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自動車から医療まで、実用化が広がる「金属3Dプリンター」とは?

  • ものづくり
自動車から医療まで、実用化が広がる「金属3Dプリンター」とは?

金属3Dプリンターの活用事例や、注目機種の特徴をご紹介いたします。



自動車、医療、航空宇宙。高度なものづくりに活かされる、金属3Dプリンター。

これまで、試作やモックアップへの活用が多かった3Dプリンター。しかし今、デジタルデータから直接製品を生産する工法の導入が進み、3Dプリンターが活躍する領域は、ますます広がりを見せています。

そのような中、特に注目を集めているのが、3Dプリンターにより金属部品を直接製造するDMP(ダイレクト・メタル・プリンティング)。高性能かつ現場でのオペレーションもスムーズな「金属粉末焼結3Dプリンター」が登場したことにより、従来の切削や成形ではできなかった構造を作れる新しい製造プロセスが普及し始めています。

しかも、航空宇宙産業や自動車産業、医療といった高いレベルの品質が求められる分野で、一早く金属3Dプリンターの導入が進んでいます。今回は、そんな金属3Dプリンターの活用事例や、注目機種の特徴をご紹介いたします。

金属粉末焼結3Dプリンターは、最終製品にも利用できる造形方式。

「金属粉末焼結3Dプリンター(以下、金属3Dプリンター)」は、従来の金属加工方法とは異なり、複雑な形状の金属製品を製造することができます。

その製造場面を写したものが、下の写真です。平らに敷いた微細な金属粉末に高出力レーザーを照射し、一層ずつ焼結させていきます。

金属粉末焼結3Dプリンターは、最終製品にも利用できる造形方式

この工程を繰り返すことで、金属を3次元造形することが可能になります。「Powder bed fusion方式(米国規格団体ASTMインターナショナル)」や「粉末床溶融結合」「粉末積層造形方式」などの呼称で知られている造形方式です。

実際に、どのような用途に使われているのか、活用事例をご紹介します。

CASE01 衛星用アンテナブラケットの構造を最適化しながら、25%の軽量化を実現。

これまでは切削加工用にCADデータが作成されていた衛星用アンテナブラケット。この事例では、ソフトウェアによって最適な構造を自動計算する「トポロジー最適化」を適用し、構造を最適化しています。

完成したデータをもとに、金属3Dプリンターを使ってダイレクトに製造。従来よりも25%の軽量化を実現しながら、剛性はそのまま維持されています。

構造最適化フローのイメージ(アルテアエンジニアリング株式会社製INSPIRE)

剛性を維持したまま軽量化された革新的デザイン。3Dプリンターだからこそ、こうした複雑な形状も造形可能になる。

ダイレクト・メタル・プリンティングにより生成された静止通信衛星用軽量化アンテナブラケット。(造形物サイズ:190×230×290mm)
資料提供:Thales Alenia Space タレス・アレーニア・スペース(フランス)
宇宙通信、ナビゲーション、地球観測、探査に特化した世界有数の航空宇宙サプライヤーのひとつ。
ダイレクト・メタル・プリンティングにより生成された静止通信衛星用軽量化アンテナブラケット

CASE02 3次元冷却水管付き金型から生まれた、革新的な一体型パーツ。

従来の製法では実現できなかった3次元冷却水管付きのフィーダーを、金属3Dプリンターで作成。医薬品を一定温度で混合するためのフィーダーに活かされています。

資料提供:ProCepT プロセプト(ベルギー)
冷却チャネル付き医薬品混合フィーダーを一体造形→冷却チャネルと医薬フィーダーを一体造形することで革新的なパーツが誕生

CASE03 生体適合に優れたインプラントで、術後の回復をスムーズに。

金属3Dプリンターを使用し、骨梁の構造(網の目のように縦横にはりめぐらされたスポンジ状の構造で、力を分散している)を模倣した造形をすることで、生体適合に優れたインプラントの製造を実現しています。

ラインナップが充実した、金属粉末焼結3Dプリンター。 

航空宇宙や自動車、医療といった高度なものづくりを支える金属3Dプリンター。
ラインナップも充実したおすすめの機種とその特徴をご案内します。

3D Systems社製3Dプリンター ProX DMP 320

ProX DMP 320

金属3Dプリンターの量産を見据えたベストソリューションモデルで、真空チャンバーを搭載。チタンなど医療用途にも適した高性能な材料に対応しています。
また、複数台をつなぎ合わせて生産管理できるため、量産体制を確立することができ、迅速なターンアラウンドを24時間365日のクリティカルな製造環境で提供可能です。

