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ひとり情シスの原因と問題点とは?つらい現状を打破する対策まで解説

  • 働き方改革
  • 生産性向上

近年、社内SEや情報システム部門の間で「ひとり情シス」という言葉を聞く機会が増えており、課題解決に悩む企業も少なくありません。
しかし、ひとり情シスの課題解決策が分からない人や、そもそもその実態を十分に理解していない人も多いのが現状です。
そこで本コラムでは、ひとり情シスの原因や課題、解決策、成功事例などを紹介します。

目次

ひとり情シスとは

ひとり情シスとはどういうものなのか、意味やそもそもの情シスの役割について解説します。

ひとり情シスとは

ひとり情シスとは、社内の情報システム部門を1人で担当している状態のことです。また、担当者が3名程度でも、企業規模が大きい場合には人数不足と捉えられ、実質的にひとり情シスと同様の状況に陥ることがあります。さらに、企業によっては「ゼロ情シス」と呼ばれる、情報システム部門の担当者が1人もいない状態に陥っていることもあります。

情報システム部門(以下、情シス)の業務は、社内システムの管理や運用保守、インフラの構築など多岐にわたります。ひとり情シスは、これらの業務を1人または限られた人数でこなさなければならず、担当者にとって非常に大きな負担となります。
ひとり情シスは多くのリスクを生むものの、柔軟に対応しやすく、コスト削減につながる場合もあるため、ひとり情シスに陥っている企業は少なくありません。

また、コロナ禍以降、テレワーク環境の整備やデジタル化への対応などで、情シスの存在はさらに重要視されています。しかし、ベテラン社員の退職や転職の影響で、経験の浅いひとり情シスが増加傾向にあり、なかなか解決には至っていないのが現状です。

情シスの役割

そもそも情シスは、企業のIT環境を整備し、円滑な業務運営を支援する重要な役割を担う部署です。具体的な役割としては、以下のようなものが挙げられます。

  • IT戦略やシステムの企画・開発・導入
    業務基幹システムや情報システムなど、業務に不可欠な社内システムの開発や管理、導入するのが情シスの重要な業務のひとつです。企業の目標や経営戦略に合わせたIT戦略を策定し、その戦略に基づきシステムの企画や開発を進めます。具体的には、新しいシステム導入の際の要求分析やベンダー選定、プロジェクトの進捗管理、導入後のシステムのテストなどが主な業務内容として挙げられます。
  • システムの運用・保守
    システムが安定して稼働するように、システムの監視、障害対応、定期的なメンテナンス、バックアップ作業を行うのも重要な役割のひとつです。企業が24時間体制でシステムを利用している場合、迅速な障害対応やサイバー攻撃対策・情報漏洩対策などのセキュリティリスクの管理も情シスの責任範囲です。
  • 社内インフラやネットワークの構築・管理
    社内ネットワークやサーバー、Wi-Fi、クラウド環境などのインフラを整備し、安定して利用できるよう管理する業務もあります。具体的には、新たなネットワークの設計、社内LANやVPNの導入、設備の更新作業、セキュリティの強化などです。特にセキュリティ対策が重要であり、定期的な更新や監視を行い、常に対策知識をアップデートすることで、情報漏洩などのリスクを最小限にします。
  • ヘルプデスク・サポート業務
    情シスは、社員がシステムを快適に使用できるよう、ヘルプデスクとしての役割も担います。PCやソフトウェアのトラブルシューティング、アカウントやパスワードの管理、新入社員向けのIT機器設定など、日々のサポート業務を通じて社内のITリテラシー向上や業務のスムーズな進行に貢献します。社員からの問い合わせに対する迅速な対応も、業務の生産性に影響するため重要です。

このように情シスは社内の情報の記録、処理、伝達など、多くの業務を担っており、企業の業務効率化、コスト削減、競争力強化などさまざまな点において貢献します。デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する近年では、情シスの重要性はますます高まっていると言えるでしょう。

