第1回 準備篇EOSムービー商品化プロジェクト
動画のプロがつくった簡単カリキュラムで、お客さまに喜ばれる動画づくりが学べる新コンテンツ「動画のチカラを、店の魅力に。~EOSムービー商品化プロジェクト~」がスタート。
第1回は動画撮影の機材や基礎を学ぶ「準備篇」です。
さあ、第1回準備篇、スタート!
Step1 静止画と動画の違いとは?
静止画は「瞬間」を切りとるもの。
動画は「過程」を切りとってストーリーを描くもの。その違いを意識してください。
小野寺:「動画の力をお店の魅力に」って、私どもにとって、ちょっとプレッシャーがかかるタイトルなんですけど(笑)。皆さんと一緒に商品化まで取り組んでいきたいと思います。第1回の今日は、動画撮影のための準備や基礎知識についてお話したいと思います。よろしくお願いいたします。
相磯、岩塚、加藤:よろしくお願いします。
小野寺:まず最初に、動画と静止画の違いについて考えていきたいと思います。ふだん皆さんが、お子さんを撮影する時に大事にしていることって何ですか?
加藤:一瞬一瞬の、いい表情を撮る。
相磯:お子さんやご家族と一体になるような雰囲気をつくる。
岩塚:作った笑顔じゃなくて、素の表情を撮ることでしょうか。
小野寺:私や間島は、結婚式を撮影していますが、すごく「ストーリー」を大事にするんですね。たとえば、お父さんがウェディングドレスを着た娘を初めて見る瞬間があります。待っている間は、緊張して落ち着かない。でもきれいになった娘を見ると、喜びや寂しさがないまぜになって表情がみるみる変わっていく。私たちは、そのプロセスを捉えていきます。静止画は瞬間を切りとるのに対し、動画は過程を切り取ってストーリーを描いていくもの。これを覚えておいてください。
Step2 撮影シーンに合わせた機材を使おう
撮影するシーンや被写体に合わせて、機材を使い分けることで、多彩なムービーを撮影できます。
小野寺:次は動画を撮るときに必要な機材についてご説明します。
機材はこれだけあれば、一応フルセットという感じです。カメラを2台用意しているのは、「トラブル時のバックアップ」と「レンズや周辺機材を組み合わせて使い分ける」ためです。
機材の組み合わせはいろいろなパターンが考えられます。たとえば、1台のカメラはレールか一脚で。こちらは標準レンズか望遠レンズを使用。もう1台のカメラは広角レンズとスタビライザー。
使い分けるうえで覚えておいてほしいポイントは、「カメラをいかにスピーディに付け替えられるか」ということです。
間島:たとえば、最初にカメラを三脚に固定したレールに付けて、お子さんの様子を撮っていたとします。そこで急にお子さんがカメラに背を向けて遊びだした。回り込んで表情を撮りに行きたいところです。レールごと持って移動することもできるんですけど。ちょっと試しに持ってもらってもいいですか。
岩塚:うっ。結構、重いですね。
小野寺:そうなんです。しかもレールの場合は高さの調整もちょっと面倒。ですから、動いているお子さんの表情を狙うときには、一脚に付け替えて撮ります。ただ通常は簡単に付け替えはできません。ここで便利なのが「クイックシュー」です。カメラと雲台にクイックシューを取り付けておけば、レールから一脚へ、一脚からレールへと“カチャッ”と簡単に付け替えられます。みなさんも助けられることがあると思いますので、ぜひ活用してください。
スタビライザーやレールの使い方は次回の「撮影を学ぶ」でご説明します。
間島:カメラ本体だけでも音は録れるんですが、お客さまのコメントやメッセージを録る場合には、こうしたマイクが必要になります。音をきれいに拾っちゃうので、声は静かなところで録るようにしてください。
またSDカードは32ギガは欲しいですね。で、転送速度の速いものをおすすめします。
Step3 映像の質感にこだわろう
フレームレートの設定でトーンが変わる。
今回は映画のような質感で撮れる24pに。
間島:次は動画撮影時の設定についてお話しします。ここで大事なのが、動画の記録サイズです。今回は、画像サイズは「1920×1080」、フレームレートは「24fps」、圧縮方式は高圧縮の「IPB」に設定します。
画像サイズ「1920×1080」というのはフルハイビジョン画質、画面の縦横比は16対9、テレビのサイズですね。
フレームレートの「24fps」は、一般に24pと言うんですけれども、これは1秒間に24枚の静止画で動画を作るという意味で、映画と同じ設定です。今回は映画のような質感で撮りたいと思いますので24pに設定します。
小野寺:他には30pとか60pとかがありますので、自分で撮ってみて好きな質感を見つけてほしいなと思います。
間島:圧縮方式は高圧縮の「IPB」に対し、低圧縮の「ALL-I」というのがありますが、動画って容量がすごい大きいんですよ。今回はスタジオでいろいろなシーンを撮ると思いますので高圧縮でやっていきます。
小野寺:また、写真はその都度シャッタースピードを変えますが、スタジオでの動画撮影では1/50秒に固定してください。理由は、蛍光灯によるフリッカーを防止するためです。あれがずっと出てる状態だと気持ち悪い映像になってしまうので、1/50秒か1/100秒にしてください※。
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※
関西圏は電源周波数が60Hzのため1/60秒に設定。
ここがポイント!
