イベント利用からスタジオ利用まで、PTZ運用の最適解?
PTZの共通課題を打ち破るキヤノン「RC-IP300」実機レビュー
PTZの共通課題を打ち破るキヤノン「RC-IP300」実機レビュー
概要
近年、放送局、ライブエンタメ、教育機関、そして企業のイベントスペースやスタジオなど、あらゆる業界でリモートカメラ(PTZカメラ)の導入が進んでいます。
しかし、現場のオペレーターさんやシステム構築を担うSIerの皆様は、PTZカメラ特有の以下のような課題に直面していないでしょうか?
- IP管理や初期設定のためだけにPCを用意し、設定画面とにらめっこしなければならない
- 複数台運用時、ボタンの番号だけでは今どのカメラを操作しているか直感的に分かりづらく、スイッチングミスが怖い
- コントローラーが大きく、卓上のスペースを圧迫してしまう
- 操作のレスポンスやジョイスティックの『引っかかり』にストレスを感じる
今回、制作の現場、自社スタジオでキヤノンの新型PTZコントローラー「RC-IP300」を実機テストした結果、これらの悩みを解決し、さまざまな用途で「新定番」となりうるPTZコントローラーであることがわかりました。
本記事では、実際の運用ベースで感じた本機のメリットを、現場のリアルな声とともに深掘りして解説していきます。
1.PCレスが現場を救う。圧倒的な「設営・準備」の時短

PTZカメラを運用する上で現場やスタジオ設営で最も時間を奪われるネットワーク設定やIP管理の煩雑さが、RC-IP300によって劇的に解消されます。
IPv6による一発検索・接続
セグメントが異なる環境下でも、カメラ固有のMACアドレスをベースにしたIPv6での検索機能により、同一ネットワーク上のカメラを拾い上げ、接続することが可能です。
PCレスでの一元管理
カメラの初期設定やナンバリングの振り分けなど、これまでPCが必須だった作業がコントローラー単体で完結。

USBメモリーによる設定の設定の書き出しと個別読み込み
USBメモリーを使用し、本体のネットワーク設定は残したまま特定の撮影設定だけを読み込み、初期化することができます。
これは、設定が丸ごとリセットされると困るレンタル機材や複数のチームで共有しての運用において、極めて実用的でありがたい機能です。
2.ミスを防ぎ、直感操作を極めた「IP映像表示パネル」

本機に触れて最も感動したのが、3.5型のタッチパネルにカメラのIP映像を直接表示する機能

マルチビュー表示
2×2や3×3のレイアウトで映像を表示でき、PCモニターや外部ディスプレイなしで対象カメラを視覚的に把握できます。実はそこまで高解像度ではないらしいのですが、パネルサイズに対して十分な精細さがあり、粗さは全く気になりませんでした。
外部モニターレスでの運用の可能性
4台もしくは9台分のカメラ映像をコントローラーの3.5型画面上で分割確認でき、イベントの現場ではよくあるカメラは準備できたけどもスイッチャーがまだな状態や、スイッチャー担当と兼用のマルチビュー画面では若干遠くて見えづらい等、この3.5型のサイズでもIP表示ができる恩恵は計り知れません。
タッチパネルの恩恵

表示だけでもかなりなアドバンテージですが、画面をタッチしてのAF制御やクロップ制御ができるのも少人数でのオペレーションでもかなり安心感を与えてくれます。
弊社でも今まではPCを用意して別途AFの確認をしておりました。
サムネイル付きプリセット

登録したプリセットがサムネイル画像付きで表示されるため、「1番のカメラの、あの画角」と視覚的に紐付けられ、オペレーターの押し間違い(ヒューマンエラー)を未然に防げるのも嬉しいポイント。
操作のレスポンス向上
タッチパネル、各種ボタンのレスポンスがかなりよくなっている印象です。
RC-IP100はタッチや押下してから0.3~0.5秒ほどの反応時間を要するイメージでしたが、RC-IP300になってからは最新スマートフォンのようにサクサクと切り替わってくれます。
また、ネットワークの構成にもよると思われますが、旧機種を含むさまざまなコントローラーで感じられた操作時の遅延感が解消され、新しいジョイスティックのおかげか違和感なく操作できる印象でした。
3.プロの表現力と安心を担保する「洗練されたハードウエア設計」
長時間機材に触れるオペレーターにとって、インターフェースの心地よさは映像のクオリティに直結します。
ジョイスティックの進化

