イタリアの古都・トリノの世界遺産「サヴォイア王家の王宮群」。トリノは19世紀、イタリアが統一王国になったときに最初の首都がおかれた街で、初代イタリア国王となるサヴォイア王家の拠点。王家の威勢を示すべく王宮の建設や都市の整備が行なわれ、「イタリアのパリ」とも称された。優美にして絢爛豪華なこの世界遺産を、フルハイビジョンの4倍の解像度を誇る高精細4Kで撮影、その美しさを余すところなく番組化した。
『世界遺産』は、1996年の番組スタート当初より、最高品質の映像で世界遺産を記録し放送し続けてきた。今回、全編4Kによる初めての地上波『世界遺産』の撮影が、イタリア・トリノで行われた。
『世界遺産』は、第41回(2014年度)放送文化基金賞の個人・グループ部門放送文化賞を受賞しました。これは放送20年目を迎えた『世界遺産』の長年の取り組み、特に最新技術を駆使し、番組の質の向上に挑戦し続けたことが評価されたものです。『世界遺産』の更なる挑戦として、全編4K撮影による地上波放送を行います。その第一弾がイタリア・ミラノの世界遺産「サヴォイア王家の王宮群」。19世紀に統一されたイタリア王国の王家=サヴォイア家の華麗な王宮や宮殿を、4K撮影ならではの高精細な映像で記録し、ハイビジョンに変換して放送します。
4Kで撮影された聖堂の天井。一つ一つの装飾の質感まで克明に記録されます。
ハイビジョンの4倍の解像度を誇る次世代の映像フォーマット。来年からBSでの4K試験放送が予定されており、2020年東京オリンピックに向けての普及拡大が計画されています。今回は、全編を4Kで撮影・編集し、それをハイビジョンに変換して放送します。4Kで撮影した映像は、地上波番組として放送されても、より高品位で美しい映像をお届けできます。
今回トリノでの4K撮影に向けて、最高品質の4K撮影機材を日本から持ち込み撮影を敢行しました。
映画撮影用に開発された最高品質4Kカメラ。今回は4K60PによるRAW収録という最高画質での記録を行いました。ハイビジョンの4倍の解像度だけでなく、2倍のフレームレート、RAW収録による高い階調と鮮やかな色彩表現など、世界遺産が最高品質の映像で再現されます。
発売されたばかりの最新鋭4Kカメラ。一眼レフと同等サイズにまとめられたコンパクトな4Kデジタルビデオカメラです。手持ちでも揺れないジンバルと呼ばれる装置に装着して、動きのあるアクティブな映像に挑戦しました。
最高峰のデジタル一眼レフカメラでも4K動画撮影を行いました。とくにフルサイズセンサーと最新の超ワイドレンズとの組み合せは、まるで高画質な写真が動き出したかのような新しい映像の世界を実現しました。
世界遺産の宮殿内に特別な許可をもらって大型クレーンを持込み撮影しました。
4K撮影を担当した轟カメラマン:
隅々までクリアーに見える4K映像は、カメラマンとして画の切り取りに気が抜けません。反面、ワイドアングルが活きて楽しくなります。また、フォーカスをどこに持って行くかによって映像表現ができる楽しみもあります。4Kにより、思った映像、空気感がそのまま表現できること、まるで写真が動き出したかのような感覚になります。4Kの素晴らしい映像で綴った『世界遺産』を是非ご覧ください。
19世紀に統一されたイタリア王国の王家サヴォイア家。その絢爛豪華な王宮群が世界遺産に登録されている。美しい宮殿や華麗な庭園、そして豪華な装飾の数々を4Kならではのディティール表現で迫る。
全編4Kで撮影された初めての地上波『世界遺産』の舞台となったのは、北イタリアのトリノ。アルプスの峰々を背景にした美しい街並は、19世紀に統一されたイタリア王国の王家サヴォイア家が拠点とした都でした。絢爛豪華な宮殿や、煌びやかな装飾が4Kならではのディティール表現であざやかに再現されます。
日下ディレクター:
いちばんの見所は、王宮の武器庫の回廊です。ここは12世紀から17世紀にかけてのサヴォイア王家の武器コレクションが一堂に会する豪華な回廊になっています。甲冑や武具などが居並ぶ大空間ですが、4K映像はそのひとつひとつの細かなディティールまで映しとることができます。ここでは撮影用の大型クレーンを特別な許可をもらって持込み撮影しました。
