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経理部門のDX化とは?進め方や必要性、導入のメリットを解説

  • 電子帳簿保存法

近年注目を集めている“DX”は、企業全体に向けたものだけでなく、経理部門のように特定の部門に対して取り組むこともあります。バックオフィスの一つでもある経理部門は、営業のようなフロントオフィスと違って直接売上に関係する部門ではありませんが、企業を支えるうえで重要な役割を持つため、DXによる効果は大きくなることが期待できるでしょう。

本記事では、経理部門のDX化について具体例やメリット・デメリットを交えながら解説していきます。

経理部門のDX化(経理DX)とは

経理部門のDX化とは、経理業務の効率化を目的に、デジタル技術を活用して経理業務の変革を推進することを言います。

経理部門は、営業部門などと違って対応する業務に対して人材が不足しやすい傾向にあり、慢性的に人材が不足していることが珍しくありません。ですが、経理部門のDX化が進めば、少ない人材でも既存業務に対応できるようになります。

経理部門のDX化が注目される背景

経理部門のDX化が注目される背景として、「2025年の崖」や「電子帳簿保存法の改正」が挙げられます。

まず「2025年の崖」とは、近年様々なデジタル技術が発展し続ける一方で、新しいシステムではなく既存システムを使用し続ける企業が今後も残存していくことによって、2025年以降に最大で年間12兆円の経済損失が発生すると言われている問題のことです。この損失額故にDXが注目されるようになりました。

次に電子帳簿保存法の2022年1月の改正についてです。この改正で大きく変更になったものの1つとしては、電子取引で受け取った書類の紙媒体での保存が禁止され、電子データによる保存が義務付けられたというものがあります。

この改正によって、多くの企業が電子データを保管するためのシステムやツールといったデジタル技術を必要とするようになり、その結果DXが注目されるようになりました。電子帳簿保存法では国税関係書類の電子データ保存について定められているため、経理部門も当事者として対応することが求められています。

経理部門のDX化の必要性

経理部門のDX化は各企業ができる限り優先すべき取り組みの一つと言えます。なぜなら、経理の業務は比較的専門性が高い分野であり、既存の社員に業務が集中して属人化しやすく、引継ぎが容易ではない業務の一つと言えるからです。

企業において、属人化した業務が存在することは、業務効率化や改善を図っていくうえで大きな妨げとなります。そのため、既に属人化傾向にある業務があるのであれば、早急に解決した方が企業のためにもなるでしょう。

DX化を進めれば、属人化した業務であってもデジタル技術によって解消され、さらに、誰でも効率よく業務が行えるようになります。以上のことから、各企業において経理部門のDX化は必要とされています。

DX化できる経理業務の具体例

経理の業務は、大きく3つに分類することができます。DX化を図るのであれば、それぞれの業務について把握しておくことが重要なので、次項で確認しておきましょう。

【3つの経理業務】

  • 債務管理
  • 債権管理
  • 財務会計

デジタル技術によって、これら3つの業務の生産性を向上させたり、業務プロセスの改善により経理変革を起こしたりすることが、経理部門のDXと言えます。

債務管理

債務管理とは、その名の通り自社が抱える“債務”を管理する業務のことです。債務管理で行なう業務としては以下のようなものがあります。

  • 債務の計上
  • 債務の支払予定の管理
  • 納品書や請求書のチェック・仕訳支払処理
  • 支払い後の消込 など

DX化に取り組むことで、これらの業務を効率化できます。基本的には、債務管理システムを活用すれば債務管理プロセスのデジタル化が図れます。

債務管理は自社が抱える債務の支払いまでを管理する業務であるため、不具合やミスが発生すると取引先に迷惑をかけることになります。そのため、企業はDX化を進めることで債務管理の工程をデジタル化し、プロセスの変革に臨むことでミスの削減や効率化を図ることが重要です。

債務管理での、請求書の受取りで発生する業務には、受領はもちろんのこと会計システムへの入力や、受領した請求書のファイリングなどの保管作業があります。これらの業務量は請求書の量が多くなるほど増加するため、その分だけ担当者の負担は大きくなってしまいます。そこで注目されている請求書受領のサービスについては、以下のリンクもぜひ確認してみてください。

債権管理

債権管理は債務管理とは対照的で、取引先から期日までに売掛金が支払われているかどうかを管理したり、債権の残高がどれくらいなのかを把握したりする業務のことを指します。具体的な業務内容は以下の通りです。

  • 債権の計上
  • 請求書に基づいた回収予定の管理
  • 入金管理
  • 入金確認後の消込
  • 回収状況の確認・管理

債権管理は、自社の売上に関する業務内容となっているため、管理漏れ等があると企業に損失が発生します。DXを導入すれば、そういった債権管理で発生するミスを削減できるとともに、回収状況の確認や管理、消込といった業務を効率化することが可能です。