純粋なパン・チルト操作に特化し、旧来の機構で感じがちだった「軸の引っかかり感」が排除されているように感じました。
特に対談系や登壇イベントが主な弊社のオペレーションでは、パン方向へのダイナミックな動かし方とチルトでの微細な調整が求められるのですが、どちらも滑らかなカメラワークが可能でした。逆に言うと今までのジョイスティックのひねりでズームイン・アウトをされていた方は若干慣れが必要ですが、意外とすぐに慣れるものでした。
表現の幅を広げる「スピードノブ」

ジョイスティックの倒し角を変えずに、専用のスピード調整ノブで動く速度を無段階に変更できます。これにより「最初はゆっくり、途中から速く」といったDJのような直感的なカメラワークが可能になり、操作の言語化や再現性の確保に大きく貢献します。
一括コントロールによる点検の効率化

弊社ではスタジオの保守点検等も行うのですがその際に、一つひとつのカメラの動作チェックを行っておりました。しかし今回の複数カメラをグループ化し、一斉に動かすことが可能なったことで、点検時に「1台だけ挙動がおかしい」といった異常を即座に視覚化・検知できます。また、一括での電源オン・オフにも対応し、締作業もスムーズに行うことができそうです。
フルオートとAGCへの即時アクセス

設営に手間取り、カメラ設定を細かく追い込む余裕がない仮設現場でも、クイックにAGC(オートゲインコントロール)やFULL AUTOを呼び起こし、即座に「とりあえず使える絵」をつくることができます。
4.現場のレイアウトを革新する「拡張性と省スペース」
Stream Deckとのダイレクト連携

USB端子にStream Deckを接続するだけで、面倒な設定レスで即座に連携が可能です。
これにより、スイッチャー担当がStream Deckでプリセットを呼び出し、カメラオペレーターがRC-IP300で微調整を行うといった、ポジションを跨いだスムーズな分業も実現します。

実際の制作現場で見えた一つの正解運用パターン
普段ご一緒しているオペレーターさんに使用してもらったところ、STREAM DECKをカメラ選択用に、コントローラーをプリセット叩きとして配置することで左手でボタン操作をしつつ、ジョイスティックからは手を離さない運用ができる一つの最適解が見えてきました。
考えられたコンパクトさ


RC-IP100やRC-IP1000と比較するとサイズ自体が小さくはなっているものの、操作感は失われず、すごく自然なポジショニングができるような感覚なので、すごく使いやすく感じました。
実際に手を添えた写真をご覧いただくと非常にコンパクトなのがわかるとおもいますが、ただコンパクトなだけではなく、手をおいたときに必要な部分に違和感なく操作ができるボタンやノブ、ジョイスティックの配置になっている印象、制作現場で普段はカムコーダーのオペレーションをメインでお願いしているオペレーターさんにも利用してもらったところすぐに使いこなされていました。
PoE対応

PoE対応:PoE(Power over Ethernet)給電に対応しているため、かさばるACアダプターが不要になります。
CanonのPTZカメラ、CR-Nシリーズも同じくPoEに対応しているため、PoEハブやインジェクタを用いてカメラと同様に配線がスッキリするため、限られた卓上のスペースを有効活用できるだけでなく、ご導入いただくクライアントに「大掛かりで難しそう」という威圧感を与えずにスマートな設営が可能です。

【総括】これからのPTZコントローラーは「これでいい」ではなく「これがいい」
RC-IP300は、キヤノンオンラインショップ参考価格 320,000円(税抜/税込 352,000円)という導入しやすい価格設定でありながら、上位機種RC-IP1000に迫る多機能性と、現場の痒い所に手が届く細やかなインターフェースの作り込みが光る「超上位互換」とも言える一台です。
深い階層のメニューに入り込めば細かな設定の追い込みも可能でありながら、表面の操作は極めて直感的。映像制作のクオリティを底上げしつつ、運用のハードルと設営のストレスを劇的に下げる本機は、放送から企業配信、常設スタジオまで、今後のリモートカメラ運用において間違いなくベンチマークとなるでしょう。
機材更新や新規スタジオ構築をご検討の制作会社様・SIer様には、自信を持っておすすめできる製品です。
【執筆者プロフィール】 神 颯斗(AMP合同会社 代表社員)
B2B映像制作・スタジオ設計施工を専門とする制作会社の代表。
通信・IT・医療機器など複数業界の大手企業向けに、ウェビナー・ハイブリッドイベント・社内スタジオ構築を年間多数手掛ける。PTZカメラの導入選定から現場運用まで携わる実務家の視点でレビューをお届けする。