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アジリティとは?
ビジネスにおける重要性と企業で取り組みたい4つの高め方

  • 働き方改革
  • 生産性向上
  • 組織活性・人材育成

新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延、自然災害など予測不可能な事象が次々に起こり、今や数か月先の未来を見通すことさえ困難な時代です。そんな激動の最中にあるいま、企業が不確実要素の多い環境に適応し安定した企業運営を持続するために備えるべき力として「アジリティ」が注目されています。
本コラムでは、アジリティという言葉が指すもの、アジリティの高い企業や組織の特徴、アジリティを高めるために企業が取り組むべき4つの方策について解説します。

目次

  • VUCA時代

(1)ビジョンや価値観を共有できている
(2)情報収集、状況把握に長けている
(3)コミュニケーションが円滑である
(4)柔軟な発想で変化に適応できる
(5)リスクへの対処も検討されている

(1)経営理念やビジョンの浸透を図る
(2)現場に裁量を持たせる
(3)コミュニケーション環境の整備
(4)業務環境、業務プロセスの改善

アジリティとは?

「アジリティ」には機敏さ・素早さ・敏捷性という意味があります。サッカーやバスケットボールなどスポーツの分野でよく用いられますが、単に選手の動きの速さを指すのではなく「ボールの場所や仲間・相手チームの動きを把握して自分がどう動くべきかを判断し、素早く状況に対応する力」を言います。

ビジネスシーンにおけるアジリティの概念もこれとよく似ています。企業経営や組織運営において、事業環境を取り巻く情勢の劇的な変化を捉え、柔軟かつ機敏に対応する力をアジリティと呼びます。具体的な例を挙げると、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うリモートワークへの移行、サービスのオンライン化、また、対面型ビジネスや接客業における事業モデルの大幅なシフトチェンジが「アジリティの高い行動」に当たります。

アジリティが注目される理由や背景

ビジネスにおいていまアジリティが注目される理由は何でしょうか?

VUCA時代

VUCA(ブーカ)とはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(不透明性)の頭文字を取った言葉で、「これから何が起きるか予測がつかない」「先行きの見通しが困難」「問題が複雑化している」など、昨今の社会情勢を指して「VUCA時代」と呼びます。

AI・IoTなどの技術革新やグローバル化の進展から、企業を取り巻く環境は年々加速度的に変化を続け、また世界各地で発生する災害やパンデミック、紛争の勃発など対応すべき課題も広範化・複雑化する一方です。今日の常識が明日には通用しなくなるかもしれない。そんな不確実性・不透明性の高い現代に生きる企業や組織にとって、アジリティを高めることが存続につながると言っても過言ではありません。

アジリティが高いことがもたらすメリット

アジリティの高さは、企業にはどのようなメリットをもたらすのでしょうか。

変化に素早く対応し生き残れる企業となる

潮流の変化に合わせて素早く柔軟に対応できる会社は、VUCA時代を生き抜くポテンシャルを備えているといえます。コロナ禍においてはあらゆる業界で対面接触が制限されましたが、従来のやり方にこだわらず、サービスの提供や働き方をいち早く切り替えたことでビジネスチャンスを広げた企業もありました。

優秀な人材が集まる

アジリティの高い企業には自律的に行動できる優秀な人材が集まります。求職者は説明会や面接を通して、企業が時代の流れに柔軟に対応し、持続的な発展・成長が望めるかどうかを判断しています。旧態依然のやり方や慣例を重んじ、変化に対応できない企業は今後人材の確保が困難になるでしょう。

アジリティが低いことで懸念されるリスク

アジリティが低い企業で懸念されるリスクとは何でしょうか。

ビジネスチャンスを逃してしまう

アジリティが低いとは「判断や行動のスピードが遅い」ということと同義です。企業の意思決定やアクションのスピードが遅れると、獲得できたはずのビジネスチャンスを他社に奪われることにもなりかねません。

変化に適応できず会社の存続が危うくなる

VUCA時代の企業には、これまで経験したことがない新しい変化にも対応できる能力が必要です。情勢に適応できず、変化の潮流についていけないと市場に取り残され、会社の存続自体を危うくするリスクがあります。

クイックネス(俊敏性)との違い

クイックネス(俊敏性)とは反応の速度が速いことをいい、アジリティ(機敏さ)とよく似ているようですが意味は少し異なります。

クイックネスが「どれだけ素早く動けるか」「どれだけ早く反応できるか」と純粋なスピード能力を指すのに対して、アジリティとは「数多ある選択肢の中から適切なものを選び素早く行動に移す」「状況に合わせて即座に的確な判断を下し自律的に行動する」ことをいいます。
俊敏性に加えて「的確な判断」「自律的な行動」を兼ね備えたものがアジリティです。

アジリティの高い企業・組織とは?5つの特徴

アジリティの高い企業や組織が備えている5つの特徴とは何でしょうか。

(1)ビジョンや価値観を共有できている

不測の事態に直面した時、どの方向に進むべきか、そのような姿を目指すべきか、その指針を全社で共有できていれば、従業員各々がそれを基準に判断し能動的に動くことが可能になります。アジリティの高い企業は従業員一人ひとりのアジリティも高いと言えます。

ビジョンや価値観の共有において、お手本とすべき企業にザ・リッツ・カールトン・ホテルが挙げられます。世界最高峰のラグジュアリーホテルとして知られるザ・リッツ・カールトン・ホテルの企業理念は「ゴールド・スタンダード」と呼ばれており、これをまとめた「クレドカード」はすべての従業員に携行が義務付けられています。従業員が迷ったときやトラブルに直面した際、このゴールド・スタンダードが指針となることで、従業員は自らの判断に自信を持って行動することができます。ザ・リッツ・カールトン・ホテルではゴールド・スタンダードについて入社後のオリエンテーションで説明をしたり出勤時に読み合わせを行ったりと、常に企業理念に触れる機会を設けています。

