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日本版DBSとは?2026年導入の背景から現状の課題までわかりやすく解説

子どもを取り巻く環境では、教育や保育の現場で性被害が生じる不安が消えません。関係者が信頼を損なう出来事が報じられるたび、家庭や施設側の警戒は高まり、判断の難しさも増しています。
さらに、加害と被害の構造が複雑化し、従来の取り組みだけでは限界が指摘されるようになりました。こうした背景を受け、注目されているのが日本版DBSです。
本記事では日本版DBS制度の仕組みや期待される役割、現場での課題まで幅広く解説します。

公開日:2026年2月18日

目次

日本版DBSとは

日本版DBSとは、教育・保育など子どもと接する事業者が、採用時などに性犯罪歴の有無を確認できる制度です。こども性暴力防止法の制定とあわせて進められており、英国制度を参考にしつつ、日本独自の調整を加えた枠組みとして設計されています。

現在の日本では、性犯罪歴を事業者が公的に照会・確認できる制度は存在していません。そのため、採用時の確認は、本人の申告や前職への問い合わせなど、事業者の自主的な対応に委ねられているのが実情です。実際には、誓約書の提出やリファレンスチェック、採用後の行動管理を徹底するなど、できる限り慎重な確認を行っている事業者も存在します。

しかし、どれだけ厳格な運用を行っていたとしても、性犯罪歴そのものを確認できる事業者は現行制度上存在しません。その結果、確認の厳しさに事業者ごとのばらつきが生じ、過去に問題を起こした人物が履歴を隠して転職し、再び子どもと接する立場に就くことが可能な状況が続いてきました。

日本版DBSは、こうした「事業者の努力だけでは埋められない限界」を補い、最低限の安全水準を制度として担保することを目的としています。

DBS(英国制度)との関係

英国のDBSは、犯罪歴照会を行う公的制度で、一定の職種に就く場合、雇用主がDBSを通じて性犯罪歴や重大犯罪歴を確認する仕組みです。現在、教育や医療など幅広い現場で利用されています。ただし、英国では長年の運用による知見が蓄積され、対象範囲や更新手続きが整備されています。

一方、日本版DBSは英国制度を参照しつつも、照会対象を性犯罪に限定する点が大きな特徴です。また、英国ほど制度が定着していないため、運用の前提条件が異なります。

世界各国と比べても、日本は子どもに対する性被害への対策を強化する段階にあり、その一環として日本版DBSが位置付けられています。

日本版DBSに期待される効果・メリット

日本版DBSの正式名称は「日本版犯罪経歴照会制度」であり、こども性暴力防止法の運用に不可欠な柱として導入が予定されています。制度が整えば、事業者は採用時などに性犯罪歴の有無を確認できるようになり、加害リスクのある人材を子どものそばに配置しない判断が可能になります。

制度の主たる目的は次の三つです。

  • 子どもを性犯罪被害から守る
  • 再犯の防止
  • 透明性の向上

これらは、子どもをめぐる環境に求められる基本的な安全基準でもあります。性犯罪の再犯率が一定水準で存在することや、加害者が職場を転々とすることで被害が連鎖する構造が指摘されてきました。

事業者が適切に性犯罪歴を把握できれば、人員配置の判断材料が増えます。さらに、保護者にとっても制度の導入は安心材料となり、教育や保育の現場に対する信頼が高まります。

こうした点から、日本版DBSは子どもの安全確保という目的に寄与するでしょう。

日本版DBS導入の背景・経緯

こども性暴力防止法は、子どもの性被害を減らすために制定された法律で、教育・保育現場を含む幅広い環境で安全性を高めるための基盤となるものです。制度化の背景には、警察庁や内閣府が示す統計で、子どもに対する性犯罪が継続的に発生している現状があります。

警察庁が発表している「令和6年における少年非行および子供の性被害の状況」(PDF:412KB)では、被害児童の多数が加害者と顔見知りである点が示されています。家族、知人、学校関係者など、子どもが日常的に接する相手が加害に及ぶケースは少なくありません。

