写真展示の中に、動く写真のような映像作品を配置。
多様性に富んだ日本の海を潮の流れに沿って表現。
古見きゅう 氏水中写真家
20年以上の歳月を費やし、世界各国の海を潜り撮影し続けてきた水中写真家の古見きゅう氏が、日本の海の素晴らしさを改めて伝える写真展『JAPAN'S SEA』を東京港区のキヤノンギャラリー Sにて開催した。
写真展では、日本の海が亜寒帯から亜熱帯までの生物相をカバーするユニークな生態系を持つ海であり、世界有数の多様性を有していることに着目し、入り口を『北から南下するルート』と『南から北上するルート』に分けることで、親潮/黒潮の流れに沿った作品を体感することができるようになっている。
このふたつのルートが合流する会場の中心では、古見氏が使っているカメラやウェットスーツとともに日本の海を撮影した大画面の映像作品が映し出されている。これまでに撮り溜めてきた南北約3000kmに渡る島国・日本の海の写真約130点の中に、プロジェクターを使った映像作品が混ざりこむことで、まるで写真が動き出したかと見まがうような不思議な感覚を感じることができるのは、他ではなかなか味わえない展示方法だ。
今回の写真展を手掛けた古見氏にキヤノンのプロジェクターが作品の表現に果たした役割についてお話を伺った。
日本の海を一言で表現するならば『多様性』
今回の展示で意識された表現ポイントは何でしょうか?
今回の写真展は『JAPAN’S SEA』というタイトルで、その名の通り日本の海のことです。日本の海というのを僕が一言で表現するならば『多様性』という言葉になります。
北海道には流氷がたどり着いて、南の沖縄にはサンゴ礁があります。サンゴ礁がある国に流氷がたどり着くというのは世界的にも日本しかないわけです。
水温の幅も最大で30度も違います。30度水温が違うと生きている生物が全然違いますよね。さらに日本というのは島国ですので、国土の周りを親潮や黒潮などの有名な海流に囲まれています。その海流がミックスされて混ざり合い複雑な生態系が出来上がった。そして豊かな生物が見られる。
例えば紀伊半島の和歌山県あたりですと、地形で言えば温帯域にあたるところですけど、黒潮という世界最大級の暖流が本州で最も接岸する部分ですので、熱帯の魚なども流れ着いていろいろな魚が混ざり合った濃い海域になっています。
今回の展示は、潮の流れに沿って北から南、南から北というふたつの見せ方ができたらいいなと思いコンセプトにしました。
写真と動画の切り替えがスムーズになったおかげで、静止画も動画も作品にできるようになった
今回写真が展示されている中に動画も展示されていますが、静止画と動画で撮り方や意識されていることに違いはありますか?
動画作品に着手しはじめたのはここ数年なんですが、僕らが使っている一眼レフでも4Kを記録できるようになってきたので、積極的に動画撮影をしています。僕たちは海の中という特殊な環境下で撮影をしているわけで、ずっと海の中にいられるわけではないんです。なるべく無駄なアクション、行動をしたくないんですね。そこで、カメラのプリセットをうまく自分の好みにセッティングして、なるべく少ないタッチで写真から動画に切り替えられるような機材の使い込みから始めました。
いままで静止画をずっと撮影してきたので、目や脳が写真の脳になっているんです。最初のうちは写真に偏りがちだったんですけど、少し視点を広く持ってまわりの状況を確認しながら動画を撮る数を増やしていったら、プリセットの用意とあいまってだんだん写真と切り替えて動画を撮っていくという動作が普通に、スムーズになっていく。そして自分の脳もだんだん慣れてきて目線がさらに広がっていく感じがしています。
ハイテク化が進み、
水中写真を撮影するのに有利になっている。
機材のハイテク化が急速に進んでいますが、使いやすくなっている部分や昔の方がよかった部分など感じることはありますか?
昔のカメラで良かったなと思うところは、すごく愛着をもって使っていたなというところがあります。シャッター幕がボロボロになるくらい使っていました。
今はハイテク化が進んで画質もよくなって、階調もよくなっていっているじゃないですか。特に水中写真を撮影するにあたって有利になっているんです。
動画の性能もカメラに搭載された機能がどんどん良くなっているし、今メインで使っているカメラはボタン一つで写真から動画に簡単に切り替えることができる。これは画期的なことで、いかに少ない手数で撮影を行うかを追求してきた僕らにとって、ボタン一つで写真から4Kの動画が撮れるというのはメリット以外の何もでもない。これ以上ない形です。
黒い壁に映してもきれいに映せるプロジェクターに
驚いた
キヤノンのプロジェクターを映像作品にお使いいただきました。今回使われていかがでしたか?
今回の写真展でキヤノンのプロジェクターを使いましたが、黒い壁に映写してこれだけはっきりと絵が映し出されるのはびっくりしました。僕の中で背景は白でないといけないという印象がありましたが、今回の展示会のコンセプトとしては、展示されている大判写真の一角が動き出すという表現をしたかったので、その部分だけを白背景にするなどはできませんでした。今回の展示で今後の僕らの展覧会での表現の仕方が格段に上がっていくように感じます。
床面に対するサインとしてもプロジェクターをお使いいただきました。
プロジェクターを設置したいなと思っても、設置する場所やスペースが難しいことがあると思います。今回エントランスにおいた機材は、床にプロジェクターを置くだけであれだけ大きく映写できる。今回の床面投写により、僕たちがこれからできることの幅がどんどん広くなっていって、写真と映像、作品にあわせた新しい展示を感じられたのではないかなと思いました。
古見きゅう 氏
1978年生 東京都出身
本州最南端の和歌山県串本町にて、ダイビングガイドとして活動したのち写真家として独立。現在は東京を拠点に国内外の海を飛び回り、独特な視点から海の美しい風景やユニークな生き物、海の環境問題なども積極的に撮影取材し、新聞、週刊誌、科学誌など様々な媒体で作品や記事を発表している。著書に写真絵本「WAO!」(小学館)、「THE SEVEN SEAS」(パイインターナショナル)、「TRUK LAGOON」(講談社)など多数。2016年撮影プロダクションAnd Nine株式会社を設立。近年はEOSカメラでの動画作品制作も精力的に行い、企業のPVやテレビ番組などへの映像提供も多数手がける。
作品で使われたプロジェクター
床に置くだけで大画面の床面サインを簡単に実現。LH-WU350UST
エントランスサインで利用
壁にピタリとつける『壁ピタ』設置で約80インチの大画面映像を実現。床にも金具なしで立てることができ、簡単に床面サインを行うこともできます。高輝度LEDを搭載し、購入後5年間または10,000時間のどちらか早い方までとなる長期無償保証に対応。幅広い用途にご利用いただける超短焦点プロジェクターです。
高画質で高輝度なレンズ一体型短焦点プロジェクター。WUX500ST
映像作品投写で利用
コンパクトなサイズながら5,000lmの輝度で明るい大画面映像を映すことが可能。本体に短焦点用の広角レンズを内蔵しており、約1.2mの投写距離で100インチの大画面映像を投写できます。映像全体に格子がほぼないクリアな映像を実現するLCOSパネルと、キヤノンの高性能レンズを搭載しているため、四隅までピントがしっかりとあった高画質映像を投写することが可能です。
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キヤノンマーケティングジャパン株式会社
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