ひとり情シスの課題

企業がひとり情シスの状態に陥ると、多くの課題やリスクが生じます。ここでは、ひとり情シスの主な課題やリスクを4つ紹介します。

担当者の負担が重くなる

ひとり情シスの状態になると、担当者は情報システムやネットワークの管理、ヘルプデスクなど、幅広い業務をすべて1人で請け負わなければなりません。1人で行うには業務量が膨大で、常に多忙な状態になりがちです。

このような状況では、すべてを十分にこなすことは難しく、大切な業務が疎かになったり、対応に遅れたりするリスクが高まります。また、疎かになった業務をカバーするために、長時間の時間外労働に繋がるリスクも発生しかねません。

また、近年「健康経営」という概念が広がり、従業員の心身の健康を保つことが企業の成長にも寄与すると認識されています。しかしひとり情シスの状態になると、担当者は仕事量に比例してプレッシャーや責任感も大きくなり、精神的な健康に悪影響を及ぼすリスクもあります。特に、他部門に相談できる技術者がいない場合、孤独感が強まり、全てを自己判断で進めざるを得ないため、心理的負荷がさらに増大する可能性があります。

緊急時の対応が遅れる

ひとり情シスの状態になると、担当者は多くの業務を1人で行う必要があるため、障害が発生してもすぐに気付けない可能性が高くなります。

また、障害の発生に気付いても1人で対応しなければいけないため、解消が遅れることも多くなるでしょう。情シスでは複数の障害が同時発生することもあり、重要な案件を優先することで、他の対応が遅れるリスクも高まります。

業務が属人化してしまう

ひとり情シスの状態になると、全ての知識やノウハウが1人に集中するため、業務の属人化が発生しやすくなります。属人化とは、業務の進捗や内容が特定の担当者に依存し、その人物以外はその情報を把握していない状態を指します。

情シスの業務は専門知識を必要とするため、急に担当者が不在になった場合に社内の他部門では補えない場合が多く、業務が滞ってしまうリスクが高まるのです。

また、担当者が離職する場合の引き継ぎが困難なことも大きなリスクとなります。後任に引き継ぐまでの間、十分に時間を取れればよいですが、ひとり情シスの場合は他の人が対応して業務を補うことができず、情報共有が疎かになりがちです。また、ノウハウの蓄積も不十分になりがちなため、引き継ぎに要する時間も余分にかかってしまうでしょう。

セキュリティ対策が疎かになる

ひとり情シスの状態になると、セキュリティの対策にも手が回りづらくなります。セキュリティ対策には専門的な知識と時間が必要で、1人で全ての業務を行っていては、十分に対応できないためです。

また、日々の業務に追われてしまい、セキュリティ分野での最新技術や知識を習得する時間が十分に確保できない状況にも陥りやすくなります。
セキュリティにおいては、常に適切なアップデートができなければ、危険は高まるばかりです。情シスの体制が脆弱だと対策がままならないため、ウイルス感染や不正アクセス、さらには個人情報の漏洩など、セキュリティリスクが高まる恐れがあります。

ひとり情シスに陥る背景

ひとり情シスに陥る背景には、ITの人材不足やDX・ICT化が進んでいること、情シス業務が理解されていないことが関係しています。ここでは、ひとり情シスに陥るそれぞれの背景について詳しく解説します。

IT人材が不足している

現在、業界全体を通してIT人材の不足が深刻化しています。また、IT人材のボリューム層は30代前半なので、少子高齢化のあおりを受けて、IT人材の需要不足の状況は今後も加速していくことが考えられるでしょう。

経済産業省の調査によると、若年層の人口減少にともない、2019年をピークにITへの入職者が退職者を下回り、IT人材が減少に向かうことが予想されています。

情シスは専門的な知識・技術が必要であり、人手が足りないからといって誰にでも任せられる部署ではありません。適切なスキルを持った優秀な人材を確保するのが困難な状況において、ひとり情シスの問題は今後も避けられないテーマになると考えられています。

