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2023年4月から「割増賃金率引き上げ」が中小企業にも適用!継続する働き方改革推進の動きの中で、企業が取り組むべきこととは?

  • 中小・ベンチャー
  • 生産性向上
  • 働き方改革

働く人たちが、それぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現するため、長時間労働の是正や、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保などを企業にも求めた「働き方改革関連法(正式名称:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)」。
2018年7月の公布以降、順次施行されている同法のうち、2023年4月より「月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ」が中小企業にも適用されることとなります。さらに2024年には特定の業種でのみ認められていた時間外労働の上限規制に対する猶予期間も終了します。これに対応するために生じる様々な問題は総じて「2024年問題」と呼ばれています。
「働き方改革」が求められる今、企業は何に取り組むべきなのか。本記事でわかりやすくご紹介します。



「月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ」とは

「働き方改革関連法」とは働き方改革を進めるための、各種労働関連法の改正を進める法律です。この法律によって、労働基準法、労働安全衛生法、労働者派遣法など様々な法律が改正されています。
ご存じの通り我が国は、少子高齢化による生産年齢人口の減少問題、育児・介護との両立が困難といった労働問題に直面しています。全⼈⼝に占める⽣産年齢⼈⼝(15歳〜64歳)の割合は、内閣府令和4年版⾼齢社会⽩書によると1990年頃をピークに年々低下し続けており、2018年※に全⼈⼝の60%を切りました。
働き手が減少する中、事業を継続するには生産性の向上はもちろん、年齢に関係なく働く意欲がある人が自由に就労できるような、柔軟な働き方の整備が必要となります。
同時に、健康を害すリスクが高い長時間労働の慣習を是正し、働く人々が心身の不調などで離職・休職を余儀なくされる場面を減らしていかなければなりません。2023年4月から中小企業にも適用される「月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ」は、まさにこの部分の改革に基づくもの。「働き過ぎ」を防ぎながら、「ワーク・ライフ・バランス」と「多様で柔軟な働き方」を実現するため、「残業時間の上限規制」と「勤務間インターバル制度」、「1人あたり1年間5日間の年次有給休暇の取得義務付け」と併せて、「月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ」(図1参照)などの施策が取り入れられました。

  • 出典:「人口推計」(総務省統計局)
図1
[2023年3月31日まで]月60時間超の残業割増賃金率:大企業は50%(2010年4月から適用)中小企業は25%。[2023年4月1日から]月60時間超の残業割増賃金率:大企業、中小企業ともに50%※中小企業の割増賃金率を引き上げ。

column:時間外労働の上限規制って

月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の引き上げが中小企業に対しても適用されるようになるのは、2023年4月からですが、「月45時間・年360時間」が時間外労働(休日労働は含まない)の上限となったのは、大企業が2019年4月1日・中小企業も2020年4月1日以降です。“臨時的な特別な事情”がある場合に限り、36協定(労働基準法第36条に基づく労使協定)の特別条項により、月100時間未満、年720時間以内、2〜6ヵ月の平均80時間を超えなければ時間外労働が可能ですが、月45時間を超えられるのは年間6ヵ月までです。

すでに現在、改正労働基準法による時間外労働の規制は一部の業種を除いて、企業規模の大・小に関わらず適用されており、違反した場合は6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるので、自社の労働時間の状況を正確に把握しておくことが重要なのです。実際に労働基準監督署の監督指導による賃金不払残業の是正企業数は増加しており令和3年度には1,069企業に及びます。1企業当たりの支払金額は100万円を超えており、影響度は大きいと言えるのではないでしょうか。また、長時間労働が疑われる事業場に対する令和3年度の監督指導は32,025事業場にのぼります。

