9mm Parabellum Bullet(以下9mm)の「Lost!!」は薄暗い空間で演奏するメンバーの周りで男女の激しいダンスの応酬が繰り広げられる、黒と白のコントラストが美しいミュージックビデオ(以下MV)だ。メンバーから「黒塗りの人を出したい」「影を使って何かやりたい」というアイデアを受けて田辺秀伸監督は俯瞰で人物の影を活かそうと決める。影を使うことでキャストにボリューム感が出て、賑やかさが生まれている。スタジオ上部の通路からライトを突き出して、だんだんライトを下げていくと影が伸びていく。アングルが決まると、ダンサーを立たせて影の大きさを調整していった。そうして俯瞰のシーンを撮ってから、正面のアングルでは硬めのライティングで強いイメージを印象付けた。バンドの演奏とダンサーの踊りを同時に撮ることでライブの緊張感を強調したのがこのMVの面白さだが、人を動かしながら演奏も撮るのは相当困難だった。この撮影にEOS C300 Mark IIを選択。光と影の世界を見事に表現している。
たなべ・ひでのぶ
最近の仕事:桑田佳祐「ヨシ子さん」、三戸なつめ「おでかけサマー」、Dream Ami「トライ・エヴリシング」、miwa 360°MV、The Birthday「MOTHER」、Heavenstamp「Magic」、ヒトリエ「カラノワレモノ[ReREC]」
むらかみ・よしたか
最近の仕事:資生堂 HAKU、NIKE nike.com、江崎グリコ ポッキーチョコレート、桑田佳祐「ヨシ子さん」、ももいろクローバーZ「マホロバケーション」、五五七二三二〇「ポンパラ ペコルナ パピヨッタ」
─ 今回の撮影、田辺監督の企画を受けて、村上さんはどう感じましたか。
村上 「攻めてるな」と思いました(笑)。田辺監督は意図が明確なのでやりやすいです。「Lost!!」はコンクリートの上で撮りたいという監督の要望もあって、照明技師の宮木進一さんと一緒にライティングを作って行きました。
田辺 メンバーがやりたいことを提示してくれたので企画が固めやすかったですね。ダンサーの入手杏奈さんに出てもらうことになって、いいものになるだろうなとは思いました。シンプルだからこそ被写体勝負なところもあるので。9mmも全力でパフォーマンスしてくれて、それがカッコよかったので全く問題なかったです。
─ 村上さんは既にEOS C300 Mark IIで何本もMVを撮っているそうですね。
村上 2月から使い始めて、既に5・6本撮っています。田辺監督との仕事ではaikoの「もっと」でも使いました。
─ お2人にとってカメラ選びの基準はなんでしょうか。
田辺 カメラは企画の設定と予算で決めることが多いんですけど、僕からこれで撮って欲しいということはありません。ただコントラストの強い絵にしたいとか、カメラマンにイメージを伝えて選んでもらうことが多いです。
村上 この「Lost!!」ではEOS C300 Mark IIの特性を最大限活かせました。このMVは違いましたが、手持ちで撮ることが多いので、EOS C300 Mark IIを選ぶことが多くなりました。EOS C300に馴染んでいたので、EOS C300 Mark IIになっても形が変わらないのもいいですね。使い勝手が良くて4K収録できますし、逆光でも髪の毛先がギザギザしないのも嬉しいです。
─ EOS C300 Mark IIは色編集でも役立っていますか。
村上 EOS C300よりもカラコレしやすいですね。コントラストを強めにしたり、色を暗部・ハイ・中間と変えて入れても破たんしない。タフなカラコレに耐えられる印象を持っています。10bitになったのと、Canon Log 2でレンジが広がってやわらかい印象があります。マッハバンド(階調飛び)も出にくいですね。今回のような撮影はEOS C300 Mark IIがあって助かりました。