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DX認定制度とは?
取得のメリットと申請ポイントを解説

  • 事業拡大・販路拡大

デジタル技術を駆使することでビジネスを変革し、新しい価値を生み出すDX(デジタルトランスフォーメーション)。その普及策の一つとして国が進める「DX認定制度」をご存じでしょうか?企業の規模や業種を問わず認定が受けられ、さらに税制優遇などメリットも多いことから、注目を集めている制度です。そこで今回は、「聞いたことはあるけど具体的にはよくわからない」という方のために、DX認定制度を取得するとどのようなメリットがあるのか、申請のポイントはどのようなものかなどを詳しく解説していきます。

DX認定制度とは?

IPAが審査、経済産業省が認定

DX認定制度は、2020年5月15日に施行された「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」に基づいて、同年11月から開始されました。IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の運営する「DX認定制度事務局」が認定審査などを担当し、経済産業省が認定を行います。
IPAでは、DX認定制度を以下のように説明しています。

DX認定制度は、デジタル技術による社会変革に対して経営者に求められる事項を取りまとめた「デジタルガバナンス・コード」に対応し、DX推進の準備が整っていると認められた企業を国が認定する制度です。認定事業者は「企業がデジタルによって自らのビジネスを変革する準備ができている状態(DX-Ready)」とされ、自社をアピールしたり、公的な支援措置を受けることができます。

つまり、DX推進の準備が整っている事業者は「DX-Ready」として認定しようということです。対象は法人、個人事業者、公益法人などすべての事業者となっています。「デジタルガバナンス・コード」という聞き慣れない言葉もありますが、これは後ほど解説します。

そして認定を受けた事業者(DX認定事業者)は、DX認定ロゴマークを名刺やWebサイトに使用してアピールできるほか、公的なさまざまな支援が受けられるということも書かれています。支援などのメリットについて詳しくは後述します。

DX認定制度スタートの背景

DX認定制度が創設された背景には、「2025年の崖」という大きな問題があります。経済産業省が2018年9月に「DXレポート」の中で提起した問題で、これをきっかけに国内でも注目されるようになり、DXに取り組む企業が増加しました。

2025年の崖とは、多くの企業が古いシステムを使い続けることで競争力が落ち、2025年以降に最大12兆円(年間)の損失が生じるという指摘です。こうした古いシステムは「レガシーシステム」と呼ばれ、DXを妨げる原因になっていると考えられています。

さらに経済産業省が2019年7月に公開した「DX推進指標」に基づいて、IPAが各企業の自己診断結果を約300件収集し、その分析レポートを作成・公開した「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2019年版)」によると、約9割もの日本企業がDXに未着手、または散発的な実施にとどまっていることがわかりました。

さらに、2020年以降はコロナ禍によって私たちの働き方が大きく変わり、DXの取り組みに関する格差が企業・組織間で広がっていることも問題視されています。DX認定制度は、こうした状況を改善するための大きな一手と言えるのです。

新たな価値創出につながるSociety 5.0

もう一つ、DX認定制度が登場した背景には、「Society 5.0」という次世代社会の実現に向けたインフラの促進といったテーマも潜んでいます。内閣府ではSociety 5.0を以下のように定義しています。

サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)

Society5.0の社会では、IoT(Internet of Things=モノのインターネット)によってすべての人とモノがつながり、知識・情報が共有されることで新たな価値創出も起こりやすくなると考えられています。
デジタル技術の活用による便利で快適な社会の実現や、国際的な競争力獲得のためにも、DXによる生産性向上、そして多様な働き方の推進が求められているのです。

キヤノンマーケティングジャパンもDX認定事業者に選定

いち早くDXに取り組んできたキヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)も、2021年6月にDX認定事業者に選定されました。DXを推進するうえでどのような経営ビジョンを掲げ、どんなことに力を入れ、どんなところが評価されたのか、一つのケーススタディとして当時のニュースリリースの一部を抜粋して紹介します。

キヤノンMJグループは5か年計画「2021-2025長期経営構想」において、2025年ビジョンとして「社会・お客さまの課題をICTと人の力で解決するプロフェッショナルな企業グループ」を目指しています。基本戦略として、事業を通じた社会課題解決による持続的な企業価値の向上、高収益企業グループの実現、経営資本強化による好循環の創出の三点を掲げています。
(中略)
このたびの認定取得は、キヤノンMJのこうしたDXビジネスに関する取り組みについて、DX推進指標の自己診断をはじめ、経営者に求められる企業価値向上に向け実践すべき事柄を定めた「デジタルガバナンス・コード」の項目(「経営ビジョン・ビジネスモデル」「戦略」「成果と重要な成果指標」「ガバナンスシステム」)に関して認定基準を満たしていること、およびステークホルダーへの適切な情報開示が行われていることなどが評価され、認定を取得しました。