財務会計

財務会計とは、企業の外部(税務署や債権者など)に向けた会計業務のことです。主に自社の財務状況や経営状況を報告するのに必要となる書類を作成します。ここで言う書類とは、決算報告書や財務諸表などのことです。

DXを導入した場合、決算報告書や財務諸表を自動で作成できるようになります。もちろん、各システムとの連携は必要になってきますが、財務会計のデジタル化が進めば、効率よく書類を作成できるプロセスを構築することも可能です。

経理部門のDX化を進めるメリット

DX化は簡単に取り組めるようなものではなく、システムやツールの導入コストがかかったり、導入後のプロセス改善が必要だったりと、行うべき項目がいくつもあります。そのため、経理部門のDX化を検討している方は、DX化を進めることで得られるメリットについて知り、継続して取り組み続ける価値を認識しておくことが大切です。

【経理部門のDX化を進めるメリット】

  • 業務を効率化できる
  • 業務の属人化を防ぐ
  • コスト削減に繋がる
  • 経営状況を可視化できる

DX化によって経理部門の各業務のデジタル化が進めば、既存の業務を効率化できたり、業務標準化による属人化の解消に繋げられたりします。人の手による作業などを削減できるのがデジタル化の強みと言えるので、経理部門の業務に対する効率の悪さや、業務量の多さに悩みを抱えている方は、以下のメリットについて理解しておく必要があると言えるでしょう。

業務を効率化できる

クラウドサービスなど、自動化に繋がるデジタル技術を導入すれば、各業務の効率化が実現します。例えば、債務管理や債権管理は、それぞれのシステムを導入することで、債務・債権計上から支払い・入金管理までをシステム内で完結することが可能です。これにより、業務上の小さなミスの発生抑止や、業務の自動化などが実現し、大幅な効率化が期待できます。

また、財務会計においても、外部に提示する必要がある決算報告書や財務諸表をシステム内で作成することが可能です。これにより、作成の手間を大幅に削減することができ、その分だけ効率化に繋げられます。

業務の属人化を防ぐ

経理業務は専門性の高い業務となっているため、比較的属人化しやすい特徴があります。業務の属人化は、担当者変更や人事異動の障害となるだけでなく、業務効率化の妨げになりますので、企業としてはできる限り解消しておきたい問題の一つと言えるでしょう。

業務の属人化を解消・防止するうえでDX化は非常に効果的な方法の一つと言えます。なぜなら、デジタル技術を導入することで人の手による作業を削減でき、属人化している業務を担当者から切り離すことができるからです。

また、デジタル技術や専用システムを導入すれば、自然と業務の標準化が進み、誰でも業務に取り組めるような環境を構築しやすくなります。もちろん、経理業務は専門性が高いので、デジタル技術やシステムだけでは賄いきれない側面もありますが、それでもシステムで対応できる業務の自動化や標準化は属人化の解消に良い影響を与えることは間違いありません。

コスト削減につながる

経理業務がDX化すれば、デジタル技術やシステムによって、人の手で作業されていた業務を代わりに処理できるようになるため、人的コストを削減することができます。他にも、ペーパーレス化が進むことで印刷コストを削減できます。

DX化を進めるということは、デジタル技術によって業務内に存在するムダな部分を改善していくことでもあるため、コストの削減を意識している企業にとってDX化は効果的な取り組みと言えます。

経営状況を可視化ができる

経理業務をデジタル化することができれば、お金に関する各工程・業務がどんな状況になっているのかを視覚的に把握することができます。例えば、債務状況、債権状況、決算報告書、財務諸表などは、システムを導入すれば全て可視化することが可能です。これらの内容を可視化することができれば、企業内のお金の動きをある程度把握することができるため、それに伴って経営状況を把握することにも繋がるでしょう。

経理部門のDX化を進めるデメリット

経理部門のDX化を進めることで得られるメリットがある一方で、デメリットもあります。DXに取り組むハードルは決して低くないため、デメリットを知ったうえでDX化を進める価値が本当にあるのかを判断することが大切です。

【経理部門のDX化を進めるデメリット】

  • デジタル技術の導入コストがかかる
  • デジタル技術を使いこなすための知識が必要になる

DX化を進めるにあたって必要となるデジタル技術やシステムは、当たり前のことですが費用が掛かります。システムによっては高額なものもあるため、企業の規模によってはかなりの費用が掛かってしまうことも想定されるでしょう。

また、仮に導入コストを許容してシステムを導入したとしても、それらを使いこなせる人材がいなければ最大限活用することができません。人材を入れて対応すべきなのか、それとも比較的に簡単に利用できるシステムを導入すべきかは、企業それぞれの判断に委ねられますが、どちらにせよ必要最低限の知識を持つ人材は必要となります。

経理部門のDX化の進め方

経理部門のDX化を進める価値について知ることが出来たら、実際に進める手順を把握しておきましょう。そうすることで、DX化に取り組む際のイメージが明確になります。

【経理部門のDX化の進め方】

  1. ペーパーレス化を推進する

    まずはデジタル化を進めるにあたって、既存の書類を電子化していくことが必要となる場合もあります。ペーパーレス化を促進する複合機や、BPOサービスなどを活用して紙媒体を電子媒体に変換していきましょう。

