ムービーカメラマンの豊納正俊さんは昨年約150本のミュージックビデオ(以下MV)を撮影。今年は2月時点で30本のMVを撮影した。しかも撮って終わりではなく、撮影素材を全てグレーディングして納品するのが彼のスタイルだ。彼が所属するSpiceはCM、MV、ライブ収録などのスタッフの派遣と撮影技術提供を行なっている。また、シネマカメラからデジタル一眼レフカメラまで数多くの撮影機材も所有。EOS C300 Mark IIも発売当初に導入し、早速撮影現場で活躍している。豊納さんもEOS C300 Mark IIでの撮影をいくつも行なっていて、今回はその中から3本のMVを紹介する。海沿いの部屋にライティングを作り込んで女性アーティストを撮る(安田レイ「あしたいろ」)、薄暗い部屋での演奏シーンと逆光で空抜けの撮影( 04 LimitedSazabys「Letter」)、普段使われているオフィス内で昼から夜まで撮影(岡本修「ありがとうの詩」)など、既にいろいろなシチュエーションを経験している。様々な撮影機材で多くの現場を経験してきた豊納さんは、EOS C300 Mark IIにどのような印象を持っているのか。撮影の立場から語ってもらう。
とよのうまさとし
1984年生まれ Spice所属 MV、ライブを中心に活動中。今年の目標は年間200本のMVを撮影することだそう。
─ 3本のMVをEOS C300 Mark IIで撮影しています。
豊納 EOS C300 Mark IIはハイライトと暗部に強いカメラなので1日で様々なシーンを抑えなくてはならないMVの現場には最適なカメラだと思います。機動性があるので、手持ちやMoVI(カメラジンバル)で撮ることが多いですね。「あしたいろ」は海沿いのスタジオで日が落ちるタイミングで撮影しました。アーティストのアップが多いので、正面から強めのライトも当てています。逆光撮影を多用している「Letter」。演奏シーンは手持ちで撮影しています。「ありがとうの詩」はオフィス、会議室、廊下など、実際に稼働している会社の中で撮影しました。
─ レンズは何を使っているのですか。
豊納 主に使っているのはEF16-35mm F2.8L II USM、EF24-70mm F2.8L II USM、EF70-200mm F2.8L IS II USM。この3本を基本に、ワイドが足りない設定ではEF11-24mm F4L USM、EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMを使いますね。
─ EOS C300も使っていたと思いますが、Mark IIではここがよくなったと感じているところはありますか。
豊納 EOS C300はファインダーの色がかなり違うので、画角を見るだけだったのですが、EOS C300 Mark IIでは改善されています。ファインダーで確認することが多いので「このぐらい粘っているな」と視認できるのが助かります。ガンマの種類が多くなったのとLUT(ルックアップテーブル)を適用してモニタに出せるようになったのも大きな変化です。それに、ハンドルの握りがぐらぐらしなくなったのも安心感があります。
─ EOS C300 Mark IIで撮ってみた印象を教えてください。
豊納 ダイナミックレンジも広いし、色の情報量もあります。ワイドDR収録できるので、Canon Logでは収まり過ぎて絵が決まらないなと感じた時にハイのニュアンスを変更できます。白トビや黒く沈むこともない。コントラストがあるのにハイライトも収まっています。Canon Log自体も進化していますね。ノーライトで手持ち撮影をしなければならない設定もあるので、助かっています。