こうした実績を踏まえたうえで、ここからはDX認定制度のメリット、申請のポイントなどを詳しく解説していきます。

DX認定制度を取得するメリット

まずはどのようなメリットがあるのか、代表的なものを見ていきましょう。

優良企業としての認知度向上

DX認定事業者になると、DX認定ロゴマークを自社の名刺やWebサイト、パンフレットなどに使うことができます。また、IPAが運営する「DX推進ポータル」の「DX認定制度 認定事業者の一覧」にも掲載されることになります。

こうしてDXに積極的に取り組んでいることをアピールすることで、社会的信用やブランドイメージが向上し、ひいては企業価値が高まっていくでしょう。IPAの認定企業者の一覧では、企業の規模にかかわることなく等しく社名が載るため、中小企業にとっては大手企業名が並ぶ中で存在感を示せる絶好のチャンスでもあります。

税制優遇を受けることができる

税務面で優遇されることも大きなメリットです。DX認定を取得することで、「DX投資促進税制」による税額控除が受けられるようになるのです。

DX投資促進税制とは、DXを推進するにあたって必要なソフトウェア、関連機器などの投資額に対し、3%または5%の控除、ないしは30%の特別償却が可能になる制度です。この税制にはいくつかの条件があるのですが、DX認定の取得は必須になっています。

中小企業には融資などの支援も

DX認定事業者が中小企業の場合、設備投資に必要な資金に関して、日本政策金融公庫から低利率で融資を受けられるというメリットもあります。また、設備資金について民間金融機関から融資を受ける場合、中小企業信用保険法の特例措置を受けることもできます。

DX銘柄の応募資格が得られる

経済産業省では東京証券取引所と共同で、積極的なIT利活用に取り組んでいる企業を、「攻めのIT経営銘柄」として2015年から選定してきました。2020年からは、ビジネスモデルなどを抜本的に変革し、新たな成長・競争力の強化につなげていくDXに取り組む企業を、「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」として選定しています。

DX銘柄に選ばれるためには、DX認定の取得が必須になります。つまりDX認定を取得することで、DX銘柄の応募資格が得られるのです。
選定されると一覧として社名が掲載されるため、これも大いにアピールのチャンスとなるでしょう。

  • 「DX銘柄」の選定は東京証券取引所に上場している企業に限ります。

自社のDX課題が整理できる

意外にもこれが最大のメリットと言えるかもしれませんが、DX認定の審査の過程において、自社のDX推進における課題が浮き彫りになってきます。つまり自社のDX課題が自ずと把握できることが、大きな「収穫」となるのです。

申請の際に記載する「DX認定制度 申請チェックシート」に回答していくプロセスの中で、DX推進のための課題が徐々に整理されていきます。

DX認定制度の基準

DX-Ready とは?

ここまで読んできて、「ハードルが高そう」、「自社には無理かもしれない」と思った経営者の方もいるでしょう。しかし冒頭の方でも述べたように、DX認定制度が認定するのは、DX推進の準備が整っている事業者(DX-Ready)です。

つまり現段階ではまだDXが進んでおらず、これから実現していこうと「準備」している企業も認定の対象ということになります。すぐにあきらめてしまうのは、もったいないことだと言えるでしょう。
経済産業省とIPAが発表している「DX認定制度 申請要項(申請のガイダンス)」によれば、制度の全体像は4段階に分かれ、DX認定制度はこのうち「DX認定事業者(DX-Ready)」を認定する制度です。

さらにDX認定事業者の中から、「DX-Excellent企業」(すでに優れた実績を上げている企業)、「DX-Emerging企業」(将来性が期待できると認定された企業)の選定が、別途行われます。なおDX銘柄はこの2段階から選ばれます。

デジタルガバナンス・コードとは?

さて、今回の記事の最初の方に「デジタルガバナンス・コード」という言葉が出てきましたが、覚えておられるでしょうか?申請と取得に際しては、これもよく理解しておく必要があります。

デジタルガバナンス・コードとは、経済産業省がDXを推進していくための指標の一つとして示しているものです。「DX認定制度 申請要項(申請のガイダンス)」によれば、「経営者に求められる企業価値向上に向け、実践すべき事柄」ということになります。

デジタルガバナンス・コードは以下の項目で構成されており、DX認定制度の申請にあたって記入する項目はすべてデジタルガバナンス・コードの項目と対応しています。

デジタルガバナンス・コードが求めるもの

デジタルガバナンス・コードは、大きく「経営ビジョン・ビジネスモデル」、「戦略」、「成果と重要な成果指標」、「ガバナンスシステム」の4つに分けられます。それぞれどのようなことが求められているのか見ていきましょう。

