島根県松江市の山陰ケーブルビジョン マーブル30周年記念ドラマ『「質実剛健」~生きざま~』は、島根で愛されている松江開府の祖・堀尾吉晴と、戦国時代の尼子氏に仕えた武将・山中鹿介を主人公にした作品だ。島根出身の錦織良成監督に依頼。同監督の映画「たたら侍」に出演した小林直己(EXILE/三代目J Soul Brothers)が山中鹿介を演じる。ノーライトやロウソクなど、照明を極力使用しない撮影を実現するために、カメラマンの尾道幸治さんと相談し、低照度に強いEOS C700で行なっている。全編4K(Canon Log 3)で収録。撮影は国宝松江城など、地元・島根を中心に行なった。天守閣の中、月明かり、夕方から夜にかけた海岸、暗い森の中の人物描写など、自然光でもかなり条件の厳しい撮影だが、監督も満足する画作りができた。「錦織監督は『(EOS C700は)機動力もあるし、フィルムでは考えられない暗い場所でも撮影できる。今後はデジタルシネマカメラでも撮ってみようかな』というぐらい気に入っていました」(プロデューサー 明里マミ氏)。
おのみち・こうじ
最近の主な仕事:PIECE OF TOKYO「東巨女子」「To&Kyo」、チャネットチップ 元祖カリカリ篇、スチル「フィン・ユール邸」、桐嶋ノドカ「柔らかな物体」、チャランポラン「メビウスのいきどまり」、エースコック スープ春雨。
本格的な時代劇を撮るのは初めてだったという尾道幸治さん。錦織監督の「たたら侍」の世界観を踏襲しつつ、新しい時代劇のトーンが作りたいと低照度で美しい表現ができるEOS C700を選択した。
─ 尾道さんは今までさまざまなCINEMA EOSの機材で撮影しています。EOS C700で撮った印象はどうでしたか。
尾道 低照度で美しい画が撮れるデジタルシネマカメラは何かと考えた結果、EOS C700にたどり着きました。時代劇は夜のシーンの撮影が難しいなと感じていました。いかにもライトを当てているなという光があります。今回はフィルム撮影ではできないことをやろうと、ロウソクの灯りだけで撮ったシーンもあります。EOS C700はノイズ感がいいというか、フィルムの粒子のような表現ができる。天守閣のシーンではISO10000、最大ISO20000で夕暮れの光ギリギリまで粘りましたが、暗部のノイズはほとんど出ませんでした。また山の斜面でノーライト撮影(ページトップの画像)しましたが、木が茂って肉眼で見る限りはかなり暗かった。それが細かなディテールまで美しく表現されていて、このカメラの威力を感じました。個人的にも一番好きなシーンです。
─ Canon Log 3で収録したそうですね。
尾道 Canon Log 3はグレーディング(今回はDavinch Resolve)も扱いやすいです。映画やドラマの場合はハイを戻したい時もあれば、逆に暗部を戻したい時もあるなどシーンによって設定が変わってくるのですが、Canon Log 3はCanon Log 2よりも暗部が締まり、グレーディングがしやすいですね。収録時は人物に合わせて撮っているのですが、グレーディングすると山だけではなくて、窓の外から見える雲にもちゃんとディテールが残っていました。
─ 操作性に関してはどう感じましたか。
尾道 今回は1シーンだけ担いで撮影しましたが、同じクラスのデジタルシネマカメラと比べても軽いですね。アシスタントはリグや三脚に次々とカメラを乗せ換えたりと、一日で何度も持ちます。その際に軽いことが重要になってきます。UIがシンプルなので、アシスタントと2人でオペレーションする際、アシスタントも使いやすいのがいいですね。EOS C700はドラマはもちろん、映画やCMでも充分活躍できる。剛性もがっちりしているし、オールラウンドな撮影に適したカメラですね。