企業の固定費削減のポイントとは?
削減方法から注意点まで、成功に繋げるポイントを解説!
固定費とは、賃料、水道光熱費、通信費など、一定に発生する費用全般のことです。よって、固定費を削減できれば継続的なコスト削減が実現できることから、経費削減を検討する際にはまず注目したい項目です。
本コラムでは、企業が固定費削減を検討する際の具体的な方法や、実行するにあたって気を付けておきたいポイントなどを解説します。
目次
- 企業の固定費とは
- 企業の変動費とは
- 固定費と変動費にみる経営指標
- メリット(1)売り上げに対する利益の確保
- メリット(2)継続的な効果が見込める
- メリット(3)生産性・業務効率の向上
- 人件費の抑制(時間外労働の削減・アウトソーシング活用)
- オフィス賃料の見直し
- 光熱費の見直し(自由化の活用)
- 車両費の見直し(エコカー、レンタカー、シェアリング)
- ペーパーレス化・電子化の推進
- 現場の理解を促す
- 無理な削減は行わない
- 長期的な視点で取り組む
企業における固定費と変動費の違い
企業活動にかかる費用においても、家計同様、固定費と変動費という考えが用いられます。改めて固定費、変動費とは何かを整理してみましょう。
企業の固定費とは
企業における固定費とは、企業の売上高、販売数量などの変化に影響されず一定に発生する費用のことを指します。主に固定費とされるのは、福利厚生費を含む人権費、地代や賃料、減価償却費、広告宣伝費などです。また水道光熱費や通信費などのように増減はあるものの、毎月一定額発生するような費用についても固定費と考えることができるでしょう。前述の通り、業績の影響を受けないため、固定費を抑えることができればその分企業としての利益が獲得できることになります。こういった理由から、コスト削減を考える際には、まず固定費に注目することをおすすめします。
企業の変動費とは
売上(受注件数・生産量・販売量など)に影響を受けない固定費に対して、売上に比例して増減する費用のことを変動費といいます。主に変動費に分類されるのは、原材料費、仕入れ原価、販売手数料、運送費、外注費などです。一般には固定費とされる人件費も、残業手当や一時採用の派遣社員やアルバイトの給料などは変動費として扱われることもあります。
1,000個売るには1,000個仕入れる必要があるように、変動費は企業活動と連動するため、削減が難しい項目といえるでしょう。そのようなことからもコスト削減は固定費から検討することがおすすめです。
固定費と変動費にみる経営指標
変動費と固定費が把握できると経営指標である「限界利益」および「損益分岐点」が見えてきます。
限界利益とは
限界利益とは、売上高から変動費を差し引いたものを指します。利益と固定費の合計金額のことであり、事業の継続についての指標として利用されています。限界利益の時点で赤字である場合、事業の継続は難しいと言われています。さらには、限界利益率※が25%を超えないビジネスの黒字化は難しいとも言われます。
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※
限界利益率=限界利益÷売上
損益分岐点とは
損益分岐点とは、損もしていなければ利益も出ていないという損益の分岐点を指します。つまり「売上-総費用=0」となるポイントです。黒字赤字の分岐点であり、その時点の売上高を「損益分岐点売上高」といいます。利益を出すためには「損益分岐点売上高」以上の売上を上げる必要があり、そのためにはどのくらい販売数を伸ばす必要があるか、などを検討する指標となります。固定費が高いとグラフでいう損益分岐点が右へと移動することになり、利益を出すためにはより多くの売上を上げる必要が出てくることを示しています。
企業における固定費削減のメリットとは?
