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受領請求書を電子化するメリット・デメリットは?進め方も解説

  • 電子帳簿保存法
  • 生産性向上

新型コロナウイルスの拡大によりテレワークの導入が急速に進んだこと、また電子帳簿保存法改正の後押しといった背景にともない、請求書を電子化する動きが加速しています。今回は、受領する請求書を電子化するメリットとデメリットを整理しつつ、請求書の電子化を推進する際の注意点を解説していきます。請求書の電子化を行う際は、電子帳簿保存法の内容を無視できませんので、この機会にしっかりと関係性を把握しておきましょう。

目次

  • 電子帳簿保存法上の電子データとしての有効性
  • 受領方法別の請求書を電子保存する要件
    • 紙で受領した請求書を電子化して保存する「スキャナ保存」の要件
    • 電子データで受領した請求書を保存する「電子データ保存」の要件
  • 即日受領が可能に
  • 業務の効率化
  • コストの削減
  • 導入・運用にコストがかかる
  • 業務フローの見直しが必要な場合がある
  • 導入目的に対応しているかで選ぶ
  • 機能性で選ぶ
  • 連携性で選ぶ
  • 費用で選ぶ
  • サポート体制で選ぶ
  • セキュリティ対策が万全かで選ぶ
  • Q.電子取引でやり取りした請求書の電子保存の義務化はいつから?
  • Q.電子請求書に印鑑は必要?

請求書の電子化とは

請求書の電子化とは、従来の紙の請求書でのやり取りではなく、PDF等の電子データの請求書をWebシステムやメール等でやり取りをすること、また、紙で発行・受領した請求書をスキャンして電子データに変換してから保存することです。

令和4年(2022年)の改正電子帳簿保存法により、「スキャナ保存」するための要件が緩和され、また、テレワークの推進や経理業務のDXが進む中で、請求書の電子化が注目を集めています。

電子帳簿保存法上の電子データとしての有効性

電子化した請求書は、電子帳簿保存法に定められている要件を満たせば、電子データとして発行・保存することが認められています。初めて電子帳簿保存法が施行された平成10年(1998年)当初は、電子データ保存として認められるのが「帳簿の記録開始段階から一貫して、会計ソフト等を使って作成した帳簿・書類だけ」でしたが、徐々に要件が緩和され、「e-文書法」が施行された平成17年(2005年)からは、スキャナで読取りした書類の保存も可能になりました。

受領方法別の請求書を電子保存する要件

紙で受領した請求書を電子化して保存する場合と、電子データで受領した請求書を保存する場合について、それぞれ、電子帳簿保存法が定める要件を解説します。

  • 紙で受領した請求書を電子化して保存する「スキャナ保存」の要件
  • 電子データで受領した請求書を保存する「電子データ保存」の要件

紙で受領した請求書を電子化して保存する「スキャナ保存」の要件

紙で受領した請求書を、電子化して保存する方法として、スキャナ保存があります。紙の請求書を電子化して保存する場合、真実性や可視性を確保するための以下要件を満たす必要があります。

要件 重要書類
(注1)
一般書類
(注2)
過去分重要書類
(注3)
入力期間の制限
(書類の受領等後又は業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに入力)
(規2⑥一イ、ロ)
一定水準以上の解像度(200dpi以上)による読み取り
(規2⑥二イ・)
カラー画像による読み取り
(赤・緑・青それぞれ256階調(約1677万色)以上)
(規2⑥二イ・)
※1
タイムスタンプの付与
(規2⑥二ロ)
※2 ※3 ※3
ヴァージョン管理
(訂正又は削除の事実及び内容の確認等)
(規2⑥二ハ)
スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持
(規2⑥三)
見読可能装置(14インチ以上のカラーディスプレイ、4ポイント文字の認識等)の備付け
(規2⑥四)
※1
整然・明瞭出力
(規2⑥四イ~ニ)
電子計算機処理システムの開発関係書類等の備付け
(規2⑥六、同2②一)
検索機能の確保
(規2⑥五)
その他 ※4、※5

(注)1決算関係書類以外の国税関係書類(一般書類を除きます。)をいう。
(注)2資金や物の流れに直結・連動しない書類として規則第2条第7項に規定する国税庁長官が定めるものをいう。
(注)3スキャナ保存制度により国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えている保存義務者であって、その当該国税関係書類の保存に代える日前に作成又は受領した重要書類をいう。

  • ※1
    一般書類の場合、カラー画像ではなくグレースケールでの保存可。
  • ※2
    入力事項を規則第2条第6項第1号イ又はロに掲げる方法により当該国税関係書類に係る記録事項を入力したことを確認することができる場合には、その確認をもってタイムスタンプの付与に代えることができる。
  • ※3
    当該国税関係書類に係る記録事項を入力したことを確認することができる場合には、タイムスタンプの付与に代えることができる。
  • ※4
    過去分重要書類については当該電磁的記録の保存に併せて、当該電磁的記録の作成及び保存に関する事務の手続を明らかにした書類(当該事務の責任者が定められているものに限られます。)の備付けが必要。
  • ※5
    過去分重要書類については所轄税務署長等宛に適用届出書の提出が必要。

