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紙と電子の“二重管理”から脱却し、経費精算のデジタル化を進めるには2025年の崖vol.2:経理DXの次なる一手

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公開日:2025年3月17日

電子取引の電子データ保存は、2022年1月の義務化当初、企業の対応状況を考慮して2年間の宥恕措置期間が設けられました。期間中は電子データの紙での保存が認められていましたが、2024年1月から完全義務化となっています。
しかし、限られた期間での急ごしらえの対応であったために、業務の至るところで問題が生じている企業も少なくありません。特に経費精算フローやシステムの根本的な見直しが未着手なまま業務がさらに非効率化し、現場の負担となっている場合もあります。
この記事では、電子帳簿保存法(以下、電帳法)による影響や経理部門が抱える問題点、電子化の次に取り組みたいステップについて解説します。

電子データの保存は進むも、経費精算まわりの改善に踏み切れない企業の現状

2024年の電子データ保存の義務化を機に、これまでアナログで行っていた企業が契約書、見積書、領収書などの対象書類の電子化を急ピッチで進めました。
しかし、東京商工会議所が2024年6月に実施した調査によると、企業の売上規模が小さくなるほど「改正に対応している」企業の割合が低いことが明らかになりました。売上高1千万円以下の企業では、電帳法に対応している企業が21.7%、スキャナ保存に対応している企業が7.2%と極端に低く、対応していない、分からないと答えた企業は約6割以上もいることがわかります。

  • 出典:2024年9月9日 日本・東京商工会議所 公表
    「中小企業におけるインボイス制度、電子帳簿保存法、バックオフィス業務の実態調査」結果についてをもとに作成

また、電子化を進めた企業では新たな課題に直面しています。
1つ目は要件を満たす機能実装の難しさです。例えば検索機能の確保では、「取引年月日」、「取引金額」、「取引先」の条件検索ができる状態にしておく必要があります。ファイル名の規則設定やフォルダ構成の整備など、実務面の対応に苦慮する企業が少なくありません。

2つ目は紙の書類と電子データが混在していることです。電帳法の対象とならない書類は依然として紙で管理するため、紙と電子データの併用が業務効率を低下させ、現場の負担となります。特に、経費精算などの一部を電子化した企業において問題視されています。

3つ目は運用ルールを社内に浸透させる難しさです。経費精算は昔ながらのやり方で処理している企業も多く、新しい保存要件やルールが浸透しにくい場合があります。せっかく新しいルールを設けても、部門間や従業員間で異なる処理をしてしまい、混乱を招くケースも多いようです。

4つ目は電子データの改ざんや不正アクセス、情報漏洩などのセキュリティ対策です。電子データの取り扱いによるインシデントを防ぐ環境の構築が必要なため、ITセキュリティに不慣れな現場担当者の負担になっています。

こうした状況を踏まえ、政府や関連団体はさまざまな支援策を提供しています。
経済産業省と中小企業庁がWebで掲載している電帳法に関するコラムや、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が公開している各種ガイドラインなどで、電帳法への対応方法や導入ポイントを紹介しています。

コラム|2025年10月の「育児・介護休業法改正」で何が変わる?

2025年10月、育児期の柔軟な働き方を実現するための新たな措置として「育児・介護休業法改正」の導入が予定されています。この法改正に対応するためには、会社に出社しなければ処理できない業務をできる限り減らしていくことが重要です。
そのため、この取り組みそのものが経理業務の効率化を後押しするとも考えられています。

「育児・介護休業法改正」では、事業主は次の項目から2つ以上を選んで実施することが義務付けられます。

  • 始業時刻等の変更
  • テレワーク(10日/月)
  • 短時間勤務
  • 就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇の付与(10日/年)
  • 保育施設の設置運営等

また、この取り組みは法令順守という観点だけでなく、事業継続計画(BCP)の観点からも重要な意味を持ちます。オフィスが地震や豪雨で被災した場合でも、普段からテレワークの体制が整っていれば、従業員は自宅や別の場所から業務を継続することが可能です。柔軟な勤務時間の設定により、災害時の混雑を避けた出勤や、計画停電にも対応できます。

経理業務全体の効率化が求められるなか、経費精算のデジタル化も重要なテーマに!