また、内閣府男女共同参画局が発表した「こども・若者の性被害に関する状況」でも、被害が学校や部活動の場で生じる例が報告されています。教育・保育現場での事案が継続的に確認されており、構造的な課題があることは明らかです。

このような現状から教職員による加害の深刻さが示され、現場での安全確保が急務とされてきているのは間違いないでしょう。こうした現状が積み重なり、性犯罪歴の確認制度が求められるようになっているのです。

日本版DBSの内容・仕組み

日本版DBSは、子どもに接する事業者が性犯罪歴の有無を確認できる仕組みとして設計されています。対象となる事業者が申請を行い、特定性犯罪に該当する犯罪歴があるかどうかを照会する流れです。

義務対象と認定対象の二つに分けられ、対象範囲や照会の頻度などは政令で詳細が定められます。制度全体としては、教育・保育分野を中心に事前のリスク評価を行う仕組みといえます。

対象となる事業者・施設および対象者

以下に該当する事業者が対象とされる方向で議論が進んでいます。

義務対象事業者 認定対象事業者
  • 保育所
  • 幼稚園
  • 認定こども園
  • 放課後児童クラブ
  • 小学校
  • 中学校
  • 高等学校
  • 学習塾
  • スポーツ教室
  • 文化教室
  • 習い事教室
  • 児童向けイベント運営事業者
  • 子ども向け支援サービス
  • 子ども向けレジャー施設

義務対象は、子どもが日常的に通う教育・保育施設であり、安全確保の観点から優先的に照会が求められます。一方、認定対象は制度を任意で利用する事業者で、子どもとの接点が継続的ではない場合も含まれます。

また、子どもとの接触が断続的であるイベント事業者などは対象外となる可能性があります。制度の線引きは、業態ごとの実情に応じて整理されていくことになります。

照会できる性犯罪歴の種類・範囲

制度案において照会対象とされるのは、「特定性犯罪」と分類される犯罪行為です。不同意わいせつ、児童ポルノ関連犯罪、痴漢、盗撮など、子どもへの加害リスクが高いとされる行為が中心となります。

判決により有罪が確定した性犯罪のうち、再犯によって子どもが危険にさらされるおそれがある行為が確認対象となる枠組みと考えてよいでしょう。

一方で、照会対象とならない行為もあります。ストーカー行為、暴行未遂、起訴猶予、不起訴、示談扱いの事案などは、制度案の段階では対象外とされています。これは、刑事手続き上の位置付けや証拠の扱いが異なるためで、確認対象を一定範囲に限定する考え方に沿った設計のためです。

日本版DBS導入スケジュールと現状

日本版DBSの導入は段階的に進められており、法案成立から施行までの流れが示されています。スケジュール案は次のとおりです。

  • 法案の国会成立
  • 法律の公布
  • 政令・省令の策定
  • ガイドラインの準備
  • 施行(2026年12月25日)

現在は政令や詳細な運用指針が検討されており、対象範囲や照会手続きの具体化が進んでいます。有識者会議での議論も継続しており、事業者が利用しやすい制度とするための調整が行われています。2026年12月25日に施行される方向で検討されているため、現場としては今後1年以内に準備が必要になる流れです。制度の全容が固まるにつれ、事業者ごとの対応が段階的に求められます。

日本版DBSの課題・問題点

日本版DBSには安全確保への期待がある一方、運用面での課題も指摘されています。

照会対象の範囲や、情報の扱い方、事業者ごとの対応など、制度として乗り越えるべき問題が多い状況です。とくに、「子どもの保護と個人の権利の調整をどこで取るか」という問題が、制度設計に影響を与えています。

プライバシー・人格権との調整

プライバシーや人格権の調整とは、個人の犯罪歴情報を扱う際に、その人の権利をどの程度守るかを検討する取り組みです。日本版DBSでは、性犯罪歴を照会すること自体が個人情報の扱いとして非常に重く、慎重な調整が求められます。