改正労働基準法に対応するうえでのポイント

改正労働基準法に対応する上で、企業として今のうちから取り組んでおくべき事柄は以下の3点です。

  • (1)
    現時点で、社内に割増賃金率引き上げに該当する社員がいるかどうかを把握する
  • (2)
    該当する社員がいる場合、その原因を明らかにする
  • (3)
    原因を明らかにした上でそれを改善すべく、時間外労働削減に向けた具体的な取り組みを推進する

columnでも紹介したように、自社の労働時間の状況を客観的に把握することは、改正労働基準法に対応するための大前提と言えます。(1)については、「勤怠管理システムなどの導入」、「タイムカードやICカード、パソコンの使用時間記録等の活用」などの方法が考えられますが、ポイントとなるのは「客観的な記録」であること。厚生労働省が示す「労働時間の適正な把握のために講ずるべき措置に関するガイドライン」にも、「使用者は労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること」と記載されており、誰が見ても納得できる、客観的な情報を記録することが重要です。
(2)については、現時点で月間60時間を超える時間外労働を行っている社員本人やその所属長などにヒアリングを行い、「なぜ時間外労働が必要になっているのか」について把握することが重要です。なぜなら、時間外業務を実際に担当している社員や所属部署にしか気づけない「ここを改善して欲しい」や「業務中のこのプロセスさえなければ時間短縮が可能」など、時間外労働削減のヒントが見つかるかもしれないからです。
(3)については(2)のヒアリングに基づいて、アウトソーシングできる部分はないか、デジタルツールの活用によって業務効率化が図れないかなど、具体的な対策を検討することが重要です。取引実績のあるITベンダーなどがある場合、業務効率化が可能な方法がないか、自社業務にマッチした効率化ツールを準備できるかなどを相談してみるのも、有効な対応策の1つだと言えます。

業務効率化が難しい?“デスクレスワーカー”の課題

時間外労働削減を実現させる上で、業務効率化が非常に重要であることは言うまでもありません。割増賃金率引き上げに該当する社員が少数ではない場合、2023年4月に向けて従来業務のあり方を改めて見直すべき時期でもあります。しかし⼀⽅で、業務効率化を推進しにくいのが「デスクレスワーカー(ノンデスクワーカー)」、つまり、デスクから離れた「現場」で働く⼈々です。
農林⽔産業などの⼀次産業ばかりでなく、製造、建設、運輸、⼩売、教育、福祉介護及びヘルスケアなど、多岐にわたります。
これらの業種でも、IoT機器導入をはじめ、デジタルツール導入による業務効率化の動きが盛んになっているものの、いまだにアナログな業務形態が主流であるのが実情です。キヤノンマーケティングジャパンが、実際に現場で耳にしたデスクレスワーカーの声を基に動画を作成しておりますので、ご覧ください。

デスクレスワーカーのお困りごと:社内の承認フロー
デスクレスワーカーのお困りごと:社外からの問い合わせ対応(例:建設業)

「取り組むべき」は業務の見直しからの効率化

動画をご覧いただき、どのように感じられましたでしょうか。お客さまの実際の声を基に作成した動画ですので、「自分に当てはまる部分も多い」とお感じになった方もおられるのではないでしょうか。
どのような業種‧業態であったとしても、多忙な平常業務と並⾏して⾃社の業務全体の⾒直しを⾏うことは⼤変かと思います。それで
も、まずは現時点で割増賃⾦率引き上げに該当する社員がどの程度いるのかを把握し、その原因となっている業務を少しずつ効率化し
ていくことが⼤切です。業務効率化の際はデジタルツールの導⼊や⾝近なITベンダーなどに相談してみるという⽅法が有効かと思います。
また、動画でもご紹介した通り既存の紙文書が社員の業務効率を下げているケースが少なくはありませんので、動画の内容に思い当たった皆さまは社内文書を電子化するところから始めてみてもよいかと思います。ペーパレス化するだけで、紙文書を整理・保管する手間や、探す手間を削減できますので、労働時間の削減につながるかと思います。また、副次的な効果として、必要情報を共有しやすくなり、社内でのコミュニケーションが円滑化することも期待できます。紙文書の電子化等についてお困りの際は、下記ボタンから弊社までお気軽にご相談ください。

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