令和6年1月1日前に保存する国税関係書類については、上記表の要件のほか「解像度及び階調情報の保存」、「大きさ情報の保存」及び「入力者等情報の確認」が必要。

紙で受領した請求書は上記の表で言うところの“重要書類”という位置づけになります。そのため、受け取った請求書は受領後すぐか、その業務の処理に係る通常の期間を経過した後すぐに入力しなければいけません。加えて、カラーでの保存は必須です。

また、「スキャン文書と帳簿の相互関連性の保持」については、要件を満たすために自社で運用方法を検討する必要があるでしょう。

電子データで受領した請求書を保存する「電子データ保存」の要件

メールやインターネットを通じて、電子データとして請求書を受領した場合には、「電子取引」に該当し、そのデータを保存する必要があります(※2023年12月末までは「宥恕措置」あり)。電子取引データの保存は、真実性や可視性を確保するための以下要件を満たす必要があります。

要件
電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け(自社開発のプログラムを使用する場合に限ります。) (規2②一イ、⑥六、4①)
見読可能装置の備付け等(規2②二、4①)
検索機能の確保(規⑥五、4①)
次のいずれかの措置を行う(規4①) 一 タイムスタンプが付された後の授受 二 速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付す
  • 括弧書の取扱いは、取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る。 三 データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用して、授受及び保存を行う 四 訂正削除の防止に関する事務処理規程を策定、運用、備付け

電子取引によって受領した請求書は紙媒体での受領とは取り扱いが異なるだけでなく、保存が義務づけられているので正しく要件を確認しておきましょう。要約すると、「タイムスタンプの付与」などの真実性を確保するための措置が必要であり、可視性を確保するためには「見読可能装置の備付け等による見読性の確保」「電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け」「検索機能の確保」が必要となります。

これらの要件を満たすには、システムの導入が最も効率的と言えます。

電子化された請求書を受領する側のメリット

電子化された請求書を受領する側のメリットは以下の3つです。

  • 即日受領が可能に
  • 業務の効率化
  • コストの削減

即日受領が可能に

電子化された請求書は、クラウドサービスやメール等を通じてリアルタイムに送受信できるため、作成したその日に受領することができます。また、いくつもの紙の請求書を受領する場合は、それぞれの請求書がバラバラに届くために、紛失のリスクも高まってしまいますが、そういったリスクの低減も期待できます。

業務の効率化

電子化された請求書を受領することで、業務の効率化を期待できます。例えば、紙の請求書を受領する場合は、請求書の管理やファイリングに手間と時間がかかり、また確認や紛失の時にも相応の時間がかかっていましたが、請求書が電子化されていることで、このような手間が省けるようになります。また、書類の転記もオンラインでの作業となり、入力工数の削減も期待できます。

コストの削減

紙の請求書を受領する場合は、受領した請求書の管理や保管場所を確保する必要があり、また法定保存年限を経過後に廃棄する際はシュレッダーなどを通す必要があります。紙の請求書を使ったやり取りでは、こうした保管場所の確保や、シュレッダー等のオフィス機器の維持にコストがかかります。これらのやり取りを全て電子化することで、請求書の保管場所はシステムやクラウドサービス上に置き換えることができます。

電子化された請求書を受領する側のデメリット

電子化された請求書を受領する側のデメリットは以下の2つです。

  • 導入・運用にコストがかかる
  • 業務フローの見直しが必要な場合がある

導入・運用にコストがかかる

電子化された請求書を受領するためには、請求書を受領するためのシステムやクラウドサービスを整える必要があります。メール等を用いて受領することも可能ですが、作業効率化の観点から、様々なシステムやクラウドサービスで受領することもあるでしょう。そのような場合には、別途、導入コストや運用コストが発生します。システムやクラウドサービスを導入する上では、業務の効率化などの導入メリットとあわせて検討することが重要となります。

業務フローの見直しが必要な場合がある

電子化された請求書を受領するために新たにシステムやクラウドサービスを導入する場合に、請求書の対応フローを策定していなければ、紙の請求書受領時と同様に紛失リスクが高まってしまうこともあります。電子化された請求書であっても、どの部署の誰に送付すべきなのか、営業担当者が請求書を受領するケースはあるのかどうか、などを確認する必要があります。

請求書の電子化を進める方法

請求書の電子化を進める方法は以下の通りです。

  1. 取引先への周知

    改正電子帳簿保存法・インボイス制度への対応や、テレワークの普及を背景に、請求書を電子化する動きが加速していますが、取引先が未だ紙での管理を行っている場合もあるため、双方で発行・管理フローについて十分に検討する必要があります。

