ものづくり白書から見る課題。日本の製造業の“課題”と“チャンス”
人の想像力を支援するキヤノンのソリューションのビジネストレンド。「「ものづくり白書」から読み解く、日本の製造業の“課題”と“チャンス” 」をご紹介します。
製造業の業績は、3年つづけて回復傾向。
しかし、単に「もの」をつくるだけでは、生き残れない時代に。
経済産業省ならびに厚生労働省、文部科学省が今年の5月に発表した「2016年版ものづくり白書」によると、日本の製造業の業績は3年連続で回復傾向にあります。
製造業の企業業績の推移(営業利益)
リーマンショック以降、およそ5年間にわたってつづいた企業業績の低迷から、脱却を果たした企業が多くあると見てよいでしょう。
しかしながら、「ものづくり白書」は、次のように指摘しています。
付加価値が「もの」そのものから、「サービス」「ソリューション」へと移るなか、単に「もの」をつくるだけでは生き残れない時代に入った。海外企業がビジネスモデルの変革にしのぎを削るなか、我が国企業の取組は十分とは言えない。
そんななか、日本企業はビジネスモデルの変革についての積極的な意識や取り組みが求められており、ものづくりを通じて価値づくりを進める「ものづくり+(プラス)企業」になることが期待されると記されています。
そして、ものづくりに新たな価値をプラスするために、今後「最先端テクロノジー」や「ビジネスモデルの変革」につながる投資の高まりが見込まれています。
今後3年間に優先される投資分野
すすむ、製品サイクルタイムの短縮。
「先端テクロノジーの活用」が、一歩抜きん出る鍵に。
事実、ものづくりを取りまく環境は急速に変化しており、柔軟なビジネスモデルの変革を求められる場面が少なからず生まれています。特に顕著な変化のひとつが、「製品ライフサイクルの短縮」です。10年前と比べ、製造にかかわる全業種において、主要製品のライフサイクルは短縮傾向にあります。
そして、その背景には、「顧客や市場のニーズの変化」や「技術革新のスピードの速さ」などがあると考えられます。
このような変化に対応するためでしょう。多くの日本企業が、国内の製造拠点において、「多品種少量生産に対応できる」「短納期に対応できる」「取引先のニーズを汲み取りやすい」などの要因を重視していることが、下のグラフからわかります。
海外拠点は「価格」、国内拠点は「付加価値」で強みを発揮する。そんな役割分担が、より鮮明になってきていることがうかがえます。
一方で、先端的なテクノロジーをうまく取り入れて、環境の変化に対応する企業も表れてきました。下のグラフは、「IoTを積極的に活用している企業ほど、経営のスピードが速く、製品開発のリードタイムが短くなっている」ことを示すデータです。
IoTの活用によるこうした変化は、企業の規模を問わず、従業員100人以下の中小企業においても顕著に表れています。
先端テクノロジーを活かすことで、開発や経営のスピードを高め、短期化する製品ライフサイクルのなかで競争力を発揮していく。「ものづくり白書」は、日本のものづくり企業が次のステップへ進むための道を示唆してくれています。
インプットから、アウトプットまで。
ものづくりを取りまく工程を分解して検証し、ソリューションを見つけ出す。
では、具体的に、何から始めればよいのでしょうか?
設計・デザインから開発会議、試作、検証、製造、データやプロジェクトの管理まで、ものづくりには多くの工程が絡み合い、それぞれの工程に改善や改革の余地があります。
「インプットからアウトプットまで」のあらゆる工程に目を向け、課題やボトルネックとなっている部分がないかを探ってみてください。ものづくりのスピードや品質、付加価値を高めるチャンスが、さまざまなところに眠っているはずです。
このように、ものづくりをいくつかの要素に分解して考え、自社に適したソリューションを探っていくと、変革への糸口が見えてくるのではないでしょうか。