トリノでは、王宮のある街の中心部を取り巻くように、街の周辺に宮殿、居城が配置され、「歓喜の王冠」と呼ばれる独特な構造になっています。川沿いに建つお城や、狩猟のための宮殿など、特長のある建造物が建ち並び、歴代のサヴォイア家の王たちの華麗な暮らしぶりを今に伝えてくれます。
王宮の中でも最も荘厳な回廊「王宮武器庫」。サヴォイア家由来の武器・武具が延々と立ち並ぶ圧倒的空間です。
美しい森に囲まれた狩猟の宮殿ステゥピニージ宮殿。屋根の上には鹿のブロンズ像が・・・
ポー川に沿って建つヴァレンティーノ城。黄金の装飾が施されたなゴンドラ「ブチントーロ」を川に浮かべて船上の祭典を催しました。
日下ディレクター:
中でも圧倒的な美しさを見せるのが、300億円もの資金を投入して修復された、サヴォイア家の夏の離宮ヴェナリア宮殿です。ヴェルサイユ宮殿のような広大な庭園も見事ですが、宮殿内の「大回廊」は圧巻です。白一色の空間に窓から光が差し込み、神秘的な印象さえあたえてくれます。よく見ると壁や天井の装飾には、うっすらとクリーム色や水色が使われています。4Kならではの高画質で、そうした微妙な色合いが作り出す華麗な美の空間を、ぜひ番組でご覧いただければと思います。
神秘的でさえあるヴェナリア宮殿の「大回廊」。よく見るとクリームや水色の微妙な色彩が施されていました。
1946年にイタリアが共和制に移行するとサヴォイア王家は国外追放となった。しかし王家はトリノの街にさまざまなものを遺した。最後の国王を祖父にもつ“王子様”もそのひとりである。
サヴォイア王家のイケメン“王子様”
19世紀に統一されたイタリア王国は、第二次大戦後の1946年、国民投票により共和制に移行し現在に至ります。国外追放となったサヴォイア王家は2002年の法改正で帰国が許されます。そして最後の国王を祖父にもつ“王子様”は、イタリアの人気ものになっていました。
日下ディレクター:
今回、サヴォイア王家の継承者エマヌエーレ・フィリベルト・ディ・サヴォイアさんに取材することができました。最後のイタリア国王を祖父にもち、亡命先のスイスで生まれた“王子様”は、歌手として音楽祭に出演したり、テレビ番組に出たりと、すっかりイタリアの人気もののようです。いっしょに街を歩いていると、すれ違う人々がみんな一緒に写真を撮りたがり、王子もそれにきさくに応えます。そのイケメンぶりをぜひ番組でご覧ください。
イタリア王国の王家サヴォイア家、そしてその首都トリノ。街を歩くとその華麗なる王家の遺産を見つけることができます。
あのレオナルド・ダ・ヴィンチの《自画像》もサヴォイア家のコレクションでした。今は美術館となっている宮殿で公開されていました。
トリノはチョコレートの街。ヘーゼルナッツ入りチョコやチョコレートドリンクが有名です。実はチョコレートをトリノにもたらしたのもサヴォイア家でした。
細長いクラッカーのようなパン=グリッシーニ。もともとは病弱だった当時のサヴォイア王子のために作られました。
十字架から降ろされたイエス・キリストを包んだとされる「トリノ聖骸布」。これもサヴォイア王家の所有物の一つでした。取材に訪れたとき数年に一度の一般公開が行われており、世界中から信者がやってきていました。高精細4Kで捉えた聖遺物。布にしみ込んだキリストの姿ははたして番組で確認できるでしょうか。
TBS系列で1996年から放送されているドキュメンタリー番組『世界遺産』。2015年度から番組がリニューアルされ、キヤノン製ビデオカメラを活用して制作され始めました。世界遺産の素晴らしさを伝える番組として、「全編を4Kで収録する」 次世代の番組作りへの新たな取り組みも始まりました。
4K特別編として制作されるこの取り組みは、今年度放送される44編の番組のうち4編が4K収録する予定になっています。その最初の番組『イタリア王国 最初の都』が、6月28日に放送されました。イタリアの古都・トリノにある世界遺産「サヴォイア王家の王宮群」を紹介したこの4K特別編は、EOS C500、EOS-1D C、XC10を活用して4K収録しています。これらの4K素材は、4K解像度のまま編集したあとにハイビジョンに変換して放送され、絢爛豪華な王宮を映し出しました。
左:小川直彦さん(4K制作プロデューサー)
右:相馬正彦さん(4Kテクニカルスーパーバイザー)
