薄暗い空間で激しく体をぶつけ合ってボールを追いかける男たち。時には突き飛ばされて場外に出ることも。カメラを構える妻夫木聡さんも次第にその世界にのめり込んで夢中でシャッターを押す。EOS 80Dのスペシャルムービーはウィルチェアーラグビーという競技の代表選手を被写体にして、暗がりに浮かび上がる彼らの生々しいプレーを捉えている。「プレーする彼らを撮るのに、大掛かりなセットを作って、ステージライトを当てて、『どうだかっこいいだろう』と魅せるような演出にはしたくなかった。彼らは誰も見たことのない超人的な技術とパフォーマンスを持っている。そこで、なるべくそのままのかっこよさを撮りたかった。そのためにはできるだけ明るさを抑えて、ポツンと射すライティングでプレーをしている彼らを撮りたかったんです」と語る柿本ケンサク監督。EOS C300 Mark IIを3台使用して、目の前でそのプレーを見ているかのような迫力のある映像に仕上げた。
かきもと・けんさく
OFFICE作所属。theatre-tokyo支配人。映像作家、写真家として映画、TV-CM、MV等を中心に活動。www.kensakukakimoto.com
─動きが予測しづらい未知のスポーツ、ウィルチェアーラグビーを映像でどう捉えようと考えたのですか。
柿本 予めシミュレーションしているところとそうでないところがあります。嘘っぽくはしたくないので、そこは撮りながら選手と相談していきました。
─柿本監督はEOS C300、EOS C500、EOS-1 D Cなど、CINEMA EOS SYSTEMのカメラで様々な映像作品を残しています。今回のEOS C300 Mark IIにはどんな印象をお持ちですか。
柿本 もともとEOS C300でも満足していたので、EOS C300 Mark IIでさらにブラッシュアップされて、しかも4Kに対応してくれたのはありがたいですね。最近はシネマカメラも進化して、このカメラだからいいという特徴を見出しにくいんですけど、まずは4Kに対応してくれている。今は4Kでもドローンとか、3軸ジンバルにつけて撮るケースも増えているので、軽量化されているカメラの中でも使い勝手のいいEOS C300 Mark IIを選びました。
─Canon Log2で収録したそうですね。
柿本 まずカラコレがしやすかったです。暗いシーンの撮影だったので、グレーディングでどこまで残せるかというのは気になっていました。Canon Log2は暗部を持ち上げる仕様になっているので、明るく撮って、後で黒のトーンを締めるのが狙いだったのですが、シャドー部も綺麗に出て、グレーディングもやりやすかったですね。粒子が粗くなることもなかったです。
─オートフォーカス(以下AF)にも興味があるとか。
柿本 そうですね。今回の撮影では妻夫木さんの撮影シーンでAFを使っています。4K収録はフォーカスが難しくて、リテイクが多いんですね。ムービーの世界ではフォーカスは送るものだという意識がまだ根強いんですけど、AFが進化したと聞いて気になっています。AFならではの機能を活かせれば撮影も変わると思います。スポーツや動きの速いものをv撮る時にAFが使えたら助かります。オリンピックなど、リアルなスポーツの現場ではライティングもできませんし。撮影部がフォーカスから解放されることで、例えば表現のこととかもっと先に先に僕らが行けるというのはいいことだなと思います。ハンディでドキュメントに近いやり方で人を追いかけることも多いので、AFが使えるのはありがたいですね。ただまだEFレンズしか対応していないんですよね。シネマレンズでも使えるようになれば、興味あるのでぜひ使ってみたいです。