固定費削減のメリットについてもう少し具体的に見ていきましょう。
メリット(1)売り上げに対する利益の確保
先述の通り、固定費が高い中で利益を出すためには高い売上を上げる必要があります。それは逆を言えば、固定費を削減することで、売上を伸ばさなくても利益率を高めることができるということでもあります。売上を伸ばすために必要な労力やコストに比べ、固定費削減はローコストで実現性も高い成果につながりやすい方法といえます。
メリット(2)継続的な効果が見込める
固定費は一定に発生する費用のことですから、固定費の削減は継続的な経費削減を意味します。オフィスの賃料をはじめ、売り上げとは関係なく事業を継続するためにかかる費用なので、意識的に削減に取り組むことで長期的に効果を発揮します。
メリット(3) 生産性・業務効率化が図れる
費用削減のためには、ペーパーレス化を進めて保管スペースを削減し賃料を削減する、安価で導入が容易なSaaSサービスを活用する、専門業者に委託するという方法もあります。こういった取り組みはコスト削減だけでなく、業務そのものの生産性の向上や効率化をすすめます。また、その過程で業務が可視化されることで属人化から脱却できるといった効果も期待できます。
企業の固定費削減方法
ここからは、固定費の削減方法について代表的なものをご紹介します。
人件費の抑制(時間外労働の削減・アウトソーシング活用)
多くの場合、固定費の中で最も大きな割合を占めるのは人件費です。時間外労働が発生している場合は、まずその見直しが挙げられます。とはいえギリギリの人数で担当しておりそう簡単に時間外労働の抑制はできない状況であることも多いでしょう。またそれは時間外労働を減らすために新しい人を採用することも難しい状況であることを示しています。
解決策の一つに、アウトソーシングの活用があります。例えば、事務業務などの定型業務をアウトソースすることで業務そのものを減らせるのはもちろん、多くの場合アウトソーサーは特定の業務に長けており、より効率的に業務を遂行します。また、アウトソーシングは変動費として計上でき、固定費の比率を下げることにも繋がります。
オフィス賃料の見直し
テレワーク化が進み、郊外移転や規模縮小といった取り組みを進めることでオフィス賃料を削減する企業も増えています。都心で駅に近いという好立地なオフィスから機能的で臨機応変なオフィスへ、オフィスのあり方自体が見直されていると言えるでしょう。最近では、フレキシブルオフィスと呼ばれる柔軟な契約が可能なサービスも人気です。すでに必要設備・機能を備えたオフィスを事業や従業員数の増減に合わせて小規模短期間から借りられるなど、無駄のないオフィス運営が実現できます。賃料を固定費ではなく変更費化することができるのも魅力です。
光熱費の見直し(自由化の活用)
電気やガスの自由化に伴い多くの企業が新規参入を果たしたことで、安価でありながら大手電力会社と同品質のサービスを受けられる可能性が出てきました。節約だけでは思うようには効果が上がらない光熱費ですが、この自由化を機に改めて自社に適したプランがないか調査してみてはいかがでしょうか。
車両費の見直し(エコカー、レンタカー、シェアリング)
社用車などにかかる車両費の見直しも、固定費削減につながります。車両の保有は固定資産税、自動車税、駐車場代、メンテナンス代などの費用を伴うため企業にとって負担になりやすいと言えます。対策としては、カーシェアリングサービスの活用などが挙げられます。ビジネスのオンライン化も進んでいますので、必要な時に必要なだけというスタイルが適しているかもしれませんね。
ペーパーレス化・電子化の推進
企業が抱える紙文書、どのくらいあると思いますか?文書量を表す単位にfm(ファイルメーター)というものがあります。1fmは書類を平積した場合の高さを示しています。日本の企業では一人当たり3fm~5fmほど抱えていると言われているそうです。ページ数でいうと実に3~5万ページです。保管スペースを考えると大変なコストがかかっていることになります。紙での保存をやめ電子データで保存する、そもそも紙に出力しない方法でやり取りするなどペーパーレス化を進めることで、業務の効率化を図るとともに、印刷・発送にかかる費用や印紙代などが節約できるほか、保存スペース自体が不要となることでオフィススペースの縮小にも貢献することから企業の固定費削減につながります。
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固定費削減を実施する際の注意点
現場の理解を促す
社内における固定費削減を実行する中で、特に気を付けていただきたいのが、既存の仕組みや環境の変更を伴う場合です。現場に負担を強いることになると反感を持たれてしまう可能性があるからです。特に従業員の労働環境の質低下につながる恐れがある場合は、十分な説明と理解を求める工夫が必要となります。現場の事情を考慮しないルールをやみくもに実行し、従業員のモチベーションを低下させてしまうことがないよう注意が必要です。
無理な削減は行わない
事業における費用の削減についてはより慎重に進めたいところです。無理な削減はサービスの低下などにつながる可能性もあり、場合によってはお客さまの満足度を低下させる恐れがあります。コスト削減という目的ばかりが先行し、デメリットを見失うことがないよう、判断軸をもって臨むことが大切です。そのためにも、事業における価値基準が明確になっていることが望ましいですね。
長期的な視点で取り組む
固定費は事業を支える費用でもあるので、簡単に削れない、質を下げられないものも多く、必ずしも短期間で成果につながるものではありません。長期的な視点を持って取り組みたい施策です。またそのためには、前述のとおり現場の理解と協力が欠かせません。目的、目標を共有し、組織で一丸となって取り組むという土壌作りも大切です。
まとめ
安定した企業経営を目指す上で「固定費削減」は多くのメリットをもたらす、欠かせない取り組みと言えます。しかしながら経費削減の進め方を誤ると、従業員の不満やお客さまの満足度低下を招き、かえって経営に悪影響を与える可能性もあります。企業における価値基準を明確にし、時代の変化にも上手に適応しながらベストな選択をしたいものですね。
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