激甚化・頻発化する自然災害。重要データが消失したとき、何日で復旧できますか?2025年の崖vol.3:BCP対策
公開日:2025年6月9日


近年、日本列島を襲う自然災害は激甚化・頻発化の一途をたどっています。南海トラフ巨大地震や首都直下地震といった地震をはじめ、富士山の噴火や山火事、洪水などさまざまな自然災害のリスクが高まっていることは、メディアでも多く取り上げられるようになりました。
中小企業庁も「BCP(事業継続計画)」対策の重要性を説いていますが、具体的な計画を定められていない企業も少なくありません。
災害時には従業員やその家族の生命はもちろん、重要データも事業を存続させるために護る必要があります。今回は2025年の崖の取り組みの一環として、中小企業が検討するべきBCP対策の実践ポイントと成功事例を紹介します。
目次
- 南海トラフ地震の発生確率は過去10年で大幅増!災害の陰に潜むリスク
- 災害時や緊急時のリスクから企業を守る「BCP(事業継続計画)」とは
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【一部事例付き】BCP対策のポイントは優先順位の決定と重要データ復旧!
- (1)2019年の台風19号による浸水から復旧した事例
- (2)NASのハードウエア故障が発生した事例
- (3)緊急時でもすばやく従業員の安否確認
- BCP対策の検討や実施についてお気軽にご相談ください
南海トラフ地震の発生確率は過去10年で大幅増!災害の陰に潜むリスク
日本国内では自然災害のリスクが年々高まってきています。最たる例が大地震です。令和7年5月時点で南海トラフ地震の30年以内発生確率は80%と約10年前の60~70%より上昇しており、首都直下型地震の発生確率は約70%と高い状態が続いています。
災害が起きた際には経済的ダメージも甚大なものになると予測されています。『南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ』の2025年の報告によると、南海トラフ地震発生時、資産などの被害額は224.9兆円に上ると試算されています。

大雨や台風による洪水のリスクも高まっています。1日あたりの降水量が100mm以上および200mm以上となる日の年間日数は、過去100年で増加してきており、1時間あたり降水量50mm以上の発生回数も約50年間で増加しています。
こうした自然災害は企業にどのような影響をもたらすのでしょうか。従業員の生命の危険のみならず、地震や洪水による設備損壊、ライフライン断絶、交通網(物流)寸断などが起こるかもしれません。企業の売上減少だけでなく、経営に不可欠な設備やデータなどの復旧費用がさらなる損失につながる恐れもあります。
特にハードウエアの物理的故障、パソコンの損壊など、IT機器のトラブルはデータの喪失や業務システム停止を引き起こしかねません。総務省の調査によると、東日本大震災でデータ損失や業務システムの被害にあった企業・自治体・その他は、全体で3割を超えました。顧客情報や取引履歴、会計データなどの喪失は、業務にさまざまな支障をもたらし、法的責任を追及され企業存続の危機となり得ます。
災害時や緊急時のリスクから企業を守る「BCP(事業継続計画)」とは

「BCP(事業継続計画)」とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した際、経営資源(ヒト・カネ・モノ・情報)の損害を最小限にとどめつつ、事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。
BCP対策のメリット
- 早期復旧による機会損失の防止
- リスク管理体制の向上
- 災害や緊急事態発生時のすばやい対応
- 事業継続力の強化
BCP対策を講じることで災害時に顧客データや受発注システムがすぐに復旧できれば、数時間~数日の営業停止で済み、売上や顧客を失わずに済みます。
また、副次的なメリットもあります。例えば、従業員やその家族の安全確保策を明確にすることで、人材採用・定着率の向上につながります。業務の可視化やバックアップ体制の構築を通じ、業務のムダの発見といった経営改善も期待できるでしょう。取引においてBCP対策の有無が企業からの信頼性を高める要因となり、長期的な競争力強化につながります。
中小企業庁は「事業継続力強化計画認定制度」を推進しています。中小企業の防災・減災対策を促進するため、経済産業大臣が計画を認定する制度です。通常のBCPよりも簡易的で取り組みやすくなっており、認定を受けた企業は税制措置や金融支援、補助金の加点などの措置が受けられます。例えば、「中小企業防災・減災投資促進税制の優遇措置」ではBCP対策で必要となる一部の設備の取得などに対し、特別償却16%の税制措置を受けることができます。
加えて、BCP対策は策定するだけでは意味がなく、いざという時に正しく機能するか、緊急時の対応が社員に周知徹底されているかなどにも気を付けなければいけません。事前の対策を行っていたにもかかわらず、「BCP対策についての社員への教育・演習を怠っていた」、「緊急時に責任者と連絡が取れず現場対応に遅れが生じてしまった」などの不測の事態が起きてしまっては、対策の意味がなくなってしまうからです。平時からの教育訓練により、従業員に緊急時の対応を周知徹底し、かついざという時に自律的に対応できる組織力が培われるよう、継続的な訓練が重要となるでしょう。
【一部事例付き】BCP対策のポイントは優先順位の決定と重要データ復旧!