  2. 各業務で発生するデータを可視化していく

    経理部門で行うすべての業務を時系列でリストアップし、業務内容やフロー、工数を正しく把握しましょう。データを可視化することによって、各業務における課題が明確になります。

  3. 業務の自動化により標準化を図る

    解決すべき課題に沿って、改善できる業務をシステムやツールなどによって自動化していきましょう。自動化が進めば、一連の経理業務のデジタル化、業務プロセスのデジタル化も結果として実現します。また、業務プロセスのデジタル化は、DX化を図るうえで重要な通過点となります。

デジタル化を進めるうえで手順は非常に重要といえます。なぜなら、いきなりツールやシステムを導入しても大きな効果を感じにくい可能性がありますが、課題を明確にしたうえで、そこからデジタル化を図っていけば効果を感じやすいからです。

経理部門のDX化に活用できるシステムやツール

経理部門のDX化を進めるにあたり、導入するシステムやツールにはどういうものがあるのかを知っておくことが大切です。種類を多く知っているほど、デジタル化する方法の選択肢は広がるので、まずは以下で紹介するシステムやツールを確認しておきましょう。

システム・ツール名 DX化できる
業務の例
概要
クラウド会計システム 債務管理/債権管理/財務会計 さまざまな会計業務をオンラインで実行できるシステム。クラウド型のサービスとなっているため、会計処理に関する改正等があっても、アップデートすれば柔軟に対応していくことができる強みがあります。
ERP
(EnterpriseResourcePlanning)
債務管理/債権管理/財務会計 ERPは、保有するデータを一元管理できるシステム。ERP内の関連データを統合的に管理しておけば、その時点における経営状況の可視化が可能です。
ワークフローシステム 債務管理/債権管理 申請・承認業務をデジタル化するシステムです。申請・承認業務をシステム上で完結することで、対面による承認作業といった非効率な業務が解消されます。
RPAツール 債務管理/債権管理 人の手で行なっていた業務を、ロボットに代替させるツール。業務の手順やルールを記憶させることで、大量のデータを高速処理することができるようになります。
AI-OCR 債務管理/債権管理 OCRという文字認識を行なう機能とAIを組み合わせたツール。紙や画像のテキスト部分を電子化することができます。請求書の読み取りなどに活用したりします。

これら全てのシステムやツールを導入するにはかなりのコストを要するため、それぞれの機能や特徴を把握して、課題や目的に合わせたものを導入することが大切です。

経理部門のDX導入事例

メリットや進め方、システムやツールなどについて把握したら、実際の導入事例を確認して導入時のイメージを明確にしていきましょう。以下は経理部門のDXを導入した企業の事例です。導入コストがかかるDX化を、IT導入補助金の利用によって負担を抑えつつ、会計・販売管理システムを導入した事例です。

企業名/業種 株式会社アイ・ティー・シー/精密機械・家電製品の修理業およびコールセンター運営
導入時に抱えていた課題
  1. 事業部門ごとの収支がリアルタイムで把握できない
  2. 売り上げ予想が立てにくい
  3. 事業部門ごとに使用している販売管理システムが異なる
実際の取り組み内容 IT導入補助金を利用して、最適な会計・販売管理システムを導入。これにより、事業部門間の連携がスムーズになった。また、会計管理項目が明確になり、税理士との確認作業が大幅に減った。
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経理部門のDX化は何からはじめるべき?

経理部門のDX化を始める際、まずは経理業務を「債務管理」「債権管理」「財務会計」の3つに分類して考えます。どれから始めるべきかは、自社がどの業務を改善していきたいかによって変わってくるため、まずは自社が抱える課題を明確にしなくてはいけません。課題が明確になったら、導入するシステムやツール、対応すべき業務について決めていきましょう。

また、別の案として「自社がどんなシステムを導入しているか」といった点を加味するのも一つのアイデアです。課題を中心に考えるのが基本的ではありますが、既に会計システムを導入していたりする場合には、既存システムとの連携が取れるツールを導入すれば、比較的効率よくデジタル化が図れます。

まとめ

DX化は昨今から注目を集めている取り組みの一つで、あらゆる分野で取り組まれています。各分野の企業に共通する部門として経理部門がありますが、経理部門を対象としたDX化についても注目を集めています。

経理部門は、バックオフィスの中でも特に重要な役割を持つ部門で、この部門の効率化等を検討している企業は多いです。経理部門のDX化を進めれば、業務効率化に繋がるのはもちろんのこと、お金の動きをデジタル化することで経営状況を可視化することもできるでしょう。導入コストはかかりますが、経理業務を効率化する様々なシステムやツールがありますので、自社に適したものを選択して効率よくDX化を進めてみてはいかがでしょうか。

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