  2. 電子帳簿保存法に対応したシステムを導入する

    電子帳簿保存法に則った請求書の保存には、真実性や可視性を確保するための保存要件に対応しなければなりません。これらの要件を満たすシステムの導入をおすすめします。

  3. 業務フローの見直しを行う

    電子化された請求書の受領フローと、受領した請求書の管理体制を検討する必要があります。電子帳簿保存法が定める保存要件を確認し、業務フローの見直しを行いましょう。

  4. 紙の請求書が残る場合を検討する

    請求書の電子化を進めても、紙の請求書を使用する取引先が残ることを想定しておきましょう。取引先への周知を行うと同時に、今後の請求書受領フローを確認しておきます。

請求書の電子化に適したシステムの選び方

請求書の電子化に適したシステムの選び方として、以下の6つを参考にしてください。

  • 導入目的に対応しているかで選ぶ
  • 機能性で選ぶ
  • 連携性で選ぶ
  • 費用で選ぶ
  • サポート体制で選ぶ
  • セキュリティ対策が万全かで選ぶ

請求書の電子化においては、令和4年(2022年)1月に改正された電子帳簿保存法の内容を無視できないため、今後システム導入を検討している方は以下の記事も参考にしてください。

導入目的に対応しているかで選ぶ

請求書の電子化を推進する目的を明確にし、どのシステムが最も適しているかを検討しましょう。例えば、電子帳簿保存法の改正に対応するために導入する場合は、電子帳簿保存法の保存要件を満たしたシステムを導入しなければなりません。そのほか、業務フローの改善や業務効率化を意図する場合は、その要件を満たす機能を持つシステムを導入する必要があります。

機能性で選ぶ

電子化された請求書は、電子帳簿保存法の保存要件を満たす方法で保存される必要があります。具体的には「真実性の確保」と「可視性の確保」になり、タイムスタンプの付与などの改ざん防止のための措置や、要件に対応した検索機能の確保などが求められます。対応可能な受領方法やデータ化などの機能性とともに電子帳簿保存法への対応、さらにインボイス制度への対応機能も含め、システムの比較を行っていきましょう。

連携性で選ぶ

請求書を電子化するだけでなく、会計システムなどの自社の様々なシステムとの連携性があるかどうかを確認しましょう。PDFデータなどを保存する場合の適切な保存方法や、連携手段を事前に確認し、問題なくシステム間を横断できるか把握しておく必要があります。

費用で選ぶ

請求書を電子化するクラウドサービスの多くは、初期費用に加え、月額のランニングコストが発生します。オンプレミスでシステムを構築する場合は、サーバーやソフトウェアなどのシステムの費用に加え、保守運用コストも必要となります。導入時は、電子帳簿保存法に関する要件や機能性だけでなく、費用面もしっかりと比較しましょう。

サポート体制で選ぶ

受領請求書を電子化するサービスの多くはクラウドサービスになるため、導入サポートや運用サポートがあるかどうかも確認する必要があります。システムを販売するベンダー企業のサポート体制、サポート内容の違いを比較して、自社の現場担当者と相談しながら適切なシステム選びが行えるようにしましょう。

セキュリティ対策が万全かで選ぶ

請求書の電子化に際して、クラウドサービスの利用を検討する場合は、使用するシステムのセキュリティ対策の度合いを比較しましょう。各ベンダー企業がセキュリティ対策に関してどのようなこだわりを持ち、機能実装を行っているのかを確認することが重要です。

請求書の電子化に関するよくある質問

Q.電子取引でやり取りした請求書の電子保存の義務化はいつから?

令和4年(2022年1月)より施行された改正電子帳簿保存法によって、電子取引における電子データ保存が義務化されました。ただし、2023年12月までは宥恕措置として2年間の経過期間が設けられ、保存すべき電子データをプリントアウトして保存し、税務調査等の際に提示・提出できるようにしていれば差し支えありませんが、2024年1月1日からは、保存要件に従った電子データでの保存が必要となります。

Q.電子請求書に印鑑は必要?

電子化された請求書に印鑑は必要ありません。ただし、電子請求書であっても印鑑が押されていることで発行の証明になる意味を持ちます。また、印鑑のない請求書と比較すると、印鑑がある請求書の方が偽装防止の抑止力を持つなど、信頼性が増すものとなります。

まとめ

請求書の電子化を行う企業は、改正電子帳簿保存法・インボイス制度への対応や、テレワークの普及を背景に、増加傾向にあります。電子帳簿保存法の改正によって、2024年1月には、電子化されたデータで受け取った請求書の書面保存が禁止されるため、適切に電子データで保存するためのシステム・体制を整えなければなりません。

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