そもそも、なぜ経理業務は効率化を求められるのでしょうか。日本は2025年から「超高齢社会」に突入し、さらなる労働人口の減少が進んだことで人手不足が深刻化しています。

経理部門が経営判断のために用意しなければならない財務データは年々増え続けている一方、人員は減少傾向にあり、業務の属人化や一人当たりにかかる業務負荷には歯止めがかからなくなっています。こうした状況を放置すれば、事業継続にも悪影響を及ぼしかねません。

電子データの保存対応により一部の電子化やペーパーレス化は進展していますが、経理部門にはさらなる効率化が必要な業務が山積みです。請求書の発行から送付までのプロセス、立替経費精算の申請・承認フロー、日々の仕訳業務や会計処理など、依然として人手に頼っています。今後の人手不足にも影響を受けないような環境を構築するため、経費精算のデジタル化と業務効率化が求められているのです。

そこで、電子データの保存に対応した企業が次のステップとして取り組みたいのが、「経費精算フローの見直し」です。これまでのやり方(慣習)では、紙ベースの申請に手間がかかる、入力ミスが起こる、上司が社内におらず承認が遅れる、書類の郵送やファイリングが手間といった問題が生じていました。これらの課題は、経費精算システムの導入とフローを見直すことで、場当たり的でない真の業務効率化を実現することができます。

業務効率化には経費精算フローの見直しとシステム導入が近道

経理部門における効率化の必要性は認識されているものの、経費精算フローの見直しやシステム導入に対しては腰が重くなっている企業が少なくありません。

当社主催の電帳法で取り組むDXセミナーに参加いただいたお客様を対象にアンケートを実施したところ、業務を見直す上でアナログと感じる業務の上位3位には経費精算や請求支払業務が挙がりました。また、業務改善に取り組む上での課題については、「忙しく時間がない」、「やり方がわからない」、「ITリテラシーへの不安」などがあり、アナログと感じている業務を改善したくても、時間の確保が難しく、やり方もわからないといった担当者の不安が足かせとなってしまっているようです。

  • 出典:2022年2月22日「中堅・中小企業のための電帳法対応で取り組むDX~電帳法を活用できる企業、活用できない企業~」におけるお客様アンケート結果より

これまでのやり方を全て見直す作業には相応の時間と労力を要しますが、近年では効率的なアプローチとして「Fit to Standard」という考え方が主流になりつつあります。これは、現状の業務フローに合わせてシステム開発を行うのではなく、導入したシステムの標準機能に合わせて業務フローを見直していく手法です。従来のフローから必要な部分を取捨選択し、システムの機能に合わせて変更していくため、追加の開発コストや工数を抑えて業務効率化を実現することができます。

(1)システムの導入で経費精算フローを効率化

一般的な経費精算システムには、申請から承認までをオンラインで完結できる仕組みが備わっています。このシステムに合わせて経費精算フローを見直すことにより、業務の効率化を図ることができます。
例えば、領収書をスキャンすると必要な情報が自動で電子化される機能や、承認までのプロセスを全てシステム上で完結するなど、時間や場所にとらわれない環境を構築できます。
また、社内規定に基づく使途制限や上限金額などをシステムに登録しておくことで、承認時のチェックを自動化することも可能です。
経費の振込処理においても、銀行に送信する振込データをフォーマット化しておけば自動作成でき、経理部門の負担や入力ミスを減らせます。

(2)自社対応が難しい場合は外部リソースを活用することもおすすめ

先ほど触れたように、経理部門は改善のための時間確保さえ難しい状況です。自社だけで対応することが難しい場合は、外部のリソースを活用することで、業務の棚卸からシステム導入まで、専門的なノウハウや技術面でのサポートを受けることができます。
また、長年の慣習でもある経費精算業務のフローを見直すためには、第三者の介入が有効である場合もあります。企業の実情に合わせたサポートを受けられる支援企業を選ぶことが重要です。

支援企業を選ぶ際のポイント

  • 改正電子帳簿保存法/インボイス制度に対応しているかどうか
  • 導入や運用のサポート体制が充実しているかどうか
  • 経理業務や電帳法に関する知識やノウハウを有しているかどうか
  • 自社と同等規模の企業への導入実績があるかどうか など

経費精算システムの導入やフロー見直しならお気軽にご相談ください

システム導入は一見すると大きな投資や労力が必要に思えますが、業務効率化による人的資源の有効活用、コンプライアンスの強化、働き方改革の推進などのメリットをもたらします。
自社に合った見直しの手順や、具体的な着手ポイントについてお悩みの方は、キヤノンマーケティングジャパンまでご相談ください。経費精算システムの導入から運用まで、業務効率化をサポートいたします。以下のフォームからお気軽にお問い合わせください。

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