ProX DMP 320で造形したLaser Form Ni718製の内蔵冷却チャンネル搭載ガスバーナー 人工関節用部品

主な特徴

量産化対応

専用管理サーバーを用いることで、複数台のマシンも一元管理。大容量のパーツ生産向けに簡単に拡張でき、セントラルサーバーがプリントジョブ、材料、設定および保守を管理し、24時間の生産を可能に。

低酸素濃度雰囲気による焼結

真空チャンバーに不活性ガスを注入することにより、酸素濃度25ppmを実現。

高スループット化

双方向による材料供給方式を採用し、レイヤリング時間の短縮を実現。高速粉末リサイクルモジュールで高生産性に寄与します。

交換可能なプリントモジュール

着脱式のプリントモジュールにより、材料交換または補充の効率化をサポート。複数材料の同時運用におけるコンタミ(製品に混入した不純物)懸念も低減。

対応造形材料

  • Laser Form Ni718

    酸化・耐腐食性を備えたニッケル超合金で、圧力や熱を受ける過酷な環境でのアプリケーションに最適な材料。

  • Laser Form Stainless 316L

    316の極低炭素グレードで、一般的に使用されるオーステナイト系ステンレス鋼。

  • Laser Form Ti Gr.1

    優れた生体適合性と低剛性をもつ純チタンで、医療アプリケーションに最適。

  • Laser Form Ti Gr.23

    高強度・軽量・優れた生体適合性をもつグレード23のチタン合金(Ti6Al4V ELI)で、医療アプリケーションに最適。

  • Laser Form Ti Gr.5

    高強度・軽量・優れた生体適合性をもつグレード5のチタン合金(Ti6Al4V)で、医療アプリケーションに最適。グレード23と同様の化学成分ですが、グレード23に比べ酸素と鉄の含有率がやや高い。

ProX DMP 100/200/300

ProX DMP 100 / 200 / 300

高精度レーザー焼結方式のメタル3Dプリンター。造形サイズに応じて3種類のモデルを選択可能です。


100/200/300は共通のアーキテクチャを備え、非常に精密な高品質パーツを繰り返し造形することができます。R&Dやダイレクト・メタル・プリンティングにおいて、最も許容差の厳しい「連続パーツ製造」にも適した理想的な3Dプリンターです。

また、材料面での汎用性が高く、今後拡張が期待される純正材料への対応はもちろん、サードパーティー性材料の利用に対応しやすい設計となっています。

ProX DMP 100 / 200 / 300による造形物

主な特徴

広範囲な材料

標準的な金属材料のほか、幅広い材料に対応。

高精度

類を見ないきめ細やかな表面仕上げや、高品質な鋳造品と同等の品質を実現。

薄くて緻密な造形

最薄で150umの板材を造形可能。10~120umの薄さで材料パウダーを敷くことが可能。

連続パーツ製造

高い繰り返し精度、高信頼性、頑強なシステム構造。

安全設計

チャンバー構造を採用した安全設計

標準材料(メーカー支給)

  • コバルトクロム CoCr
  • ステンレススチール 17-4PH
  • マレージング鋼(ProX DMP 200/300)
  • アルミニウム合金 AlSi12(ProX DMP 200/300)

金属3Dプリンター、気になる導入前、導入後のこと。

この記事をお読みいただいている方の中には、実際に金属3Dプリンターの導入を検討されている方も多いのではないでしょうか?

しかし、一口に「金属3Dプリンター」と言っても、機器本体の特性はもちろん、使用する材料などによっても選定のポイントなどが異なります。

このため、「導入に向けてどんな準備が必要なのか?」「導入後、どう運用していくのか?」など、気になる点も数多くあるのではないかと考えられます。
そこで、お客様の目的をしっかりヒアリングし、最適なモデルの選定や導入、付帯設備、導入後の運用まで、ご提案を実施しております。金属3Dプリンターのことなら、お気軽にご相談ください。

(右から)産業機器販売事業部 余語 俊一、阿部 敏行、3Dソリューション企画部 荒籾 達彦
キヤノンマーケティングジャパンの3Dプリンターメンバー

今回の記事を編集したキヤノンマーケティングジャパン株式会社のメンバー(2016年12月時点)



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