中小企業を中心としたDX・ICT化が進んでいる

近年、多くの企業でデジタルトランスフォーメーション(DX)やICTの導入が急務となっています。

しかし、特に中小企業では情シスが日々のIT管理やインフラの運用・保守に多くの時間を割いているため、新たな技術導入や改革に必要なリソースを十分に確保することが難しい状況にあります。結果として、少人数で対応しなければならないという状況が生まれ、その負担がひとり情シスという体制へと繋がるのです。

さらに、中小企業における限られた予算や人員の中で効率的にDXやICT化を進めることが求められるため、少人数で対応せざるを得ない傾向が強まっています。

情シス業務が理解されていない

情シスは社内システムの管理や運用保守など、事業運営に欠かせない役割を担っていますが、直接的な利益を生まないため、経営層からその重要性が見過ごされがちです。

さらに、経営層のITリテラシーが不足している場合や、適切な人材・知識・技術がどれほど必要か理解されていないことも問題を悪化させます。IT技術の進化に伴い、情シス業務は高度化・複雑化しているにもかかわらず、経営層がそれに気づかないままでいると、「1人でも対処できる」といった誤解が生まれやすくなります。

こうした認識不足が続くと、情シスの業務負担が増えるだけでなく、重要性が理解・評価されないことで離職率も高くなり、結果的に情シスの人材不足が慢性化してしまうリスクもあります。

ひとり情シス問題で企業が取るべき具体的な施策

次に、ひとり情シス問題に陥っている企業が、負担を軽減するために取るべき具体的な対策や施策を紹介します。

業務範囲を明確にする

情シスの負担が大きい場合は、まず業務範囲を明確化することが重要です。コア業務とノンコア業務に分け、情シスが取り組むべきメイン業務を誰もが理解できるようにしましょう。

コア業務には、IT方針の策定やシステム設計、セキュリティ強化などの社内システム運用管理が含まれます。一方、ノンコア業務には、サポートデスク対応やパソコン設定、ウイルス対策などが該当します。

ノンコア業務が増えると、情シスがコア業務に集中できなくなり、リソースが限られる中で負担がさらに増してしまいます。業務範囲を具体的に定め、ノンコア業務を効率的に対応する方法を検討し、コア業務への集中を促しましょう。

属人化しないようにマニュアルを作成する

ひとり情シス体制では、急な離職や病欠・事故で担当者が不在になるリスクが大きくなります。こうした属人化を防ぐには、まず「業務の棚卸し」が重要です。

業務棚卸しの際には、情シス担当者に以下の点についてヒアリングを行いましょう。

  • 業務の具体的な内容
  • 1日の業務量とそれにかかる時間
  • 業務に関わる担当者
  • 業務それぞれの作業手順やルール
  • 業務が発生する頻度
  • 業務ごとで必要になるスキルや習得難度

これらを整理して手順書を作り、業務フローを標準化することが大切です。また、情シスの責任者や他部署と手順書を共有し、社内でいつでも確認できるようにすれば、担当者が不在でも情シス業務を円滑に行えます。

ツールを導入する

情シスの業務を圧迫する定型業務は、業務効率化を図るためのツールを活用することで担当者の負担を軽減できます。業務効率化ツールには、具体的に以下のようなものがあります。

  • チャットボット
    ユーザーとのテキストや音声による対話を自動で行うツールです。AIやルールベースのプログラムを活用して、人と自然に会話しているように対応できます。業務の効率化、FAQ対応の自動化、カスタマイズ対応などをカバーするのに有効です。
  • FAQツール
    よくある質問とその回答をまとめて提供するためのツールです。FAQページやヘルプセンターのように、ユーザーが簡単に情報を検索・閲覧できる仕組みを提供します。問い合わせの削減や情報の整理、内容の更新を管理するのに有効です。
  • RPAツール
    繰り返し作業や定型業務を自動化するためのツールです。特にデータ入力や集計、ファイルの転送など、人手による操作を減らすことが可能です。業務の自動化やデータの処理・集計したい場合に役立ちます。
  • クラウドストレージ
    インターネット上にファイルを保存し、いつでも、どこからでもアクセスできるようにするためのオンラインストレージサービスです。ファイルの共有やデータのバックアップが容易になり、容量の管理も簡単に行えます。