BCP対策に取り組む際の心構えとして、あらゆるリスクへの対応は現実的ではないため、自社にとって影響度の高いリスクから優先して取り組み、重要業務と目標復旧時間を設定することが大切です。災害時にすべての業務を継続することは困難であることから、核となる事業プロセスを特定し、限られたリソースを集中的に投入する計画を立てましょう。
企業活動のほとんどは情報システムや情報通信に依存しているため、重要データのバックアップや遠隔地保管(複数のエリアに分けて保管しリスクを分散)も欠かせません。
また、中小企業庁が公表しているBCP対策のチェックリストや雛型を活用することで、効率よく進められます。自社の状況に合わせて定期的に見直し、訓練を実施することで実効性を高めましょう。

チェックマークをつけた項目が3個以下の企業は、事業が長期間停止し廃業するリスクが高いため、今すぐBCP策定が必要です。4~15個の企業は備えの意識はあるものの改善点が多く、16個以上の企業はさらなる強化で完成度を高めることが望ましいでしょう。
ここからは、平時からのBCP対策が功を奏した事例と想定されるケースを3つご紹介します。
(1)2019年の台風19号による浸水から復旧した事例
建設業A社の事務所は床上浸水の被害に遭い、多数のシステム機器と複合機が水没し、顧客・CAD・基幹データを消失しました。
しかしA社は共有フォルダーとPCのデータを自動バックアップの対象に設定し、ファイルサーバーで保存していました。さらにそのバックアップ先のファイルサーバー自体も毎日自動でクラウドにバックアップする二重の安全策を講じていました。
被災後、ファイルサーバー装置本体は水没したものの、データはすべてクラウド上に保存されていたため、直近のデータを復元することで、短期間で事業を再開することができました。
(2)NASのハードウエア故障が発生した事例
建設業B社ではNASにデータを保存して共有しており、月曜から金曜の23時に重要なフォルダーのバックアップをクラウドに実行していました。
ある月曜日の午前、NASのハードウエアが故障し、重要データへアクセスできなくなる障害が発生しました。幸いにも導入していたバックアップシステムが機能し、データ損失を回避することができました。
復旧作業では、リストア場所として新たにストレージサーバーを導入。約40GBのデータ量を2時間強でリストアでき、前週の金曜23時00分時点のデータに戻すことができました。
(3)緊急時でもすばやく従業員の安否確認
災害など緊急時の従業員の安否確認は、管理者が1人ずつ電話やメールで行い、回答を手作業で集計する企業も少なくありません。この方法では確認に数時間から1日以上かかり、管理者自身の負担となる恐れがあります。
そこで、安否確認システム機能が備わったグループウェアなどを導入することで、迅速に確認を行うことができます。スマートフォンのGPS機能、カメラ機能と連携し、社員の現在地や勤務状況などの確認も可能に。
地震などの災害が起きた際には従業員へ安否確認メッセージが自動でプッシュ通知され、発生から短時間で従業員の安否確認ができます。
このようにBCP対策のための取り組みでは、「クラウドに自動バックアップすることで物理的にデータを守る」、「すばやく復旧できる」、「従業員の安否確認を迅速に行える」ものを選ぶようにしましょう。
BCP対策の検討や実施についてお気軽にご相談ください
自然災害はいつどこで起こるか分かりません。災害時の従業員への配慮や、災害後すばやく事業を再開するためにはBCP対策を講じる必要があります。また、その取り組みは採用力や競争力の強化にもつながります。
自社に合ったBCPの策定や重要データのバックアップについてお悩みの方は、キヤノンマーケティングジャパンまでご相談ください。バックアップシステムや従業員の安否確認などのシステム導入から運用まで、BCP対策をサポートいたします。以下のフォームからお気軽にお問い合わせください。
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