切な回答」になります。
オペレーターによる有人の対応の場合は回答に個人差が生じる可能性がありますが、FAQであれば回答の品質を標準化することが可能です。そして、継続的にオペレーターの対応事例をFAQに取り入れることで、更なる回答品質の向上が期待できます。
また、FAQはスマートフォンやPCなどでインターネットにアクセスできる環境であれば、24時間いつでもどこでもすぐに参照が可能です。ユーザーにとっては繋がる時間帯やリソースに制限のある有人窓口への問い合わせよりもスピーディに問題を解決でき、顧客満足度が高まることが期待できます。
自社サイト全体のSEO強化
社外向けのFAQの場合、適切なFAQを設置できればGoogleやYahoo!などの検索エンジンからの流入が増加します。その結果、サイト全体がアルゴリズムに有益なサイトとして認知されて検索上位に表示されることが期待できます。
これにより、自社製品やイベント、採用情報などFAQ以外のさまざまな情報も検索ユーザーに見つけてもらいやすくなり、サイト全体のアクセス増加や売り上げの拡大に繋がる可能性があります。
ユーザー満足度の向上
ユーザーが一番望んでいるのは問題の早期解決です。実際、約6割のユーザーがFAQなどで自己解決を試みているといわれており、ユーザーには自己解決の意思があるといえます。決してオペレーターにつながらないことを不満に思っているわけではないのです。つまり、適切なFAQが設置できれば、早期に問題解決に繋げられることとなり、ユーザーの満足度を向上させることができます。後述しますが、そのためにはユーザー目線で導線や内容を検討し、より活用されるFAQを作り上げていく必要があります。
効果的なFAQの作り方 “5つの手順”
FAQを作成すると言っても、ただ質問と回答を掲載するだけでは業務効率化やユーザー体験の向上といった効果は期待できません。効果的なFAQを作成するためには、準備から公開に至るまで、適切な順序に沿って実施することが重要です。
FAQの作成は、以下の順序に従って実施することをおすすめします。
STEP1:FAQの材料を収集する
STEP2:「質問」情報の整理
STEP3:「回答」作成、質問への紐づけ
STEP4:「回答」の検証、承認、公開
STEP5:継続した見直し、改善
効果的なFAQを作成するための手順についてさらに詳しく見ていきましょう。
STEP1:FAQの材料を収集する
FAQを作成するためには、掲載する質問と回答の材料を収集する必要があります。
情報源としては、実際にカスタマーサポートやヘルプデスクに届いた電話やメールなどの問い合わせ内容や回答を洗い出すのが最も効果的ですが、もし社内に対応履歴が十分に蓄積されていない場合は、問い合わせに対応しているオペレーターにアンケートやヒアリングを行うとよいでしょう。
また、製品やサービスの説明書・仕様書や他社のFAQページなどを参考にして問い合わせがありそうな質問と回答を予想し、準備することも有効です。
STEP2:「質問」情報の整理
FAQに掲載する情報量は、多すぎても検索性が悪くなってしまうため、必要なものだけに絞って掲載するのが効果的です。材料となる質問と回答を集めたら、掲載する情報を厳選するため、質問情報のカテゴライズと優先順位付けを行いましょう。
下記のような指標をもとにABC分析のフレームワークを用いて重要度・優先度を整理するとよいでしょう。
- 問い合わせの頻度
- 問い合わせの累積回数
- 問い合わせの種類(使い方の質問、修理や保守など)
- 重要度(直ちに解決が必要、緊急性なしなど)
FAQ作成におけるABC分析とは、横軸に問い合わせ回数の多い順に質問を並べ、縦軸に累積の回数や頻度を表示し、特に重要度の高い項目を割り出す分析方法です。
ABC分析でAに該当する項目は優先的にFAQに掲載すべきですし、Bに該当する項目は余裕があれば対応する、Cに該当する項目は対応不要か後回しでよい、と視覚的に判断できます。
ABC分析の一例
STEP3:「回答」作成、質問への紐づけ
掲載すべき質問が整理できたら、質問に対する回答を作成しましょう。回答を作成する際には、提供する情報に矛盾や誤りがないか、可能な限り複数の情報源を参照して情報の正確性を担保することが重要です。
対応履歴に適切な回答がある場合はそれをベースに作成できますが、そうでない場合は下記のような資料を参照して回答を作成しましょう。