Step4 「カット割り」でストーリー性を出そう
一連の動きを、違うアングルや違う構図で撮る。
「カット割り」によってストーリーが生まれます。
小野寺:動画カメラマンになると一生ついて回る言葉があります。それが「カット割り」です。カット割りとは、一つの動きや流れに対して、違う構図とかアングルで撮ってつなぐことを言います。
これ、実は皆さんがお店でアルバムの構成を考える場合にも同じことを行っています。たとえば、お子さんがシャボン玉で遊んでいる写真を撮ったとします。アルバムの1ページ目には状況がわかる引きのショットを持ってきます。2頁目には、お子さんの顔の表情だったり、膨らんでいるシャボン玉だったり、寄りの絵をもってくると思うんですね。シャボン玉を吹くという一つの動きに対して、引きと寄りでアルバムを構成する。これが実は動画でいう「カット割り」と同じことなんです。次は実際の映像でご説明しますね。
小野寺:ご新婦様が入場して、お父さんがご新郎様に引き渡す。その一連の流れを、前から、横からとカットを割ってつないでいます。
加藤:こういうのは全部、一人で走り回って撮るんですか。
間島:二人の場合もありますが、一人で撮ることが多いですね。手元の寄りとかはリハーサルで撮っておくんです。周りを映さないようにして。
相磯、岩塚、加藤:へえ~。
小野寺:こうしたカット割りでストーリーを構成するわけですが、カット割りによって「見どころ」を演出することもできます。さきほどの映像でいえば切ないお父さんの表情。あのカットが生きていると思うんですが、これもつなぎ方で映像にメリハリをもたせながら「ここを見てほしい」というところを意図的につくりだしています。カット割りは、動画撮影の醍醐味だと思ってください。
加藤:カット割りは撮る前に考えてるのか、撮りながら考えてるのか、編集するときに考えてるのか。
小野寺:それを言ってしまうなら全部です。特に現場をコントロールできないブライダルは、臨機応変に対応する必要があります。
相磯:そうなんですね。
小野寺:ただ慣れてない段階では、その場で考えて撮るということはできない。事前に考えて決めて、どう撮るかをシミュレーションして撮影してください。そのうえで編集を経験すると、こう撮ったら上手くつながるなとか、編集しやすいなというのがわかってきます。するとカット割りの仕方も自然とレベルアップしていくと思います。
ここがポイント!
Step5 「アクション&リアクション」で流れをつくろう
ひとつの「アクション」を撮ったら、それを活かす「リアクション」を撮る。
2つ以上のカットで映像に連続性が生まれます。
間島:動画を撮るときに、つねに意識してほしいポイントが2つありまして。その1つが「アクションとリアクション」です。たとえば、すごく良い表情で遊んでいるお子さんがいたとします。そのアクションを撮るだけでは映像は成り立ちません。お子さんを見て笑っているパパとママのリアクションを撮って、その次に入れてあげる。アクションがあり、リアクションがあることで、映像に連続性が生まれ、ストーリーを描くことができます。
これは準備が終わった新郎さんを描いたシーンです。準備が終わったよというのを表すのに、出てきた新郎さんに対してそれを見た友達のリアクションが大事なんですね。「お前なんかいつもと違うじゃん」とか言ってる。さらにその友達を見た新郎さんの反応がある。アクション、リアクション、リアクションでつなぐことで、そこにいる人の心の動きを描いてます。
ここがポイント!
Step6 「フォーカス」で想像力をかき立てよう
フォーカスをあやつることで、見ている人の視線をコントロールできます。
間島:1枚の画のなかで、ピントを変えて見せる。動画だからできることですが、これを活用することで視聴者の視点をコントロールすることできます。たとえば、ワンカットで子供が遊んでいて手前にお父さんの背中があるとします。最初はお子さんにピントがあっていて、周囲はボケている。そこから、じわじわフォーカスをお父さんに合わせる。そうすると、見ている人はお父さんの気持ちになるんですね。フォーカスをあやつることで、見ている人の視線と気持ちをコントロールできるわけです。
これは新郎新婦が退場するシーン。その二人を見送るお母さんが思いっきり手を振るんですよ。見る人の目線も気持ちも、もう新郎新婦ではなくお母さんのほうに行っています。お母さんの表情が映らなくても「たぶん笑顔なんだろうな」って想像できるわけです。
ここがポイント!
うちのスタジオでも希望されたお客さまに動画を付けて提供させていただいてるんですけど、撮影の雰囲気をカメラマンと一緒に撮っているというだけなので、ストーリー性を持って撮ることが大切なんだなというのは実感ました。ちょっとした工夫で、これまでと違う動画になるんじゃないかなと思いました。
同じシーンも撮り方次第でいろいろ変わるんだなということがわかって、これから撮るのが楽しみになりました。お誕生日や七五三でお子さんが主役の写真撮影が多いですけれど、一緒に来られたお父様お母様や、おじいちゃまおばあちゃまが楽しんでいただいている様子をムービーとして残していけたら喜ばれるんじゃないかと思いました。
そうですね。ほんと動画はまったくの未経験だったので、私でもできるかなという不安な気持ちで来たんですが、いまはすごく「やってみたいな」と。はい。私がいる店舗が赤ちゃん専門のスタジオでして、new bornの撮影もすごい積極的に行なっているんですね。なので、たとえばお父さんの抱っこが慣れていないところとか、写真では捉えきれていないところも、動画なら表現できるのかなって思いました。