昨年までの『世界遺産』の4K番組は、BS専用番組としての取り組みでした。今回は地上波番組を4K撮影して仕上げる初の試みであり、撮影のカット数は倍以上に増えています。BS番組は、きれいに見せることを重視して1分間かけてじっくりパンさせるような撮影も行っていました。地上波番組では、視聴者が違和感なく、その他の回の番組と同様に楽しんで見ることができる番組としても仕上げなければなりませんでした。そのなかで番組を見た視聴者が「やっぱり4Kで撮る番組はいいね」と評価してくれることが重要になってきます。そのため、4Kで制作する番組は、最終的に表示されるディスプレイをイメージしながら映像のクオリティーを上げていくことが必要なことだと思っています。4Kで撮って4Kで仕上げた映像が、「普段見ているハイビジョンテレビで見ても、やっぱり一味違うよね」と思っていただけることを目指して取り組んでいます。ここがないと、日本の4K番組制作が伸びていかないし、活性化もしていかないと感じています。
1996年に始まった『世界遺産』は2016年4月で20周年を迎えますが、当初から「その時点の最高の技術で、世界遺産を映像の資産として遺していく」というコンセプトで続けてきました。番組として制作するだけでなく、映像資産として後世に遺していく使命があります。そのなかで「おっ、この映像はキヤノンのカメラを使っているんじゃないの?」と、画を見れば分かるということが、今回キヤノンのカメラを選択した理由です。
EOS C500は、フル4K60pで出力できることに加え、10bit Canon Logを適用して撮れるメリットがあります。今回の4K収録レコーダーは、Convergent Design製プロフェッショナルモニター/レコーダーODYSSEY 7Q+を使用してCinema RAW収録しました。非圧縮のCINEMA RAWをそのままレコーダーで収録できるので、EOS C500の画質の良さをそのまま生かせるベストな組み合せですね。青空などを撮ると、その微妙な階調によりマッハバンドが生じてしまうこともあるのですが、EOS C500とODYSSEY 7Q+の組み合せでは全く生じませんでした。マッハバンドが生じるかもしれないと気にすることなく撮影がで、撮影の効率も上げることができました。EOS C500と組み合せて収録する機材としても非常にコンパクトで、狭いところでの取り回しもしやすく、LUTを適用してモニタリングできるのが便利でした。
現在の映像制作は、収録後に現像して、カラーグレーディングしてダイナミックに色を変更していくのが主流になってきていますし、そうした高品質な映像が望まれているところでもあります。この流れは後には戻れません。EOS C500が、Rec.709より広色域のBT.2020で撮れるようになることは有効です。現在はRec.709のディスプレイで表示する映像であっても、BT.2020のような次世代の色域にも対応しようしていることは、世界遺産を遺すという映像アーカイブの視点においては非常に大切なことと思っています。わたしたちが撮影している世界遺産は、現在は撮れるかもしれないけれども、風雨にさらされて自然劣化したり、戦禍によって破壊されたりすることもあり、もう2度と撮ることができないかもしれません。4K60pで、Canon Logのハイダイナミックレンジ収録で、しかも広色域で撮っておくということは、アーカイブから当時あったものをCG制作で再現するための映像資料としての利用やプロジェクションマッピングで投影して再現するような可能性を考えると、映像アーカイブには必要不可欠な条件になると考えています。
今回は、フル4K/10bit Canon Log/DCI-P3色域を扱えるEOS C500をメイン機材にしましたが、映画ではない地上波番組としてのアクティブなカメラワークという部分も期待されますので、手持ちで人物を追うなど、動きのある映像を撮ることができるEOS-1D CやXC10を加えました。三脚に固定してじっくり撮るシーンではないカットでは、コンパクトな4Kカメラ映像として非常に有効に利用できました。今回の番組ではタイムラプス撮影はしなかったのですが、EOS-1D Cはタイムラプス撮影を想定したのと、新しく発売されたEFズームレンズEF11-24mm F4L USMを生かすカメラとして、フルサイズセンサーのEOS-1D Cを活用しようと考えました。EOS C500だけでは今回の番組撮影は難しく、XC10やEOS-1D Cの存在があってこその制作でした。