制度案では、照会の対象を特定性犯罪に限定し、提供される情報も最小限に抑える方向で検討が進んでいます。それでも、情報流出のリスクや、誤った扱いにより不利益が生じる可能性は排除できません。制度の導入後も、運用の精度を高めるための対応が問われます。

差別・更生機会の確保

差別・更生機会の確保とは、性犯罪歴の有無によって過度に排除される状況を避けることで、社会復帰や再就労に一定の道を保つ考え方です。日本版DBSでは、性犯罪歴のある人が子どもと接する職務に就くことを制限する一方、社会全体で更生をどう支えるかが問われます。

制度案では、照会対象の範囲を限定し、確認が必要な場面を明確にすることで過度な排除を避ける方向が採られています。それでも、運用次第では広い業種で不利益が生じるおそれがあり、制度の線引きや救済措置の検討が必要です。

情報管理と運用コスト

性犯罪歴照会に関する情報を安全に扱いながら制度を運営するためには、情報管理と運用コストの問題についても考える必要があります。犯罪歴情報は秘匿性が高く、厳格な管理体制が欠かせないためです。

制度案では、情報の保管期間や利用目的を限定し、事業者側が情報を適切に扱う仕組みが求められています。ただし、規模の小さな事業者では運用負担が増えるおそれがあり、コストや管理体制が整わないケースも想定されます。制度の安定運用には、事業者への支援策が重要になります。

対象範囲・制度の線引き

対象範囲・制度の線引き、つまり「どの事業者を対象とするか」を決める境界についても重要項目になるでしょう。教育・保育現場を中心にすることは理解されやすいものの、子どもが関わる活動は多岐にわたるため、線引きには議論が生じます。

制度案では、日常的に子どもと接する施設を義務対象とし、その他を認定対象とする方向が検討されています。しかし、現場の実態は多様で、分類の仕方によって不均衡が生じるおそれがあります。線引きが曖昧なまま運用されると、事業者間で負担に差が出る点が課題です。

子供の安全を完全に確保できるものではない

日本版DBSは性犯罪歴の照会による事前防止策であり、すべての性被害を防ぐ仕組みではありません。性犯罪歴がない人による加害や、職場環境に潜むリスクまでは把握できないためです。

制度案でも、DBSはあくまで一つの手段であることが前提となっています。制度導入後も、現場での監督体制や環境整備が不十分であれば、被害を避けきれない可能性があります。制度だけで安全が保証されるわけではなく、複合的な対策が求められます。

日本版DBSと現場でのカメラを使った安全対策

日本版DBSは性犯罪歴の照会により事前のリスクを把握する制度のため、現場での安全対策として空間設計や監視体制を補う仕組みが必要になります。

加えて、日本版DBSの仕組みでは性犯罪歴がない人による加害は防げません。現場での発生を抑えるには、空間そのものを“行為が起きにくい環境”に変える追加対策が必須です。死角や個室などの構造的要因を見直し、加害が起こりにくい環境を整えることが欠かせません。

その解決策の一つが映像管理システムです。『VisualStage Type-S』は、クラウド型で録画・共有・閲覧を一元化できるため、施設内の行動を可視化し、職員と子どもの接点における透明性を高めます。教室内や指導スペースの映像が記録されることで、不適切な行動の抑止力が高まり、人の目が届きにくい場面を減らす効果が期待できるでしょう。

また、『Safie One』は既存施設の死角を補う用途に適しており、電源のみで設置でき、狭い場所でも対応できます。これらを活用すれば、現場での透明性が高まり、行動抑止の効果も期待できます。

防犯カメラは証拠記録だけでなく、日常的な監視体制の強化につながるため、DBSと併用することで子どもの安全を守る体制が整うでしょう。

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まとめ

日本版DBSは、子どもを性被害から守るための新しい仕組みとして導入が進められています。性犯罪歴の照会により事業者が適切な人材配置を判断しやすくなり、教育・保育現場の安全確保に寄与します。

ただし、制度だけで被害が防げるわけではなく、現場の環境整備や監視体制と組み合せて取り組む必要があります。制度の背景や課題を理解することで、安全な教育・保育環境づくりを進める方向性が見えてくるでしょう。

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