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米アカデミー賞でドキュメンタリー作品を支える、CINEMA EOS SYSTEM
ドキュメンタリー × CINEMA EOS Vol.1

TEXT:石川幸宏:HOTSHOT編集長

デビューから8年、ドキュメンタリー分野での世界標準に

2011年11月のデビュー以来、EFマウントによるレンズ交換式、Canon Log搭載のシネマカメラとして、CINEMA EOS SYSTEMは手軽さとシネマ画質が同梱されたコンセプトのカメラシステムとして、それまでのビデオカメラとは異なる「シネマカメラ」として全世界で支持者を生んできた。

初号機のEOS C300登場以来、8年を経た現在でもその愛用者は多い。

その後のCINEMA EOS SYSTEMのラインアップは、スチルカメラタイプの4Kカメラ EOS 1D-C、ハンディサイズの入門機EOS C100、初の4K撮影+Cinema RAW対応のEOS C500、デュアルピクセルCMOS AF搭載のEOS C300 markII、ハイバジェットな制作に対応するフラッグシップ機EOS C700、Cinema RAW Light収録可能な EOS C200が登場し、いまや世界の様々な映像制作現場で活躍している。

そんなCINEMA EOS SYSTEMが、いまもっとも注目されている分野がドキュメンタリーだ。

操作性の良さと機動性、Canon Logなどのカラー特性の良さに加えて、デュアルピクセルCMOS AFに代表される、4K撮影では特に難しくなったとされる優秀なフォーカスアシスト機能は、撮影チャンスを逃せないドキュメンタリーの分野では特に重要視されている。

2019年の今年、それは世界の評価として現れた。第91回米アカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画部門において、最終ノミネートに残った5作品はすべて、CINEMA EOS SYSTEMとEOS シリーズを含む、何らかのCanonカメラで撮影されたものだった。
その中でもオスカーに選ばれたフリーソロ・クライミングのドキュメンタリーで、最優秀作品に選ばれた「Free Solo」(監督:エリザベス・チャイ・バサヒリィ/Elizabeth Chai Vasarhelyi、ジミー・チン/Jimmy Chin、製作:ナショナルジオグラフィック)は、EOS C300 MarkIIを中心に撮影されており、CINEMA EOSの機動性と高性能、高画質が存分に活かされた作品になっている。

※「Free Solo」については次回で特集掲載します。
9月6日より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開

ドキュメンタリー撮影の3大要素

ドキュメンタリー撮影で重視されるカメラの3大要素は、「スキントーン重視のカラー特性」、「簡便で機動力のある操作性」、そして「優秀なAF機能」だ。

スキントーン重視のカラー特性

ドキュメンタリー作品はもちろん、ドラマ、CM、ミュージックビデオの中のドキュメンタリータッチの映像シーンのほとんどでは、人間を中心に描かれる。人が被写体の中心となる中で、スキントーンはその人の人となりや個性を表現する重要な要素だ。CINEMA EOS SYSTEMは、EOSのスチル画像を混ぜた時でも、カラートーンが揃っており、シネマレンズ(CN-E)であれば、mm数の違いがあってもトーンは統一されていて、ここにもドキュメンタリー作品収録には欠かせないカラー特性の要素が備わっている。

そして、CIENMA EOS SYSTEMの大きな特徴でもあるCanon Log。シリーズ当初からCanon Logを搭載したことで、後の色調整においても、適切なカラーコレクションを施すことができる。初代Canon Logは、8bit仕様ながら階調範囲を合わせやすい簡易的なLog。Cineonに近い本格的なLogトーンカーブを持つCanon Log2は、ポストプロダクション処理においてさらに追い込めるカラーグレーディング処理に対応。最新のCaon Log3では、扱いやすい初代Canon Logの特性を残しつつ、さらに詳細な階調表現を可能にしている。

簡便で機動力のある操作性

自然現象を追うような撮影では、撮影のチャンスはいついかなる時にやってくるかわからない。CINEMA EOS SYSTEM開発の当初からのコンセプトとして、バッグから取り出してスイッチを入れればすぐに撮影が始められる、という機動性の良さもドキュメンタリーで重宝される大きなポイントだろう。

多くの高画質シネマカメラは起動までの時間がかかったり、撮影前の設定に様々な周辺機材をつけなければ撮影を開始することができない。その点、CINEMA EOS SYSTEMは、メモリーカードが装填され、レンズがついた状態であれば、いつでも撮影スタンバイOKの状態で持ち歩けるメリットがある。

また現在のドキュメンタリー撮影の場合、予算やスケジュールの関係もあって、テレビ局のプロフェッショナルスタッフやプロカメラマンが撮影に同行するケースは、世界的見ても少なくなってきている。先述の「フリーソロ」もそうだが、撮影対象分野に精通するプロフェッショナル自身がカメラを回すケースが増えている。彼らでもシンプルな操作性で、誰でも簡単に扱えて高画質が得られるシネマカメラとして、CINEMA EOS SYSTEMは世界のドキュメンタリストに愛用されている。

優秀なAF機能

4K撮影が一般的になりつつある今、プロの間でも言われるのは、フォーカシングのシビアさだ。特にドキュメンタリー撮影においては、常に不測の事態は多発する。その中でどうやって被写体を的確に捉えて映像に収めるか、これが作品の鍵になり、ピント合わせは重要な要素になってくる。CINEMA EOS SYSTEMに限らずキヤノン製カメラのもっとも優れた点として、優秀なAF機能が装備されていることだろう。特にシリーズではEOS C300 MarkIIから搭載された、デュアルピクセル CMOS AFは、EFレンズ使用時に、画面の縦横とも約80%の広い範囲で、高速のONE-SHOT AF、コンティニュアスAF、マニュアル操作にも有効なAF-Boosted MFなど、AF機能のバリエーションも豊富。さらに顔検出AFや顔限定AFなど人の顔の認識モードの細かい調整、そしてAFスピードとレスポンスを段階別に調整できるなど、現場で必要とされるAF機能を徹底追求したものになっている。

このデュアルピクセルCMOS AFの技術は、公益社団法人発明協会が主催する平成30年度(2018年)全国発明表彰において、「撮像面位相差オートフォーカス方式を実現するイメージセンサの発明(デュアルピクセル CMOS AFに関する発明)」として、内閣総理大臣賞を受賞している。

今年のアカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門は、CINEMA EOS SYTEMが市場投入されて以降、特にドキュメンタリーの制作現場の信頼に応えて来たことが、証明された結果といっても過言ではないだろう。機材の信頼性や現場でのチャンスを逃さない確実なフォーカス機能は、まさにドキュメンタリーの要と言える。そうした信頼に応えてきた積み重ねが、多くのプロフェッショナルから選ばれ、優れた作品を作り出す結果に結びついている。