XC10は、一体型コンパクトの新機種ですが、アイリスやフォーカス、手振れ補正などオート機能が充実していることがメリットです。今回は、背景が昼間の屋外で手前が薄暗い廊下というコントラストの大きな難しいシーンもあったのですが、オートアイリスが背景も飛ばさずに手前も黒に沈ませないように上手く機能してくれました。撮影直前に発売前のカメラをお借りした状態だったので、屋外で十分にテストをすることもできず、現場で取り出して説明書を読みながら使ってみたという状況でした。特に設定することもなくオートで撮ってみましたが、このオート機能のバランスは、カタログスペックや事前に聞いていた話以上のパフォーマンスがあり、現場でずいぶん助けられました。撮影後に帰国してから、大画面で確認してみたときに、しっかりとした映像が撮れていたことには感嘆しました。これまでの4K撮影はフォーカスマンが調整しながらの撮影であったのですが、オートフォーカス/オートアイリスがしっかり機能して手持ちで4K撮影できるのは画期的なことだと思います。記録メディアに、独自メディアではなく、CFastを採用したことも嬉しかったです。4K収録で使われることが増えて行くメディアとして、今後は手に入れやすくなるだろうと見ています。
XC10のレンズは4K撮影に合わせて新設計していると聞きました。実際に撮影してみても、コンパクトなカメラでありながら解像感の良い画が撮れました。あの小型ボディーで4K解像感が得られるレンズが内蔵され、ズームが利用でき、オートフォーカスやオートアイリスも十分に活用でき、手振れ補正までも付いている。しかも、制作向けを意識した高ビットレートでCanon Logを使いながらQFHDの解像度で収録できるのに、手に入れやすい価格で実現しているというのはとても凄いことだと思います。mini Cinema EOSと言えるようなスペックで、コンパクトサイズのカメラとしては他に競合する製品がないですね。世の中の時流としては、レンズ交換式が望まれるのかもしれませんが、レンズ交換式にしたら、これだけの機能をこのコンパクトなカメラの中には収めきれなかったでしょうね。今回は人物撮影のほとんどをXC10で行いました。ジンバルに乗せて動きながら撮りましたが、フォーカスには一切手を触れずに撮影することができました。
EOS-1D Cは、カメラ単体でコンパクトフラッシュに4K動画を撮れるということが最大のメリット。最近では、各社から4K撮影可能なデジタル一眼が登場していますが、ボディーとEFレンズのマッチングまで考慮されてオートフォーカスやレンズ周辺光量補正まで利用できるということも大きなメリットです。スチル撮影では豊富なEFレンズを使用していますし、このレンズ群が動画でも利用できるようになったことで、世界中の動画撮影シーンで助かっていると思いますね。EOS-1D CとEFレンズの元々の性能の高さが動画にも現れています。キヤノンEFレンズはすべて35mmフルサイズ対応レンズであることも、解像感や画質の向上に寄与しています。また、カラーグレーディングして仕上げた映像はヌケも良く、きれいに仕上がっていて驚きました。
今回撮影に使用した3種類のカメラは、高感度であることにもずいぶん助けられました。せっかくの4K制作の番組なのでしっかり照明を焚いて撮りたい部分でもあるのですが、地下に潜っていくシーンなどは見せ所でもあるのですが頑張ってノーライトで撮影しました。撮影してみて、XC10が思いのほか高感度で、うまく撮れていたのに驚きました。今回のもっとも暗いローコントラストなシーンはEOS-1D C。解像感もあり開放値の明るいEFシネマレンズのCN-E50mm T1.3 L Fがなかったら、撮れなかったでしょうね。
