アーティスト活動35周年を迎える布袋寅泰さんは、「8 BEATのシルエット」と銘打ったアニバーサリープロジェクトを展開。ギターソロで始まるミュージックビデオ(以下MV)は、ダンサーを従えて、壮大な世界観が描かれている。演出は中野裕之監督。18年前の初監督映画「SF SAMURAI FICTION」に布袋さんが出演。以後、「POISON」「スリル」「CIRUS」「バンビーナ」など多くのMVを共に制作してきた。また、中野監督はキヤノン製カメラとの関係も深く、ビデオカメラ、デジタル一眼レフカメラ、そしてCINEMA EOSと、様々な機材で多くの作品を残している。今回は、EOS C300 Mark IIを使用。自らファインダーを覗いて撮影を行なった。今回の撮影では、ワイドDR収録を選択。ワイドDRとは、BT.709をベースとして高輝度部をなめらかに圧縮したガンマで、800%の広いダイナミックレンジを実現する記録方式。CINEMA EOSの絵を知り尽くした中野監督にその狙いを聞く。
なかの・ひろゆき
映画監督・映像作家。映画「SF SAMURAI FICTION」「SF Stereo Future」「TAJOMARU」、短編「iron」カンヌ国際映画祭国際批評家週間ヤング批評家賞。現在6年間撮影している日本の魅力を伝える映像詩を制作中。
─ 今回、なぜワイドDR収録を選んだのでしょうか。
中野 Canon Logで撮ると輪郭がすごく綺麗に出るので、拡大を目的にしていればCanon LogでもCanon Log 2でもいいんですけど、今回は、グレーディングで追い込む必要がないこともあって、ワイドDRで撮っています。白バックでもワイドDRで撮っておけば黒締めも浮きもトーンはいかようにもできるのでやりやすいですね。ブルーのトーンはカラコレで変換しているんですけど、それでここまでの色が出るというのは驚きですね。黒バックは使いませんが、撮っています。黒も良かったですよ。
─ 布袋さんの体にトレードマークの幾何学模様や風景が重なるシーンも印象的でした。
中野 あれも後から重ねているだけです。それでもプロジェクターでマッピングしたような効果が出てるでしょ。やってみたらできるなと(笑)。
─ 4Kはトリミングするために使っているのですか。
中野 一概にそうではないのですが、僕が4Kで人物を撮る時は後で画角を決めたいと思っています。トリミングで上下、左右、寄り引き。だいたいこのサイズが欲しいと決めている時でも広めに撮っています。後から右寄せか左寄せか、ベストを選べばいいんです。トリミングした素材も4Kモニターで確認しましたが、何ら問題はありませんでした。135%を超せば甘くなるけど、120%までは全く問題ないので、自由に。EOS C300 Mark IIになってからさらにキレが良くなっています。全身で寄ったり引いたりしているシーンの中には200%のものも混ざっているんだけど、フォーカスさえ合っていれば、充分使えますね。同じものを4Kで仕上げて見てみましたけど、シャープネスをかければ充分綺麗な絵が出ています。大きなサイズで仕上げてHDで納品というのは、CMでも効果的と思います。アーカイブとしても。
─ EOS C300 Mark IIの絵作りに関してはどのような印象ですか。
中野 EOS C300 Mark IIは高級感がありますね。大人の絵ですよ。EOS C300の時は絵が硬かった印象があるのですが、EOS C300 Mark IIは丸いんですよ。ざらざらの紙から高級紙になったような感覚があります。絵が毛羽立つようなものがなく、マイルドです。我々は作例ビデオを作っているわけではないので、4Kの質感を見せる必要はない。EOS C300 Mark IIのように大人っぽい絵の撮れるカメラがもっとプロの現場で使われるようになればいいのになと思います。