(2)情報収集、状況把握に長けている

変化へ素早く適応できる企業は自社がどのような状況にあるか、情報収集をし把握する力に長けています。
企業や組織の内外で起こる出来事や最新の情報、市場の動向に高くアンテナを張って情報を収集し、客観的な視点で分析し進むべき方向を判断します。また、アジリティの高い企業は従業員一人ひとりの情報感度も高く、社内での情報共有も徹底されています。

(3)コミュニケーションが円滑である

アジリティの高い企業は従業員同士のコミュニケーションを大切にします。
円滑なコミュニケーションにより情報共有がスムーズに行われるため課題への対応が早く、知恵やノウハウの共有も進んでいることから解決策が生まれやすい基盤も有しています。
また、ボトムアップの社風があることも特徴の一つです。問題が発生してから従業員が指示を仰いで対応するのでは遅いため、経営層は現場の主体性を重んじ、従業員の声が届きやすい風通しの良い環境を社内に構築しています。

(4)柔軟な発想で変化に適応できる

常識に捉われず、変化を受け入れていく柔軟性を備えていることもアジリティの高い企業の性質です。
柔軟な発想を持つ企業でなくては、過去に類をみないほどの急激な変化や複雑な経営課題には対応できません。ときには前例のないことにも挑戦し、企業の事業や体制が180℃転換するような判断が必要な場面もあるでしょう。

(5)リスクへの対処も検討されている

アジリティの高い企業ではリスクへの対処法が予め共有されており、有事の際にも素早く問題解決を図れます。
問題やトラブルが発生してから対処法を考えるのではなく、普段から経営においてどのようなリスクや脅威が存在するのか、規模や発生の確率、またその回避法や損失を最小限に抑えるための対応策についても検討されています。

企業のアジリティを高めるには?取り組みたい4つのこと

企業が組織レベルでアジリティを高めるために取り組みたい4つの方策を紹介します。

(1)経営理念やビジョンの浸透を図る

全社の従業員に深く経営理念やビジョンを浸透させることで、組織として素早く適切に判断し行動に移すことが可能になります。判断や行動のスピードを重んじるばかりで経営理念やビジョンがきちんと理解されていないと、誤った判断や対応の遅れにつながります。

理念浸透の手法において手本となるのが世界中に店舗を展開するコーヒーチェーン「スターバックス」です。スターバックスは1990年にミッションステートメント(経営理念)を定め、その浸透に力を入れてきました。
その取り組みとして有名なものが「グリーンブックエプロンカード」です。
これは、従業員が日常的にお互いを観察し合い、行動指針に沿った行動やサービスを提供できている従業員がいればそれをカードに書いて渡し、互いに賞賛しあうという取り組みです。
これによって、従業員一人ひとりが常に会社の経営理念やビジョンを意識して行動でき、組織全体のアジリティの高まりにつながっています。

(2)現場に裁量を持たせる

現場の裁量が狭い範囲に限定されていると、気づきや変化、問題があった際に従業員が自らの判断で行動できず対処のスピードが遅れてしまいます。また、常に上長の指示を待つばかりでは、従業員自身の判断力を養うこともできません。

先の例でも取り上げたザ・リッツ・カールトン・ホテルでは各従業員に2,000ドルの決済権を与えています。これにより従業員は2,000ドルの裁量の範囲でなら、上長への判断を仰がずとも顧客へのホスピタリティを自発的に考え、自らの責任においてサービスを提供できます。

現場への裁量移譲は、組織としての機動力を保つだけではなく、従業員が自分の判断でさまざまな仕事に挑戦し、やりがいや成長機会の創出にもつながるでしょう。

(3)コミュニケーション環境の整備

ビジネス向けのコミュニケーションツールを導入することで社内全体のコミュニケーションの円滑化を図れ、情報共有も効率的に行えます。
オフィスにいなくても従業員同士がやり取りできれば、業務報告や会議参加のためにかかる時間を短縮でき、組織全体の機敏性が増します。

Google社では全世界の社員6万人を対象に、週に一度全員を映像で繋いだ全社ミーティングを行います。これにより全社の社員は会社の決定事項や変更点、製品の開発状況など多くの情報に一度に触れることができます。ミーティングには社員だけではなく創業者や本社の経営層も参加し、自らの言葉で社員に語りかけるほか、経営層に対して社員が直接質問できる場面も用意されているため、双方向のコミュニケーションも可能です。

トップダウンではなく、情報を積極的に開示しフラットに共有、交換することが組織の機動力と判断力強化を実現します。

(4)業務環境、業務プロセスの改善

業務工程をすべて洗い出し、環境変化に対応しやすい業務プロセスになっているか、迅速に判断・行動しやすい業務環境になっているかといった視点で見直しを行います。
業務の無駄や非効率な作業をITツールの導入やアウトソーシングサービスの活用により効率化すれば、従業員はコア業務に専念できるようになります。情報共有や申請・承認、行動にかかる時間もずっと短縮され、機動力の高い組織となります。

まとめ

事業を巡る環境がより複雑化、不透明化する現代において企業にとってアジリティは、競争力強化・事業存続のために必須のスキルと言えます。そして、組織全体のアジリティを高めるためには経営層だけではなく従業員一人ひとりのアジリティを高める施策や、業務全体の見直しも必要であることが分かります。

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