経営ビジョン・ビジネスモデル

デジタル技術の活用によってめざす経営ビジョンとビジネスモデルを策定します。

戦略

デジタル技術を戦略にどのように生かすかを策定します。戦略には「組織づくり・人材・企業文化に関する方策」と「ITシステム・デジタル技術活用環境の整備に関する方策」の2つがあります。

成果と重要な成果指標

デジタル技術を使った戦略の達成度を計測する指標や成果を策定します。

ガバナンスシステム

DXの推進には、経営者の意識の高さやサイバーセキュリティリスクへの対応も必要になります。経営者自らが情報発信しているか、自社の現状を把握できているか、経済産業省が発表している「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」に基づいて対策を行っているか、なども問われます。

DX認定制度の申請ポイント

申請方法

いよいよ申請の段階に進みます。
申請の流れとしては、まず基準指標を確認した後、IPAのサイトから申請書類をダウンロードして記入します。その後、DX推進ポータルで書類をアップロードし、申請を完了させます。
より具体的な手順を見ていきましょう。

①DX認定の基準を満たしているかチェック

先に述べたように、DX認定には基準となる指標、デジタルガバナンス・コードがあります。まずは、その基準を満たしているかどうかを確認しましょう。IPAのホームページでダウンロードできる「DX推進指標の自己診断」を活用し、自社のDX成熟度をあらかじめ確認することで、申請チェックシートに記入する際の不備を減らすことができます。

②申請書類をダウンロードして記入

IPAのホームページで、申請の準備・手順などをまとめた「DX認定制度 申請要項(申請のガイダンス)」を確認します。そのうえで申請書類である「DX認定制度 認定申請書」、「DX認定制度 申請チェックシート」をダウンロードします。申請書を記入し、補足資料がある場合は用意します。

③自社の企業ホームページなどで公表

「DX認定制度 認定申請書」、「DX認定制度 申請チェックシート」では、各設問において自社のDX関連の取り組みを公表しているかが問われます。公表していない場合には、自社ホームぺ―ンで公表するためのページを作成する必要があります。

④DX推進ポータルで申請

「DX推進ポータル」上に提出書類をアップロードし、申請を行います。なお、ポータルを利用する際に求められるIDの取得が身分確認になるため、捺印は不要です。
認定されると「DX認定制度 認定事業者一覧」に掲載されます。

申請の時期や取得までの期間、費用

DX認定制度は年間を通じて申請が可能で、標準審査期間は60営業日です。つまり、土・日曜、祝日は除外されるため、実質的な審査期間は約3カ月と見積もるとよいでしょう。
注意点としては、混雑している状況によってはさらに日数を要することもあり、内容に不備があった場合の再提出期間は含まれません。
税制優遇、あるいはDX銘柄の選定などを目的にしている方は、早めの申請をおすすめします。

認定取得後、その有効期間は2年となりますが、更新の際には有効期限の60日前までに申請を行う必要があります。

なお、費用に関しては、申請、認定、更新時ともに無料です。

この認定を利用することで、企業はデジタル化を進め、市場での競争力の向上が期待されます。また、デジタル戦略を公に示す行為が、外部からの評価や支援を受ける機会の増加につながることでしょう。

DX認定取得のための取り組み

①経営ビジョンの策定

最初に、現在の自社のビジネス状況、経営環境について理解したうえで経営ビジョンを策定します。あわせて、その経営ビジョンを実現するためには、どのようなビジネスモデルが考えられるか方向性を検討しましょう。あくまでデジタル技術を駆使した“企業改革”という視点を忘れないことが大切です。

②DX戦略の策定

続いて、経営ビジョンに基づくビジネスモデルを実現するための戦略について考えます。重要なのは、その戦略にデジタル技術の活用を組み込むことです。また、戦略推進における体制・組織づくりをはじめ、DX人材の確保・育成、さらに外部組織との関係構築・協業などについても検討する必要があります。

③DX戦略推進管理体制の策定

さらに、戦略の達成度を測るためのKPI(重要業績評価指標)について検討します。つまり、定期的に自己分析を行うなど、DX戦略の推進状況を管理するための仕組みづくりをしっかりしなければなりません。

まとめ

今回は、DX認定制度について、メリットや申請ポイントなどを解説してきました。認定制度のスタートから月を追うごとにDX認定事業者は増えており、今後もDX認定制度の申請数は増加していくと考えられています。
「DXの必要性はわかっているけど、何から手をつけたらよいかわからない」、「DX認定制度は申請したいが、今の社内リソースでは申請が通るか不安だ」という経営者の方は、ぜひ気軽にキヤノンマーケティングジャパンにご相談ください。

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