- 仕様書
- マニュアル
- リリースノート
- カタログ
- 自社ウェブサイトの情報
資料だけでは情報が不十分な場合は、専門的な知識を持つ部署や担当者に問い合わせが必要となる場合もあります。
また、情報量に過不足がないかも併せて確認し、適切なボリュームに調整しましょう。情報が少なすぎると問題解決に繋がりませんが、多すぎてもユーザーを混乱させてしまったり、ストレスになったりする可能性があります。
STEP4:「回答」の検証、承認、公開
質問と回答が作成できたら社内の承認フローに基づいて関連部署の承認を得て、ウェブサイトへの公開を行います。
FAQページの公開にあたっては、ユーザーが見つけやすいように、自社ウェブサイトのヘッダー・フッターや、関連する製品・サービスのページなど目につく場所にFAQページへのリンクを設置しましょう。
また、表示する文言も「FAQ」ではユーザーに伝わりにくい可能性があるため、「よくある質問」や「お困りの場合はこちら」のような分かりやすい文言を採用するとよいでしょう。
STEP5:継続した見直し、改善
FAQは一度作成して公開すれば終わりではありません。公開後の効果検証によって得られたデータをもとに、継続的な更新や改善が必要です。
特に、掲載する情報の最新化はFAQページの信頼性を維持するために重要な要素です。公開当時は有益だった情報も、更新が不十分であればいつかは最新の問題に対処できない誤った情報となってしまうことがあります。
製品のバージョンアップやサービスの利用方法の変更など、FAQを更新すべきイベントを把握して抜け漏れのないように対応しましょう。
また、FAQページのアクセス数や滞在時間が増えない、カスタマーサポートへの問い合わせ件数が減らないといった場合は、導線や質問・回答内容の見直しを検討する必要があります。
FAQ作成時に意識すべき3つのポイント
FAQで期待したとおりの成果を上げるには、単純に質問と回答を用意しただけでは不十分です。ここでは、FAQ作成時に押さえておくべきポイントについて解説します。
効果的なFAQを作成するためには。以下の3つのポイントに留意するとよいでしょう。
- FAQのレギュレーション整備
- 情報の正確性と信頼性の向上
- ユーザーフレンドリーな導線と検索性の工夫
FAQのレギュレーション整備
FAQを作成するにあたっては、事前準備として、レギュレーションを整備しておくことが重要なポイントです。FAQ作成におけるレギュレーションとは、FAQの中で使用する用語・呼称・文章の表現を統一するためのルールのことです。
FAQを作成する際によくある問題のひとつが、専門用語を多用することで閲覧するユーザーが読み取れず、正しく伝わらなくなってしまうことが挙げられます。
専門用語であっても、社内や所属部署で日常的に使われている用語の場合、FAQの質問や回答の中でも無意識に使ってしまいがちです。いかに簡潔にまとまっていて正確な情報でも、専門用語を使用したばかりにユーザーにとって意味が理解できなくなってしまったのでは本末転倒です。
質問や回答を作成する前に、ユーザー目線で分かりにくい用語がないかリストアップし、日常生活で使われる一般的な用語に置き換えるようにルール化しておきましょう。レギュレーションとして整備しておくことで、全体的な表現を統一でき、表記揺れの防止にも繋がります。
情報の正確性と信頼性の向上
ユーザーがFAQの情報を信頼してその通りにアクションした時、それが誤った情報だった場合に失われる信頼は少なくありません。場合によってはFAQページのアクセス数や滞在時間が増えないばかりでなく、自社サイトや製品・サービスの信頼にも悪影響を与える可能性があります。
必ず複数の情報源を参照して、正確な情報を過不足なく掲載しましょう。また、情報の根拠となる参考URLや関連トピックへのリンクを併記して信頼性を高めることも重要です。
ユーザーフレンドリーな導線と検索性の工夫
どれほど有益な情報を掲載していても、ユーザーがFAQページにたどり着けなければ意味がありません。利用のハードルを可能な限り低くすることが、利用率を高めるための重要なポイントとなります。
たとえば、社内向けFAQであればポータルサイトやグループウェア、社外向けFAQであればトップページのヘッダーやフッターだけでなく、関連するサービスや製品ページなど、分かりやすい場所にリンクを設置しましょう。モバイルユーザーから見やすいページづくりも必要です。さらには、FAQの存在や場所の周知・活用を呼び掛ける活動も重要です。