ノーライトの撮影になってしまうのは理由があり、世界遺産の場合は照明を当てることが許可されないことが多いんです。撮らせてもらえただけでも感謝しなければならないくらいで、今回放送した聖骸布もレオナルド・ダ・ビンチの自画像も、何10年に1度しか公開されない本物です。そこにあることだけでも奇跡的なものなので、外からの地明かりすら当ててはいけないという状況でした。映画やCMの撮影とは違って、テレビ番組の場合はどんなに撮影条件が悪くてもそれを映さないといけないという場合はあります。撮影する場を作り込んで撮るわけではないので、そこにあるものが世界の貴重品ということであれば撮っておかねばならないです。地明かりの中で撮るにしても、地明かりがきちんとした光源であるはずもなく、水銀灯や色温度が一様でない光源もあり、撮影条件としては厳しいものがあります。そうした厳しい条件であるからこそ、Canon Logを適用して撮影する必要があると思います。Canon Logにより、後から色味を合わせる作業はしやすかったですね。
4Kの映像は奥行き感を表現しやすいと感じていますが、これは解像感によるところが大きいです。細かい部分が、その階調ごとに見えているから、立体っぽく見えてくる。これを支えているのが、イメージセンサーの解像度であり、レンズ解像度。この性能が得られないと、立体には見えてこないんです。XC10の動きのある4Kの画は、4K番組制作には不可欠なものでしたが、それだけではハイビジョン番組を単に4Kにしたものにしかなりません。EOS C500とEFレンズの組み合せの4Kならではの映像で、その場の空気感や実際感といったものが要所要所に埋め込まれていることによって、全体を通して見ても「4K撮影だからこそハイビジョン番組とは違った見え方をする」4K収録・制作番組ならではのものとして成立したと思います。
EOS C500は10bit Canon Logを適用したフル4K60p、XC10は8bit Canon LogのQFHD30p、EOS-1D CはMotion JPEGのフル4K24pと、情報量の異なる映像を組み合せて4K番組を制作しました。4Kらしいきれいな映像を見せるところ、番組制作らしく動きのある映像で見せるところなど、シーンに応じて使用するカメラを変更しましたが、番組を通してみても違和感なく組み合せることができました。撮影はゴールデンウィーク明けから20日間かけて、今回のイタリアと次回の4K特別編用のオーストリアの2本分を撮りました。
撮影時はODYSSEY 7Q+でのモニタリングはしていますが、露出計の数値で露光して、色などのルックに関しては現場で触ることなく、 バックアップだけして帰国しました。4K素材は、今回のトリノの分だけで約20TBくらいのファイル容量になりました。帰国後は、これらの4K素材をオフライン編集用データにするため、Blackmagick Design DaVinci Resolveで仮LUTを適用したProRes 422 LTのHD60pデータに変換しています。この作業に4日間くらいかかりましたね。この変換したデータを使用してApple Final Cut Proでオフライン編集を行った後、Quantel Pablo Rioにて4K素材ファイルとのデータコンフォームを行い、オンライン・フィニッシング作業とカラーグレーディング作業をしています。カラーグレーディング後に、HD白完パケ素材としてHDCAM SRに書き出し、テロップ入れ作業などは通常のハイビジョン番組と同様に行って放送しました。
これまでの4K撮影は、PLマウントのシネマカメラを使用することが多かったと思います。今回の撮影は、これまで主流としてきたPLレンズの利用をやめて、EFレンズを活用しました。もちろん、EF11-24mm F4L USMのような使いたいレンズバリエーションがあったことも大きいですが、EFレンズ構成の検討しやすさや、現場でのEFレンズ取り扱いのしやすさは、番組制作だけでなく映画撮影においても検討するに値するものと感じました。
解像度などのレンズ性能とコストのバランスは、EFレンズのキーポイントになりますね。撮影に各種レンズを持ち込みましたが、EF11-24mm F4L USM、サーボ付きEFシネマレンズCN7×17 KAS S/E1、EFシネマレンズCN-E 30-300mm T2.95-3.7 L Sを中心に利用しました。EF11-24mmのような存在のレンズは他に見当たらないですし、従来通りPLレンズで同じ撮影をしようとしてたら、あっという間に予算が膨らんでいきます。それでは、地上波番組の制作コストでは見合わない。EFマウントは、単なるレンズマウントですが、解像度などのレンズ性能を落とさないでコストを改善できる存在ですね。