揺らぐ和紙、光を透かして写し出される文字。この作品は2018年2月にオランダ アムステルダムで発表した「In Praise of Shadows」。繊細な和紙を切り抜いて作られたポスターの背面から当てた光の透過によって文字のプロポーションを浮きあがらせるインスタレーションプロジェクトだ。セイタロウデザインはアートディレクションを軸に、グラフィック・Web・プロダクト・インスタレーション・建築・映像と多様なジャンルのデザイン、ブランディングを手がけるデザイン事務所。海外ギャラリーから展示の詳細を求められていたが、刹那的に変化を繰り返す、重なり合う紙のスペースや、音楽、香りといった五感を通じて表現している作品のため、展示の空気感を伝えるムービーを制作した。
ムービー撮影は8年間、同社の実績と個人作品をスチルで撮影してきたフォトグラファーの川内章弘さんが担当。EOS C200で撮影している。撮影からカラーグレーディング、編集まで一人で行い、繊細で美しいインスタレーションの世界観を再現している。
Dir+P+ED=川内章弘
かわうち・あきひろ
フォトグラファー 武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科卒業。
エディトリアルデザイナー、スタジオアシスタントを経て広告写真家、
BEAM×10佐藤孝仁氏に師事。2011年独立。
akihirokawauchi.com
─ 暗所の設定が多い現場ですが、EOS C200でどのように撮影したのでしょうか。
川内:今回はインスタレーション作品を映像で表現するのが狙いです。3枚の和紙を重ね、切り抜かれた文字のある中央の紙に60wの光を当てることで文字が浮かび上がり、紙がたゆむことで墨っぽい滲みを表現しています。暗い部屋の中で作品に光を当て、地明かりしかないシーンをどう撮るかが課題でした。そこで、撮影前にEOS C200の製品情報を確認し、ISO800~ISO1600までの範囲でCanon Log 3で収録しました。カラーグレーディングはEOS C200のRAWに対応しているDaVinci Resolve 15で行いました。暗部のノイズが出やすい部分を持ち上げましたが、紙の質感や色などの再現性に関してはまったく問題ありませんでした。
DaVinci Resolve 15でカラーグレーディングを行なった。15ではEOS C200のRAWグレーディングの幅が広がった。
─ 川内さんはEOS C300 Mark IIなどさまざまなカメラで映像を撮っています。EOS C200を使った印象を教えてください。
川内:EOS C200は一脚で扱える重さで撮り回しがいいですね。現場ではAFが効くのが助かりました。また容量が軽いRAWなので、ノートPC1台でカラーグレーディングや編集もできる。ワンマンオペレーションの現場では最適のカメラだと思います。
─ EOS C200の内部収録が可能なRAWは扱いやすかったですか。
現場ではタッチパネルで設定できるのが重宝したそうだ。
川内:コントラストの調整が難しいのでレンジが広くて階調表現ができる4K RAWを選択できたのはありがたかったです。ドキュメンタリー形式の撮影はワンカットごとに設定を詰められない現場も多いです。RAWがあればクオリティを変えない範囲である程度の誤差を調整できる利点があります。RAWは写真を現像する感覚でムービーも扱えるし、トーンを変えられる自由度もあります。スチルの時もRAWをいじって表現してきたので、RAWが使えるというのはフォトグラファーとしては魅力的です。RAWと言えばデータ量がネックになりますが、EOS C200のCinema RAW Lightは通常のRAWと比べて1/3~1/5の容量なので扱いやすいですし、CFastカードにカメラ内で収録できるのもいいですね。
─ EOS C200でこれから撮ってみたいシチュエーションがあるそうですね。
川内:低感度が拡張で100まで下げられるので、その設定に興味があります。それとNDフィルターも内蔵しているので日中に開放設定で撮影してみたいですね。