導入するツールは情シスの現状に応じて検討し、業務効率化を図ることで情シス担当者がより重要な業務に集中できる環境を整えましょう。

社内のITリテラシー向上と人材育成

社内でのIT教育を通じて社員のリテラシーが向上すれば、基本的なトラブルシューティングやシステム操作を自分で行えるようになります。これにより、情シス担当者に日常的な問い合わせや依頼が集中するのを防げます。

IT教育の方法には、教育プログラムの導入やITスキルの研修、社外セミナーの開催や資格取得支援制度の活用などがあります。

しかしIT人材の不足もあり、社内でのIT教育を内製できなかったり、育成までの時間が大幅にかかったりするケースもあります。そのため人材育成については、社内の状況を把握し、余裕を見て行うのが理想です。

アウトソーシング(BPO)を活用する

社内での人材育成が難しい場合でも、IT業務のBPO(Business Process Outsourcing)を活用すればひとり情シスの負担を軽減することができます。

アウトソーシングを利用することで、情シス担当者が個人で対応するには高度な知識が求められる業務も、専門性の高いプロフェッショナルによって迅速に対応可能です。また、アウトソーシング先の企業が持つ専門知識やノウハウを自社に取り入れることができるため、社内の情シス業務の質や理解度も向上するはずです。

利用の際は、どの業務をアウトソーシングするのか、現状の課題と照らし合わせながら検討するとよいでしょう。

ひとり情シス問題が解決した事例

最後に、ひとり情シス問題を解決に導いた成功事例を紹介します。自社の問題解決の参考にしてみてください。

IT資産管理ツールを導入し業務の負担を軽減

「業務量が多いが新しい人材をすぐには増やせない」と悩む企業は多いでしょう。このような状況を解決したのが、IT資産管理ツールの導入でした。

IT資産管理ツールを使用することで、PCやスマートフォンなどのハードウェア、ソフトウェア、ライセンス管理が効率化されます。さらに、ツールの中には、IT資産情報管理だけではなく、ウイルス感染防止やライセンスの適正化などをカバーするものも見られます。

これにより、PCの運用を見える化し、OSが適切に更新されているか、ハードディスクに十分な容量が残っているかなどを一目でチェックすることが可能となりました。変化の激しいIT環境において、常に最新のバージョンアップに対応できる点も大きな利点と言えるでしょう。

情シス担当者も「無駄な作業が減り、業務量が半減した」と評価し、人的コストの削減と業務効率の向上が実現した事例です。

クラウドサービスを導入し煩雑な日常業務から解放

首都圏を中心にペットショップおよび動物病院を経営する企業では、事業拡大に伴い情報システム部の人員不足という課題に直面していました。特に、新発注システムのリプレイスやサーバー更新、全拠点へのWi-Fi導入などの大規模プロジェクトを進める中で、社内リソースだけでは対応が難しい状況でした。

これを解決したのが、クラウドサービスの導入やBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の活用です。
クラウドサービスを利用することで、セキュリティやBCP(事業継続計画)対策が強化され、働き方改革の一環として在宅ワークやVDI(仮想デスクトップインフラ)導入の検討にもつながりました。また、同時にシステム管理業務をアウトソーシングすることで業務負担が軽減され、新技術の情報収集やコア業務に集中する時間が確保できました。業務効率化と機動力向上の2つを達成した事例です。

まとめ|ひとり情シスを見直すことで企業の戦略的発展へ

ひとり情シスに陥ると、担当者の負担が増大し、緊急時の対応が遅れたり、業務の属人化やセキュリティ対策の脆弱化が引き起こされたりすることがあります。

ひとり情シスに陥る要因としては、IT人材不足やDXの推進、そして情シス業務が経営層に十分に理解されていないことが挙げられます。このような状況を打破するには、業務効率化ツールの導入やアウトソーシングの活用が効果的です。

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