また、せっかくユーザーがFAQページにたどり着けても、求める質問と回答を探し当てられなければ宝の持ち腐れです。カテゴリー分けやキーワード検索に対応させるなど、可能な限り使いやすさを配慮するとよいでしょう。
チャットボットの活用
問い合わせが想定される質問とそれに対する回答を掲載し、それをユーザー自身が参照することで問題解決に導くのがFAQの役割です。しかし、近年では人工知能やIT技術の進歩によって、音声やテキストを用いた対話型のFAQを行う「チャットボット」が登場し、注目されています。
チャットボットはウェブサイト上にチャットウインドウを設置し、ユーザーがそこに質問や問い合わせ内容を入力すると自動的に適切な回答を行ってくれるプログラムです。
チャットボットは対話形式のため、自力で回答にたどり着くことが求められるFAQと比較してユーザーが「回答をしてもらった」という満足感を得やすい点が大きな魅力のひとつです。これにより、従来のFAQページ以上に問い合わせ窓口の負担軽減が期待できます。また、従来のFAQページもチャットボットの回答に利用できるため共存可能で、無駄になりません。
FAQの活用を高めるKCS
FAQ導入の失敗事例として「問い合わせ窓口の負担を軽減する目的でFAQを導入したものの、思うように問い合わせ件数が減少しない」というものがあります。
FAQ導入の効果が出ない原因はさまざまですが、主な原因は下記の4つが考えられます。
- FAQの内容が分かりづらい
- 欲しい情報にたどり着けない
- 公開されている情報が古い
- FAQが公開されるまでに時間がかかる
これらの問題は、ユーザーが必要な情報を適切なタイミングで得られないことや、FAQの作成者とユーザーのニーズが合致していないことが原因です。このようなギャップを解消しなければ、FAQの効果的な活用は難しいでしょう。
そこで注目されているのが、FAQ導入の効果を高める施策である「KCS(ナレッジセンターサービス)」です。KCSでは、「利用者全員でナレッジを作成し、共同でメンテナンスする」という発想でナレッジデータベースを作成し、運用・管理します。
具体的には、問い合わせを受けたスタッフは、既知の内容であっても必ずナレッジデータベースを検索し同じ回答をすることで、品質を一定に保ちます。もし検索してもナレッジがない新しい問合せ内容であった場合には、その場で回答を作成するため、ナレッジが常に最新化されます。また、問い合わせ頻度の高いナレッジはFAQに掲載するため、FAQも同様に最新化される仕組みとなっています。
KCSを導入すると、以下のような効果が期待できます。
- FAQの作成や更新の迅速化
- ナレッジ共有による属人化の防止
- FAQの充実と最新化による顧客満足度の向上
- 対応者の負担軽減による従業員満足度の向上
- 経験の浅いスタッフへの教育リソースとしての活用
FAQの効果を最大限に引き出したい場合、KCSの導入は有効な選択肢と言えるでしょう。
まとめ:FAQを活用し、問い合わせ業務を改善
FAQを効果的に活用することでユーザー自身が疑問や問題を解決できるようになれば、カスタマーサポートやヘルプデスクへの問い合わせ件数を減らすことが可能です。これにより、業務の効率化が進むだけでなく、顧客満足度の向上も期待できます。
さらに、FAQを通じてサイトのアクセス数や滞在時間が増加することで、サイト全体のSEOが強化されるという副次的な効果も見込めます。
ただし、効果的なFAQを作成するためには対応事例の収集・レギュレーションの策定・ユーザーフレンドリーな導線の整備・継続的な効果検証と改善といったさまざまな施策の検討と実施にリソースを割かなければなりません。
これらを着実に実施するためには、専門的な知識を持つ外部企業に委託するBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)の活用が効果的です。
私たちキヤノンマーケティングジャパングループは、お客さまのビジネス変革を、ITとBPOでご支援しています。BPOの活用方法や事例、効果などについて知りたいときは、お気軽にご相談、お問い合わせください。
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